マヌルネコ

マヌルネコとは、中央アジアからシベリアにかけて生息する小型の野生ネコ科動物です。

体長は約50〜65cm、体重は2〜5kgほどで、家庭の猫と同じくらいの大きさですが、ずんぐりとした体型と長い被毛が特徴です。特に丸い顔と低い耳が愛らしい印象を与えます。

標高3000〜5000mの高地に生息し、厳しい寒冷地に適応するため非常に密度の高い毛並みを持っています。

単独で行動し、主に夜行性で、ナキウサギやげっ歯類などの小動物を捕食します。人に懐かず警戒心が強いため、野生のまま飼育することは難しいとされています。

マヌルネコは主に夜行性で、昼間は岩の隙間や穴に身を潜めて休み、夕方から夜にかけて活動します。

単独行動を好み、縄張り意識が強いため他のマヌルネコと接触することはほとんどありません。行動範囲は広く、狩りの際には地面に身を低くして忍び寄り、素早い動きで獲物を捕らえます。

体毛は非常に厚く、冬にはさらに密度が増して極寒の環境でも体温を保てる仕組みになっています。繁殖期は春で、妊娠期間は約60日、1度に2〜6匹の子を産みます。子どもは生後半年ほどで自立し始めますが、成体になるまでは高い生存率を確保できず、厳しい自然環境の影響を強く受けます。

マヌルネコの歴史は非常に古く、約200万年以上前から現在の姿に近い形で存在していたと考えられています。

化石記録によれば、中央アジア一帯の乾燥した草原や高地に適応しながら生き延びてきました。家猫の祖先であるリビアヤマネコとは異なる進化の道を歩んでおり、独自の生態を保ったまま生存してきた点が特徴です。

そのため、現存する最古級の小型ネコ科動物のひとつとも言われています。人間との関わりは長らく希薄で、家畜化されることはなく、近代に入ってから研究対象として注目されるようになりました。現在は国際的に保護対象となっており、動物園での繁殖や生態研究が進められています。

① 世界最古級のネコ科

マヌルネコは約200万年前からほとんど姿を変えていないとされ、「生きた化石」と呼ばれることもあります。

② 毛がふわふわなのに体は小さい

見た目は大きく見えますが、実際の体重は3〜5kgほどと、普通の家猫と同じくらいです。毛の密度が非常に高いため、ふっくらと丸い印象になります。

③ 瞳孔が「丸い」

多くの小型ネコ科は縦長の瞳孔を持ちますが、マヌルネコの瞳孔は人間と同じ丸型です。これは高地での光環境に適応した特徴と考えられています。

④ 警戒心が強く飼育が難しい

非常に野生的な性質を持ち、人に慣れにくい動物です。そのためペット化はされておらず、動物園などでしか見ることができません。

⑤ 特有の鳴き声「ワン」

マヌルネコはネコ科で珍しく、「ワン」や「ワウ」といったイヌのような鳴き声を発します。