ラッコ

ラッコは、イタチ科に属する海棲哺乳類で、冷たい海に適応した動物です。主に北太平洋沿岸、特にアラスカやカリフォルニア、ロシアのカムチャツカ半島、日本では北海道沿岸などに生息しています。

全身を覆う密度の高い毛皮は、1平方センチあたり約10万本以上ともいわれるほどで、寒冷な海でも体温を保つことができます。体長は約1〜1.5メートル、体重は20〜40kgほど。

ラッコは海面に仰向けになって生活し、貝やウニを石で割って食べることで知られています。人間のように「道具を使う」珍しい動物で、胸の上に貝を置き、石を打ち付けて殻を割る姿は非常に有名です。

また、ラッコは毛づくろいを頻繁に行うことで毛の中に空気を含ませ、保温性と浮力を維持しています。可愛らしい見た目に反して、鋭い歯と強い前脚を持つ、たくましい海のハンターでもあります。

ラッコは、海上での生活に特化した哺乳類で、ほとんどの時間を水の上で過ごします。仰向けに浮かびながら休息や食事、毛づくろい、さらには子育ても行います。陸に上がることはほとんどなく、寝るときは海藻を体に巻きつけて流されないようにする習性があります。

食事の際には、貝やウニなどを石で割って食べることで知られ、人間以外では珍しい「道具を使う動物」の一種です。貝を割るために使う石をお気に入りとして脇のたるみにしまって持ち運ぶこともあります。

ラッコの毛は哺乳類の中でも最も密度が高く、1平方センチあたり10万本以上とされます。この毛の間に空気を閉じ込めることで保温性と浮力を保ち、寒冷な海でも体温を維持しています。

繁殖は1年を通して行われ、通常は1回に1頭の子を産みます。母親は常に子を抱えて世話をし、毛づくろいや泳ぎの練習を教えるなど、非常に子育て熱心な動物です。

ラッコの祖先は、約500万〜700万年前の陸上にすむイタチ科の動物から進化したと考えられています。イタチ科の中でも水辺で生活するカワウソの仲間が徐々に海洋生活に適応し、完全に海で暮らすようになったのがラッコの起源です。

ラッコの最も近い親戚は「カワウソ」ですが、カワウソが淡水域を中心に生活するのに対し、ラッコは海洋環境に特化しました。その結果、分厚い皮下脂肪を持たず、かわりに極めて密度の高い毛皮を発達させ、寒冷な海でも体温を保てるようになりました。

また、ラッコは海中での採餌に適応するため、前足の骨格が強化され、貝を割るための巧みな手の使い方を獲得しました。さらに、浮遊しながら行動するための肺容量の拡大や、長時間潜水できるような血液中の酸素保持能力の発達も見られます。

こうした進化の結果、ラッコはイタチ科の中で唯一「完全な海洋生活者」となり、哺乳類の進化における特異な存在となりました。

① カリフォルニアラッコ（Enhydra lutris nereis）

アメリカ・カリフォルニア沿岸に生息する亜種で、現在では主にモントレー湾周辺で見られます。体が比較的小さく、顔の毛がやや白っぽいのが特徴です。乱獲後の保護活動が成功し、個体数は徐々に回復しています。

② アラスカラッコ（Enhydra lutris kenyoni）

アラスカ沿岸からカナダ西岸にかけて生息しています。ラッコの中でも最も個体数が多く、全体の8割を占めるといわれます。体格が大きく、毛色は濃い茶色から黒っぽいものが多いのが特徴です。

③ ロシアラッコ（Enhydra lutris lutris）

カムチャツカ半島や千島列島、北海道周辺のロシア沿岸部に生息する亜種です。毛が長く密で、他の亜種より寒冷地に強いとされています。日本でも、かつて知床沿岸で確認された記録があります。