AI×業種

タクシーの事故の記録|運転者の話からAIで8項目に並べ、30日以内にそろえる

この記事で変わる経営指標

この記事では、タクシー会社のAI活用|記録と苦情の返事を整え、運転者を道路に出すの「事故の記録は、8つの項目に並べて空欄に印を付ける」を、事故が起きた日から使える手順にして説明します。

一言でいうと、運行管理者が、運転者の話と写真と日時を集める。AIが、事故の記録の8つの項目に並べ、空いている欄に印を付ける。社長が運行管理者と話して、原因と再発防止策を決める。事務が営業所で保管し、3年残す。原因と責任は人が決めるという形です。

経営への効果は、同じ事故をくり返さず、運転者を守ること

タクシーの事故は、大きなものばかりではありません。駐車場での接触や、乗り降りのときのドアの接触のような小さな事故もあります。小さな事故ほど、記録が後回しになり、何が起きたかが分からなくなります。

事故の記録がそろっていると、同じ場所、同じ時間帯、同じ動きで起きている事故が見えてきます。そこから、運転者への指導や乗務の割り振りを変えられます。事故が減れば、修理代や保険料、車が止まる日数が減ります。

そして、事故の直後の運転者は動揺しています。聞き取りの順番と記録の形が決まっていれば、運転者を責めずに事実だけを聞けます。事故のあとに辞める運転者を減らすことにもつながります。

事故が起きたら、8つの項目を記録し3年残す

e-Gov法令検索で旅客自動車運送事業運輸規則の第26条の2を確かめると、事業用自動車の事故が起きた場合は、次の8つを記録し、その車の運行を管理する営業所で3年間保存することとされています。

  1. 乗務員等の氏名
  2. 車両を識別できる表示(自動車登録番号など)
  3. 事故の発生日時
  4. 事故の発生場所
  5. 事故の当事者(乗務員等を除く)の氏名
  6. 事故の概要(損害の程度を含む)
  7. 事故の原因
  8. 再発防止対策

ここでいう事故は、第25条で、道路交通法の交通事故や、自動車事故報告規則に定める事故とされています。

近畿運輸局の「運行管理業務について」(2026年)では、次のように説明されています。

  • 報告が要らない事故も記録する。 事故報告規則で国への報告が必要な種類の事故以外でも、記録が必要です
  • 作成は事故の後30日以内。 記録の保存期間は事故発生後3年間です
  • 事故報告書を使ってもよい。 自動車事故報告書を記録に使う場合は、当事者(乗務員等を除く)の氏名を書き足します

また、第38条第2項では、死者や負傷者が出た事故を起こした運転者には、特別な指導を行い、適性診断を受けさせることとされています。細かな決まりは、営業所のある地方運輸局の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

今は、保険会社への報告と別に手で書いている

小さなタクシー会社では、次のような形が多いと思います。

  • 事故が起きると、まず保険会社と相手方への対応に追われる
  • 運行管理者が運転者から聞いたことは、手帳や保険会社への書類にしか残らない
  • 事故の記録簿は、月末にまとめて書く。原因と再発防止対策の欄が「前方不注意」「注意する」で終わる
  • 小さな接触は、記録簿に書かれないことがある

この形だと、30日以内にそろえるのが難しくなります。そして、原因と対策が毎回同じ言葉になり、次の指導に使えません。

聞き、AIが並べ、決めて、残す

タクシーの事故の記録を整える流れ。運行管理者が運転者の話と写真と日時を集める。AIが8つの項目に並べ空欄に印を付ける。社長が運行管理者と話して原因と再発防止策を決める。事務が営業所で保管し3年残す。原因と責任は人が決める
タクシーの事故の記録を整える流れ。運行管理者が運転者の話と写真と日時を集める。AIが8つの項目に並べ空欄に印を付ける。社長が運行管理者と話して原因と再発防止策を決める。事務が営業所で保管し3年残す。原因と責任は人が決める

1 聞く(運行管理者)。 運転者が戻ったら、その日のうちに話を聞きます。いつ、どこで、どの車で、何をしていたときに、何が起きたかを、運転者の言葉のままメモします。写真とドライブレコーダーの映像があれば集めます。

2 並べる(AI)。 メモと乗務の記録を渡し、8つの項目の欄に並べてもらいます。分からない欄には「未記入」と印を付けさせます。原因と再発防止対策の欄は空けておかせます。

3 決める(社長と運行管理者)。 映像や現場の様子と照らし、原因を話し合います。再発防止対策を、具体的な行動の言葉で決めます。

4 残す(事務)。 事故の後30日以内に記録をそろえ、営業所で3年保管します。保険会社への書類と一緒にとじておきます。

聞き取りのメモは、この表でそろえる

欄 中身の例(想定) AIにさせないこと
乗務員の氏名 運転者の名前 名前を補う
車両 車番 番号を補う
日時 乗務の記録の時刻 時刻を推測する
場所 交差点名、住所、駐車場名 場所を補う
当事者 相手方の名前(分かる範囲) 名前を補う
概要 運転者の言葉、損害の程度 言い換えて意味を変える
原因 人が書く 原因を決める
再発防止対策 人が書く 対策を決める

AIには、相手方の名前と連絡先を除いて渡し、記録に戻すときに人が書き足します。

AIへの頼み方と、返ってくる記録はこうなる

AIに渡す指示(見本):

下は、タクシーの事故について、運行管理者が運転者から聞いたメモと、その日の乗務の記録です。運輸規則第26条の2の事故の記録の8つの項目(乗務員等の氏名、車両、発生日時、発生場所、当事者の氏名、事故の概要、原因、再発防止対策)の表にしてください。メモにないことは補わず「未記入」と書いてください。原因と再発防止対策は「人が決める」と空けてください。誰に責任があるかは書かないでください。

返ってくる記録(見本。内容は架空です):

乗務員等の氏名:〇〇/車両:〇〇〇〇/発生日時:〇月〇日〇時〇分ごろ(乗務の記録のとおり)/発生場所:〇〇駅前のロータリー/当事者の氏名:未記入(相手方は人が書き足す)/事故の概要:お客さまを降ろしたあと発進する際、左後方の自転車と接触。けが人なし、車両の左後部ドアに擦り傷/原因:人が決める/再発防止対策:人が決める

確かめるときは、言い換えと日時と空欄を見る

AIの下書きは、渡したメモと記録をもとにしています。それでも、並べる途中で言い換えたり、話を補ったりすることがあります。

  • 運転者の言葉が言い換えられていないかを見る。 「よく見ていなかった」と「見えなかった」は、意味が違います
  • 日時を乗務の記録と照らす。 時刻の書き間違いは、あとで映像と合わなくなります
  • 損害の程度が書かれているかを見る。 けが人の有無、車と相手の損害を確かめます
  • 「未記入」を埋める。 運転者や相手方への確認で埋めます

再発防止対策は、具体的な行動の言葉で書く

原因と対策の欄が「前方不注意」「今後注意する」で終わると、次の指導に使えません。次のように書くと、指導の材料になります。

  • 原因は、その場の動きで書く。 「降車後、左後方を目で確かめずに発進した」のように書きます
  • 対策は、誰が何をするかで書く。 「降車後の発進前に、左のミラーと目で後方を確かめることを、全員の点呼で〇月中に伝える」のように書きます
  • 指導の記録につなげる。 対策として話したことは、第38条の指導監督の記録に残します
  • けがをさせた事故は、特別な指導と適性診断を確かめる。 第38条第2項の対象かを、運行管理者が確かめます

型をスキルにし、原因と責任はAIの外に置く

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「聞き取りのメモの欄」「事故の記録の8つの項目」「記録の見本」「させないこと(補う、言い換える、原因と対策と責任を書く)」をスキルにします。

原因と責任は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、運行管理者が運転者の言葉のままメモすること、映像と照らして社長と原因を決めること、30日以内にそろえたかを事務が一覧で見ることがそれに当たります。

費用は、AIの利用料が1件2円ほど

費用 見込み
事故の記録の下書き メモと記録(入力2千トークンほど)から表(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件2円ほど
法人向けプラン チャットで使うなら1人あたり月数千円
運行管理者の時間 聞き取りと確かめるのに1件数十分(想定)

必要な人は3役で、原因と対策は社長が決める

  • 運行管理者:運転者から聞き取り、映像と照らし、対策を指導につなげる
  • 社長:運行管理者と話して原因と再発防止対策を決め、保険や相手方への対応を決める
  • 事務:AIに記録を下書きさせ、30日以内にそろえたかを一覧で見て、3年保管する

1か月で記録の型ができ、次の事故から使える見込み

  1. 1週目:聞き取りのメモの欄を紙にし、運行管理者の机に置く
  2. 2週目:過去の事故を1件選び、AIに8つの項目に並べさせて、型を確かめる
  3. 3週目:記録の見本と、させないことをスキルにまとめる。30日の期限を書く一覧を作る
  4. 4週目以降:事故のたびにその日のうちに聞き取り、記録をそろえる。半年ごとに、場所と時間帯で事故を並べて見る

原因をAIに書かせると失敗する

よくある失敗は次の3つです。

  • 原因と責任をAIに書かせる。 もっともらしい原因が入り、事実と違う記録が3年残ります
  • 小さな接触を記録しない。 報告が要らない事故も記録が必要です
  • 対策を「注意する」で終える。 誰が、いつ、何をするかで書きます

まとめ

  • 事故が起きたら、8つの項目を記録し、営業所で3年間保存する
  • 国への報告が要らない事故も記録し、作成は事故の後30日以内にそろえる
  • 運転者の言葉のままのメモから、AIが8つの項目に並べ、空欄に印を付ける
  • 原因と再発防止対策は社長と運行管理者が決め、具体的な行動の言葉で書く
  • 対策は運転者への指導と、その記録につなげる

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