導入とお金

AIの仕組み化は例外集めから|手で試した4週間で、作る前に分かること

この記事で変わる経営指標

この記事では、AI導入で失敗する中小企業の5つの型|使われないまま終わらない避け方の「全部を一度に変えると、現場に合わずに止まる」を避けるために、仕組みを作る前に例外を集める方法を説明します。

一言でいうと、社員が4週間、AIのチャットに手で頼みながら、AIの下書きを直した所と、いつもと違う案件(例外)を記録する。AIが例外の一覧と起きた回数を表にする。社長が、仕組みにする所と人の手に残す所を分ける。外注するなら、見積の前に例外の表を渡す。例外の多い所は人の手に残すという形です。

経営への効果は、作ってから使えない仕組みにお金を払わないこと

AIで受注や請求を自動にする仕組みは、うまく合えば大きく時間を減らせます。けれども、業務には書かれていない例外がたくさんあります。例外を知らないまま作ると、現場に合わず、手作業に戻ってしまいます。作るのにかけた費用と時間が無駄になります。

先に4週間、手で試して例外を集めておけば、仕組みにする所を絞れます。外注先にも例外の表を渡せるので、見積がぶれにくく、作り直しも減ります。

懸念の最多は、AIの答えが正しいかどうか

ITmedia NEWSとビジネス+ITが伝えた帝国データバンクの2026年3月の調査によると、業務で生成AIを使っている企業は34.5%で、導入の懸念では「情報の正確性」が50.4%で最も多くなりました。

AIの答えが正しいかどうかは、業務の中の「いつもと違う案件」で崩れやすくなります。ふだんの案件ではうまくいっても、例外の案件でAIが間違えると、その間違いがそのまま外に出てしまいます。例外を先に知っておくことが、正確さの心配を減らす近道です。

今は、例外が担当者の頭の中にしかない

「この取引先だけは、請求書を月末ではなく20日で締める」「この商品は、注文の数が10を超えたら別の倉庫から出す」。小さな会社では、こうした例外を担当者が覚えていて、その場で判断しています。

例外は、ふだんの業務の説明には出てきません。外注先に「受注から請求までを自動にしたい」と頼んでも、例外は伝わりません。手で試して、AIが間違えた所、担当者が直した所を記録して初めて、例外が見えてきます。

試し、AIがまとめ、社長が決め、外注先に渡す

AIで仕組みを作る前に例外を集める流れ。社員がチャットで4週間頼み、直した所を記録する。AIが例外の一覧と起きた回数を表にする。社長が仕組みにする所と手に残す所を分ける。見積の前に、外注先に例外の表を渡す。例外の多い所は人の手に残す
AIで仕組みを作る前に例外を集める流れ。社員がチャットで4週間頼み、直した所を記録する。AIが例外の一覧と起きた回数を表にする。社長が仕組みにする所と手に残す所を分ける。見積の前に、外注先に例外の表を渡す。例外の多い所は人の手に残す

1 試す(社員)。 選んだ業務を、4週間、会社で契約したAIのチャットに手で頼みます。AIの下書きを直したら、何をなぜ直したかを記録します。

2 まとめる(AI)。 4週間分の記録を渡し、例外の一覧と、それぞれ何回起きたかを表にしてもらいます。

3 決める(社長)。 表を見て、仕組みにする所と、人の手に残す所を分けます。

4 渡す(社長)。 外注するなら、見積を頼む前に例外の表を渡します。

記録は、案件ごとに4つの欄で残す

欄 中身の例(想定)
案件 日付、取引先(記号でもよい)、内容
AIに頼んだこと 受注メールから注文の表を作る
直した所 納品先の住所が本社ではなく支店だった
なぜ直したか この取引先は、支店ごとに納品先が違う

「直した所」が空欄の案件も、そのまま記録します。例外のない案件がどれだけあるかも、仕組みにするかを決める材料になります。直した所の数え方は、AIの効果はどう測る?|1か月の試しで時間と直しの数を数えるでも説明しています。

AIへの頼み方と、返ってくる表はこうなる

AIに渡す指示(見本):

下は、4週間分の業務の記録です(案件、AIに頼んだこと、直した所、なぜ直したか)。直した所を、同じ理由ごとにまとめて「例外」の一覧にしてください。それぞれの例外について、起きた回数、どの取引先や商品で起きたか、直すのに人が何を判断したかを表にしてください。最後に、直した所がなかった案件の数を書いてください。仕組みにするかどうかの判断は書かないでください。

返ってくる表(見本の一部。内容は架空です):

例外 回数 どこで 人の判断
納品先が支店ごとに違う 12 A社、C社 過去の注文から支店を選ぶ
単価が数量で変わる 5 商品3 単価表の段を見る
注文の取り消しがメールの途中にある 2 B社 前のメールと見比べる

直した所がなかった案件:83件

回数は、AIの数字をそのまま使わず、記録の表で数え直します。

仕組みにする所と、手に残す所を分ける

表ができたら、社長が例外ごとに決めます。

  • ルールで書ける例外は、仕組みに入れる。 「A社は支店ごとに納品先が違う」のように、表やルールで書けるものは、仕組みで扱えます
  • 人の判断が要る例外は、手に残す。 「前のメールと見比べる」のように、毎回判断が要るものは、仕組みが「要確認」として人に回すようにします
  • 起きる回数が少ない例外は、無理に入れない。 年に数回しか起きない例外まで仕組みに入れると、作る費用が増えます。人が見る所に回します

例外の多い業務は、そもそも仕組みにせず、チャットで手で頼むやり方のまま続けるのも一つの判断です。

外注するなら、例外の表を見積の前に渡す

外注先には、業務の説明と一緒に、例外の表と、直した所がなかった案件の数を渡します。例外が分かっていれば、外注先も何を作ればよいかを正しく見積もれます。頼み方のまとめ方は、AI開発を外注する前の頼み方|見積がぶれない7つの項目をA4で1枚にで説明しています。

外注先に、例外ごとに「仕組みで扱う」「人に回す」のどちらにするかの案を出してもらい、社長が決めます。作り終わったあとも、新しい例外が出たら記録を続け、半年ごとに表を見直します。

手で頼む間も、例外はスキルに足していく

4週間の試しの間にも、分かった例外はAIへの指示に足していきます。手で頼むやり方のままでも、AIの下書きを直す回数を減らせます。

  • 週に1回、例外を指示に足す。 「A社の納品先は支店ごとに違うので、過去の注文の支店を使う」のように、分かった例外を指示の決まりに書き足します
  • 足したあとの直しの数を見る。 指示に足した例外で、直しが減ったかを記録で確かめます
  • 判断が要る例外は、印を付けさせる。 人の判断が要る例外は、AIに「要確認」の印を付けさせ、人が見るようにします

指示に足しても直しが減らない例外は、仕組みにしても扱いにくい例外です。社長が分けるときの材料になります。

型をスキルにし、分ける判断はAIの外に置く

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「記録の4つの欄」「例外のまとめ方の型」「書いてはいけないこと(仕組みにするかの判断、記録にない例外)」をスキルにします。

分ける判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、記録を社員が残すこと、回数を表で数え直すこと、仕組みにする所と手に残す所を社長が決めること、仕組みが迷う案件を「要確認」として人に回すことがそれに当たります。

費用はAIの利用料が1回9円ほど

費用 見込み
4週間分の記録のまとめ 記録(入力1万5千トークンほど)から例外の表(出力3千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回9円ほど
法人向けプラン チャットで使うなら1人あたり月数千円
社員の時間 案件ごとの記録に1〜2分(想定)
社長の時間 表を見て分けるのに1〜2時間(想定)

必要な人は2役で、分けるのは社長

  • 担当の社員:4週間、チャットで手で頼み、直した所と理由を記録する
  • 社長:例外の表を見て、仕組みにする所と手に残す所を分け、外注するかを決める

1か月で例外の表ができ、作るかどうかを決められる見込み

  1. 1週目:試す業務を1つ選び、記録の4つの欄を社員と決める
  2. 2〜4週目:毎日、チャットで頼みながら記録する
  3. 4週目の終わり:AIに例外の表を作らせ、回数を記録で数え直す
  4. 5週目:社長が仕組みにする所と手に残す所を分け、外注するかを決める

例外を集めずに作り始めると失敗する

よくある失敗は次の3つです。

  • 担当者に聞くだけで済ませる。 担当者は、例外をすべて覚えているわけではありません。実際の案件で記録します
  • 直さなかった案件を記録しない。 例外のない案件の数が分からないと、仕組みにする効果が見積もれません
  • 全部の例外を仕組みに入れる。 回数の少ない例外まで入れると、作る費用が増え、仕組みも複雑になります

まとめ

  • AIで仕組みを作る前に、4週間、チャットで手で頼みながら例外を集める
  • 案件ごとに、頼んだこと、直した所、なぜ直したかを記録する
  • AIに例外の一覧と回数を表にさせ、回数は記録で数え直す
  • ルールで書ける例外は仕組みに入れ、判断が要る例外と回数の少ない例外は人の手に残す
  • 外注するなら、見積の前に例外の表を渡す

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