AI×業種

電気工事の帳簿|工事ごとの6項目を完了報告からAIで整え、5年残す

この記事で変わる経営指標

この記事では、設備工事店のAI活用|職人が現場に出る時間を増やす4つの書く仕事の「作業の完了報告書は、写真とチェックと一言からAIが下書きする」の続きとして、電気工事会社が備える帳簿を、完了報告から整える手順を説明します。

一言でいうと、職人が、写真と配線図と測った値を送る。AIが、帳簿の6項目の欄に並べ、空いている欄に印を付ける。主任電気工事士が、配線図と検査結果を確かめる。事務が、営業所ごとに保存して5年残す。検査の合否は人が決めるという形です。

経営への効果は、帳簿のために職人を事務所に戻さないこと

電気工事の会社は、工事のたびに帳簿を付けることが法律で決まっています。ところが、小さな会社では、帳簿の記入が後回しになりがちです。職人は日中は現場にいて、帳簿は夕方に事務所に戻ってから書く。忙しい週は、まとめて月末に書く。そうなると、配線図が見つからない、検査の値が手帳にしか残っていない、ということが起こります。

完了報告を送る仕組みがすでにあれば、そこに帳簿の材料もそろっています。AIに6項目の欄へ並べさせれば、職人は帳簿のために事務所へ戻らなくて済みます。空欄があればその日のうちに分かるので、あとから思い出して書く手間も減ります。

帳簿がそろっていると、お客さまから「前の工事の配線を知りたい」と聞かれたときに、すぐ答えられます。同じ法律の第29条では、都道府県知事などが職員を営業所に立ち入らせ、帳簿を検査させることができるとされています。そのときにも慌てません。

帳簿は営業所ごとに備え、工事ごとに6項目を書く

e-Gov法令検索で電気工事業法を確かめると、第26条で、電気工事業者は営業所ごとに帳簿を備え、決められた事項を書いて保存することとされています。中身は施行規則の第13条に書かれていて、電気工事ごとに次の6項目を記載します。

  1. 注文者の氏名または名称と住所
  2. 電気工事の種類と施工場所
  3. 施工年月日
  4. 主任電気工事士等と作業者の氏名
  5. 配線図
  6. 検査結果

帳簿は、記載の日から5年間保存します。茨城県の「電気工事業者の義務」の案内でも、同じ6項目と5年間の保存が示されています。

施行規則の第13条の2では、これらの事項を電子で記録し、必要なときにすぐ画面に出せるようにして保存すれば、帳簿の保存に代えられるとされています。紙の帳簿でなくても、表やファイルで持てます。

作業できる人と、置く人も決まっている

同じ法律には、帳簿のほかにも営業所ごとの決まりがあります。

  • 登録(第3条)。 電気工事業を営むには、都道府県知事か経済産業大臣の登録を受けます。有効期間は5年です
  • 主任電気工事士(第19条)。 一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに置きます
  • 器具(第24条)と標識(第25条)。 絶縁抵抗計などの器具を営業所ごとに備え、営業所と施工場所に標識を掲げます

また、電気工事士法の第3条では、電気工事士の資格を持つ人でなければ、決められた電気工事の作業に従事できないとされています。帳簿の「作業者の氏名」は、資格を持つ人が作業したかを確かめる手がかりにもなります。

細かな決まりは、営業所のある都道府県の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

今は、職人が事務所に戻ってから手で書いている

小さな電気工事会社では、次のような形が多いと思います。

  • 現場ではメモと写真だけ残し、帳簿は夕方か月末に書く
  • 配線図は手書きの紙で、現場の車に置いたままになる
  • 絶縁抵抗などの測った値は、職人の手帳か測定器の画面にしかない
  • 誰が作業したかは、日報を見返して埋める

この形だと、帳簿を書く人の記憶に頼ることになります。書く日が遅れるほど、空欄や写し間違いが増えます。

記録し、AIが整え、確かめて、残す

電気工事の帳簿を整える流れ。職人が写真と配線図と測った値を送る。AIが帳簿の6項目の欄に並べ、空欄に印を付ける。主任電気工事士が配線図と検査結果を確かめる。事務が営業所ごとに保存して5年残す。検査の合否は人が決める
電気工事の帳簿を整える流れ。職人が写真と配線図と測った値を送る。AIが帳簿の6項目の欄に並べ、空欄に印を付ける。主任電気工事士が配線図と検査結果を確かめる。事務が営業所ごとに保存して5年残す。検査の合否は人が決める

1 記録する(職人)。 工事が終わったら、スマホから完了報告を送ります。作業前と後の写真、配線図の写真、測った値を写した測定記録、作業した人の名前を入れます。

2 整える(AI)。 完了報告と受注の記録を渡し、帳簿の6項目の欄に並べてもらいます。足りない欄には「未記入」と印を付けさせます。

3 確かめる(主任電気工事士)。 配線図が工事と合っているか、検査結果の値が測定記録と同じかを確かめます。

4 残す(事務)。 確かめた帳簿を、営業所ごとのフォルダに保存します。保存した日と、5年後に消してよくなる日を一覧に書きます。

帳簿の欄は、この表でそろえる

欄 どこから取るか(想定) AIにさせないこと
注文者の氏名・名称と住所 受注の記録 住所を補って書く
工事の種類と施工場所 受注の記録と完了報告 工事の種類を推測する
施工年月日 完了報告の日付 日付を数え直す
主任電気工事士等と作業者の氏名 完了報告の作業者の欄 名前を補う
配線図 配線図の写真やファイルを付ける 図を描く、直す
検査結果 測定記録を付け、値をそのまま写す 値を丸める、合否を決める

AIの役目は、届いた材料を欄に並べることと、空欄を見つけることです。材料にないことは書かせません。

AIへの頼み方と、返ってくる帳簿はこうなる

AIに渡す指示(見本):

下に貼った受注の記録と完了報告から、電気工事の帳簿の6項目(注文者の氏名・名称と住所、工事の種類と施工場所、施工年月日、主任電気工事士等と作業者の氏名、配線図、検査結果)を表にしてください。材料に書いていないことは補わず「未記入」と書いてください。検査の値は書かれたとおりに写し、良いか悪いかは書かないでください。

返ってくる帳簿(見本。内容は架空です):

注文者:〇〇株式会社(住所:受注の記録のとおり)/工事の種類:屋内配線の増設、施工場所:〇〇市〇〇町/施工年月日:〇年〇月〇日/主任電気工事士等:〇〇、作業者:〇〇・〇〇/配線図:添付あり/検査結果:絶縁抵抗の値は測定記録のとおり、接地抵抗は「未記入」

確かめるときは、配線図と検査の値と作業者を見る

AIは、渡した材料を並べるだけです。それでも、表にする途中で言葉を補ったり、値を写し間違えたりすることがあります。

  • 配線図が、その工事のものかを見る。 別の現場の写真が混ざっていないかを確かめます
  • 検査の値を、測定記録と1つずつ照らす。 単位も確かめます
  • 「未記入」の欄を埋める。 職人に聞いて、その日のうちに足します
  • 作業者が、資格を持つ人かを見る。 資格者の一覧と照らします
  • 合否の言葉が入っていないかを見る。 「問題なし」のような言葉は、主任電気工事士が自分で判断して書きます

5年の保存は、消してよい日を先に書いておく

帳簿は記載の日から5年間保存します。電子で持つなら、次のように決めておくと迷いません。

  • 営業所ごとにフォルダを分ける。 営業所が1つでも、フォルダの名前に営業所名を入れます
  • ファイルの名前を、施工年月日と注文者でそろえる。 立入検査や問い合わせのときに、すぐに探せます
  • 保存した日と、消してよくなる日を一覧に書く。 5年たつ前に消さないための印になります
  • すぐ画面に出せるようにしておく。 施行規則の第13条の2のとおり、必要なときに表示できることが条件です

型をスキルにし、検査の判断はAIの外に置く

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「帳簿の6項目の表」「どこから取るか」「させないこと(補う、数え直す、図を描く、値を丸める、合否を書く)」をスキルにします。

検査の判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、測った値を測定記録から写すこと、主任電気工事士が照らして確かめること、事務が5年の一覧で保存を管理することがそれに当たります。

費用は、AIの利用料が1件2円ほど

費用 見込み
帳簿の整理 受注の記録と完了報告(入力2千トークンほど)から帳簿の表(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件2円ほど
法人向けプラン チャットで使うなら1人あたり月数千円
主任電気工事士の時間 照らして確かめるのに1件数分(想定)

必要な人は3役で、検査の合否は主任電気工事士が決める

  • 職人:工事のあとに写真、配線図、測定記録、作業者の名前を送る
  • 主任電気工事士:配線図と検査結果を確かめ、合否を判断する
  • 事務:AIに表を作らせ、未記入を職人に聞き、営業所ごとに保存する

社長が主任電気工事士を兼ねる会社では、社長が確かめる役を受け持ちます。

1か月で欄がそろい、工事のたびに付けられる見込み

  1. 1週目:完了報告に、配線図の写真と測定記録と作業者の欄を足す
  2. 2週目:AIに帳簿の表を作らせ、主任電気工事士が確かめる
  3. 3週目:保存のフォルダと、5年の一覧を作る
  4. 4週目以降:工事のたびに付け、未記入の欄の数を数えて減らす

測った値をAIに書かせると失敗する

よくある失敗は次の3つです。

  • 測った値をAIに思い出させる。 値は測定記録から写します。記録がない値は「未記入」にします
  • 配線図をAIに描かせる。 配線図は、実際の工事の図を付けます
  • 月末にまとめて付ける。 材料が散らばり、空欄が増えます。工事の日のうちに整えます

まとめ

  • 電気工事業者は、営業所ごとに帳簿を備え、工事ごとに6項目を書き、記載の日から5年間保存する
  • 電子で記録し、すぐに画面に出せるようにすれば、帳簿の保存に代えられる
  • 職人の完了報告に、配線図と測定記録と作業者の名前を入れておけば、帳簿の材料がそろう
  • AIは6項目の欄に並べて空欄に印を付けるまでで、値と合否は人が確かめる
  • 保存した日と消してよくなる日を一覧にして、5年残す

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