エステのカウンセリング記録|メモをAIでカルテに整え、体調の情報は慎重に
この記事で変わる経営指標
この記事では、エステサロンのAI活用|契約書面の点検と記録で信頼される店にの「カウンセリングの記録は、メモをカルテの形に整える」を、施術のたびに続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、スタッフが、何のために聞くかを伝えて、肌の様子と体調を聞き取る。AIが、名前を記号に替えたメモをカルテの欄に整える。店長が、見たままと聞いたままの書き方になっているかを見る。店長が、鍵のかかる置き場に保存する。肌の判断と施術の内容は人が決めるという形です。
経営への効果は、前回を覚えている店として通ってもらうこと
エステに通うお客さまは、前回話したことを覚えていてくれる店に安心します。「前回は乾燥が気になるとおっしゃっていましたね」と声をかけられれば、また来ようと思ってもらえます。
カウンセリングの記録が整っていれば、担当のスタッフが替わっても、同じ話を一から聞き直さずに済みます。肌に合わなかった化粧品や、施術の前に伝えた注意を残しておけば、トラブルも防げます。記録を整える時間をAIで減らせば、その分お客さまと話す時間を増やせます。次の予約をその場でいただくときにも、前回の記録があると話が進みます。
体調や病歴は、慎重に扱う情報にあたる
e-Gov法令検索で個人情報保護法を確かめると、第2条第3項で、病歴は「要配慮個人情報」に含まれています。第20条第2項では、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないとされています。
個人情報保護委員会のFAQでも、要配慮個人情報を取得するときは、原則としてあらかじめ本人の同意を得る必要があるとされています。FAQは医療機関の受付の例を挙げ、患者が問診票に自分の病状を書いて受診を申し出ることは、取得されることを前提にしていると考えられる、と説明しています。
エステのカウンセリングでも、持病や通院、服薬、アレルギーのことを聞く場面があります。何のために聞くのかを伝え、お客さまが自分で書いたり答えたりする形にしておくと、同意を得たうえで聞いたことがはっきりします。細かな扱いは、個人情報保護委員会のガイドラインで確かめてください。2026年10月時点の情報です。
施術の前に説明したことも、記録に残す
新潟県消費生活センターの「エステティックサービスのトラブル」のページでは、施術の前のリスクの説明が十分でなかった事例も挙げられています。
施術の前に、肌に起こりうることや、施術を控えてほしい体調を説明したら、そのこともカルテに残しておきます。あとで「聞いていない」と言われたときに、何を説明したかを確かめられます。
今は、手書きのカルテが読みにくい
小さなエステサロンでは、カウンセリングの内容を紙のカルテに手書きしていることが多いものです。施術が続く日は走り書きになり、ほかのスタッフが読めないこともあります。
閉店後に清書しようとしても、疲れていて書き漏らします。カウンセリングの直後に短いメモを残し、AIでカルテの欄に整えれば、清書の手間が減ります。
聞き取り、AIが整え、確かめて、保存する
1 聞き取る(スタッフ)。 何のために聞くかを伝え、カウンセリングシートに書いてもらいながら、肌の様子と体調を聞き取ります。
2 整える(AI)。 名前を記号に替えたメモを渡し、カルテの欄に整えてもらいます。
3 確かめる(店長)。 肌の様子が見たまま、体調が聞いたままの書き方になっているかを見ます。
4 保存する(店長)。 鍵のかかる置き場や、パスワードのかかった場所に保存します。
カルテの欄は、この6つにそろえる
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 希望と気になっている所 | 頬の乾燥、毛穴 |
| 肌の様子(見たまま) | 頬に赤みが少しある |
| 体調(聞いたまま) | アレルギーの有無、通院・服薬の有無(お客さまの言葉で) |
| 施術の内容 | コースと使った化粧品 |
| 施術の前に説明したこと | 赤みが出たときの対応、施術を控えてほしい体調 |
| 次回の注意点 | 前回赤みが出た化粧品は使わない |
体調の欄は、お客さまが言ったことをそのまま書きます。スタッフが推し量った病名や、AIが言い換えた言葉は書きません。
AIへの頼み方と、返ってくるカルテはこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、エステのカウンセリングの直後にスタッフが残したメモです。カルテの「希望と気になっている所」「肌の様子」「体調」「施術の内容」「施術の前に説明したこと」「次回の注意点」の欄に分けて整えてください。メモにないことは書かず、分からない欄は「記載なし」としてください。肌の様子を病気の名前に言い換えたり、体調から病名を推し量ったりしないでください。お客さまは「A」と書いてあります。
返ってくるカルテ(見本の一部。内容は架空です):
肌の様子:頬に赤みが少しある(スタッフが見たまま)。 体調:花粉の時期は肌がかゆくなることがある、とのこと。通院・服薬は「なし」とのこと。 次回の注意点:記載なし
確かめるときは、言い換えと推し量りを見る
AIの下書きは、渡したメモをもとにしています。それでも、言葉を補う中で、メモにない中身が混ざることがあります。
- 病気の名前が書かれていないかを見る。 「赤み」が「〇〇炎」のように書き換えられていないかを確かめます
- 体調の欄が、お客さまの言葉のままかを見る
- 施術の効果の約束が書かれていないかを見る
- メモにない注意が足されていないかを見る
カルテの保存と、AIに渡す範囲を決めておく
体調の情報を含むカルテは、扱いを決めておきます。
- AIに渡すのは、記号に替えたメモだけにする。 名前、電話番号、生年月日は渡しません
- 会社で契約したAIを使う。 入力をAIの学習に使わない法人向けのプランを使い、スタッフ個人のアカウントには入れません
- 整えたカルテは、店の置き場に移す。 AIの画面に残したままにしません
- 見られる人を決める。 カルテを見られるのは、施術にかかわるスタッフに限ります
契約書面の点検は、エステの契約書面の点検|記載の漏れをAIで見つけ、渡す前に直すで説明しています。
型をスキルにし、肌の判断と施術はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「カルテの6つの欄の型」「書いてはいけないこと(病気の名前、体調からの推し量り、効果の約束、お客さまの名前と連絡先)」をスキルにします。
肌の判断と施術は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、聞く目的を伝えてから聞き取ること、記号に替えてから渡すこと、店長が書き方を確かめること、施術を控えるかを店長が決めることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| カルテの整え | メモと指示(入力2千トークンほど)からカルテ(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| スタッフの時間 | メモと確かめに1回数分(想定) |
必要な人は2役で、施術の判断は店長が行う
- スタッフ:目的を伝えて聞き取り、メモを残し、AIにカルテを整えさせる
- 店長:カルテの書き方を確かめ、保存の場所と見られる人を決め、施術を控えるかを判断する
体調によって施術を控えたほうがよいと思ったときは、医師に相談するようお客さまに勧めます。
1か月でカルテの型ができ、毎日の施術に使える見込み
- 1週目:カルテの6つの欄と、カウンセリングシートの「何のために聞くか」の一文を決める
- 2週目:数人分のメモでAIにカルテを整えさせ、店長が確かめる
- 3週目:型と書いてはいけないことをスキルにまとめ、保存の場所と見られる人を決める
- 4週目以降:毎日の施術で使い、読み返しにくい欄を直す
体調を推し量って書くと失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 体調から病名を書く。 お客さまが言っていないことが、記録に残ってしまいます
- 何のために聞くかを伝えない。 お客さまが不安になり、正直に答えてもらえません
- 名前のままAIに渡す。 体調の情報と名前が一緒に外に出るおそれがあります
まとめ
- 個人情報保護法で、病歴は要配慮個人情報にあたり、取得には原則としてあらかじめ本人の同意が要る
- カウンセリングでは、何のために聞くかを伝え、お客さまが書いたり答えたりする形で聞き取る
- AIには、名前を記号に替えたメモを渡し、6つの欄のカルテに整えさせる
- 肌の様子は見たまま、体調は聞いたまま書き、病気の名前に言い換えさせない
- 施術の前に説明したことも残し、肌の判断と施術は人が決める