酒販店の飲食店への提案|注文の履歴から新しい酒を1〜2本勧める
この記事では、酒販店のAI活用|商品の説明と飲食店への提案で売上を伸ばすの「飲食店への提案は、注文の履歴から下書きする」を、毎月続ける形にする方法を説明します。
一言でいうと、店主が、飲食店ごとの注文の履歴と料理の特徴を表にまとめる。AIが、店ごとに今の注文に合いそうな新しい酒を1〜2本選び、提案の文を下書きする。店主が、その店の料理人の好みに合わせて言葉を直し、配達のときに手渡す。値段は価格表のものだけを書き、勧め方は店主が決めるという形です。
経営への効果は、取引先の飲食店で、扱う銘柄を増やしてもらうこと
飲食店との取引は、いったん決まった銘柄を長く続けてもらえる一方で、新しい銘柄が増えにくい面もあります。店主が配達のついでに口頭で勧めても、忙しい料理人には伝わりにくく、そのままになりがちです。
店ごとに合いそうな酒を絞って、短い提案の文にして渡せば、料理人も手が空いたときに読めます。1軒あたり1本でも扱う銘柄が増えれば、取引先が多い酒販店ほど売上への効き目が大きくなります。
今は、提案が店主の頭の中と口頭にとどまっている
店主は、取引先の料理や好みをよく知っています。それでも、取引先が増えると、どの店にどの酒を勧めたか、何を断られたかを覚えきれません。新しい酒が入っても、全部の店に勧める時間がとれません。
結局、よく話す数軒にだけ勧めて、ほかの店には伝わらないことがあります。注文の履歴と料理の特徴を表にしておけば、全部の店に、それぞれに合った提案を届けられます。
まとめ、AIが下書きし、直して、届ける
1 まとめる(店主)。 飲食店ごとに、注文の履歴と料理の特徴、これまでに勧めた酒と返事を表にします。
2 下書きする(AI)。 表と、今月入った酒の説明と価格表を渡し、店ごとに1〜2本の提案の文を下書きしてもらいます。
3 直す(店主)。 その店の料理人の好みや、話し方に合わせて言葉を直します。
4 届ける(店主)。 月に1回、配達のときに手渡します。試飲できるものは一緒に渡します。
飲食店ごとの表は、この5つの欄で作る
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 店 | 店の名前(記号でもよい)、業態 |
| 料理の特徴 | 魚が中心、味の濃い料理が多い、など |
| 注文の履歴 | 品目、本数、月 |
| これまでの提案 | 勧めた酒と、返事(扱う、見送り、理由) |
| 料理人の好み | 店主が聞いたこと、話したこと |
「これまでの提案」の欄が大事です。見送られた酒と理由を残しておくと、同じ酒を何度も勧めずに済み、次の提案の手がかりにもなります。
AIへの頼み方と、返ってくる提案はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、取引先の飲食店ごとの表(料理の特徴、注文の履歴、これまでの提案と返事、料理人の好み)と、今月入った酒の説明、当店の価格表です。店ごとに、今の注文と料理に合いそうな新しい酒を1〜2本選び、提案の文を3行ほどで下書きしてください。値段は価格表にあるものだけを書いてください。これまでに見送られた酒は選ばないでください。「必ず売れます」のような言い切りはせず、試飲を勧める形にしてください。健康への効き目の話は書かないでください。
返ってくる提案(見本の一部。内容は架空です):
A店(魚が中心の和食) 今月入った〇〇(辛口の純米酒)は、白身の刺身と合わせやすい一本です。今お使いの△△より、香りが控えめです。一度、試飲用の小瓶をお持ちします。業務用の価格は価格表のとおりです。
直すときは、その店の言葉にする
AIの下書きは、表に書いたことをもとにした文です。店主が直すときは、次のことを足します。
- 料理人と話したことを一言入れる。 「先日、秋の献立を変えると伺ったので」のように、その店との会話を入れます
- 店のメニューに合わせる。 料理人がよく使う言葉や、店のメニューの名前に合わせます
- 勧めすぎない。 1回に勧めるのは1〜2本にします。多すぎると、どれも試してもらえません
値段と度数、容量は、価格表と商品のラベルで照らしてから渡します。
返事を記録して、次の月の提案に生かす
提案を渡したら、返事を表に記録します。
- 扱うことになった酒。 注文の履歴に入れ、次の月からは、その酒との組み合わせを考えます
- 見送られた酒と理由。 「値段が合わない」「店の料理には重い」など、理由を書きます
- 返事がまだの店。 次の配達のときに、店主が一言聞きます
1か月分の返事がたまったら、AIに表を渡し、扱われた酒と見送られた酒の傾向をまとめてもらいます。店主が仕入れの品ぞろえを考える材料になります。
献立が変わる時期に合わせて、提案を届ける
飲食店が新しい酒を考えるのは、献立が変わる時期であることがあります。提案を届ける時期も、それに合わせます。
- 店ごとに献立が変わる時期を聞いておく。 季節ごとに変える店、月ごとに変える店など、店主が料理人に聞いて表に書きます
- その少し前に提案を届ける。 献立を考え始める前に、提案と試飲が届くようにします
- 季節の酒は早めに知らせる。 冬の燗酒、夏の冷酒のように季節の酒は、入荷の予定が分かった時点で知らせます
AIには、表の「献立が変わる時期」を見て、今月提案を届けるとよい店の一覧を作らせることもできます。
新しく取引を始めた店には、最初の1か月は聞くことから
新しく取引を始めた飲食店には、いきなり提案を渡すより、まず店の料理と好みを聞きます。
- 最初の配達で、料理と客層を聞く。 料理の中心、値段の帯、よく出る酒を聞き、表に書きます
- 今使っている銘柄を聞く。 今の銘柄を変えたいのか、足したいのかで、提案の中身が変わります
- 2回目から提案を渡す。 聞いたことを表に入れてから、最初の提案を渡します
最初の1か月で聞いたことが、その後の提案の土台になります。聞いた内容は、店主が配達から戻ったその日のうちに表に書き込みます。
同じ文を全部の店に配ると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 全部の店に同じ酒を勧める。 店の料理に合わない酒を勧めると、提案そのものを読んでもらえなくなります
- AIの文をそのまま渡す。 料理人との会話が入っていない文は、ほかの店にも配っている文だと伝わります
- 返事を記録しない。 見送られた酒をまた勧めると、店主の信頼を損ねます
提案は、断られても続けることに意味があります。見送りの理由が分かれば、次に勧める酒が絞れるからです。
型をスキルにし、勧め方はAIの外で決める
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「飲食店ごとの表の5つの欄」「提案の文の型と店主の言葉づかいの見本」「書いてはいけないこと(価格表にない値段、言い切り、健康への効き目、見送られた酒の再提案)」をスキルにします。
勧め方は、AIの外で決める。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、どの店に何を勧めるかを店主が最後に決めること、値段と度数を価格表とラベルで照らすこと、返事を店主が記録することがそれに当たります。
費用はAIの利用料が1軒3円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 1軒分の提案の下書き | 表と商品の説明と価格表(入力3千トークンほど)から提案の文(出力1,500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1軒3円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 店主の時間 | 表の更新と提案の直しに、1軒数分(想定) |
| 試飲用の酒 | 店主が決める分 |
必要な人は店主1人で、勧める酒を決めるのも店主
- 店主:飲食店ごとの表をまとめ、AIの下書きを直して渡し、返事を記録する。どの店に何を勧めるかを決める
- 配達の担当(いれば):提案の紙を届け、料理人の一言を店主に伝える
酒を売るときの決まりとして、国税庁のQ&Aにあるとおり、販売場ごとの酒類販売管理者の選任や研修、店頭の表示があります。飲食店への卸の提案の文でも、20歳未満の人への販売に関わる言い方はしないようにします。
3か月で提案が習慣になり、扱う銘柄の変化が見える見込み
- 1か月目:取引先の飲食店ごとの表を作り、最初の提案を渡す
- 2か月目:返事を記録し、提案の型をスキルにまとめる
- 3か月目:扱うことになった酒の数を、提案を始める前と比べる
- 半年後:扱われた酒と見送られた酒の傾向から、仕入れの品ぞろえを見直す
まとめ
- 飲食店ごとに、料理の特徴、注文の履歴、これまでの提案と返事、料理人の好みを表にまとめる
- AIに店ごとに1〜2本の提案の文を下書きさせ、見送られた酒は選ばせない
- 値段は価格表のものだけを書かせ、言い切りや健康への効き目の話は書かせない
- 店主が料理人との会話を一言入れて直し、配達のときに手渡す
- 返事を記録して次の月の提案に生かし、費用はAIの利用料が1軒3円ほど