新しいAIは使い分けで安くなる。仕分けは軽いAI、下書きは中くらいで
この記事では、AIの新しいモデルが出そろった今、小さな会社がAIの利用料をどう抑えられるかを説明します。一言でいうと、AIには、軽くて安いもの、中くらいのもの、重くて高いものがある。問い合わせの仕分けや、書類から項目を抜き出すような、決まった形の大量の仕事は軽いAIに任せる。お客さまへの返事や報告の下書きのように、文章の質が大事な仕事は中くらいのAIに任せる。数字と判断は、これまでどおり表と人で持つという話です。
AIの価値は、いちばん賢いAIを使うことではありません。仕事ごとに見合ったAIを選び、同じ費用でより多くの仕事を任せることです。
経営への効果は、同じ費用で任せられる仕事が増えること
AIの使い分けで、利用料は次のように変わります。
| すべて中くらいのAI | 仕事ごとに使い分け | |
|---|---|---|
| 問い合わせの仕分け(月1,000件) | 約375円 | 軽いAIで約19円 |
| 返事の下書き(月100件) | 約210円 | 中くらいのAIで約210円 |
| 合計 | 約585円 | 約229円 |
| 考え方 | どの仕事も同じAI | 量が多く形の決まった仕事は軽いAI |
計算の前提は、下の「料金」の節に書いています。小さな会社では、もともとのAIの利用料が月に数百円から数千円のことが多く、使い分けで浮く金額そのものは大きくありません。
大事なのは、軽いAIが十分に安くなったことで、これまで費用を気にして人がやっていた量の多い仕事を、AIに任せやすくなったことです。毎日のメールの仕分け、受け取った書類から日付や金額の候補を抜き出す作業、口コミや問い合わせの種類分けなどです。
2026年10月、軽いAIの料金は中くらいの20分の1
Anthropicは、2026年9月末にClaude Sonnet 5.5を、10月にClaude Haiku 5.5を公開しました(Let's Data Science、forklog、gori.meの記事による)。2026年10月20日時点のAnthropicの公式の料金は、AIが読む量と書く量の100万トークン(AIが文字を数える単位)あたりで、次のとおりです。
| モデル | 位置づけ | 読む量 | 書く量 |
|---|---|---|---|
| Claude Haiku 5.5 | 軽い。分類・抽出・振り分けなど量が多く速さが要る仕事向け | 0.10ドル | 0.50ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | 中くらい。速さと賢さの釣り合い | 2ドル | 10ドル |
| Claude Opus 5.5 | 重い。長く続く仕事や難しい知的作業向け | 4ドル | 20ドル |
Haiku 5.5の料金は、1回の依頼が10万トークンまでの場合のものです。最初の表の金額は、問い合わせ1件の仕分けに1,000トークンを読ませて50トークンを書かせ、返事の下書き1件に3,000トークンを読ませて800トークンを書かせるとして、1ドル150円で計算したものです。同じ1,000件の仕分けを重いOpus 5.5で行うと約750円になります。軽いAIの料金は、読む量も書く量も、中くらいのAIの20分の1です。gori.meの記事によると、Sonnet 5.5の料金は前のモデルから据え置かれています。
料金は変わることがあります。使う前に、Anthropicの公式の料金のページで確かめてください。ほかの会社のAIにも、同じように軽いものと重いものがあります。2026年10月時点の情報です。
小さな会社ほど、いちばん有名なAIを全部の仕事に使っている
AIの使い方で、小さな会社がつまずきやすいのは次の3つです。
- 全部の仕事を同じAIに頼む。 会社で契約したAIのチャットを1つだけ使い、仕分けのような単純な仕事にも同じAIを使っています。チャットの月額のプランなら費用は変わりませんが、仕組みにして件数が増えると、利用料に差が出ます
- 費用を気にして、量の多い仕事を任せない。 毎日何十件も届くメールの仕分けは、1件ずつは小さくても件数が多いので、任せるのをためらいがちです
- 重いAIなら間違えないと思っている。 どのAIも間違えることがあります。重いAIを使っても、数字と判断を人と表で確かめる仕組みは要ります
仕事を「形の決まった量の多い仕事」と「文章の質が大事な仕事」に分けると、AIの選び方が決まります。
仕事を2つに分け、軽いAIと中くらいのAIに振り分ける
人がすること(最初に)。 社長と担当者が、AIに任せている仕事、任せたい仕事を書き出し、次の2つに分けます。
- 形の決まった量の多い仕事:問い合わせの種類分け、メールの宛先の振り分け、受け取った書類のテキストから日付や金額や取引先の名前の候補を抜き出す、口コミのよい・わるいの仕分け
- 文章の質が大事な仕事:お客さまへの返事、取引先への相談の文、社長への報告、社員への説明
計算で行うこと。 仕事ごとに、月の件数と、1件で読ませる量と書かせる量の目安を表に入れ、公式の料金で月の利用料を計算します。
AIに頼むこと。 形の決まった仕事は軽いAIに、決まった形の答え(種類の名前、抜き出した項目)だけを返させます。文章の質が大事な仕事は中くらいのAIに下書きさせます。軽いAIの仕分けの結果を、中くらいのAIの下書きにつなげる形もとれます。
人がすること(そのあと)。 軽いAIの仕分けは、最初の1か月、担当者が抜き取りで確かめます。間違いが多い種類があれば、その仕事は中くらいのAIに戻します。
AIへの頼み方と、軽いAIが返す仕分けはこんな形になる
軽いAIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下の問い合わせのメールを読み、種類を「見積の依頼」「納期の確認」「苦情」「採用への応募」「その他」のどれか1つで答えてください。種類の名前だけを答え、説明は書かないでください。
返ってくる答え(見本):
見積の依頼
担当者は、種類ごとに受け取る人を決めておき、「見積の依頼」は中くらいのAIで返事を下書きする流れにつなげます。「苦情」は、AIの下書きを使わず、担当者がすぐに電話をかけるなど、種類ごとの対応を決めておきます。
仕分けの型をスキルにし、どのAIを使うかは仕組みで決める
ここまでの使い方は、そのつどAIに頼む場合です。毎日同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
仕分けの型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「種類の一覧と、それぞれの見分け方の見本」「答えの形(種類の名前だけ)」「迷ったときは『その他』にする決まり」をスキルにします。見本があると、軽いAIでも答えがそろいます。
どのAIを使うかは、AIの外で決める。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、仕事の種類ごとに使うAIを仕組みの側で決めておくこと、軽いAIの答えが決まった形かを確かめ、外れたら中くらいのAIに回すこと、数字と判断は表と人で持つことがそれに当たります。
明日からは、AIに任せている仕事を2つに分ける
- 今AIに任せている仕事と、任せたい仕事を書き出す
- 「形の決まった量の多い仕事」と「文章の質が大事な仕事」に分ける
- 仕事ごとに月の件数と、1件の読ませる量と書かせる量の目安を表に入れ、公式の料金で月の利用料を計算する
- 形の決まった仕事を1つ選び、軽いAIで1か月試し、担当者が抜き取りで確かめる
- 間違いが少なければ続け、多ければ中くらいのAIに戻す
本格的にやるなら、仕分けから下書きまでをつなげる
一度できたら、次の形に育てます。
- 問い合わせの仕分けから返事の下書きまでをつなげる。 軽いAIで種類を分け、見積の依頼は中くらいのAIで返事を下書きする流れにします。返事を速くする考え方は問い合わせに1時間以内に返す会社が商談を取る。AIで返事を速くする方法で説明しています
- 費用の見通しを立てる。 仕事ごとの件数と料金から、仕組みにしたときの月の費用を出します。考え方はAI導入にいくらかかる?月数千円から試せて、元が取れるかも先に分かるにまとめています
- 難しい仕事だけ重いAIに。 長い契約書の読み比べや、込み入った計画づくりなど、難しい仕事だけを重いAIに任せます
数字と判断は、どのAIにも任せない
- どのAIも間違える。 軽いAIも重いAIも、間違えることがあります。数字は表で計算し、判断は人が行います
- 仕分けの間違いに備える。 苦情や急ぎの連絡が「その他」に入ってしまうことがあります。「その他」は担当者が毎日目を通します
- 料金は公式のページで確かめる。 料金は変わることがあります。仕組みにする前に、公式の料金のページで確かめます
- お客さまの情報に気をつける。 問い合わせのメールには、お客さまの名前や連絡先が入っています。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
まとめ
- 2026年9月末から10月にかけて、AnthropicのClaudeに新しいモデルが出そろった。2026年10月20日時点の公式の料金で、軽いHaiku 5.5は中くらいのSonnet 5.5の20分の1
- 問い合わせの仕分けや項目の抜き出しなど、形の決まった量の多い仕事は軽いAIに任せる
- 返事や報告の下書きなど、文章の質が大事な仕事は中くらいのAIに任せる
- 軽いAIが安くなったことで、費用を気にして人がやっていた量の多い仕事を任せやすくなった
- どのAIも間違えるので、数字と判断は表と人で持ち、軽いAIの仕分けは最初の1か月抜き取りで確かめる