最新動向

食料品の消費税1%、2027年4月から|中小企業が今から準備すること

この記事で変わる経営指標

この記事では、2027年4月から予定されている飲食料品の消費税率の引下げについて、食料品を売る中小企業の社長が今から準備することを説明します。一言でいうと、2026年9月15日に閣議決定された案では、2027年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率が8%から1%になる。値札とメニュー、レジと請求書のシステム、免税事業者と簡易課税の届出、取引先への案内、資金の5つを、法案の成立を見ながら今から段取りしておく。価格表や案内文の下書きはAIに任せ、税率と届出の判断は税理士と確かめるという話です。

AIの価値は、税金の判断をすることではありません。品目が多い価格表や、取引先とお客さまへの案内文のように、量が多く期限のある切り替えの事務を下書きし、社長と経理の時間を、税理士と相談して決めることに使うことです。

経営への効果は、切り替えの手戻りと、還付の取り逃しを防ぐこと

税率の切り替えは、期限が決まった事務の山です。準備が遅れると、次のような損が出ます。

  • 値札とレジの食い違い。 値札とレジの税率がずれると、お客さまへの説明や返金の手間が増えます
  • 請求書の作り直し。 取引先への請求書の税率を間違えると、作り直しと再送が必要になります
  • 還付の取り逃し。 食料品を売る会社は、売上の税率だけが1%に下がり、包装材や家賃などの経費の税率は10%のままのことが多くあります(道濟会計事務所の解説による)。国税庁のリーフレットによると、売上の税額より仕入れの税額が大きくなる場合、一般課税で申告すれば還付を受けられます。届出の時期を逃すと、この還付を受けられないことがあります

準備を前倒しにすれば、切り替えの月に慌てずに済み、届出の判断にも時間をかけられます。

2027年4月から2年間、食料品の消費税が1%になる予定

飲食料品の消費税率引下げの予定。2026年9月15日に大綱が閣議決定され、法案が成立した場合、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率が1%になる。値札などの総額表示の特例は2027年2月1日から5月31日まで。2029年4月1日から8%に戻り、2029年2月1日から5月31日にも同じ特例がある
飲食料品の消費税率引下げの予定。2026年9月15日に大綱が閣議決定され、法案が成立した場合、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率が1%になる。値札などの総額表示の特例は2027年2月1日から5月31日まで。2029年4月1日から8%に戻り、2029年2月1日から5月31日にも同じ特例がある

国税庁のリーフレットと大分県の案内によると、2026年9月15日に「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定されました。案の中身は次のとおりです。

項目 2027年4月1日から2029年3月31日まで
飲食料品 1%(今の8%の対象と同じ範囲)
新聞の定期購読 8%
その他(外食、酒類など) 10%

1%は、消費税率0.78%と地方消費税率0.22%を合わせたものです(道濟会計事務所の解説による)。対象の範囲は、今8%の対象になっている飲食料品と同じなので、店内での飲食(外食)や酒類は10%のままです。2029年4月1日からは8%に戻ります。

これは、法案が国会に提出され、可決・成立した場合の内容です。国税庁は特設サイトを開き、リーフレット、パンフレット、質疑応答集を公表しています。2026年10月時点の情報なので、法案の審議の状況と最新の資料を確かめてください。

準備が要るのは、食料品を売る会社とその取引先

影響が大きいのは、次の会社です。

  • 食料品の小売店:値札、チラシ、レジの切り替えが要ります
  • 飲食店:持ち帰りは1%、店内での飲食は10%で、差が大きくなります。メニューの価格の見せ方を決め直します
  • 食品の製造・卸:取引先への請求書と価格表、受発注のシステムの切り替えが要ります
  • 定期の配送や通信販売をしている会社:国税庁のリーフレットによると、一定の定期供給契約や通信販売に基づく販売は、2027年4月1日以後も8%のままとする経過措置があります。自社の契約が当てはまるかを確かめます

値札とメニューは、総額表示の特例の4か月の間に切り替える

国税庁のリーフレットによると、値札の貼り替えなどにすぐ対応するのが難しい事情がある場合、2027年2月1日から5月31日までの間は、実際の支払額と誤認させない掲示をすることを条件に、税率8%または1%での総額表示が認められます。新旧の税率が混ざった表示も認められます。「夜間の値札の貼り替え作業に対応できない」「カタログや商品パッケージに価格が印字されている」といった事情が当てはまるとされています。

この4か月の間に、値札、メニュー、チラシ、ネットショップの価格を順に切り替える計画を立てます。品目が多い会社ほど、価格表を早めに作っておきます。

レジと請求書のシステムは、税率の設定を今から業者に確かめる

国税庁のパンフレットによると、インボイスには適用税率1%とその消費税額を書きますが、それ以外の記載事項は変わりません。一方、レジ、受発注、請求書のシステムで、新しい税率を設定できるか、切り替えの日に自動で変わるかは、システムごとに違います。

大分県の案内によると、大綱では、食料品を製造・流通・販売する事業者やシステムメーカーが早く準備に取りかかれるよう、国が早めに周知するとされています。使っているシステムの会社に、対応の予定と費用を今のうちに聞いておきます。締め日が4月1日をまたぐ請求書の書き方と、取引先ごとの準備は、食料品の消費税1%で請求書はどう変わる?|締め日をまたぐ月の書き方で説明しています。

免税事業者と簡易課税の会社は、届出の特例を税理士と確かめる

国税庁のリーフレットでは、食料品を売る会社のために、届出の特例が示されています。

  • 免税事業者:2027年4月1日が含まれる課税期間中(個人事業者なら2027年末まで)に「課税事業者選択届出書」を出せば、その課税期間から課税事業者になれます。還付を受けるには、課税事業者として一般課税で申告する必要があります
  • 簡易課税の会社:同じ期間に「簡易課税制度選択不適用届出書」を出せば、その課税期間から一般課税で申告できます。簡易課税の2年の継続の決まりも、この課税期間には適用しないとされています
  • 簡易課税のままの会社:食料品の売上の税額と同じ額を仕入れの税額として計上する計算の特例があります

国税庁のリーフレットの計算例では、食料品の売上2,000万円(税20万円)と雑貨の売上300万円(税30万円)の小売店が簡易課税で申告すると、納付する税額は6万円です。一般課税と簡易課税のどちらが得かは、仕入れと経費の中身で変わります。自社の数字で、税理士と比べてから決めます。

取引先への案内と定期の契約は、早めに文面をそろえる

取引先とお客さまへの案内も、切り替えの前にそろえます。

  • 取引先への案内:請求書の税率がいつから変わるか、価格表をいつ送るか
  • 定期の契約の見直し:定期の配送や通信販売の契約が、8%のままの経過措置に当たるか。当たる場合、契約を変えると扱いが変わることがあるので、税理士に確かめてから変えます
  • お客さまへの掲示:値札の切り替え中は、どの税率で表示しているかを店内に掲示します

AIは、価格表の下書きと案内文と社内の質問に使う

AIが効くのは、量が多く、期限のある切り替えの事務です。

価格表の下書き。 品目ごとの税抜の価格の表を渡し、1%で計算した税込の価格の列を足す指示を表計算の式で作らせます。計算そのものは表の式で行い、AIに一件ずつ計算させません。端数の扱い(切り捨て、四捨五入)は社長が決めます。

案内文の下書き。 取引先への案内、お客さまへの掲示、社員への連絡を下書きさせます。

下は、当社の取引先への案内に入れたいことのメモと、国税庁のリーフレットの文です。取引先向けの案内文を下書きしてください。日付と税率はリーフレットの文から写し、法案が成立した場合の内容であることを必ず書いてください。メモにない約束(価格を据え置く、など)は書かないでください。

社内の質問への下書き。 国税庁のリーフレット、パンフレット、質疑応答集をまとめて渡し、社員からの質問に、どの資料のどこに書いてあるかを示して答えさせます。答えに資料の場所がないものは、税理士に聞くことにします。

資料と文の型をスキルにし、税率と届出の判断はAIの外に置く

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。切り替えまで何度も使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

資料と文の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「国税庁の資料(リーフレット、パンフレット、質疑応答集)」「案内文の型(取引先、お客さま、社員)」「答え方の決まり(資料の場所を示す、資料にないことは答えない)」「書いてはいけないこと(成立前の案を決まったことのように書く、資料にない日付や税率)」をスキルにします。

税率と届出の判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、税込の価格を表の式で計算すること、品目が1%の対象かどうかを国税庁の資料で確かめること、届出をするかを税理士と決めること、法案の成立と最新の資料を社長が確かめることがそれに当たります。

明日からは、使っているシステムと届出の時期を確かめる

  1. レジ、受発注、請求書のシステムの会社に、税率引下げへの対応の予定と費用を聞く
  2. 顧問の税理士に、自社が免税事業者か簡易課税か、還付の見込みがあるかを相談する
  3. 品目ごとの税抜の価格の表を作り、1%の税込の価格の列を表の式で足す
  4. 定期の配送や通信販売の契約があれば、経過措置に当たるかを確かめる
  5. 法案の審議の状況を、国税庁の特設サイトで月に1回確かめる

価格の見直しを考えるなら、取引先ごとの利益を見ておくと判断しやすくなります。方法は取引先ごとの粗利の出し方|同じ売上でも利益が半分の仕事に気づくで説明しています。

まとめ

  • 2026年9月15日に閣議決定された案では、2027年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率が8%から1%になる。外食と酒類は10%のまま。法案の成立が前提
  • 値札とメニューは、2027年2月1日から5月31日までの総額表示の特例の間に切り替える計画を立てる
  • レジと請求書のシステムは、税率の設定と費用を今から業者に確かめる
  • 免税事業者と簡易課税の会社は、還付を受けるための届出の特例を税理士と確かめる
  • AIは価格表の式、案内文、社内の質問の下書きに使い、税率と届出の判断は人と税理士が行う

CONTACT

自社の業務にも、AIを組み込めるか

記事のような組み込みを、御社の業務と予算に合わせて設計・実装しています。何から手を付ければいいか分からない段階でも大丈夫です。

AI活用を相談する