経営課題×AI

口コミへの返信をAIに任せると、来店が増える理由と始め方

この記事で変わる経営指標

この記事では、お店や会社に届く口コミへの返信を、AIを使って一件ずつ続ける方法を説明します。一言でいうと、口コミを増やす前に、もう届いている口コミ一件一件に、中身に触れた返事を欠かさず返すことを、AIの下書きで続けられるようにするという話です。その結果、店を探している人に「ちゃんと向き合う店だ」と伝わって選ばれやすくなり、返信にかかっていた店長の時間も減ります。

AIの価値は、返信を自動で済ませることではありません。忙しくて後回しになっていた「ありがとう」と「ごめんなさい」を、一件ずつ相手の言葉に触れた形で、毎日続けられるようにすることです。

口コミへの返信は、忙しい店ほど止まっている

Googleマップや予約サイトの口コミに、返信をしていますか。始めた頃は丁寧に返していたのに、今は止まっている、という店は少なくありません。

止まる理由は、だいたい次のどれかです。

  • 1件に思ったより時間がかかる。 口コミを読み、その日のことを思い出し、失礼のない文章を考えると、1件10分ほどかかります。月に40件なら6時間を超えます
  • 同じような返事になってしまう。 「ご来店ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」を毎回書くうちに、返す意味が分からなくなります
  • 低い評価の口コミに、何と返せばいいか分からない。 言い訳に見えないか、火に油を注がないかと迷って、そのままにしてしまいます
  • 返信は店長やオーナーの仕事になっている。 その人が一番忙しいので、営業の合間には手が回りません

結果として、口コミは増えていくのに、返信は数か月前で止まっている。店を探している人から見ると、そのページは「最近は誰も見ていない店」に見えます。

すべての口コミに返す店が、選ばれやすいという調査がある

ここで、AIの話の前に、返信がなぜ売上に関わるのかを確かめておきます。

米国の口コミの調査会社 BrightLocal が毎年行っている消費者調査では、すべての口コミに返信している店を選びやすい、使いやすいと答えた人が、2024年の調査で88%、2025年で89%、2026年で80%と紹介されています。米国の消費者への調査なので、日本でもそのまま同じ割合になるとは言えません。それでも、口コミを読んだ人が、店の返事まで見て店を選んでいるという向きは、はっきりしています。

2026年の調査を紹介した記事では、どの口コミにも同じような決まり文句で返す店は、かえって好まれないという結果も紹介されています。返すこと自体と同じくらい、相手の書いたことに触れて返すことが大事だということです。

ここに、人の手だけでは続かない理由があります。一件ずつ中身に触れて返すには時間がかかり、時間を節約しようとすると決まり文句になる。この両立が難しかったところを、AIが埋めます。

AIは口コミ一件ごとに、中身に触れた返信を下書きできる

1つ目の使い方は、毎日の返信の下書きです。

  • AIに渡すもの:口コミの本文と星の数、店の名前と雰囲気(「家族で営む定食屋」「若いスタッフが多い美容室」など)、返信の決まり(文字数、締めの言葉)
  • 返ってくるもの:口コミに書かれた料理やサービス、スタッフの名前に触れたお礼の返信。3〜4行
  • 人がすること:書かれていることが事実と合っているかを確かめ、覚えていることがあれば一言足して投稿する
口コミへの返信の流れ。今までは店長が読んで考えて書くので、忙しいと止まったり決まり文句になったりしていた。AIが口コミの中身に触れた下書きを作り、店長は確かめて投稿するだけになる
口コミへの返信の流れ。今までは店長が読んで考えて書くので、忙しいと止まったり決まり文句になったりしていた。AIが口コミの中身に触れた下書きを作り、店長は確かめて投稿するだけになる

1件10分かかっていた返信が、読んで確かめる2分ほどになります。月40件なら、6時間あまりが1時間半ほどです。

大事なのは、AIが口コミの中の具体的な言葉に触れて書くことです。「唐揚げが大きくて驚きました」と書かれていれば、唐揚げに触れたお礼になります。全員に同じ返信をしているようには見えません。

AIは低い評価の口コミに、言い訳しない返信を用意できる

2つ目の使い方は、星1つや2つの口コミへの返信です。ここは、店長が一番迷うところです。

AIに口コミと、その日の店の事情(混んでいた、新人が担当していた、など)を渡し、「言い訳をせず、指摘を受け止め、直すことを1つだけ具体的に書く返信」を頼みます。AIは感情的にならない文面を書くのが得意です。店長が腹を立てているときほど、AIの下書きを一度はさむことで、言葉を選び直す時間ができます。

ただし、低い評価の返信は、必ず店長が読んでから投稿します。 事実と違う指摘があったときの書き方や、お詫びの範囲は、店の判断です。AIの下書きは、書き出しに迷う時間を減らすための材料にとどめます。

AIは口コミをまとめて、店の直すべき点を月ごとに知らせる

3つ目の使い方は、口コミを店の改善に使うことです。

1か月分の口コミをまとめてAIに渡し、「よく褒められている点」「繰り返し指摘されている点」「スタッフや料理の名前が出てきた口コミ」に分けて一覧にさせます。月に一度、店長とスタッフでこの一覧を見るだけで、何を続け、何を直すかがはっきりします。

繰り返し指摘されている点(待ち時間、駐車場の分かりにくさ、電話がつながらない)を直せば、次の低い評価を防げます。褒められている点は、店のサイトや求人の文章に使える材料にもなります。

AIへの頼み方と返ってくる返信は、こんな形になる

実際にどう頼み、何が返ってくるかを見本で示します。店の名前と口コミは架空です。

AIに渡す指示(見本):

次の口コミに、お店からの返信を書いてください。口コミに書かれている具体的なことに1つ以上触れ、決まり文句だけの返信にしないでください。3〜4行、丁寧だが堅すぎない文面で。お客様の名前は書かないでください。 店:定食屋「サンプル食堂」(家族で営む小さな店) 口コミ(星5):「昼に行きました。唐揚げ定食の唐揚げが大きくて驚きました。お店のお母さんが、ご飯のおかわりを声をかけてくれたのもうれしかったです。」

返ってくる下書き(見本):

ご来店と、うれしいお言葉をありがとうございます。唐揚げは毎朝仕込んでいるので、大きさに驚いていただけて励みになります。 おかわりのお声がけも、喜んでいただけてよかったです。母にも伝えておきますね。 またお昼にお近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

店長がするのは、唐揚げを本当に毎朝仕込んでいるかを確かめることです。AIは、それらしい事情を書き足すことがあります。事実でなければ消してから投稿します。

頼み方をスキルにし、決まり文句を消す点検を重ねると質がそろう

ここまでの見本は、1件ずつ頼んだ場合です。毎日続けるなら、もう一段の工夫で、誰が頼んでも店らしい返信がぶれずに出るようにします。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

店の返信の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。口コミの返信なら、「店の口調」「必ず口コミの具体的なことに触れる」「使わない言葉」「低い評価のときの順番(受け止める、直すことを1つ書く、締める)」に、店長が良いと思った返信の見本を3本ほど加えておきます。店長が休みの日に、スタッフが頼んでも同じ店の声で返せます。

AIっぽい言い回しを消すスキルを重ねる。 AIが書いた日本語には、決まり文句や、同じ長さの文が続く単調さが出がちです。前の章のとおり、決まり文句の返信は好まれません。GitHub で公開されている「natural-japanese」(coji/natural-japanese、MITライセンス)は、AIが書いた日本語を自然な文章に整えるスキルで、書き方の決まり12条と、決まり文句や単調なリズムを機械的に見つける点検の仕組みが入っています。外部のスキルは、使う前に中身を確かめてから入れます。

経営への効果は、選ばれる店になり、店長の時間も戻ること

人の手だけ AIを使う
返信できる口コミ 時間のあるときに一部だけ。数か月止まることも 届いたものすべてに
1件の返信にかかる時間 読んで考えて書いて10分ほど 下書きを確かめて2分ほど
返信の中身 忙しいと決まり文句になる 口コミの具体的なことに触れる
低い評価への返信 迷って放置しがち 言い訳しない下書きから、店長が判断する
口コミの使い方 読んで終わり 月ごとに直す点の一覧になる

効果の大きさは、時間と売上の2つで考えます。

月に浮く時間 = 月の口コミの件数 ×(今の1件の時間 − 下書きを確かめる時間)

仮に月40件、今の1件10分、下書きの確認が2分なら、月5時間あまりが浮きます。

増える売上 = 店のページを見る人の数 × 来店に進む割合の上がり幅 × 客単価

仮に、Googleマップで店のページを見る人が月2,000人、すべての口コミに返すようになって来店に進む割合が1ポイント上がり、客単価が3,000円なら、月6万円です。ただし、この「上がり幅」は店によってまったく違い、調べた範囲では日本の店で確かめた数字は見つかりませんでした。始める前と後で、地図のページから電話や経路の案内に進んだ数(Googleビジネスプロフィールの管理画面で見られます)を比べて、自分の店の数字をつかんでください。

かかる費用は、法人向けのAIのプランが1人あたり月数千円です。口コミが月に数件しか来ない店なら、AIを使わず店長が直接返すほうが早いでしょう。

明日からは、過去1か月の返していない口コミから始める

  1. Googleマップや予約サイトの管理画面で、返信していない口コミを、新しいものから10件選ぶ
  2. 上の見本の指示を使い、店の名前と雰囲気を書き換えて、1件ずつAIに下書きを頼む
  3. 事実と違うところを消し、覚えていることを一言足して投稿する
  4. 星1〜2の口コミは、下書きを店長が読み、翌日にもう一度読み直してから投稿する
  5. 1か月後に、新しい口コミの件数と、店のページから電話や経路の案内に進んだ数を、始める前と比べる

慣れてきたら、月末に1か月分の口コミをAIに渡して、直すべき点の一覧を作らせます。

本格的にやるなら、新しい口コミが届いたら下書きが届く形にする

口コミが月に数十件を超える店や、店舗が複数ある会社なら、新しい口コミが届いたら自動で返信の下書きが作られ、店長のスマホに届く形にできます。店長は確かめて投稿するだけです。ただし、AIに自動で投稿させることはすすめません。 事実と違う返信や、低い評価への的外れな返信が一度でも出れば、返信しないより評判を落とします。

仕組みにするときの費用の考え方は、AI導入にいくらかかる?月数千円から試せて、元が取れるかも先に分かるにまとめています。来店してくれたお客様に、こちらから声をかけ続ける方法は、既存顧客の満足度をAIで2倍に上げる方法で説明しています。

口コミは自分で書かず、頼むときは決まりを守る

返信の話から外れますが、口コミに関わるなら必ず知っておくことがあります。

  • 自分たちで口コミを書かない。書かせない。 2023年10月1日から、広告であることを隠して、お客様の口コミのように見せる宣伝(いわゆるステルスマーケティング)は、景品表示法で規制されています。店が内容に関わった口コミを、お客様の自主的な口コミに見せることはできません。AIに口コミの文章を作らせて投稿するのは論外です
  • お礼と引き換えに、良い口コミを頼まない。 口コミを頼むこと自体は、やり方によっては問題になり得ます。頼むときの決まりは、消費者庁の考え方を確かめるか、専門家に確認してください
  • お客様の個人情報を返信に書かない。 来店日やお連れの方のことなど、本人が口コミに書いていないことは返信に書きません
  • AIが書き足した事情を、そのまま投稿しない。 「毎朝仕込んでいます」のような、それらしい事情をAIが作ることがあります。事実でなければ消します

まとめ

  • 口コミへの返信をAIの下書きで続けると、店を探している人に選ばれやすくなり、店長の返信の時間も減る
  • 米国の BrightLocal の調査では、すべての口コミに返信する店を選びやすいと答えた人が、2024〜2026年に8〜9割。決まり文句の返信は好まれない
  • AIは一件ごとに口コミの中身に触れた返信を下書きし、低い評価には言い訳しない下書きを用意し、月ごとに直すべき点をまとめる
  • 店の返信の型をスキルにし、AIっぽい言い回しを消すスキルを重ねると、誰が頼んでも店の声で返せる
  • AIに自動で投稿させない。事実と違う一言は、人が確かめて消す
  • 自分たちで口コミを書くのは、2023年10月からの規制の対象。AIに口コミを作らせない
  • まずは返していない口コミ10件から、1時間で試せる

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