社員へのAIの聞き取り|5問の質問票で見本を作る業務を決める
この記事で変わる経営指標
この記事では、社員はAIをどう見ているか|白書の個人調査から社内への広げ方を考えるの「社員への聞き取りは、短い質問票で始める」を、そのまま使える手順にして説明します。
一言でいうと、社長が、聞きたいことを3つに絞る。AIが、質問票と選択肢を下書きする。社員は、名前を書かずに5分ほどで答える。社長が、答えを数えて、頼み方の見本を作る業務を決める。誰が答えたかは探さないという形です。
経営への効果は、見本を作る順番を外さないこと
AIを社内に広げるとき、社長が自分の思い込みで「この部署から」と決めると、外すことがあります。使い方が分からずに困っている社員がいる部署を後回しにして、もう使っている部署に研修を重ねてしまう、といった形です。
社員に短く聞いてから決めれば、頼み方の見本を作る順番を外しにくくなります。見本が当たった業務から時間が減れば、その時間を接客や営業に回せます。聞いたこと自体が、「会社はAIを使う社員を支える」という合図にもなります。
白書と同じ聞き方にすると、全国の傾向と並べて読める
総務省の「令和8年版 情報通信白書」は、個人向けのアンケートで、生成AIを使ったことがあるかを聞いています。設問は「業務や日常生活において生成AIサービスを一つでも使ったことがあるか」で、日本では58.8%が「使っている(過去使ったことがある)」と答えました。前の年度の調査では26.7%でした。
使っていない人には理由も聞いていて、テキスト生成AIを使わない理由は「自分の生活や業務に必要ない」が42.4%、「使い方がわからない」が38.8%でした。「使い方がわからない」の割合は、調査した4か国の中で日本が最も高かったとされています。
自社の質問票でも、この聞き方と選択肢に近づけておくと、全国の数字と並べて読めます。ただし、白書は15歳以上の個人を広く対象にした調査で、自社の社員とは顔ぶれが違います。並べるのは目安にとどめます。2026年10月時点の情報です。
質問は5問で、5分ほどで答えられる長さにする
質問が多いと、答える人が減り、答えも雑になります。5問ほどに絞ります(数は想定です。自社に合わせて変えます)。
| 番号 | 質問 | 選択肢の例 |
|---|---|---|
| 1 | 仕事でAIを使ったことがありますか | 今使っている、使ったことはあるが今は使っていない、使ったことがない |
| 2 | (使っている人に)どの仕事で使っていますか | 自由に書く |
| 3 | (使っていない人に)使っていない理由は何ですか | 仕事に必要ない、使い方がわからない、会社で使ってよいか分からない、そのほか |
| 4 | AIに任せたい仕事は何ですか | 自由に書く |
| 5 | AIを使うとき、困っていることや不安なことはありますか | 自由に書く |
3問目に「会社で使ってよいか分からない」を入れておくと、社内の決まりが届いているかも分かります。
部署や年代は、少人数の会社では答えた人が分かってしまうことがあります。分けて数えたいときも、「事務」「現場」のように大きく分けます。
聞きたいことを絞り、AIが下書きし、答えを数える
1 絞る(社長)。 聞きたいことを3つに絞ります。たとえば「使っている人はどれくらいか」「使わない理由は何か」「どの仕事を任せたいか」です。
2 下書きする(AI)。 絞った3つを渡し、質問と選択肢を下書きしてもらいます。
3 答える(社員)。 名前を書かずに答えられる形で配ります。紙でも、表計算のフォームでもかまいません。
4 決める(社長)。 答えを数え、頼み方の見本を最初に作る業務を決めます。
AIへの頼み方と、返ってくる質問票はこうなる
AIに渡す指示(見本):
社員30人ほどの会社で、社員が仕事でAIを使っているかを聞く質問票を作ります。聞きたいことは「使っている人はどれくらいか」「使わない理由」「AIに任せたい仕事」の3つです。5問以内、5分ほどで答えられる長さにしてください。使わない理由の選択肢には「仕事に必要ない」「使い方がわからない」「会社で使ってよいか分からない」を入れてください。名前、部署名、年齢は聞かないでください。最初に、答えは誰のものか分からない形で集めることを伝える一文を入れてください。
返ってくる質問票(見本の一部。内容は架空です):
この質問票は、会社でAIを使いやすくするために、皆さんの今の様子を知るためのものです。名前は書きません。誰が答えたかは調べません。 問1 仕事でAIを使ったことがありますか。(今使っている/使ったことはあるが今は使っていない/使ったことがない)
最初の一文は、社長が自分の言葉に直します。社長の言葉で書いてあると、答える側も構えずに済みます。
自由に書く答えは、AIに分けさせてから社長が読む
自由に書く欄の答えは、人数が多いと読むだけで時間がかかります。AIに、似た答えをまとめて分けさせると、読みやすくなります。
- 分ける前に、名前や取引先の名前が書かれていないかを見る。 書かれていたら、消してからAIに渡します
- 分けた結果だけで決めない。 元の答えも社長が一度は通して読みます。少数の答えに、大事な困りごとが入っていることがあります
- 数えるのは表計算で行う。 選択肢の答えの数は、AIに数えさせず、表計算で数えます
答えから、見本を作る業務を1つ選ぶ
答えが集まったら、次の順で見ます。
- 「使い方がわからない」が多いか。 多ければ、頼み方の見本を配ることから始めます
- 「会社で使ってよいか分からない」が多いか。 多ければ、見本より先に、社内の決まりを短く配ります
- 「AIに任せたい仕事」で多く挙がった業務はどれか。 最初の見本は、その業務で作ります
最初の見本は1つの業務に絞ります。複数の業務に手を広げるより、1つで「時間が減った」という声が出るほうが、ほかの社員にも広がります。
答えた社員に、結果と次にすることを返す
聞きっぱなしにすると、次に聞いたときに答えてもらえません。
- 結果を短く伝える。 「使ったことがある人は何人中何人」「困りごとで多かったのは何か」を、朝礼や社内の連絡で伝えます
- 次にすることを伝える。 「この業務の見本を来月配る」のように、答えから決めたことを言います
- 困りごとに答える。 「使ってよいか分からない」には、使ってよいAIと入れてはいけない情報を伝えます
半年ごとに同じ質問で聞き、変化を見る
同じ質問票で半年ごとに聞くと、変化が見えます(間隔は想定です)。「使ったことがない」が減ったか、「使い方がわからない」が減ったかを見れば、見本を配った効果を確かめられます。
質問を毎回変えると、前と比べられなくなります。基本の3問は変えず、そのときに知りたいことを1〜2問足す形にします。
型をスキルにし、数えることと決めることはAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「5問の質問票の型」「自由に書く答えの分け方の見本」「書いてはいけないこと(名前、部署名、年齢を聞く質問)」をスキルにします。
数えることと決めることは、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、選択肢の答えを表計算で数えること、元の答えを社長が通して読むこと、見本を作る業務を社長が決めることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回10円ほどまで
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 質問票の下書き | 指示(入力3千トークンほど)から質問票(出力1,500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回3円ほど |
| 自由に書く答えの分け方 | 答えの束(入力2万トークンほど)から分けた一覧(出力2千トークンほど)を作ると、同じ料金で1回9円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 社員の時間 | 1人5分ほど(想定) |
必要な人は1役で、答えを読むのは社長
- 社長:聞きたいことを絞り、質問票を配り、答えを読み、見本を作る業務を決めて社員に返す
答えの集め役を総務の担当に頼む場合も、誰が答えたかを調べないことを、社長から担当に伝えておきます。
2週間で聞き終え、翌月に最初の見本を配る見込み
- 1週目:聞きたいことを3つに絞り、AIで質問票を下書きして社長が直す
- 2週目:社員に配り、答えを集める
- 3週目:答えを数え、自由に書く答えを読み、最初の見本を作る業務を決める
- 翌月:結果と次にすることを社員に伝え、見本を配る
名前を聞いたり、聞きっぱなしにしたりすると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 名前や細かい部署を聞く。 本音が書かれにくくなります
- 使っていない社員を責める材料にする。 次から誰も正直に答えなくなります
- 結果を返さない。 次に聞いたとき、答えが集まりません
まとめ
- 白書の個人調査では、生成AIを使ったことがある人は58.8%、使わない理由で「使い方がわからない」は38.8%だった
- 自社でも白書に近い聞き方で5問ほど聞くと、全国の傾向と並べて目安にできる
- AIが質問票を下書きし、社員は名前を書かずに答え、選択肢の答えは表計算で数える
- 「使い方がわからない」が多ければ見本、「使ってよいか分からない」が多ければ社内の決まりから始める
- 誰が答えたかは探さず、結果と次にすることを社員に返す