社員はAIをどう見ているか|白書の個人調査から社内への広げ方を考える
この記事で変わる経営指標
この記事では、令和8年版情報通信白書の個人向け調査から、社員がAIをどう見ているかを読み、小さな会社で社内にAIを広げる伝え方を考えます。一言でいうと、生成AIを使ったことがある人は6割近くまで増えたが、年代で差があり、使わない人の4割近くは「使い方がわからない」と答えている。仕事では「単純な仕事を任せたい」という見方が最も多い。社長は、業務ごとの頼み方の見本と、入れてよい情報の決まりを先に配り、確かめ方を決めるという話です。
白書の数字は、国全体の個人を対象にした調査の結果です。自社の社員に当てはめるときは、傾向として読み、実際には社員に聞いて確かめます。
経営への効果は、AIを使う社員と使わない社員の差を縮めること
社内でAIを使う人と使わない人の差が開くと、同じ仕事にかかる時間がばらつき、使わない人に仕事の負担が寄ります。使わない理由が「使い方がわからない」なら、会社が手を打てば縮められる差です。
社員の見方に合わせて伝え方を変えれば、無理に使わせるのではなく、自分から使う人を増やせます。全員が使えるようになれば、会社全体で浮く時間が増えます。
生成AIを使ったことがある人は58.8%に増えた
白書によると、業務や日常生活で何らかの生成AIサービスを使ったことがある人の割合は、日本で58.8%でした。前年度の調査では26.7%だったので、1年で大きく上がったことになります。ただし、今回から15〜19歳が調査の対象に加わっており、20歳以上に限ると52.2%です。増えたのは主に文章を作るAIで、テキスト生成AIの利用経験は55.0%でした。
年代別では、若い人ほど使っている割合が高く、白書によると15〜19歳で91.7%、20〜29歳で78.2%でした。アドタイの報道によると、30〜39歳で56.3%、40〜49歳で49.0%、50〜59歳で44.2%、60〜69歳で33.5%です。小さな会社でも、社員の年代によって、AIへのなじみ方が違うと考えておくのがよいでしょう。
使わない理由の4割近くは「使い方がわからない」
白書は、生成AIを使ったことがない人に理由も聞いています。文章を作るAIを使わない理由は、「自分の生活や業務に必要ない」が42.4%、「使い方がわからない」が38.8%でした。「使い方がわからない」と答えた割合は、調査した4か国の中で日本が最も高かったとされています。
「必要ない」と答える人も、自分の業務での使い道が見えていないだけのことがあります。業務に合わせた使い方を見せれば、どちらの理由にも手を打てます。
仕事では「単純な仕事を任せたい」という見方が最も多い
白書は、仕事でAIが今後担いうる役割についても聞いています。日本で「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計が最も高かったのは、「単純・非効率な仕事を生成AIに任せる」でした。次に多かったのは、「AI導入を前提とした新たなスキルを身につけなければならない」です。
一方、「自分の仕事がAIに代わられ、職を失う」や「発想の多様性やクリエイティビティが失われる」は、比較的低い結果でした。白書は、AIの利用が広がるにつれて、仕事での役割や影響について人々が具体的なイメージを持つようになってきている可能性がある、と述べています。
つまり、社員の多くは、AIに仕事を奪われるより、面倒な仕事を任せたいと考えている傾向があると読めます。「AIで面倒な作業を減らす」という伝え方が、受け入れられやすいといえます。
使う人が気を付けているのは「正しいか」で、入力の注意は少ない
白書によると、生成AIを使ったことがある人が、適切に使うために気を付けていることは、日本では「生成内容が正しいか、他の方法で確認している」が最も高く、次に「生成内容の根拠や判断理由を確認している」でした。
一方、ほかの3か国では、「入力データに配慮している」や「著作権等の知的財産権に配慮している」と答えた割合も比較的高かったとされています。
会社で使うときには、出てきた答えを確かめることに加えて、何を入れてよいかを決めることが欠かせません。社員が個人のアカウントで会社の情報を入れてしまう前に、会社で契約したAIと、入れてよい情報の決まりを用意します。決まりの作り方は、生成AIの社内ルールの作り方|A4で1枚、社員が安心して使える3つの決めごとで説明しています。
「新しいスキルが要る」と感じる社員を、会社が支える
白書で2番目に多かったのは、「AI導入を前提とした新たなスキルを身につけなければならない」という見方でした。社員がそう感じているなら、学ぶ時間と場を会社が用意することが、AIを広げる近道になります。
- 勤務時間の中で試す時間をとる。 週に30分でも、業務でAIを試す時間を決めます(時間は想定です)
- うまくいった使い方を共有する場をつくる。 朝礼や会議の数分で、1人1つずつ紹介します
- できるようになったことを認める。 AIで仕事を早く終えた社員を、評価の場で取り上げます
研修より先に、業務ごとの頼み方の見本を配る
「使い方がわからない」という社員には、AIの一般的な説明より、自分の業務での使い方を見せるほうが伝わります。
- 業務ごとに頼み方の見本を作る。 「お客さまへのお詫びのメールの下書き」「会議のメモから議事録」のように、社員が毎日している仕事で作ります
- 見本はAIに下書きさせ、担当が自社の言葉に直す。 見本そのものを作る手間も、AIで減らせます
- 使ってみた結果を共有する。 時間がどれだけ減ったかを、社員自身の言葉で共有してもらいます
見本の配り方は、生成AIは研修だけでは社員に広がらない|先に配る頼み方の見本で説明しています。
年代の差は、教え合う仕組みで埋める
若い社員ほどAIを使っている傾向があるからといって、若い社員だけに任せると、業務をよく知るベテランの知恵が見本に入りません。
- 若手とベテランを組にする。 若手がAIの操作を、ベテランが業務の勘所を教え合います
- 推進の担当は業務を知る人にする。 選び方はAI推進の担当者は詳しい若手より業務を知る人|社内に広げる選び方で説明しています
- 使わない自由も残す。 無理に使わせるより、使った人の時間が減ったことを見せるほうが広がります
社員への聞き取りは、短い質問票で始める
社員がAIをどう見ているかは、白書の数字ではなく、自社の社員に聞くのが確かです。質問は短くします。
- AIを使ったことがあるか、何に使っているか
- 使っていないなら、理由は何か(必要ない、使い方がわからない、など)
- AIに任せたい仕事は何か
質問票の下書きはAIに作らせ、社長が言葉を直します。名前を書かずに答えられる形にすると、本音が集まりやすくなります。
集まった答えは、部署や年代ごとに数えて、どこから見本を作るかを決める材料にします。「使い方がわからない」が多い部署から見本を配ると、効果が見えやすくなります。
型をスキルにし、確かめ方はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。業務ごとの見本をスキルにしておけば、「使い方がわからない」社員でも、頼みたいことを書くだけで、見本に沿った下書きが出ます。
確かめ方は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。白書で多くの人が気を付けていた「正しいかを確かめる」を、個人の注意に任せず、業務ごとにだれが何を確かめるかとして決めておくことです。
費用は、法人向けプランの月数千円から始められる
見本づくりと社内での利用は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランのチャットで足ります。費用は1人あたり月数千円です。個人のアカウントで会社の情報を扱わないよう、会社の契約で使うことを決まりに入れます。
明日からは、社員にAIを使っているかと、困っていることを聞く
- 社員に、AIを使っているか、使っていない理由は何かを聞く
- 「使い方がわからない」業務を1つ選び、頼み方の見本をAIで作る
- 入れてよい情報の決まりと一緒に見本を配り、使った人の声を集める
まとめ
- 令和8年版情報通信白書では、生成AIを使ったことがある人は58.8%(20歳以上は52.2%)に増え、若い人ほど使っている
- 使わない理由は「必要ない」42.4%、「使い方がわからない」38.8%で、後者は4か国で日本が最も高い
- 仕事では「単純・非効率な仕事を任せる」への共感が最も多く、職を失う不安は比較的低い
- 使う人は答えの正しさを確かめているが、入力の注意は他国より少ないので、会社として入れてよい情報を決める
- 業務ごとの見本を先に配り、若手とベテランで教え合い、確かめ方を業務ごとに決める