はじめの一歩

AIの答えの間違いを社員が見つける。仕事で使う前に決める確かめ方

この記事で変わる経営指標

この記事では、AIの答えに混ざる間違いを、社員が仕事の中で見つけられるようにする方法を説明します。一言でいうと、AIの答えを全部読み直すのではなく、間違いが起きやすい4か所(数字、名前、決まり、計算)に絞って元の資料と照らす。頼み方で確かめやすい答えにし、業務ごとに「誰が、どこまで確かめるか」を1行で決めておくという話です。

AIの価値は、間違えないことではありません。間違いが起きる場所が分かっていれば、確かめる時間はわずかで済み、その分だけ安心して仕事を任せられることです。

経営への効果は、確かめる手間が減り安心して任せられること

AIの答えの確かめ方は、決めておくかどうかで次のように変わります。

確かめ方を決めていない 確かめる4か所を決めている
確かめ方 人によって違う。全部読み直す人と、読まずに送る人がいる 数字・名前・決まり・計算の4か所を、元の資料と照らす
かかる時間 全部読み直すと長い。読まないと間違いが外に出る 照らす場所が決まっているので短い
間違いが見つかる場所 お客様や取引先からの指摘で 社内で、送る前に
社長の気持ち 社員に任せるのが不安 確かめ方が決まっているので任せられる

効果の大きさは、確かめる時間で考えます。仮に、社員10人が1日に2件ずつAIの下書きを仕事に使い、確かめ方が決まっていないために1件10分かけて全部読み直しているとします。確かめる4か所を決めて1件4分になれば、月20日で400件×6分=月40時間が浮きます。

ただ、本当に大きいのは時間ではありません。読まずに送る人がいる会社では、間違った金額や日付、ない決まりがお客様に届きます。一度の誤りで失う信用と、その後の説明やお詫びの手間は、確かめる時間よりずっと大きくなります。

情報の正確性を心配する会社は、半数を超えている

帝国データバンクが2026年3月に行った調査(有効回答1万312社)では、業務で生成AIを活用している企業は34.5%で、大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%でした(ITmedia NEWS、ビジネス+ITの記事)。活用している企業の86.7%が「業務への効果が出ている」と答えています。

一方で、導入に伴う懸念として最も多かったのは**「情報の正確性」で、50.4%と半数を超えました**(同じ2つの記事)。帝国データバンクは、活用する業務の範囲をはっきりさせ、最終的な確認や判断の責任を人が担うことを前提にした運用ルールを整えることが重要だとしています。

つまり、多くの会社は「AIは役に立つが、間違いが怖い」というところにいます。この怖さを、「どこを、誰が、どう確かめるか」という決まりに変えるのが、この記事の中身です。

AIは、もっともらしい間違いを自信ありげに書く

AIの間違いが厄介なのは、間違いに見えないことです。

  • ない数字や日付を作る。 元の資料に書かれていない金額や日付を、それらしく埋めることがあります
  • 名前を取り違える。 取引先の名前、担当者の名前、商品の名前を、似た別のものと入れかえることがあります
  • ない決まりを書く。 法律や制度、社内の規定について、存在しない条文や、古い内容を、正しいかのように書くことがあります
  • 計算を間違える。 足し算や割合の計算、日付の計算を間違えることがあります

どれも、文章としては自然で、自信のある書き方をしているので、読み流すと気づきません。逆に言えば、間違いが起きやすい場所はこの4つにほぼ決まっています。挨拶や言い回しが少しおかしくても大きな問題にはなりませんが、数字・名前・決まり・計算の誤りは、そのまま信用の問題になります。

確かめる場所は、数字・名前・決まり・計算の4つに絞る

AIの答えの確かめ方。今までは人によって全部読み直したり読まずに送ったりして、間違いがお客様からの指摘で見つかっていた。決まりを作ったあとは、AIが確かめる場所に印を付け、数字・名前・決まり・計算の4か所を担当者が元の資料と照らしてから送る
AIの答えの確かめ方。今までは人によって全部読み直したり読まずに送ったりして、間違いがお客様からの指摘で見つかっていた。決まりを作ったあとは、AIが確かめる場所に印を付け、数字・名前・決まり・計算の4か所を担当者が元の資料と照らしてから送る

確かめるときは、次の4か所だけを、元の資料と照らします。

確かめる場所 例 何と照らすか
数字 金額、数量、日付、時間、割合 見積書、注文書、予定表、元のメール
名前 会社名、人の名前、商品名、住所 顧客の台帳、名刺、商品の一覧
決まり 法律、制度、補助金の条件、社内の規定 役所や公式のページ、社内の規定の原本
計算 合計、割合、期限までの日数 表計算で計算し直す

ここで大事なのは、AIの答えをAIに確かめさせないことです。同じAIに「間違いはありませんか」と聞いても、同じ間違いをもう一度正しいと言うことがあります。照らす相手は、元の資料と、表計算の計算です。

決まりについては、特に気をつけます。法律や制度は変わります。AIが書いた条件や期限は、必ず役所や公式のページで今の内容を確かめます。確かめられないものは、お客様に伝えません。

頼み方で間違いを減らし、確かめやすい答えにする

確かめる時間は、頼み方でも短くできます。次の3つを、頼むときに必ず入れます。

  1. 元の資料を渡して、それだけをもとに書かせる。 AIの知っていることではなく、渡した見積書やメールをもとに書かせると、ない数字を作りにくくなります
  2. 資料にないことは「不明」と書かせる。 分からないところを埋めさせないようにします
  3. 数字・名前・決まりには、どの資料のどこから取ったかを書かせる。 確かめる人は、その場所を開くだけで済みます

AIに渡す指示(見本。内容は架空です):

添付の見積書と、お客様からのメールをもとに、お客様への返事を下書きしてください。添付の資料に書かれていないことは書かず、分からないところは「不明」としてください。下書きのあとに、文中に出てくる金額・日付・会社名・商品名を表にし、それぞれ添付のどの資料のどこから取ったかを書いてください。資料にないものは「資料になし」と書いてください。

返ってくる表(見本):

文中の内容 種類 どこから取ったか
合計 132,000円(税込) 数字 見積書の合計欄
納品日 11月14日 数字 お客様のメールの2段落目
株式会社〇〇工業 様 名前 見積書の宛名
分割での支払い 決まり 資料になし

担当者は、この表を見ながら、見積書の合計欄とメールの2段落目を開いて照らします。「資料になし」の行は、自分で確かめるか、文から消します。

確かめる人と範囲を、業務ごとに1行で決める

確かめ方は、業務ごとに1行で決め、社内のルールに書いておきます。

業務 確かめる人 確かめる範囲
お客様への返事のメール 送る本人 金額・日付・名前を元のメールと見積と照らす
見積の説明文 作った本人と上長 金額は見積のソフトから写し、上長が送る前に見る
社内の議事録や報告 書いた本人 決まったことと期限だけを照らす
法律や制度に関わる案内 担当の責任者 公式のページで今の内容を確かめる。確かめられなければ出さない

お客様に出るものほど、確かめる人を増やします。社内で使うだけのものは、本人の確認で十分なこともあります。全部を同じ重さで確かめようとすると続きません。

社員に入れてよい情報の決まりと一緒に、社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールに書き足しておくと、1枚で済みます。

確かめ方をスキルにし、計算と照合はAIの外に出す

ここまでは、人が頼むたびに気をつける方法です。社員のみんなが毎日使うなら、もう一段の工夫で、確かめやすい答えが毎回出るようにします。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

頼み方の決まりを Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「渡した資料だけをもとに書く」「資料にないことは不明とする」「数字・名前・決まりの出どころの表を付ける」という決まりと、業務ごとの良い見本をスキルにしておきます。社員が毎回この指示を書かなくても、確かめやすい答えが出ます。

計算と照合は、AIの外で行う。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、金額の合計や期限までの日数を表計算で出してAIの文に差し込むこと、会社名や商品名を台帳や一覧と自動で照らすことがそれに当たります。人が確かめる4か所のうち、計算と名前は、仕組みにすれば人が見る前に印が付きます。

送る前の書類の点検を仕組みにする方法は、送る前の書類のミスを止める。AIを「二人目の確認者」にする方法で説明しています。

明日からは、よく使う業務1つで確かめる表を試す

  1. 社内でAIをいちばんよく使っている業務を1つ選ぶ(お客様へのメールの返事など)
  2. 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで、上の見本の指示を使って下書きさせる
  3. 返ってきた表を見ながら、数字・名前・決まりを元の資料と照らす。かかった時間を書き留める
  4. 間違いが見つかったら、どの種類(数字・名前・決まり・計算)だったかを記録する
  5. 2週間後、見つかった間違いの種類と、確かめる時間を見て、その業務の確かめ方を1行で決める

1つの業務で決まれば、同じ形で他の業務に広げます。

見つけた間違いを責めず、見本に足していく

  • 間違いを見つけた人をほめる。 AIの間違いを見つけるのは、仕組みがうまく動いている証拠です。見つけた間違いは、社内で共有します
  • 見つけた間違いを、スキルの見本に足す。 「この種類の資料では、ここを読み違えやすい」という例を足すと、次から同じ間違いが減ります
  • 決まりと判断は、人が持つ。 AIは下書きと材料集めまでです。お客様に何を約束するか、法律の上でどう扱うかは、人が決めます
  • 確かめられないものは、出さない。 公式の資料で確かめられない数字や決まりは、文から消します。「たぶん合っている」で送らないことを、社内で共有しておきます

AIを使い始めたばかりの会社は、最初の1週間の進め方をAIを使ったことがない社長が、最初の1週間でやることに、社員への広げ方を契約したAIを社員が使わない会社にしない。研修より先に頼み方の見本を配るにまとめています。

まとめ

  • AIの答えは、全部読み直すのではなく、間違いが起きやすい数字・名前・決まり・計算の4か所を元の資料と照らす。AIの答えをAIに確かめさせない
  • 帝国データバンクの2026年の調査では、生成AIの懸念として「情報の正確性」を挙げた企業が50.4%。確認と判断の責任を人が担う運用ルールが重要とされている
  • 頼むときは、元の資料を渡し、資料にないことは「不明」とさせ、数字・名前・決まりの出どころの表を付けさせる
  • 業務ごとに、確かめる人と範囲を1行で決める。お客様に出るものほど確かめる人を増やす
  • まずは、よく使う業務1つで、出どころの表を付けた下書きを2週間試す

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