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AI事業者ガイドライン第1.2版|AIを使う側の中小企業が見直すこと

この記事で変わる経営指標

この記事では、AIを業務で使い始めた中小企業の社長に向けて、2026年3月に改定されたAI事業者ガイドライン第1.2版のうち、使う側の会社に関係する点を説明します。一言でいうと、第1.2版で、AIエージェント(自分で手順を進めるAI)の権限の決め方と人の判断の入れ方、AIの答えを信じすぎる危うさ、専門の資格に関わる使い方の注意が書き足された。法律の義務ではないが、自社でAIに任せている業務を表にして、任せる範囲と人が見る所を見直すきっかけになる。表の下書きはAIに頼み、決めるのは社長という話です。

AIの価値は、ガイドラインを読む代わりをすることではありません。200ページを超える資料から自社に関係する所を拾い、今の使い方と並べて表にする文章の仕事を下書きし、社長の時間を、任せる範囲を決めることに使えるようにすることです。

経営への効果は、AIに任せる範囲を広げても事故を防げること

今まで 第1.2版を手がかりに
使い方 社員が各自で使う 業務ごとに任せる範囲を表にする
人の確認 気づいた人が見る 人が見る所を業務ごとに決める
AIエージェント 権限を考えずにつなぐ つなぐ先と権限を絞り、操作の記録を見る
専門の仕事 AIの答えをそのまま使う 資格の要る判断は資格を持つ人が行う
AIの使い方の見直しの変化。今までは社員が各自でAIを使い、任せる範囲も確かめ方も決まっておらず、AIの答えをそのまま使ってしまうことがあった。2026年3月の第1.2版を手がかりに、業務ごとの使い方の表をAIが下書きし、社長が人の見る所と権限を決める
AIの使い方の見直しの変化。今までは社員が各自でAIを使い、任せる範囲も確かめ方も決まっておらず、AIの答えをそのまま使ってしまうことがあった。2026年3月の第1.2版を手がかりに、業務ごとの使い方の表をAIが下書きし、社長が人の見る所と権限を決める

AIを使う業務が増えるほど、間違いが外に出たときの影響も大きくなります。任せる範囲と人の見る所を先に決めておけば、安心して使う業務を広げられます。取引先から「AIをどう使っているか」と聞かれたときにも、表を見せて答えられます。

第1.2版は2026年3月に公表された、2度目の改定

総務省の掲載ページによると、総務省と経済産業省は2026年3月31日に「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を公表しました。本編と別添のほか、チェックリストとワークシート、使い方を案内する「AI事業者ガイドライン活用の手引き(案)」も同じ日に公表され、3月26日には内容を案内するチャットボットも公開されています。

PwC Japanグループの解説によると、第1.2版は2024年4月の初版から2度目の改定です。ガイドラインは事業者が自主的に考える望ましい行動を整理した文書で、法的な拘束力はなく、この改定で新しい義務が一律に課されるわけではありません。本編と別添を合わせると200ページを超えます。

ガイドラインは、AIに関わる事業者を「作る側(AI開発者)」「サービスとして届ける側(AI提供者)」「業務で使う側(AI利用者)」の3つに分けています。多くの中小企業は、市販のAIを業務で使う「利用者」に当たります。2026年10月時点の情報です。

AIエージェントは、つなぐ先と権限を絞り、人の判断を挟む

PwC Japanグループの解説によると、第1.2版では、AIエージェントが「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義され、気をつける点が書き足されました。

  • つなぐ先と権限を絞る。 外のシステムとつなぐ機会が増えるので、つなぐ道具を限り、権限を適切に設定する
  • 人の判断を挟む。 判断が要る事柄を重要さで分け、人が判断する仕組みをつくる
  • 操作の記録を見る。 自分で動くので、定期的に操作の記録を確かめる

中小企業の業務に置き換えると、たとえば「メールの下書きはさせるが、送るのは人」「会計ソフトは見るだけで、書き換えはさせない」「週に1回、AIが何をしたかの記録を見る」といった決め方になります。

業務ごとの権限の段の決め方と、記録の振り返り方は、AIエージェントの権限の決め方|見る・下書き・実行を業務ごとにで説明しています。

AIの答えを信じすぎることにも、注意が書き足された

同じ解説によると、第1.2版では、AIの判断を人が最後に判断するときに、AIの判断を信じすぎて自分の確認を怠ってしまう懸念(自動化バイアス)が書き足されました。

人が確かめる仕組みをつくっても、毎日同じ確認が続くと、見たつもりで通してしまうことがあります。確認する人を決めるだけでなく、何を見るかを決めておくことが大事です。確かめどころの決め方は、生成AIの間違いの確認方法|社員が見つけられる4つの確かめどころで説明しています。

資格が要る仕事にAIを使うときは、判断を資格者に残す

同じ解説によると、第1.2版では、生成AIを専門の分野に使うときに、資格などを侵害して法令違反を問われる可能性があることが書き足されました。

中小企業で言えば、税務、労務の手続き、法律の相談、医療や介護の判断などに当たります。AIに下書きや整理をさせるのはかまいませんが、資格の要る判断と、外に出す答えは、資格を持つ人か、契約している専門家が行います。AI図鑑でも、AIに任せない所として、この線を引いてきました。

社内の資料をAIに読ませる使い方は「学習」ではないと整理された

PwC Japanグループの解説によると、第1.2版では、AIが外の資料を探して参照しながら答える仕組み(RAG)が「学習」ではなく「推論」に当たると明記されました。

社内のマニュアルや過去の資料をAIに読ませて答えさせる使い方は、小さな会社でも増えています。こうした使い方は、AIの中身を作り変えるものではないと整理されたことになります。とはいえ、読ませる資料に個人の情報や取引先の秘密が入っていないかは、別に確かめます。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで使うのが前提です。

使い方の表は、AIに下書きさせて社長が決める

人がすること(最初に)。 社長か担当者が、社内でAIを使っている業務を書き出します。業務の名前、使っている道具、AIにさせていること、外に出るかどうかです。

AIに頼むこと。 書き出した業務と、上の4つの観点(つなぐ先と権限、人の判断、信じすぎ、資格)を渡し、使い方の表を下書きしてもらいます。

下は、当社でAIを使っている業務の一覧です。業務ごとに1行で、「AIにさせること」「人が見る所」「AIにさせないこと」「つないでいる道具と権限」の列を持つ表を下書きしてください。外に出る文書、お金や契約に関わる操作、資格の要る判断(税務、労務の手続き、法律、医療など)は、「人が見る所」と「AIにさせないこと」に必ず入れてください。決めるのは社長なので、迷う所は「要相談」と書いてください。

人がすること(そのあと)。 社長が「要相談」の行を決め、表を社員に配ります。社内ルールの1枚と一緒に持つと使いやすくなります。社内ルールの作り方は、生成AIの社内ルールの作り方|A4で1枚、社員が安心して使える3つの決めごとで説明しています。

ガイドラインを読む時間がないなら、手引きとチャットボットから入る

本編と別添を全部読む必要はありません。PwC Japanグループの解説によると、「活用の手引き(案)」は、AIの使い方の決めごとになじみの薄い事業者でも分かるように、基本の考え方と進め方を整理した資料です。チャットボットは、自分の立場とやりたいことを選んでいくと、ガイドラインの関係する所を案内してくれます。

まず「利用者」の立場でチャットボットを試し、出てきた所だけを読むのが近道です。

判断はAIに任せない

  • 任せる範囲は社長が決める。 AIの下書きの表は、社長が業務を知った上で直します
  • ガイドラインの読み方は人が確かめる。 AIの要約だけで判断せず、関係する所は手引きや本文で確かめます
  • 資格の要る判断は資格者が行う。 税務、労務、法律、医療などの判断は、資格を持つ人か契約している専門家が行います
  • 入れる情報に気をつける。 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで使います

使い方の表をスキルにし、権限と確認はAIの外に置く

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。AIを使う業務が増えてきたら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

使い方の表を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、業務ごとの「AIにさせること」「させないこと」「人が見る所」をスキルにしておくと、社員が誰でも同じ範囲でAIを使えます。

権限と確認は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、AIがつなぐ道具の権限を見るだけに絞ること、送る・払う・契約するといった操作の前に人が確かめること、操作の記録を週に1回見ることがそれに当たります。第1.2版がAIエージェントについて書き足した点と、同じ方向です。

明日からは、AIを使っている業務を書き出す

  1. 社内でAIを使っている業務を、社員に聞いて書き出す
  2. 総務省のチャットボットを「利用者」の立場で試す
  3. 上の見本の指示で、使い方の表を下書きさせる
  4. 「要相談」の行と、AIにつないでいる道具の権限を社長が決める
  5. 表を社員に配り、半年に1回見直す

どの業務からAIを使い始めるかの選び方は、AIは何の業務から始める?|時間×回数×間違いの影響で1つ選ぶで説明しています。

まとめ

  • 総務省と経済産業省は、2026年3月31日にAI事業者ガイドライン第1.2版を公表した。法的な拘束力はなく、新しい義務が一律に課されるわけではない
  • AIエージェントについて、つなぐ先と権限を絞ること、人の判断を挟むこと、操作の記録を見ることが書き足された
  • AIの答えを信じすぎる危うさと、資格が要る分野での使い方の注意も書き足された
  • 社内でAIを使っている業務を表にし、任せる範囲と人が見る所を社長が決める。表の下書きはAIに頼める
  • 全部を読む時間がなければ、活用の手引き(案)とチャットボットから入る

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