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白書が示すAI活用の2段階|全員の個人作業から、業務の作り直しへ

この記事で変わる経営指標

この記事では、情報通信白書2026に見る企業のAI|使う会社は増え、次は組織で使うの続きとして、白書が示した「AI導入・活用による効果創出のステップ」を、小さな会社で進める手順にして説明します。

一言でいうと、社長が、会社で契約したAIと使い方の決まりを用意する。AIで、部門ごとの業務の頼み方のひな形を作る。担当が、使い方を集めて社内に配り、効果を測る。そのうえで社長が、優先する業務を決め、人とAIの分担を決めて業務を作り直す。社内のデータとの連携は、投資の判断として決めるという形です。

経営への効果は、一部の社員の便利を、会社全体の時間に変えること

AIを導入しても、使いこなすのが一部の積極的な社員だけなら、会社全体の時間は大きくは変わりません。白書も、汎用のAIを入れても一部の社員が使うだけで、全社的な活用と効果に至らない可能性があると指摘しています。

全員が自分の業務でAIを使えるようになれば、会社全体で浮く時間が増えます。そのうえで、業務の流れそのものをAIを前提に作り直せば、人を増やさずにこなせる仕事の量が変わります。白書の2段階は、この順番で進めることを示しています。

白書は、個人作業の効率化から業務の作り直しへの2段階を示した

白書は、AI活用で先進的な企業へのヒアリングから、効果を出すステップを次のように整理しています。

段階 白書の説明の要点
1 汎用AIを使った個人作業の効率化 比較的安く入れやすい汎用のAIを、社員の個人作業で使うことを組織的に浸透させ、AIの特性と使える業務への理解を社内全体で深める
2 AI活用を組み込んだ業務の変革 経営戦略に基づいて人と生成AIの協業のあり方を定義し、業務の流れ全体をAI前提で作り直す

1段目では、まずは少ない投資で、社員が安全に汎用のAIを使える環境をつくることから始めることが考えられるとしています。2段目では、経営層の判断でAIに優先して取り組む業務を決め、その業務の特性と、人が負うべき責任の範囲を見極めることが重要だとしています。

個人で勝手に使う「シャドーAI」は、情報の流出の危うさがある

白書は、社員が個人の判断でAIを業務に使う「シャドーAI」は、入力した機密情報の流出などのリスクをはらむと書いています。そのうえで、情報漏えい対策をした生成AIの環境を会社の中に用意し、使うときのルールやガイドラインを整えて知らせることで、個人作業の効率化に安全に使えるようになるとしています。

小さな会社でも、最初にやることは同じです。

  • 会社で契約したAIを用意する。 入力をAIの学習に使わない、法人向けのプランを契約します
  • 使い方の決まりをA4で1枚にする。 入れてよい情報、入れてはいけない情報、確かめる人を決めます。作り方は生成AIの社内ルールの作り方|A4で1枚、社員が安心して使える3つの決めごとで説明しています
  • 社長が、使ってよいと伝える。 決まりと一緒に、会社として使うことを社長の言葉で伝えます

全社に広げるには、部門ごとのひな形と効果の測り方が要る

白書は、先進企業は環境を整えるだけで終わらせず、使い方の事例を集めて社内に広げる、定期的に勉強会を開くといった取組で、会社全体への浸透を実現していると書いています。

例として挙げられているのが日清食品グループです。白書によると、生成AIの効果を見込める業務を部門ごとに選び、プロンプト(頼み方)のひな形を作り、効果を測る取組を少しずつ社内に広げた結果、社内の生成AIの利用率が直近で7割を超えたといいます。

小さな会社に置き換えると、次のようになります。

  • 部門ごとに業務を1つ選ぶ。 営業なら見積の説明、事務なら請求書の確認、のように選びます
  • その業務の頼み方のひな形を作る。 AIに下書きさせ、担当が自社の言葉に直します
  • 効果を測って見せる。 1件あたりの時間がどれだけ減ったかを測り、社内に知らせます

頼み方の見本の配り方は、生成AIは研修だけでは社員に広がらない|先に配る頼み方の見本で説明しています。

小さな会社は、社長が動くと段階を早く進められる

白書の「組織的な取組状況」では、組織的な取組がない企業が27.0%で、中小企業で特に高い傾向でした。一方で、中小企業が取り組んでいる施策では「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」が最も高く、白書はトップダウンの関与がキーポイントになっていることがうかがえると述べています。

小さな会社は、社長と社員の距離が近く、決めたことをすぐに全員に伝えられます。1段目の決まりと、部門ごとの業務の選び方を社長が決めて伝えれば、全員に広げやすい面があります。

  • 部門ごとの業務と、測る数字を社長が示す。 「営業は見積の説明、1件あたりの時間を測る」のように伝えます
  • 月に1回、使い方と数字を共有する場を作る。 朝礼や会議の数分でも構いません

整え、ひな形を作り、広げて、作り直す

白書が示すAI活用の2段階を小さな会社で進める流れ。社長が会社で契約したAIと使い方の決まりを用意する。AIで部門ごとの業務の頼み方のひな形を作る。担当が使い方を集めて社内に配り、効果を測る。社長が優先する業務を決め、人とAIの分担を決めて作り直す
白書が示すAI活用の2段階を小さな会社で進める流れ。社長が会社で契約したAIと使い方の決まりを用意する。AIで部門ごとの業務の頼み方のひな形を作る。担当が使い方を集めて社内に配り、効果を測る。社長が優先する業務を決め、人とAIの分担を決めて作り直す

1 整える(社長)。 会社で契約したAIと、使い方の決まりを用意し、使ってよいと伝えます。

2 ひな形を作る(AI)。 部門ごとに選んだ業務について、頼み方のひな形をAIに下書きさせ、担当が直します。

3 広げる(担当)。 社員の使い方を集めてひな形に足し、社内に配り、効果を測ります。

4 作り直す(社長)。 効果の大きかった業務から優先する業務を決め、人とAIの分担を決めて、業務の流れを作り直します。

業務を作り直すときは、補助に使うか任せるかを決める

白書は、2段目の業務の変革では、業務の流れ全体で「どの作業はAIを人の考えや判断の補助として使い、どの作業はAIに任せるか」を検討し、設計する必要があるとしています。

  • 人が責任を負う作業を先に決める。 金額、約束、お客さまへの判断など、間違えたときに会社が責任を負う作業は、人が決める側に置きます
  • AIに任せる作業は、確かめ方とセットで決める。 下書き、仕分け、照らし合わせなど、人が確かめられる作業から任せます
  • 社内のデータとつなぐのは、投資の判断。 白書は、社内のシステムやデータとAIをつなぐには、投資の判断を含めた組織的な取組が求められると書いています。費用と効果を見積もってから決めます

型をスキルにし、分担はAIの外で決める

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。1段目で作った部門ごとのひな形をスキルにしておけば、2段目で業務を作り直すときに、そのまま仕組みの部品として使えます。

分担は、AIの外で決める。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。白書のいう「人とAIの協業のあり方の定義」に当たるもので、どの作業を人が確かめるか、どの作業をAIに任せるかを、社長が決めておくことです。

費用は、1段目は法人向けプランの月数千円から

1段目は、会社で契約した法人向けのプランのチャットで足ります。費用は1人あたり月数千円です。2段目で業務の仕組みにAIを組み込む場合は、作る費用とAIの利用料がかかります。白書のいうとおり投資の判断として、効果の見込みと比べて決めます。

必要な人は2役で、優先する業務を決めるのは社長

  • 社長:AIと決まりを用意し、使ってよいと伝え、優先する業務と人とAIの分担を決める
  • 担当(業務を知る人):部門ごとのひな形を作って配り、使い方を集め、効果を測る

担当の選び方は、AI推進の担当者は詳しい若手より業務を知る人|社内に広げる選び方で説明しています。

3か月で全員の個人作業に広がり、半年で1つの業務を作り直す見込み

  1. 1か月目:会社で契約したAIと決まりを用意し、部門ごとに業務を1つ選ぶ
  2. 2か月目:ひな形を作って配り、使い方を集め、効果を測る
  3. 3か月目:社内の利用の広がりを確かめ、効果の大きかった業務を一覧にする
  4. 半年後:一覧から優先する業務を1つ選び、人とAIの分担を決めて作り直す

道具を入れただけで終わると失敗する

よくある失敗は次の3つです。

  • 契約して終わる。 白書の指摘どおり、一部の社員しか使わずに終わることがあります。ひな形と効果の共有までを一続きで行います
  • 決まりを作らずに使わせる。 シャドーAIと同じ危うさが残ります。決まりを先に配ります
  • 1段目を飛ばして仕組みを作る。 社員がAIの特性を知らないまま仕組みを作ると、使われなかったり、確かめ方が抜けたりします

まとめ

  • 令和8年版情報通信白書は、AI活用の効果を出すステップとして、個人作業の効率化を全社に浸透させ、次に業務の流れ全体を作り直す2段階を示した
  • 1段目では、会社で契約したAIと決まりを整え、シャドーAIによる情報の流出を防ぐ
  • 部門ごとに業務を選んでひな形を作り、効果を測って広げる。白書は日清食品グループの例を挙げている
  • 2段目では、社長が優先する業務を決め、人が責任を負う作業とAIに任せる作業を分ける
  • 社内のデータとの連携は、効果の見込みと比べた投資の判断として決める

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