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情報通信白書2026に見る企業のAI|使う会社は増え、次は組織で使う

この記事で変わる経営指標

この記事では、2026年7月に総務省が公表した令和8年版情報通信白書から、中小企業の社長が押さえておきたい生成AIの動きをまとめます。一言でいうと、何らかの業務で生成AIを使う日本企業は86.4%まで増えた。一方で、組織的な取組がない企業が27.0%あり、中小企業で特に高い。白書は、中小企業ではトップダウンの関与が鍵だと見ている。社長が目的と担当を決め、業務ごとに型を作って社内に広げるという話です。

数字は、従業員10人以上の企業の管理職以上を対象にした調査の結果です。日本の回答は515人で、そのうち中小企業は162人です。自社に当てはめるときは、傾向として読んでください。

経営への効果は、個人の便利から、会社の成果に変えること

社員が個人の判断でAIを使っているだけでは、使う人と使わない人の差が開き、会社としての成果が見えません。使い方が人によって違えば、情報の扱いの危うさも残ります。

会社として目的を決め、業務ごとに使い方の型をそろえれば、誰が使っても同じ質で仕事が進み、効果も測れます。白書の数字は、多くの会社が「使い始めた」段階を越えつつあり、次は「組織で使う」段階に進むかどうかで差がつくことを示しています。

何らかの業務で生成AIを使う会社は86.4%になった

白書の「生成AIの業務利用状況」によると、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた割合は、日本で86.4%でした。前年度の調査に比べて大幅に上昇し、米国、ドイツ、中国との差も縮まったとされています。

業務の種類ごとに見ると、日本では次の順に多く使われていました。

業務の種類 活用を回答した割合(日本)
議事録・メール作成補助 約7割
営業・販売 約6割
社内ヘルプデスク 約5割

効果を実感していると答えた割合も、「議事録・メール作成補助」が約7割と、ほかの種類より目立って高い結果でした。

活用の方針についても、「積極的に活用する」と「活用する領域を限定して利用する」の合計が日本で68.9%となり、前年度の49.7%から大きく上がりました。企業規模別では大企業で74.0%、中小企業で58.1%で、特に中小企業で大きな上昇が見られたとされています。

組織的な取組がない会社は27.0%で、中小企業で多い

白書の「組織的な取組状況」によると、全社、部署単位、個人業務単位のいずれかで組織的な活用に取り組んでいる割合は65.6%でした。一方、「組織的な取組はない」と答えた割合は27.0%と約3割で、米国、ドイツ、中国に比べて目立って高く、企業規模別では中小企業で特に高い傾向が見られました。

ただし、中小企業では、取り組んでいる施策として「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」が最も高い回答割合でした。白書は、中小企業のAI活用ではトップダウンの関与がキーポイントになっていることがうかがえる、と述べています。

つまり、小さな会社ほど、社長が動くかどうかで、AIが「一部の社員の便利な道具」で終わるか、「会社の仕事のやり方」になるかが分かれると読めます。

社内の資料をAIに渡す仕組みは、ほかの国より少なかった

白書の「組織的な取組状況」では、業務の変革に向けた環境づくりについても尋ねています。日本では、「業務の見直しや生成AIの活用に必要なスキルやノウハウを学ぶ環境がある」が最も高く、次いで「予算や人員が確保されている」でした。

一方、ほかの3か国では、「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」との回答が5割を超えており、日本より大幅に高い結果でした。

社内の資料や決まりをAIに渡しておく仕組みは、小さな会社でも、AIのプロジェクトなどの機能を使えば始められます。会社の概要、文書の見本、書いてはいけないことを一度入れておくだけでも、社員の誰が頼んでも会社に合った下書きが出やすくなります。入れ方はAIに会社の情報を覚えさせる方法|毎回の説明をやめ、誰が頼んでも同じ質にで説明しています。 社内のマニュアルからAIが質問に答える仕組みは、社内マニュアルをAIで検索|新人の質問に資料から答え、先輩の時間を戻すで説明しています。

心配ごとの最多は、社内情報の漏れだった

白書の「懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況」によると、日本の企業が生成AIの活用で心配していることは、社内情報の漏洩などのセキュリティリスクが最も多く、次いで出力結果の精度、著作権などの権利の侵害の順でした。

対策としては、「全社的な指針やガイドラインを整備している」が41.1%で最も高い結果でした。ほかの3か国では、製品やサービスの企画・導入の段階での審査や、導入後の定期的な評価・検証を行う体制が日本より多く見られた、とされています。

小さな会社でも、まずは社内の決まりを1枚にまとめることが出発点になります。作り方は生成AIの社内ルールの作り方|A4で1枚、社員が安心して使える3つの決めごとで説明しています。

令和8年版情報通信白書で見た日本企業の生成AIの変化。使う会社は増えたが、組織的な取組がない会社が約3割あり、中小企業で多い。社長が目的と担当を決め、AIで業務ごとの型を作り、社内に広げる
令和8年版情報通信白書で見た日本企業の生成AIの変化。使う会社は増えたが、組織的な取組がない会社が約3割あり、中小企業で多い。社長が目的と担当を決め、AIで業務ごとの型を作り、社内に広げる

先進的な会社は、効率化より業務のやり方の変革を見ている

白書は、AI活用で先進的な取組を進める企業へのヒアリングから、効果的に進めるための要素を挙げています。

  • 経営戦略に基づく方針を決める。 経営層がAIの有効性を認識し、優先して取り組む領域を明示している企業も見られた
  • 人間とAIの役割分担を設計する。 業務の流れ全体で、どの作業はAIを人の判断の補助に使い、どの作業はAIに任せるかを検討している
  • AIの特性を踏まえる。 事実と違う情報を出すハルシネーションや、利用者に過剰に同調するシカファンシーなどの特性も含めて、業務への組み込みを設計する

白書は、日本の企業はほかの3か国に比べてAIを効率化の道具ととらえる傾向が見られたとし、先進企業では経営層が業務の変革をもたらしうるものとして位置づけていた、と述べています。

小さな会社の次の一歩は、社長が目的と担当を決めること

白書の数字を、小さな会社の次の一歩に置き換えると、次のようになります。

  1. 社長が、AIで何を良くしたいかを決める。 残業を減らしたいのか、問い合わせへの返事を早めたいのか、目的を1つに絞ります
  2. 担当を1人決める。 AIに詳しい人より、業務をよく知る人を選びます。考え方はAI推進の担当者は詳しい若手より業務を知る人|社内に広げる選び方で説明しています
  3. 業務を1つ選んで型を作る。 白書で効果の実感が高かった議事録やメールのように、毎日の量が多い業務から始めます。選び方はAIは何の業務から始める?|時間×回数×間違いの影響で1つ選ぶで説明しています
  4. 型を社内に配り、効果を測る。 頼み方の見本を配り、時間がどれだけ減ったかを測ります

型をスキルにし、判断と決まりはAIの外に置く

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。業務ごとの頼み方の見本や、書いてはいけないことをスキルにしておけば、社員が替わっても同じ質で使えます。白書で紹介された専門家の指摘にある「これまで現場や個人のレベルで蓄積されてきた知見を、無形資産として企業全体が活用可能になる」という考え方にも近いものです。

判断と決まりは、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。白書が挙げた「人間とAIの役割分担」に当たるもので、どの作業を人が確かめるか、入れてよい情報は何か、効果をどう測るかを、AIの外で決めておくことです。

費用は、法人向けプランの月数千円から始められる

最初の業務の型づくりは、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランのチャットで足ります。費用は1人あたり月数千円です。白書で心配ごとの最多だった社内情報の漏れを防ぐためにも、個人の無料のアカウントではなく、会社で契約したプランで使います。

明日からは、社内でAIを誰が何に使っているかを聞く

  1. 社員に、AIを使っているか、何に使っているかを聞く
  2. 使っている業務のうち、毎日の量が多いものを1つ選ぶ
  3. 社長が目的と担当を決め、その業務の頼み方の見本を作る

86.4%という数字からすると、社内のだれかがすでに個人で使っていることもあります。まずは、社内の使い方を見える形にすることから始めます。

まとめ

  • 令和8年版情報通信白書では、何らかの業務で生成AIを使う日本企業が86.4%になり、活用の方針を持つ企業も68.9%に増えた
  • 一方、組織的な取組がない企業は27.0%で、中小企業で特に高い傾向がある
  • 中小企業では経営幹部からの目標の提示が最も多く、白書はトップダウンの関与が鍵だと見ている
  • 心配ごとの最多は社内情報の漏れで、全社的な指針を整えている企業は41.1%だった
  • 小さな会社の次の一歩は、社長が目的と担当を決め、業務ごとに型を作って社内に広げること

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