石綿の事前調査の記録と報告をAIで整える|判断は調査者、欄はAI
この記事で変わる経営指標
この記事では、解体工事会社のAI活用|事前説明と近隣への案内で次の工事も頼まれるの「届出と報告の書類は、項目をそろえて準備する」のうち、石綿(アスベスト)の事前調査の記録と報告を、工事ごとに続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、資格を持つ調査者が、図面と目視で調べてメモを残す。AIが、石綿障害予防規則で決められた記録の項目の欄に整え、空いている欄に印を付ける。調査者が、材料ごとの石綿の有無と判断の根拠を読んで直す。担当がシステムで報告し、現場に概要を掲示し、記録を3年間保存する。石綿の有無の判断は調査者が行うという形です。
経営への効果は、記録の手間を減らし、着工を遅らせないこと
石綿の事前調査は、調べること自体に加えて、記録をまとめ、報告し、現場に掲示し、保存するところまでが仕事です。現場の調査が終わってから、事務所で記録を清書するのに時間がかかります。
調査者のメモから、決められた項目の欄に整えた下書きがすぐにできれば、調査者は中身を確かめるだけになります。空いている欄に印が付けば、記録の抜けにもその場で気づけます。記録と報告が早く終われば、着工の日を守りやすくなります。
石綿障害予防規則で、調査と記録と報告と掲示が決まっている
e-Gov法令検索で石綿障害予防規則を確かめると、第3条で、建築物などの解体や改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調べることになっています。調査は、設計図書などの文書と目視で、対象の全ての材料について行い、厚生労働大臣が定める知識を持つ者に行わせます。
第3条第7項では、調査の結果の記録に、次の事項を書くことになっています。
| 記録の事項(第3条第7項より) |
|---|
| 事業者の名称、住所、電話番号 |
| 作業場所の住所、工事の名称と概要 |
| 調査終了日 |
| 着工日など(建物が建てられた時期など) |
| 調査を行った建物などの構造 |
| 調査を行った部分(分析した場合は試料を採取した場所を含む) |
| 調査の方法 |
| 材料ごとの石綿等の使用の有無と、使用されていないと判断した根拠 |
| 調査を行った者の氏名 |
| 目視で確認できなかった材料の有無と場所 |
| 調査を行った者の資格を証明する書類の写し など |
記録は、調査終了日から3年間保存します。第3条第8項では、調査終了日と、調査した部分と材料ごとの有無の概要を、作業場の見やすい箇所に掲示することになっています。
第4条の2では、床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事や、請負代金が100万円以上の建築物の改修工事などは、あらかじめ電子情報処理組織(石綿事前調査結果報告システム)で所轄の労働基準監督署長に報告することになっています。厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトでは、石綿の有無によらず報告が必要だと案内されています。浜松市のページによると、大気汚染防止法に基づく都道府県などへの報告も、元請業者が行います。2026年10月時点の情報です。
今は、調査のメモと記録と報告を、別々に書き写している
小さな会社では、現場で書いた調査のメモを、事務所で記録の様式に書き写し、さらに報告システムに入力し、掲示用の紙を作る、という流れになっていることがあります。同じ情報を何度も書き写すうちに、写し間違いや抜けが起きます。
調査のメモを1つの形にそろえ、記録、報告、掲示に同じ情報を使う流れにすれば、書き写しの回数が減ります。
メモの形は、調査者と担当で先に決めておきます。部分、材料、石綿の有無、判断の根拠、写真の番号を1行に書く形にしておけば、AIに渡しても、人が読んでも分かりやすくなります。
調べ、AIが整え、確かめて、報告する
1 調べる(調査者)。 資格を持つ調査者が、設計図書などと目視で調べ、部分ごと、材料ごとにメモを残します。
2 整える(AI)。 メモを渡し、第3条第7項の記録の項目の欄に整え、空いている欄に印を付けてもらいます。
3 確かめる(調査者)。 材料ごとの石綿の有無と判断の根拠を読み、メモにないことが足されていないかを確かめて直します。
4 報告する(担当)。 記録をもとにシステムで報告し、掲示用の概要を現場に貼り、記録を3年間保存します。
AIへの頼み方と、返ってくる記録の下書きはこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、石綿の事前調査の調査者のメモです。石綿障害予防規則第3条第7項の記録の項目(事業者、作業場所と工事の概要、調査終了日、着工日等、構造、調査した部分、調査の方法、材料ごとの石綿の有無と判断の根拠、調査者の氏名、目視で確認できなかった材料の有無と場所)の欄に整えてください。材料ごとの欄は表にしてください。メモにないことは書かず、空いている欄には【メモになし】と書いてください。石綿の有無を推測で補わないでください。
返ってくる記録の下書き(見本の一部。内容は架空です):
部分 材料 石綿の有無 判断の根拠 2階 天井 けい酸カルシウム板 【メモになし】 【メモになし】 1階 外壁 窯業系サイディング 無 設計図書の製品名と製造時期 目視で確認できなかった材料:1階 床下の断熱材(解体時に確認)
調査者は、【メモになし】のところを調査の結果から書き足し、判断の根拠が図面や製品の資料と合っているかを確かめます。
報告と掲示と保存は、同じ記録から作る
記録が整ったら、同じ情報から報告と掲示を作ります。
- 報告は、記録からシステムに入れる。 第4条の2の報告事項には、記録の事項の一部に加えて、労働保険番号、工事の実施期間、床面積や請負代金の額などがあります。記録と工事の基本の情報の表から、担当が入れます
- 掲示は、記録の概要から作る。 調査終了日と、調査した部分と材料ごとの有無の概要を、AIに掲示用の1枚に整えさせ、担当が記録と照らします
- 保存は、調査終了日から3年。 記録と、調査者の資格を証明する書類の写しを、工事ごとにまとめて保存し、保存の期限を表で持ちます
第4条の2では、同じ事業者が工事を2つ以上の契約に分けて請け負っても、1つの契約で請け負ったものとみなすとされています。報告の要否は、分けた金額ではなく全体で判断します。
型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「記録の項目の欄」「材料ごとの表の形」「【メモになし】の付け方」「掲示用の1枚の型」「書いてはいけないこと(石綿の有無の推測、判断の根拠の推測、メモにない材料)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、石綿の有無を資格を持つ調査者が判断すること、記録を調査者が読んで直すこと、報告を担当がシステムで行うこと、保存の期限を表で持つことがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1件5円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 記録の下書き | 調査者のメモ(入力8千トークンほど)から記録の下書き(出力2千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件5円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 調査者の時間 | 記録を読んで直すのに1件数十分(想定) |
必要な人は2役で、石綿の判断をするのは調査者
- 調査者(資格を持つ者):調べてメモを残し、AIの下書きを読んで、材料ごとの有無と根拠を直す
- 担当:記録からシステムで報告し、掲示用の1枚を現場に貼り、記録を3年間保存する
1か月で記録の型がそろい、次の工事から使える見込み
- 1週目:調査者と担当で、メモの書き方と記録の欄を決める
- 2週目:最近の調査のメモでAIの整えを試し、直した箇所を書き留める
- 3週目:指示を直してスキルにまとめ、掲示用の1枚の型も作る
- 4週目以降:次の工事から使い、保存の期限を表で持つ
AIの下書きをそのまま記録にすると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 【メモになし】を推測で埋める。 石綿の有無と根拠は、調査者が調べた結果だけを書きます
- 目視で確認できなかった材料を書き落とす。 第3条第9項では、目視で確認できるようになったときに調査することになっています。記録に場所を残しておきます
- 記録と報告と掲示を別々に作る。 同じ記録から作らないと、中身が食い違います
まとめ
- 石綿障害予防規則で、解体や改修の前に、資格を持つ者が全ての材料について事前調査を行い、記録を3年間保存し、概要を現場に掲示することになっている
- 床面積80㎡以上の建築物の解体などは、石綿の有無によらず、システムで労働基準監督署長に報告する
- AIには調査者のメモを記録の項目の欄に整えさせ、空いている欄に【メモになし】と印を付けさせる
- 報告と掲示は同じ記録から作り、保存の期限を表で持つ
- 石綿の有無と判断の根拠は、資格を持つ調査者が決める