紹介状の下書き|医師のメモからAIで欄に整え、中身と署名は医師が
この記事で変わる経営指標
この記事では、診療所のAI活用|受付の返事と紹介状の手間を減らし、医療広告も守るの「紹介状は、医師のメモから下書きを整える」を、毎日の診療で使える手順にして説明します。
一言でいうと、医師が、紹介の目的、経過、お願いしたいことを短いメモに書く。AIが、紹介状の決まった欄に整える。医師が、メモと照らして足された言葉を消して署名する。受付が封をして患者さんに渡す。中身の責任は医師が持つという形です。
経営への効果は、書きものを減らし、早く紹介先につなぐこと
小さな診療所では、ほかの病院に精しい検査や治療をお願いするとき、院長が紹介状を一から書いています。診療が続く日は、紹介状を書くのが診療のあとになり、患者さんを待たせることもあります。
医師が短いメモを書き、AIで紹介状の形に整えれば、書く時間が減ります。患者さんにその日のうちに紹介状を渡せれば、紹介先での受診も早くなります。
紹介先への情報提供は、院内掲示と黙示の同意が前提
紹介状には、病歴や検査の結果など、要配慮個人情報(個人情報保護法第2条第3項)が入ります。他の医療機関に渡すことは、個人データの第三者への提供にあたります。
個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンス(令和8年4月一部改正)では、次のように説明されています。
| 点 | 中身 |
|---|---|
| 黙示の同意 | 患者への医療の提供に必要で、利用目的として院内掲示などで示している場合は、原則として黙示の同意が得られていると考えられる |
| 利用目的の例 | 患者への医療の提供のため、他の医療機関などとの連携を図ること など |
| 範囲 | 黙示の同意があると考えられるのは、本人への医療の提供に必要な範囲に限られる(Q&A) |
| 本人の意思 | 傷病の内容によっては明確な同意を求められることもあり、本人の意思に応じて対応する |
紹介状を書く前に、院内掲示の利用目的に、他の医療機関との連携が入っているかを確かめます。2026年10月時点の情報です。
AIに渡すのは、名前を外したメモだけ
紹介状をAIで整えるときも、患者さんの名前や生年月日をAIに渡す必要はありません。医師のメモの文だけを渡し、名前は「〇〇様」と空けて、あとで受付が入れます。
AIを使う場合は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランを使います。ガイダンスや院内の決まりに沿って、AIに渡してよい情報を院長が先に決めておきます。
今は、診療のあとに院長が一から書いている
紹介状の多くは決まった欄で書かれますが、経過や今の治療を文にまとめるのに時間がかかります。診療録を見返しながら書くと、1通に何十分もかかることがあります。
医師が診療のすぐあとに3つか4つの短いメモを書き、AIに欄の文に整えさせれば、院長は読んで直すだけで済みます。
メモし、AIが整え、確かめて、渡す
1 メモする(医師)。 診療のすぐあとに、紹介の目的、経過、今の治療、お願いしたいことを短く書きます。
2 整える(AI)。 メモを渡し、紹介状の決まった欄に、丁寧な文で整えてもらいます。
3 確かめる(医師)。 メモと照らし、AIが足した言葉や、意味が変わった所を直して署名します。
4 渡す(受付)。 患者さんの名前などを入れて封をし、患者さんに渡します。
メモは、この4つの欄で書く
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 紹介の目的 | 精しい検査のため、治療方針の相談のため など |
| 経過 | いつから、どんな症状で、何をしたか |
| 今の治療 | 今出している薬、続けている処置 |
| お願いしたいこと | 検査、治療、方針の助言 など |
病名、検査の結果、薬の名前は、医師がメモに書いたものだけを使います。
メモは、診療録を見ながらではなく、診療のすぐあとに覚えているうちに書くのがこつです。足りないところは、照らすときに診療録を見て医師が補います。よく紹介する先や、よくある目的の紹介は、メモの見本を作っておくと、さらに早く書けます。
AIへの頼み方と、返ってくる紹介状はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、医師が書いた紹介状のメモです。「紹介の目的」「経過」「現在の治療」「お願いしたいこと」の欄に分けて、紹介先の医師に宛てた丁寧な文に整えてください。メモにない病名、検査の結果、薬の名前は足さないでください。意味を変えないでください。患者さんの名前は「〇〇様」と空けてください。
返ってくる紹介状(見本の一部。内容は架空です):
紹介の目的:精査のため、貴院へのご紹介をお願い申し上げます。 経過:〇月より当院で経過を診ております。(以下、メモのとおり) お願いしたいこと:ご高診のうえ、今後の方針についてご教示いただけますと幸いです。
確かめるときは、足された言葉と意味の変化を見る
AIの整えた文は、渡したメモをもとにしています。それでも、言葉を補う中で、メモにない中身が混ざることがあります。
- メモにない病名や検査の結果が足されていないかを見る
- 「疑い」と「確定」のように、意味が変わっていないかを見る
- 薬の名前と量が、メモと同じかを見る
- お願いしたいことが、医師の意図どおりかを見る
院内掲示の利用目的は、紹介の前に見直しておく
ガイダンスの考え方では、黙示の同意の前提は、利用目的が院内掲示などで示されていることです。古い掲示のままになっていないかを、一度見直します。
- 利用目的に「他の医療機関との連携」が入っているかを見る
- 掲示が、受付や待合室から見える場所にあるかを見る
- ホームページにも、同じ利用目的を載せておく
患者さんには、紹介の理由を口でも伝える
紹介状は紹介先の医師に宛てた書類で、患者さんは中身を読めないことが多いものです。なぜ紹介するのか、紹介先で何をするのかを、医師が口で伝えます。
- 紹介の理由と、紹介先で受ける検査や相談を伝える
- 紹介先の場所と予約の取り方を、紙で渡す。 この紙はAIで下書きしてもよく、医師が確かめます
- 紹介に気が進まない様子があれば、話を聞いて医師が判断する
紹介先からの返事も、診療録に残す
紹介先から返事が届いたら、医師が読み、必要なことを診療録に書きます。医師法第24条では、医師は診療をしたときに遅滞なく診療録に書くことになっています。返事の要点をAIでまとめることはできますが、診療録に書くのは医師です。
型をスキルにし、中身の判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「メモの4つの欄」「紹介状の決まった欄と書き方」「書いてはいけないこと(メモにない病名や検査の結果、意味の書き換え、患者さんの名前)」をスキルにします。
中身の判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、医師がメモに書くこと、医師が照らして直してから署名すること、院長が院内掲示の利用目的を確かめることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1通1円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 紹介状の整え | メモと指示(入力1千トークンほど)から紹介状(出力500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1通1円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 医師の時間 | メモに数分、確かめに数分(想定) |
必要な人は2役で、中身は医師が決める
- 医師(院長):メモを書き、AIの文を照らして直し、署名する。院内掲示の利用目的を確かめる
- 受付:名前などを入れて封をし、患者さんに渡す
2週間でメモの型ができ、毎日の紹介で使える見込み
- 1週目:院内掲示の利用目的を確かめ、メモの4つの欄を決める
- 1週目:最近の紹介の数件で、メモからAIに整えさせ、医師が照らす
- 2週目:指示と書いてはいけないことをスキルにまとめる
- 3週目以降:毎日の紹介で使い、1通にかかる時間を始める前と比べる
AIの文をそのまま署名すると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- AIの文を読まずに署名する。 メモにない病名や結果が混ざることがあります
- 患者さんの名前ごとAIに渡す。 要配慮個人情報を、必要もなく渡してしまいます
- 院内掲示を確かめないまま情報を出す。 利用目的に、他の医療機関との連携が入っているかを先に確かめます
まとめ
- 紹介状には要配慮個人情報が入り、他の医療機関への提供は第三者への提供にあたる
- ガイダンスでは、医療の提供に必要で、利用目的として院内掲示などで示している場合は、原則として黙示の同意が得られていると考えられる
- 医師が紹介の目的、経過、今の治療、お願いしたいことを4つの欄でメモし、AIが紹介状の欄に整える
- 医師がメモと照らして足された言葉や意味の変化を直し、署名する
- AIに渡すのは名前を外したメモだけにし、中身の責任は医師が持つ