服薬指導の記録|薬剤師のメモからAIで要点を整え、調剤録に残す
この記事で変わる経営指標
この記事では、調剤薬局のAI活用|服薬のフォローと記録の手間を減らし、選ばれる薬局にの「指導の記録は、薬剤師のメモを欄に整える」を、毎日続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、薬剤師が、服薬指導のすぐあとに3行のメモを書く。AIが、聞いたことと伝えたことの欄に整える。薬剤師が、メモと照らして足された言葉を消す。薬剤師が、指導の要点を調剤録などの記録に残す。指導の中身は薬剤師が決めるという形です。
経営への効果は、閉局後の記録の時間を減らし、話す時間を増やすこと
小さな薬局では、薬剤師が調剤と服薬指導を続けながら、記録はあとでまとめて書くことがよくあります。閉局後に1日分を思い出して書くと、時間がかかるうえ、何を話したかがあいまいになります。
指導のすぐあとに短いメモを残し、AIで欄に整えれば、記録にかかる時間が減ります。その分、患者さんの話を聞く時間や、フォローの連絡に時間を回せます。薬剤師が早く帰れれば、人が辞めにくくなることにもつながります。
調剤録には、指導の内容の要点を書く
e-Gov法令検索で薬剤師法と施行規則を確かめると、調剤録について次の決まりがあります。
| 決まり | 中身 |
|---|---|
| 法第28条 | 薬局開設者は調剤録を備える。薬剤師は調剤したときに決められた事項を記入する。薬局開設者は最終の記入の日から3年間保存する |
| 規則第16条 | 記入する事項は、患者の氏名と年齢、薬名と分量、調剤と情報の提供と指導を行った年月日、調剤量、行った薬剤師の氏名、情報の提供と指導の内容の要点、処方箋の発行年月日、処方した医師の氏名など |
調剤済みとなった場合は、規則で定める一部の事項だけで足りるとされています。徳島県の案内でも、調剤後のフォローで行った情報提供や指導の内容は記録が必要と説明されています。記録の様式や、保険の請求にかかわる記録の決まりは、薬局で使っている仕組みや薬剤師会の案内で確かめます。2026年10月時点の情報です。
AIが手伝うのは「要点」の文を整えるところだけ
調剤録の項目のうち、患者さんの氏名、薬名、分量、日付などは、薬局の仕組みや処方箋から入ります。AIで手伝えるのは、薬剤師が書く「情報の提供と指導の内容の要点」の文を整えるところです。
病歴は個人情報保護法第2条第3項の要配慮個人情報に含まれます。AIに渡すのはメモの文だけにし、患者さんの名前や病名は入れません。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランを使うことも、経営者が決めておきます。
今は、閉局後に1日分を思い出して書いている
調剤が続く日は、指導のあとすぐに記録を書く時間が取れません。閉局後に処方箋を見返しながら、1人ずつ思い出して書くことになります。思い出せないことは書けず、記録が薄くなります。
指導のすぐあとに3行だけ書く決まりにすれば、思い出す手間がなくなります。整えるのはAIに任せ、薬剤師は読んで直すだけにします。
メモし、AIが整え、確かめて、残す
1 メモする(薬剤師)。 指導のすぐあとに、聞いたこと、伝えたこと、次に確かめることを3行で書きます。
2 整える(AI)。 メモを渡し、薬局で決めている記録の欄に分けて、読みやすい文に整えてもらいます。
3 確かめる(薬剤師)。 メモと照らし、AIが足した言葉や、意味が変わった所がないかを見ます。
4 残す(薬剤師)。 指導の要点として、調剤録などの記録に入れます。
メモは、この3つの欄で書く
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 聞いたこと | 患者さんから聞いた、飲み方や体の様子、困りごと |
| 伝えたこと | 薬剤師が説明したこと、注意したこと |
| 次に確かめること | 次の来局やフォローの連絡で聞くこと |
メモは、患者さんの言葉をなるべくそのまま書きます。薬剤師の考えは、聞いたこととは分けて書きます。
AIへの頼み方と、返ってくる記録はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、薬剤師が服薬指導のあとに書いたメモです。「聞いたこと」「伝えたこと」「次に確かめること」の欄に分けて、短い文に整えてください。メモにないことは足さないでください。薬の効き目や副作用の説明を書き足さないでください。意味を変えないでください。患者さんの名前や病名は書かないでください。
返ってくる記録(見本の一部。内容は架空です):
聞いたこと:夜の薬を飲み忘れることがある。飲み込みにくいと感じている 伝えたこと:飲み忘れたときの考え方を説明した。飲み込みにくさについて、次回までに様子を聞くと伝えた 次に確かめること:飲み忘れの回数と、飲み込みにくさが続いているか
確かめるときは、足された言葉と意味の変化を見る
AIの整えた文は、渡したメモをもとにしています。それでも、言葉を補う中で、メモにない中身が混ざることがあります。
- メモにない説明や注意が足されていないかを見る
- 「改善した」「問題ない」のような判断の言葉が足されていないかを見る
- 患者さんの言葉の意味が変わっていないかを見る
- 聞いたことと、薬剤師の考えが混ざっていないかを見る
疑義照会と変更の内容は、AIを通さずに書く
施行規則第15条では、処方箋に、医師の同意を得て薬を変えて調剤した場合はその変更の内容を、医師に疑わしい点を確かめた場合はその回答の内容を記入することになっています。第16条では、これらの事項を調剤録にも記入することになっています。
- 疑義照会の回答と変更の内容は、薬剤師が自分で書く。 医師とのやりとりそのものなので、AIで言い換えません
- AIで整えるのは、患者さんへの指導の要点だけにする
- 記録の欄を分けておく。 指導の要点の欄と、疑義照会の欄が混ざらないようにします
メモの書き方をそろえると、記録の質がそろう
薬剤師が何人かいる薬局では、メモの書き方がばらばらだと、記録の質もばらつきます。
- 3つの欄を全員で使う
- よくある指導のメモの見本を作る。 新しく入った薬剤師も同じ書き方ができます
- 月に1回、記録を読み合わせる。 足りなかった所を話し合い、メモの見本を直します
- 新しく入った薬剤師には、最初の1週間だけ先輩が記録を読む。 メモの書き方と、直し方を一緒に確かめます
服薬期間中のフォローの連絡は、薬局の服薬フォローの連絡|薬剤師が決めた中身からAIで下書きし、記録に残すで説明しています。
型をスキルにし、指導の中身はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「メモの3つの欄」「記録の欄と整え方」「書いてはいけないこと(メモにない説明、判断の言葉、患者さんの名前と病名)」をスキルにします。
指導の中身は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、薬剤師が指導の中身を決めてメモに書くこと、メモと照らして直すこと、記録に入れるのは薬剤師が行うことがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1件1円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 記録の整え | メモと指示(入力1千トークンほど)から整えた記録(出力500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件1円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 薬剤師の時間 | メモに1分、確かめに1分ほど(想定) |
必要な人は1役で、記録は薬剤師が残す
- 薬剤師:指導のすぐあとにメモを書き、AIで整え、照らして直し、記録に入れる
経営者は、AIに渡してよい情報と使うプランを決め、記録の読み合わせの時間を取ります。
2週間でメモの型ができ、閉局後の記録が減る見込み
- 1週目:3つの欄でメモを書き始め、閉局後に記録にかかった時間を測る
- 1週目:数日分のメモをAIに整えさせ、薬剤師が照らす
- 2週目:指示と書いてはいけないことをスキルにまとめる
- 3週目以降:毎日の指導で使い、閉局後の記録の時間を始める前と比べる
閉局後にまとめて書くと失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 閉局後に1日分を思い出して書く。 何を話したかがあいまいになります
- AIの文をそのまま記録に入れる。 メモにない説明や判断が混ざることがあります
- 患者さんの名前や病名ごとAIに渡す。 要配慮個人情報を、必要もなく渡してしまいます
まとめ
- 薬剤師法第28条と施行規則第16条で、調剤録には情報の提供と指導を行った年月日、薬剤師の氏名、内容の要点などを記入し、3年間保存する
- 調剤後のフォローで行った情報提供や指導の内容も、記録が必要
- 薬剤師が指導のすぐあとに3行のメモを書き、AIが欄に整える
- 薬剤師がメモと照らして、足された言葉や意味の変化を直してから記録に入れる
- AIに渡すのはメモの文だけにし、名前と病名は入れない