定期検診の時期が来た患者さんに案内が届く。予約の記録からAIで下書きする仕組み
この記事で変わる経営指標
この記事では、小さな歯科医院の定期検診の案内と事務をAIで回す。広告のルールも守るの「定期検診の案内は、時期の来た人を計算で選びAIが一言添える」を、仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、毎週月曜に、予約の記録から、前回の定期検診から決めた期間が過ぎて次の予約が入っていない患者さんを計算で選ぶ。AIが、患者さんが希望した連絡方法(メッセージ、はがき、電話)に合わせて案内の一言を下書きし、受付が確かめて送る。案内のあとに予約が入ったかを記録し、入らなかった人には時期をずらしてもう一度案内するという形です。
今は定期検診の案内が、受付の手が空いた週にだけ出ている
多くの小さな歯科医院では、定期検診の案内は次のように進んでいます。
- 受付が、手の空いた日に、予約の記録やカルテから前回の検診から時期が来た患者さんを探す
- はがきに宛名を書くか、メッセージを1件ずつ打つ
- 送ったかどうかの記録が残らず、同じ人に二度送ったり、送り忘れたりする
- 忙しい月は案内そのものが止まる
親の記事でお伝えしたとおり、定期検診に通う患者さんは医院にとって長く続く関係です。案内が止まった月に、患者さんはそのまま来なくなることがあります。手で回すと、受付の忙しさに案内の量が左右されます。
毎週、時期の来た患者さんが並び、受付が確かめて送る
仕組みは4つの段でできています。
1. 集める:予約の記録と、患者さんの連絡の希望を読み込む。 毎週月曜の朝に、予約の記録から、患者さんごとの最後の定期検診の日、次の予約の有無、案内の間隔(3か月、6か月など。歯科医師が患者さんごとに決めたもの)を読み込みます。あわせて、患者さんが希望した連絡方法と、案内を断ったかどうかの記録を読み込みます。
2. 選ぶ:時期が来た患者さんを計算で選ぶ。 ここは計算です。次の条件をすべて満たす患者さんを選びます。
- 最後の定期検診から、決めた間隔が過ぎている
- 次の予約が入っていない
- 案内を断っていない
- 治療の途中ではない(治療中の患者さんは、案内ではなく担当の歯科医師が声をかける)
- この1か月に案内を送っていない
3. 下書きする:AIが案内の一言を下書きする。 AIが、選ばれた患者さんごとに、前回の来院の時期と、医院で決めた案内の言葉(季節の一言、予約の取り方)をもとに、連絡方法に合った長さの案内を下書きします。病名、治療の内容、体の状態には触れません。医院の診療時間と予約の取り方は、医院の決まりの表から差し込みます。
4. 送る:受付が確かめて送り、予約が入ったかを記録する。 受付は、並んだ下書きを確かめて送ります。はがきの希望の人は、宛名と文面をまとめて印刷します。電話の希望の人は、話す内容のメモとして使います。送った日が記録に残り、その後に予約が入ったかを翌週の計算で確かめます。予約が入らなかった人には、1か月後にもう一度だけ案内します。
案内の言葉をスキルにし、選び方と連絡の希望はAIの外で持つ
この仕組みが毎週同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の計算で決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
案内の言葉と書いてはいけないことを Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 案内の型:あいさつ、前回の来院からの時期、定期検診のお誘い、予約の取り方
- 連絡方法ごとの長さ:メッセージは短く、はがきは季節の一言を添えて
- 書いてはいけないこと:病名、治療の内容、体の状態、ほかの患者さんの話(体験談)、「痛くない」「すぐ終わる」のような効果や手軽さの強調。親の記事で紹介した厚生労働省の事例解説書は、体験談を省令で禁止される例として、治療後の定期的な処置が必要なのにすべての治療が短期間で終わるような表現を虚偽広告の例として挙げています(第6版、神戸市が掲載している第3版でも同じ)。案内はホームページとは別のものですが、同じ考え方で書きます
- 受付が直した良い案内の見本
選ぶ条件と連絡の希望は、AIに判断させない。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、最後の定期検診からの期間と次の予約の有無を計算すること、案内を断った人と治療中の人を外すこと、この1か月に送った人を外すこと、予約が入ったかを翌週に確かめることがそれに当たります。誰に送るかは、記録と計算で決めます。
受付の仕事は、並んだ案内を確かめて送ることになる
仕組みが入ると、定期検診の案内は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 送る相手を探す | 受付が手の空いた日に記録を見て探す | 毎週月曜に計算で並ぶ |
| 文面 | はがきやメッセージを1件ずつ書く | 連絡方法に合った下書きが並ぶ |
| 外す人 | 受付の記憶に頼る | 断った人、治療中の人、最近送った人が外れる |
| 送ったあと | 記録が残らない | 送った日と、その後の予約が記録に残る |
| 予約が入らなかった人 | そのまま | 1か月後にもう一度だけ案内する |
受付は、毎週月曜に並んだ案内を確かめて送るだけです。忙しい週でも、案内が止まりません。
経営への効果は、案内が止まらず定期検診に戻る人が増えること
効果は、前提を置いて考えます。親の記事では、定期検診の案内を月150件、1件5分から1分にできると見積もりました。AIのチャットを使って手で回すやり方でも、相手を探して貼り付ける手間で1件3分ほどかかるとします。仕組みが入って1件1分になれば、月約5時間、1時間あたりの人件費を仮に2,500円として月約1万2,500円分です。
ただ、この仕組みの価値は、時間よりも、案内が毎週止まらずに届くことにあります。案内のあとに予約を入れる患者さんが増えれば、その分だけ予約が埋まります。1回の定期検診の売上は医院ごとに違うので、効果は「案内した人のうち予約を入れた人の数」を仕組みの前後で比べ、自院の売上の数字を掛けて確かめてください。
費用は作る費用が中心で、AIの利用料は月150件で100円ほど
作る順番と、かかる日数
- 患者さんごとの案内の間隔と、連絡の希望、案内を断ったかどうかの記録をそろえる(院内:歯科医師と受付、1〜2日)。ここがいちばん大事です。間隔は歯科医師が決めます
- 案内の型と、書いてはいけないことを決める(院内:院長、半日)
- 予約の記録の読み込みと、時期が来た患者さんの選び出しを作る(作る人、1人日)
- AIの下書きと、診療時間などの差し込み、受付への並べ方、はがきの印刷を作る(作る人、1.5人日)
- 1か月、20人ほどで試して直す(作る人、0.5人日)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
上の手順3〜5で、作る側の目安は合計3人日です。予約のシステムが、予約の記録の書き出しやメッセージの送信に対応していれば、その機能を使うと早く作れます。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の医院での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 案内1件の下書きごとにかかる | 月150件で100円ほど(下の計算) |
| 送る費用 | はがき代、メッセージの送信料 | 今と同じ |
| 保守 | 間隔と連絡の希望の更新、スキルの見直し | 月1時間 |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1件あたり、来院の時期と医院の決まりとスキルを合わせて800トークンを読ませ、250トークンを書かせると見積もると、約0.004ドル、1ドル150円で約0.6円です。月150件で100円ほどです。
何か月で取り戻せるか
取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)
時間の効果だけで見ると、仮に作る費用が20万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)が3,000円なら、上の月約1万2,500円の効果で、およそ21か月です。時間だけでは長めです。案内のあとに予約を入れる患者さんが月に何人か増えれば、その売上で取り戻す月数は短くなります。仕組みを作る前に、親の記事のやり方で3か月ほど案内を続け、予約が入る割合を確かめてから判断するのがおすすめです。
必要な人は3役で、間隔を決めるのは歯科医師
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 送る人 | 受付 | 毎週月曜に並んだ案内を確かめて送る。断りの連絡を記録する | 週30分 |
| 決める人 | 歯科医師 | 患者さんごとの案内の間隔を決める。治療中の患者さんに声をかける | 診療のなかで |
| 作る人 | 院内の詳しい人か、外の作り手 | 選び出し、下書き、並べ方、記録を作る | 最初の3人日 |
1か月で毎週並び、半年で予約に戻る割合の変化が分かる見込み
どこまでいけるかは、案内の間隔と連絡の希望がどれだけ記録にそろっているかで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の1か月 | 20人ほどで試す。間隔や連絡の希望が記録にない患者さんが多く、受付が埋めていく |
| 3か月 | 時期が来た患者さんのほとんどに、毎週案内が届く |
| 半年 | 案内した人のうち予約を入れた人の割合を、仕組みの前と比べられる |
効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。
- 案内を送った患者さんの数:送った日の記録から数えます
- 案内のあとに予約を入れた割合:翌週以降の予約の記録から数えます
- 定期検診の予約の数:月ごとの予約の記録から比べます
病状に触れたり、断った人に送ったりすると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 病名や治療の内容に触れる。 はがきは家族の目に触れることがあります。案内には病名や治療の内容を書きません
- 断った人や治療中の人に送る。 案内を断った人に送り続けると、医院への信頼を失います。治療中の人に定期検診の案内が届くと、混乱のもとになります。外す条件は計算で守ります
- 何度も送る。 予約が入らなかった人への案内は1回までにします。しつこい案内は逆効果です
- 確かめずに自動で送る。 引っ越しや転院の連絡を受けていたのに記録が直っていない、ということがあります。送る前に受付が一覧を確かめます
患者さんの名前や来院の記録は、とても大事な個人情報です。AIに渡すのは、名前と来院の時期など案内に必要なものだけにし、病名や治療の内容は渡しません。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、院内のルールに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。
まとめ
- 毎週月曜に、予約の記録から、決めた間隔が過ぎて次の予約がない患者さんを計算で選ぶ。AIが連絡方法に合った案内の一言を下書きし、受付が確かめて送る
- 案内を断った人、治療中の人、最近送った人は計算で外す。予約が入らなかった人には1か月後に1回だけもう一度案内する
- 案内に病名や治療の内容を書かない。体験談や効果の強調も使わない
- 作る費用の目安は3人日、AIの利用料は月150件で100円ほど。時間だけで見ると取り戻すのに約21か月。予約に戻る割合の変化を、手で回すやり方で先に確かめてから判断する
- 案内の間隔は歯科医師が患者さんごとに決める