探偵事務所のAI活用|説明と契約の書面、教育の記録を整え、調査に集中する
この記事で変わる経営指標
この記事では、小さな探偵事務所を営む社長に向けて、AIが効く業務を4つ挙げ、どう使うかを説明します。一言でいうと、重要事項の説明の書面、契約の書面、従業者への教育の記録、調査報告書の清書を、AIに下書きや整理をさせる。調査そのものと、依頼を受けるかの判断は人が行うという話です。
AIの価値は、調査の代わりをすることではありません。法律で決まった書面と記録、報告書の清書のように、事務所に残る書きものを減らし、社長と調査員が依頼者と向き合い、調査に出る時間を増やすことです。
経営への効果は、書面の不備をなくし、依頼者に信頼されること
探偵事務所に相談する人は、不安を抱えています。費用がいくらかかるのか、何を調べてもらえるのか、結果をどう受け取れるのか。最初の説明が分かりやすく、書面がそろっている事務所ほど、安心して依頼してもらえます。
ところが小さな事務所では、社長が相談、調査、報告書づくりをすべて受け持っています。書面は前に作った型を使い回し、事項が抜けていても気づかないことがあります。
警察庁の「令和7年中における探偵業の概況」によると、令和7年末の探偵業の届出数は7,354件です。同じ年の探偵業者への指示は19件で、そのうち4件が書面交付違反、2件が書面受理違反、2件が教育義務違反、2件が名簿の不整備などでした。書面と記録の不備は、実際に処分の理由になっています。
AIで書面と記録の下書きを引き受ければ、社長は依頼者の話を聞くことと、調査に時間を使えます。
| 業務 | 今のやり方(よくある形) | AIで変わること | 経営効果 |
|---|---|---|---|
| 重要事項の説明 | 古い型を使い回す | 9つの事項をそろえた書面を下書き | 信頼 |
| 契約の書面 | 手で書き写す | 相談の記録を決まった欄に並べる | 業務の無駄 |
| 教育の記録 | 話したことが残らない | 話した内容を記録の形に整える | 信頼 |
| 調査報告書 | 夜に一から書く | 調査員のメモを報告書の形に整える | 信頼 |
契約の前に9つの事項を書面で説明し、契約したら書面を渡す
e-Gov法令検索で探偵業の業務の適正化に関する法律を確かめると、第8条第1項で、契約を結ぶ前に、次の9つの事項について書面を渡して説明することとされています。
- 事務所の商号・名称・氏名と住所、法人なら代表者の氏名
- 届け出た公安委員会の名称
- 個人情報保護法その他の法令を守ること
- 秘密の保持などに関すること(第10条)
- 提供できる探偵業務の内容
- 探偵業務の委託に関すること
- 対価など依頼者が払う金銭の概算額と支払いの時期
- 契約の解除に関すること
- 探偵業務で作ったり取ったりした資料の処分に関すること
第8条第2項では、契約を結んだら、遅滞なく、契約の内容を明らかにする書面を渡すこととされています。担当者の氏名と契約年月日、調査の内容・期間・方法、報告の方法と期限、対価の額と支払いの時期と方法などを書きます。
また第7条では、契約を結ぼうとするときは、依頼者から、調査の結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いなどに使わないことを示す書面を受け取ることとされています。
従業者に教育し、名簿を退職から3年残す
第11条では、従業者に、探偵業務を適正に行うための教育をすることとされています。第12条では、営業所ごとに従業者の名簿を備えることとされています。施行規則の第4条で、名簿には氏名、住所、性別、生年月日、採用と退職の年月日、従事させる業務の内容を書き、写真を貼り、退職した日から3年を経過する日まで備えておきます。
第13条では、公安委員会は営業所に立ち入り、帳簿や書類を検査できるとされています。細かな決まりと様式は、営業所のある都道府県の警察の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
重要事項の説明は、9つの事項をそろえた書面を下書きする
人がすること(最初に)。 料金表、契約の解除の決まり、資料の処分の決まり、委託の有無を、事務所の決まりとして1枚にします。
AIに頼むこと。 事務所の決まりを渡し、9つの事項がそろった説明の書面を、依頼者が読みやすい言葉で下書きしてもらいます。
人がすること(そのあと)。 社長が、9つの事項が抜けていないか、料金の額が料金表と同じかを確かめます。料金の額はAIに書かせず、料金表から写します。事務所の決まりの欄と書面の見本は、探偵の重要事項説明書|9つの事項をAIで書面にそろえ、契約の前に渡すで説明しています。
契約の書面は、相談の記録を決まった欄に並べる
AIに頼むこと。 相談のときのメモ(依頼者の名前は記号に置き換える)を渡し、契約の書面の欄(調査の内容・期間・方法、報告の方法と期限、対価、解除、資料の処分)に並べてもらいます。
人がすること(そのあと)。 社長が、依頼者と決めた内容と合っているかを確かめ、名前と金額を書き入れて渡します。
教育の記録は、話した内容を記録の形に整える
AIに頼むこと。 社長が従業者に話したこと(法令を守ること、秘密の保持、資料の扱いなど)の録音やメモを渡し、日時、場所、内容、話した人と聞いた人の欄に並べてもらいます。
人がすること(そのあと)。 社長が確かめて残します。何を教えるかは社長が決めます。
調査報告書は、調査員のメモを報告書の形に整える
AIに頼むこと。 調査員の時刻ごとのメモを渡し、報告書の形(日時、場所、見たこと)に整えてもらいます。調査対象者の名前や住所は記号に置き換えてから渡します。
人がすること(そのあと)。 調査員と社長が、写真と照らして、見たことだけが書かれているかを確かめます。推測や評価の言葉は消します。
書面と記録は、営業所ごとに一覧で持つ
書面と記録がそろっているかは、一覧で見ると分かります。
- 依頼ごとの一覧を作る。 依頼の番号ごとに、説明の書面を渡した日、違法目的に用いない旨の書面を受け取った日、契約の書面を渡した日を書きます
- 空欄の依頼を週に1回見る。 書面が抜けている依頼に、すぐ気づけます
- 従業者の一覧を作る。 入った日、教育をした日、退職した日、名簿を消してよくなる日を書きます。日付の計算は表計算の式でします
調査と、依頼を受けるかの判断はAIに任せない
AIに任せないことを、先に決めておきます。
- 依頼を受けるかの判断。 第9条で、調査の結果が違法な行為に使われると知ったときは、業務を行ってはなりません。依頼の目的を聞き、受けるかを決めるのは社長です
- 調査そのもの。 第6条で、人の生活の平穏を害するなど、個人の権利利益を侵害しないようにすることとされています
- 秘密と資料の扱い。 第10条で、業務で知った秘密を漏らさず、資料の不正な利用を防ぐ措置をとることとされています。調査対象者の情報は、記号に置き換えるか、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います
- 料金の額と、報告書の最終の確認
型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「重要事項の9つの事項」「契約の書面の欄」「教育の記録の欄」「報告書の形」「させないこと(料金の額を書く、推測を書く、名前を書く)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、社長が依頼の目的を聞いて受けるかを決めること、名前を記号に置き換えてからAIに渡すこと、料金を料金表から写すことがそれに当たります。
始める順番は、決まりがはっきりした書面から決める
- 重要事項の説明の書面:事項が法律で決まっていて、一度作れば使い回せる
- 契約の書面:説明の書面と同じ決まりから作れる
- 教育の記録:話したあとに整えるだけで、すぐに効く
- 調査報告書:個人の情報が多いので、記号に置き換える手順を決めてから始める
費用は、法人向けプランの月数千円から始められる
書面と記録の下書きは、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランのチャットで足ります。費用は1人あたり月数千円です。
明日からは、今の説明の書面を9つの事項と照らす
- 今使っている重要事項の説明の書面を出す
- AIに、第8条第1項の9つの事項と照らさせ、抜けている事項に印を付けさせる
- 社長が、抜けていた事項を事務所の決まりから書き足す
契約の書面と教育の記録は、その次に整えます。
効果は、書面の抜けの数と、報告書にかかる時間で測る
| 測るもの | 見方 |
|---|---|
| 書面の抜け | 説明の書面と契約の書面で、抜けていた事項の数 |
| 教育の記録 | 記録に残した教育の回数 |
| 報告書の時間 | 調査のあと、報告書を書き終えるまでの時間 |
| 相談から契約まで | 相談した人のうち、契約した人の割合 |
始める前の1か月を、先に測っておきます。
まとめ
- 契約の前に9つの事項を書面で説明し、契約したら遅滞なく契約の書面を渡す
- 依頼者から、調査の結果を違法な行為に使わない旨の書面を受け取る
- 従業者に教育を行い、名簿を退職から3年残す
- AIが効くのは、重要事項の説明、契約の書面、教育の記録、調査報告書の清書の4つ
- 調査そのもの、依頼を受けるかの判断、秘密と資料の扱いはAIに任せない