運転代行の苦情処理簿|経緯を整理してAIで下書きし、5つの欄を2年残す
この記事で変わる経営指標
この記事では、運転代行のAI活用|乗務記録と苦情・指導の帳簿を整え、夜の受付に集中するの「苦情の記録は、経緯を5つの項目に並べる」を、苦情を受けた日から使える手順にして説明します。
一言でいうと、苦情を受けた人が、聞いたままをメモし、運転した2人にも話を聞く。AIが、経緯を時系列に並べ、お客さまへの返事と苦情処理簿を下書きする。社長が、約款と照らして、原因と改善措置を決める。事務が苦情処理簿に綴じて、2年残す。賠償の判断は社長が約款に沿って決めるという形です。
経営への効果は、苦情をこじらせず、同じ苦情をくり返さないこと
運転代行の苦情は、料金、待ち時間、運転の仕方、そしてお客さまの車の傷についてのものが多くなります。お客さまはお酒を飲んだあとで、翌朝になってから車の傷に気づくこともあります。
返事が遅かったり、経緯を確かめずに答えたりすると、お客さまの不満は大きくなります。逆に、運転した従業員の話を聞かずに謝るだけだと、従業員は会社に守られていないと感じます。
受けた日のうちに経緯をそろえ、約款に沿って返事をすれば、お客さまにも従業員にも筋の通った対応ができます。経緯の整理と下書きをAIに任せれば、社長は事実の確認と改善措置を考えることに時間を使えます。苦情処理簿を見返せば、同じ苦情がくり返されていないかも分かります。
苦情処理簿には、5つの欄を書いて2年残す
e-Gov法令検索で自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律を確かめると、第20条第2項で、営業所ごとに苦情の処理に関する帳簿を備え付け、必要なことを書いておくこととされています。
国土交通省関係の施行規則の第10条では、苦情処理簿に書くことが次の5つと決まっています。
- 苦情を申し出た人の氏名と連絡先、苦情の内容
- 原因究明の結果
- 苦情に対する弁明の内容
- 改善措置
- 苦情処理を担当した人
この帳簿は、作った日から2年間保存します。秋田県警察本部の「自動車運転代行業を始める方へ」でも、苦情処理簿は作成の日から2年間保存すると説明されています。
法律の第21条では、公安委員会と国土交通大臣は、営業所に立ち入って帳簿を検査できるとされています。細かな様式は、営業所のある都道府県の警察の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
車の傷の苦情は、約款と損害賠償の措置に沿って答える
運転代行の苦情で一番こじれやすいのは、お客さまの車の傷です。法律と施行規則では、次のことが決まっています。
- 損害を賠償する措置(法第12条)。 お客さまの車を運転して生じた損害を賠償するための措置を、あらかじめ講じておきます
- 約款に責任を書く(法第13条、施行規則第5条)。 約款には、責任の始まりと終わり、免責、損害賠償について書きます
車の傷の苦情を受けたら、まず約款の責任の範囲と、損害賠償の措置の内容を確かめます。お金を払うかどうか、いくら払うかを、受けた人やAIの下書きで約束しません。
今は、電話を受けた人が覚えている範囲で答えている
小さな運転代行の会社では、次のような形が多いと思います。
- 苦情の電話を受けた人が、その場で謝って終わる
- 運転した2人に話を聞くのは次の夜。聞いた内容は口頭のまま
- 苦情処理簿には「対応済み」と一言だけ書く。原因と改善措置の欄が空いている
- 車の傷の苦情で、約款を見ずに答えてしまう
この形だと、苦情処理簿の5つの欄がそろいません。そして、同じ苦情がくり返されても気づけません。
聞き、AIが並べ、決めて、残す
1 聞く(受けた人)。 お客さまの話を聞いたままメモします。名前と連絡先、利用した日時と場所、何があったかを聞きます。お客さまの車を運転した人と、随伴用の車を運転した人の2人にも、その日のうちに話を聞きます。
2 並べる(AI)。 お客さまの話、2人の話、乗務記録を渡し、経緯を時系列に並べてもらいます。そのうえで、お客さまへの返事と、苦情処理簿の5つの欄を下書きしてもらいます。
3 決める(社長)。 乗務記録や写真と照らし、原因を確かめます。車の傷なら約款の責任の範囲を確かめます。改善措置を決めます。
4 残す(事務)。 返事を送り、苦情処理簿に綴じて、作った日から2年残します。
苦情のメモは、この6つの欄で書く
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 受けた日時と受けた人 | 〇月〇日〇時、事務の〇〇 |
| お客さまの名前と連絡先 | 苦情処理簿に書くので必ず聞く |
| 利用した日時と場所 | 〇月〇日〇時ごろ、〇〇の飲食店から自宅まで |
| お客さまの話 | 言葉をそのまま書く。受けた人の感想は書かない |
| 運転した2人の話 | 2人から聞いたことをそれぞれ書く |
| 照らした記録 | 乗務記録、写真、説明の紙の控え |
AIには、名前と連絡先を除いて渡し、苦情処理簿に戻すときに人が書き足します。
AIへの頼み方と、返ってくる経緯と返事はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、運転代行の会社が受けた苦情のメモと、運転した2人の話と、乗務記録です。まず、経緯を時系列に並べてください。お客さまの話と2人の話が違うところは、両方を並べて「食い違い」と書いてください。次に、苦情処理簿の欄(苦情の内容、原因究明の結果、弁明の内容、改善措置、担当者)の下書きを作ってください。原因と改善措置は「社長が決める」と空けてください。最後に、お客さまへの返事の下書きを作ってください。誰が悪いかや、お金を払うかどうかは書かないでください。
返ってくる返事(見本。内容は架空です):
〇〇様 このたびは当社をご利用いただき、ありがとうございました。〇月〇日のご利用で、お車の左側に傷があったとのお申し出をいただきました。当日運転した2名から話を聞き、記録を確かめております。(ここに確かめた結果と、約款に沿った当社の対応を書く)。
確かめるときは、食い違いと約束と約款を見る
AIの下書きは、渡したメモと記録をもとにしています。それでも、並べる途中で話を補ったり、言い切ったりすることがあります。
- 食い違いが両方とも書かれているかを見る。 片方の話だけで経緯ができていないかを確かめます
- 決めつけがないかを見る。 「当社の従業員がぶつけました」「もともとあった傷です」は、確かめる前に書きません
- お金の約束がないかを見る。 修理代を払う、返金するといった言葉は、社長が約款と損害賠償の措置を確かめてから決めます
- 約款と照らす。 責任の始まりと終わり、免責の書き方と、返事の言葉が合っているかを見ます
改善措置は、従業員への指導と記録につなげる
改善措置は、苦情処理簿を埋めるためだけのものではありません。
- 全員に話す。 料金の説明や車の受け渡しの仕方を見直したら、待機のときに全員に話し、指導記録簿に残します
- 車の受け渡しの前に、傷を一緒に見る。 車の傷の苦情が続くなら、乗る前にお客さまと車の周りを見て、写真を撮る手順を入れます
- 同じ種類の苦情を数える。 月に1回、苦情処理簿を種類ごとに数えます
従業員への指導の記録の付け方は、運転代行の従業員への指導|決まった5つの事項をAIで記録に整え、2年残すで説明しています。
型をスキルにし、原因と賠償はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「メモの6つの欄」「苦情処理簿の5つの欄」「返事の見本」「させないこと(決めつけ、お金の約束、お客さまの名前を書く)」をスキルにします。
原因と賠償は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、社長が乗務記録と写真で事実を確かめること、約款と損害賠償の措置に沿って賠償を決めること、改善措置を指導につなげることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1件2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 経緯と返事と記録の下書き | メモと記録(入力2千トークンほど)から下書き(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 社長の時間 | 記録と約款を照らして措置を決めるのに1件数十分(想定) |
必要な人は3役で、原因と賠償は社長が決める
- 受けた人(事務など):聞いたままをメモし、運転した2人に話を聞く段取りをする
- 社長:記録と約款を照らして原因を確かめ、改善措置と賠償を決め、返事を確かめる
- 事務:AIに下書きさせ、苦情処理簿に綴じて2年残す
社長が電話も受ける会社では、メモの欄を紙にして電話のそばに置いておきます。
1週間で型ができ、次の苦情から使える見込み
- 1日目:メモの6つの欄を紙にし、電話のそばに置く
- 2〜3日目:過去の苦情を1件、AIに並べさせて、苦情処理簿の5つの欄を下書きさせる
- 4〜5日目:返事の見本と、させないことをスキルにまとめる。約款の責任と損害賠償の部分を、すぐ見られるようにしておく
- 次の苦情から:受けた日のうちにメモをそろえ、苦情処理簿を2年残す
その場で賠償を約束すると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 電話でその場で修理代を払うと言う。 約款と損害賠償の措置を確かめてから、社長が決めます
- 苦情処理簿に「対応済み」とだけ書く。 原因究明の結果と改善措置の欄を空けたままにしません
- 運転した1人にしか話を聞かない。 随伴用の車を運転した人の話も聞きます
まとめ
- 苦情処理簿には、申し出た人の氏名と連絡先と苦情の内容、原因究明の結果、弁明の内容、改善措置、担当者を書き、2年残す
- 車の傷の苦情は、約款の責任の範囲と損害賠償の措置に沿って答える
- 受けた人のメモと運転した2人の話と乗務記録から、AIが経緯を並べ、返事と記録を下書きする
- 原因、改善措置、賠償は社長が決め、改善措置は従業員への指導につなげる
- 誰が悪いかの決めつけと、お金の約束はAIに書かせない