運転代行のAI活用|乗務記録と苦情・指導の帳簿を整え、夜の受付に集中する
この記事で変わる経営指標
この記事では、小さな運転代行の会社を営む社長に向けて、AIが効く業務を4つ挙げ、どう使うかを説明します。一言でいうと、料金の説明の紙、乗務記録、苦情の記録、従業員への指導の記録を、AIに下書きや整理をさせる。安全運転の管理と、お客さまの車の運転は人が行うという話です。
AIの価値は、運転の代わりをすることではありません。法律で決まった帳簿と、お客さまへの説明の書きものを減らし、社長と従業員が夜の受付と運転に集中できるようにすることです。
経営への効果は、帳簿を守りながら、夜の受付を取りこぼさないこと
運転代行の仕事は、夜の飲食店が閉まる時間に集中します。電話を受け、従業員を割り振り、お客さまの車と随伴用の車を走らせる。社長や少ない事務の人が、その合間に帳簿を付けています。
帳簿が後回しになると、翌日の昼にまとめて書くことになります。日報の字が読めない、料金の額が合わない、苦情の経緯を誰も覚えていない。こうした抜けは、警察や運輸局の立入検査で問題になりますし、お客さまとのトラブルのもとにもなります。
AIで帳簿の下書きと説明の紙を引き受ければ、社長は夜の受付と従業員の割り振りに集中できます。取りこぼす電話が減れば、売上につながります。
| 業務 | 今のやり方(よくある形) | AIで変わること | 経営効果 |
|---|---|---|---|
| 料金の説明 | 口で説明し、紙は古いまま | 料金表と約款から説明の紙を下書き | 信頼 |
| 乗務記録 | 従業員の日報を翌日に写す | 日報を決まった欄に整え、空欄に印 | 業務の無駄 |
| 苦情の記録 | 受けた人が覚えている範囲で対応 | 経緯を5つの項目に並べる | 信頼 |
| 指導の記録 | 話したことが記録に残らない | 話した内容を記録の形に整える | 安全 |
帳簿は営業所に備え、2年間残す
e-Gov法令検索で自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律を確かめると、第20条で、営業所ごとに、運転代行業務従事者の名簿や、苦情の処理に関する帳簿などを備え付け、必要なことを書いておくこととされています。中身は、警察と国土交通省のそれぞれの施行規則で決まっています。
| 帳簿 | 決めている規則 | 主な中身 | 保存 |
|---|---|---|---|
| 従事者の名簿 | 国家公安委員会関係の施行規則 第14条・第15条 | 氏名、住所、生年月日、運転免許の種類と番号など | 退職の日から2年 |
| 乗務記録 | 同 第14条・第15条 | 始業と終業の日時、役務ごとの開始と終了の日時と場所、距離、代行運転の車か随伴用の車かの別、休憩、交通事故 | 最後に書いた日から2年 |
| 苦情処理簿 | 国土交通省関係の施行規則 第10条 | 申し出た人の氏名と連絡先と苦情の内容、原因究明の結果、弁明の内容、改善措置、担当者 | 作成の日から2年 |
| 指導記録簿 | 同 第9条・第10条 | 指導を行った者と受けた者の氏名、日時、場所、内容 | 作成の日から2年 |
| 役務ごとの記録 | 同 第10条 | 役務ごとの開始と終了の地点と日時、距離、収受した料金など | 作成の日から2年 |
秋田県警察本部の「自動車運転代行業を始める方へ」でも、従事者名簿は退職した日から2年間、乗務記録は最後に記載した日から2年間、苦情処理簿と従業員の指導記録簿は作成の日から2年間保存すると説明されています。
細かな決まりと様式は、営業所のある都道府県の警察の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
料金と約款の概要は、口頭と書面で説明する
同じ法律の第15条では、代行運転を提供しようとするときは、料金や約款の概要などを説明し、その説明どおりに提供することとされています。国土交通省関係の施行規則の第7条では、説明する事項が決まっています。
- 業者の氏名または名称と、従事者の氏名
- 掲示した料金と、支払う料金の概算額
- 約款の概要
- 随伴用の車で、タクシーのようにお客さまを運ぶことはできないこと
説明は口頭と書面の交付で行います。料金の概算額は、口頭で足ります。
料金の説明の紙は、料金表と約款から下書きする
人がすること(最初に)。 掲示している料金表と、約款を手元にそろえます。
AIに頼むこと。 料金表と約款を渡し、第7条の事項がそろった説明の紙を、お客さまが夜でも読みやすい大きさと言葉で下書きしてもらいます。
人がすること(そのあと)。 社長が、料金と約款の原本と照らして確かめます。料金の額はAIに書かせず、料金表から写します。説明の紙の欄と見本は、運転代行の料金の説明|料金表と約款からAIで説明の紙を作り、口頭とあわせて渡すで説明しています。
乗務記録は、従業員の日報を欄に整える
AIに頼むこと。 従業員の日報の写真を渡し、乗務記録の欄(始業と終業、役務ごとの開始と終了の日時と場所、距離、代行運転の車か随伴用の車か、休憩、事故)に並べてもらいます。読み取れない欄には印を付けさせます。
人がすること(そのあと)。 事務が日報の原本と照らし、空欄を従業員に聞いて埋めます。距離と料金の数字は原本から写します。
苦情の記録は、経緯を5つの項目に並べる
AIに頼むこと。 受けた人のメモと、従業員の話と、乗務記録を渡し、経緯を時系列に並べてもらいます。そのうえで、苦情処理簿の5つの項目(氏名と連絡先と内容、原因究明の結果、弁明の内容、改善措置、担当者)の下書きを作らせます。
人がすること(そのあと)。 社長が事実を確かめ、原因と改善措置を決めます。お客さまの名前と連絡先は、AIに渡さず人が書き足します。
指導の記録は、話した内容を記録の形に整える
第18条では、従業員に、料金の受け取り方や、提供の条件の説明の仕方など、お客さまの利益を守ることについて指導することとされています。
AIに頼むこと。 社長が従業員に話したことをスマホで録音するかメモにして渡し、指導記録簿の欄(行った者と受けた者、日時、場所、内容)に並べてもらいます。
人がすること(そのあと)。 社長が確かめて残します。何を指導するかは社長が決めます。
帳簿は、保存期間の終わりの日を一覧で持つ
帳簿ごとに、2年の数え始めが違います。名簿は退職の日から、乗務記録は最後に書いた日から、苦情処理簿と指導記録簿は作った日からです。
- 帳簿の種類ごとにフォルダを分ける。 紙でもファイルでも、種類と月で並べます
- 数え始めの日と、消してよくなる日を表に書く。 日付の計算は表計算の式でします。AIに数えさせません
- 退職した人の名簿を残す。 退職の日を名簿に書き、2年たつまで消しません
安全運転の管理と、お客さまの車の運転はAIに任せない
AIに任せないことを、先に決めておきます。
- 安全運転の管理。 第19条で、道路交通法の安全運転管理者などの決まりが運転代行業者にも読み替えて当てはめられます。従業員の体調や運転の管理は、人が行います
- お客さまの車の運転と、配車の判断
- 料金の額と、苦情の原因と改善措置の決定
- お客さまの情報を入れすぎない。 名前、電話番号、自宅の場所は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱うか、AIに渡しません
型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「説明の紙の型」「乗務記録の欄」「苦情処理簿の5項目」「指導記録簿の欄」「させないこと(料金や距離の数字を書く、原因を決める、お客さまの名前を書く)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、数字を料金表と日報の原本から写すこと、原因と改善措置を社長が決めること、帳簿の保存期間を一覧で見ることがそれに当たります。
始める順番は、毎日の量が多く、間違えても直せる仕事から決める
- 乗務記録:毎晩あり、日報の原本と照らせば直せる
- 料金の説明の紙:一度作れば使い回せる
- 指導の記録:話したあとに整えるだけで、すぐに効く
- 苦情の記録:件数は少ないが、経緯の整理に時間がかかる
費用は、法人向けプランの月数千円から始められる
帳簿と説明の紙の下書きは、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランのチャットで足ります。費用は1人あたり月数千円です。配車の仕組みとつなぐ場合は、その仕組みの会社に、つなげるかと費用を確かめます。
明日からは、1人分の日報を1週間、欄に整えてみる
- 従業員1人の日報を1週間分、写真に撮る
- AIに乗務記録の欄に並べさせ、読み取れない欄に印を付けさせる
- 事務が原本と照らして直した時間と、これまで写していた時間を比べる
説明の紙は、その次に作ります。
効果は、帳簿にかかる時間と、取りこぼした電話の数で測る
| 測るもの | 見方 |
|---|---|
| 帳簿の時間 | 乗務記録と指導記録にかけた時間 |
| 空欄の数 | 月末に見つかる帳簿の空欄の数 |
| 取りこぼした電話 | 出られなかった電話、断った依頼の数 |
| 苦情の返事 | 申し出から返事までの日数 |
始める前の1か月を、先に測っておきます。
まとめ
- 運転代行の会社は、従事者の名簿、乗務記録、苦情処理簿、指導記録簿などを営業所に備え、2年間残す
- 料金と約款の概要などは、口頭と書面で説明する
- AIが効くのは、料金の説明の紙、乗務記録、苦情の記録、指導の記録の4つ
- 料金と距離の数字は原本から写し、苦情の原因と改善措置は社長が決める
- 安全運転の管理と、お客さまの車の運転はAIに任せない