フリーランスの募集を正しく書く。条件は表から、文はAIで
この記事で変わる経営指標
この記事では、フリーランスへの発注を法律に合わせる。条件の明示はAI、期日は計算での「募集の文」を、毎回同じ質で書ける仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、募集する仕事の条件を、決まったフォームに入れて表で持つ。AIは、表の条件だけから、載せる場所に合わせた募集の文を下書きする。担当者が文と表を照らしてから載せ、募集が終わったら、表を見てすぐに下げるという形です。自社のサイトや募集のサービスで、デザイナー、ライター、講師、カメラマンなどを募集する会社に向いています。
広く募集するときは、正確で新しい内容に保つことが義務
2024年11月1日に施行されたフリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の第12条は、広告などでフリーランスを募集する会社に、2つのことを求めています(愛媛労働局と東京労働局の資料、J-Net21の解説による)。
- うその表示や、誤解を与える表示をしない
- 内容を正確で、最新のものに保つ
対象は、広告などで広く示す募集の情報です。特定の1人に「この仕事を受けてもらえませんか」と打診する場合は対象になりません(愛媛労働局の資料、J-Net21の解説による)。愛媛労働局の資料は、対象になる項目を次のように挙げています。
| 対象になる項目 |
|---|
| 業務の内容 |
| 業務をする場所・期間・時間 |
| 報酬 |
| 契約の解除・更新しないこと |
| 募集する会社のこと |
J-Net21の解説によると、相手と話し合って合意したうえで、募集のときの条件から実際の契約の条件を変えるのは違反になりません。違反になる例として、実際より高い報酬を書く、別の会社の名前で募集する、報酬が一例にすぎないのに確約のように書く、フリーランスが自分で用意する機材があるのに書かない、終わった募集を消さずに出し続ける、などを挙げています。細かい中身は、厚生労働省と公正取引委員会の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、前の募集の文を書き換えて、載せたままにしている
多くの小さな会社では、フリーランスの募集は次のように行われています。
- 前に使った募集の文をコピーして、今回の仕事に合わせて書き換える
- 報酬の欄に「月○万円以上も可能」のような、良い場合の金額だけを書く
- 自社のサイトと、募集のサービスの2〜3か所に載せる
- 人が決まっても、どこかの募集が載ったまま残る
前の文を書き換えると、古い条件が混ざりやすくなります。載せた場所を覚えていないと、終わった募集が残ります。条件を表で持ち、文はその表からだけ作り、載せた場所も表で持つ。この形にします。
条件を表に入れ、AIが文を書き、人が照らして載せる
仕組みは4つの段でできています。
1. 入れる:仕事の条件をフォームに入れる。 募集のたびに、決まったフォームに条件を入れます。項目は、業務の内容、場所(出社か、オンラインか)、期間と時間の目安、報酬(決まった額か、目安か、その計算の仕方)、自分で用意してもらうものと費用、途中でやめるときや更新しないときの扱い、会社の名前と連絡先です。入れた条件は、募集の表に1行ずつたまります。
2. 選ぶ:載せる場所と期限を表に置く。 ここはAIの仕事ではありません。担当者が、募集の表に、載せる場所(自社のサイト、どの募集のサービスか)と、載せる日、締め切りの日を書きます。1つの募集を複数の場所に載せるなら、場所ごとに1行にします。
3. 下書きする:AIが表の条件だけから募集の文を書く。 AIに、表の1行の条件だけを渡し、載せる場所に合わせた長さと形で、募集の文を下書きさせます。表にない条件は書かせません。空欄の項目があれば、文を作る前に「この項目が空欄です」と知らせるようにします。
4. 確かめる:担当者が照らして載せ、終わったら下げる。 担当者が、文の中の金額、期間、会社の名前、用意してもらうものが、表と同じかを照らしてから載せます。人が決まったり条件が変わったりしたら、表の「載せている場所」を見て、すべての場所で下げるか、書き直します。
文の型をスキルにし、照らす作業はAIの外に置く
この仕組みが同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
募集の文の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 文の型:仕事の中身、条件、用意してもらうもの、応募の仕方の順に書く。載せる場所ごとの長さ
- 報酬の書き方の決まり:決まった額ならその額を、目安なら「目安」と書き、計算の仕方を添える。良い場合だけの金額を書かない
- 書いてはいけないこと:表にない金額や条件、「誰でも稼げる」のようなあおる言い方、取引先やグループの会社の名前を借りる書き方、用意してもらうものを書かない文
- 空欄のときの決まり:表の項目が空欄なら、文を作らずに知らせる
照らす作業と、載せた場所の管理は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、条件を表で持ち、AIには表の1行だけを渡すこと、文の中の数字と名前を表と照らすこと、載せた場所と締め切りを表で持つことがそれに当たります。表計算の機能で、文の中に表の金額がそのまま入っているかを確かめる列を作っておくと、照らす手間が減ります。
載せた場所を表で持ち、終わった募集をすぐに下げる
この仕組みでいちばん効くのは、載せた場所を表で持つことです。「正確で最新に保つ」ことは、文を書くときより、載せたあとで崩れやすいからです。
- 募集の表に「載せている場所」「載せた日」「締め切り」「下げた日」の列を作ります
- 毎週1回、締め切りを過ぎたのに「下げた日」が空欄の行がないかを、表の並べ替えで見ます
- 条件を変えたら、表を直し、AIに文を作り直させ、すべての場所で差し替えます。差し替えた日も残します
- 人が決まったら、その日のうちにすべての場所で下げます
人が少ない会社でも、表で見えていれば、下げ忘れは防げます。
担当者の仕事は、条件を決めて照らすことになる
仕組みが入ると、募集の仕事は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 文の作り方 | 前の文を書き換える | 表の条件だけからAIが下書き |
| 報酬の書き方 | 良い場合の金額だけ | 決まった額か目安かを書き分ける |
| 用意してもらうもの | 書き忘れる | フォームの項目で必ず聞く |
| 載せた場所 | 覚えていない | 表で一覧にする |
| 終わった募集 | 残ったまま | 表を見てすぐに下げる |
経営への効果は、行き違いを減らし、合う人に来てもらうこと
効果は、前提を置いて考えます。
正しい募集で守れるもの = 条件の行き違いでやり直す手間 + 合わない人とのやり取りの時間 + 会社の信用
募集のときの条件と実際の条件がずれると、話がまとまらなかったり、仕事を始めてから行き違いが起きたりします。最初から正しい条件を書いておけば、条件に合う人が応募してきます。J-Net21の解説は、この義務の目的を、募集の条件と実際の条件のずれによるトラブルを防ぐことだとしています。
担当者の時間も変わります。前の文をどこまで直したか迷っていた時間が、条件を決めて照らす時間になります。
費用はほとんど要らず、AIの利用料は年に50円ほど
作る順番と、かかる日数
- 募集のフォームと、募集の表を作る(会社:担当者、2時間。発注のフォームの項目を流用できます)
- 文の型と、報酬の書き方の決まりを決める(会社:社長と担当者、1時間)
- 型をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の会社での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 募集の文の下書きと、条件を変えたときの作り直し | 年に約50円(下の計算) |
| フォームと表計算 | すでに使っているもの | 追加0円の想定 |
| 募集のサービス | 載せる場所の料金 | 各サービスの料金による |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。表の1行とスキルで3,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると、募集の文1本で約3円です。年に12本で約38円、条件を変えたときの作り直しに1,500トークンを読ませ、300トークンを書かせると1回約1円、12回で約11円です。あわせて年に約50円です(1ドル150円で計算)。
何か月で取り戻せるか
AIの利用料はわずかです。かかるのは、フォームと表を作る最初の数時間です。募集が年に数回の会社は、スキルにする手間をかけず、会社で契約したAIのチャットに型と表の1行を貼って頼むだけで十分です。大事なのは、AIではなく、条件を表で持ち、載せた場所を管理することです。
必要な人は3役で、条件を決めるのは社長と担当者
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 条件を決める人 | 社長か仕事を頼む部署の責任者 | 業務の内容と報酬、用意してもらうものを決める | 募集ごとに30分 |
| 表を保つ人 | 総務か採用の担当者 | フォームの中身を照らし、載せて、終わったら下げる | 週15分 |
| 確かめる人 | 弁護士か社会保険労務士 | 型と報酬の書き方の決まりを、最初に一度見る | 最初に1回 |
最初の募集で型ができ、3か月で下げ忘れがなくなる見込み
どこまでいけるかは、表を見る習慣が続くかで決まります。目安は次のとおりです(想定です)。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の募集 | フォームに条件を入れ、AIの下書きを照らして載せる。型を直す |
| 1か月後 | 載せている場所を表で一覧にし、古い募集を下げる |
| 3か月後 | 毎週の確認が定着し、下げ忘れがなくなる |
効果を確かめるには、次の3つを記録します。
- 募集ごとの応募の数と、条件が合って契約できた数:募集の表に残します
- 条件の行き違いで話がまとまらなかった数:メモで残します
- 締め切りを過ぎても載っていた募集の数:毎週の確認で数えます
良い場合の金額だけを書くと失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 良い場合の金額だけを書く。 「最大○万円」だけを書くと、確約のように受け取られます。目安なら目安と書き、計算の仕方を添えます
- 用意してもらうものを書かない。 パソコンや専門の機材、交通費など、フリーランスが負担するものはフォームで必ず聞き、文に書きます
- AIに文を任せきりにする。 AIは、表にない条件をそれらしく足すことがあります。担当者が表と照らしてから載せます
- 載せた場所を覚えていない。 複数の場所に載せると、下げ忘れが起きます。場所ごとに表の1行にします
募集の表には、報酬の決め方など大事な取引の情報が入ります。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。社員を雇うための求人の文の考え方は、求人の応募をAIで増やす方法。現場の1日を求人票に書くだけで変わるで説明しています。
まとめ
- フリーランス法の第12条は、広告などで広く募集するとき、うそや誤解を与える表示を禁じ、内容を正確で最新に保つよう求めている。特定の1人への打診は対象外
- 募集する仕事の条件はフォームに入れて表で持ち、載せる場所と締め切りも表に置く
- AIは、表の1行の条件だけから、載せる場所に合わせた募集の文を下書きする。空欄があれば文を作らない
- 担当者が文と表を照らしてから載せ、人が決まったり条件が変わったりしたら、すべての場所で下げるか差し替える
- 報酬は決まった額か目安かを書き分け、用意してもらうものを必ず書く