パートの労働条件通知書の見直し方|扶養の判定と明示のルールを1枚で満たす
この記事で変わる経営指標
この記事では、130万円の壁の判定が変わった|パートの労働条件通知書で確かめることの「通知書は、判定に使える書き方かをAIで点検する」を、パート全員分の通知書で実際に進める方法を説明します。
一言でいうと、事務が全員分の労働条件通知書を集める。AIが、扶養の判定に使える書き方か(契約の期間、労働時間、手当の金額)と、2024年4月からの明示の決まり(就業場所と業務の変更の範囲、更新上限)がそろっているか、の2つの物差しで印を付ける。社長が本人と話し合って書き直す。年収の見込みは表で計算し、新しい通知書を渡して控えを残すという形です。
通知書は、扶養の判定と明示の決まりの2つを満たす
労働条件通知書には、いま2つの決まりがかかっています。
扶養の判定に使える書き方。 日本年金機構の案内によると、2026年4月1日以降、健康保険の被扶養者の年間収入は、労働条件通知書などに書かれた賃金から見込まれる額で判定されます(ファイナンシャルフィールドの解説でも同じ内容を確認)。ただし、次のような通知書では、この方法で判定できません。
- 被扶養者になった日から数えて、契約期間が1年未満
- 「シフト制による」など、労働時間がはっきりしない
- 「通勤手当有」など、手当の金額がはっきりしない
労働条件の明示の決まり。 静岡労働局の案内とSmartHR Mag.の解説によると、2024年4月から、労働条件を示すときの決まりが変わりました。
- 労働契約を結ぶときと、期間の定めのある契約を更新するとき:就業場所と業務の「変更の範囲」を示す
- 期間の定めのある契約を結ぶときと更新するとき:更新の上限(通算の契約期間か更新の回数の上限)の有無と内容を示す
- 無期転換を申し込める権利が生まれる更新のとき:無期転換を申し込めることと、無期転換後の労働条件を示す
パートの通知書を見直すなら、この2つを一度に満たすように直すのが効率的です。細かな書き方は、厚生労働省のモデル労働条件通知書と、加入している健康保険の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、何年も前の通知書の書式を使い回している
小さな会社では、パートの通知書を何年も前の書式のまま使い回していることがあります。「勤務時間:シフトによる」「通勤手当:実費」「就業場所:本社」とだけ書かれた通知書では、扶養の判定に使えず、2024年4月からの明示の決まりも満たしていない場合があります。
人数が多いと、全員分を一度に見直すのは大変です。点検はAIに任せ、社長は本人との話し合いに時間を使います。
集めて、AIが点検し、本人と直し、表で計算する
1 集める(人)。 事務の担当者が、パート全員の今の通知書を集めます。紙なら表に打ち直します。
2 点検する(AI)。 通知書の文と点検の表をAIに渡し、2つの物差しで印を付けてもらいます。
3 話し合う(人)。 社長が印の付いた項目について、本人と話し合います。働く曜日と時間、手当の金額、契約の期間をどう書くかを決めます。
4 計算する(表)。 書き直した内容から、年収の見込みを表の計算式で出します。AIには計算させません。
最後に、新しい通知書を本人に渡し、控えを残します。
点検の表と、AIへの頼み方はこうなる
点検の表(見本):
| 物差し | 項目 | 印を付ける書き方 |
|---|---|---|
| 扶養の判定 | 契約の期間 | 1年未満、または期間が書いていない |
| 扶養の判定 | 労働時間 | 「シフトによる」だけで、曜日・時間・日数がない |
| 扶養の判定 | 手当 | 「有」「実費」だけで金額がない |
| 扶養の判定 | 賞与 | 有無と金額の目安がない |
| 明示の決まり | 就業場所・業務 | 雇い入れ直後だけで、変更の範囲がない |
| 明示の決まり | 更新の上限 | 期間の定めがあるのに、上限の有無と内容がない |
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、当社のパートの労働条件通知書の文と、点検の表です。表の項目ごとに、通知書の書き方を確かめ、印を付ける書き方に当たる項目に印を付けて理由を書いてください。扶養に入れるかの判断と、年収の計算はしないでください。通知書を書き直した版は作らないでください。
返ってくる点検(見本):
- 労働時間:「勤務時間はシフトによる」とだけあり、曜日・時間・日数が分かりません
- 通勤手当:「実費支給」とだけあり、金額が分かりません
- 就業場所:「本店」とだけあり、変更の範囲が書いていません
シフトで働く人の通知書は、基本の曜日と時間を決めて書く
いちばん迷いやすいのが、シフトで働く人の通知書です。週ごとに曜日や時間が変わる働き方でも、基本の形を決めて書くと、年収の見込みを計算できます。
- 基本の日数と時間を書く。 「週4日、1日5時間(9時〜14時)を基本とする」のように、基本の日数と時間を書きます
- 変わる幅を書く。 「週3〜4日の範囲で、前月20日までにシフトを決める」のように、変わる範囲と決め方を書きます
- 手当は金額で書く。 通勤手当は「1日あたり400円」や「月額6,000円まで」のように金額で書きます(金額は例です)
書き方に迷うときは、日本年金機構の案内に沿って、加入している健康保険の窓口か年金事務所に、この書き方で判定できるかを確かめます。
点検の表をスキルにし、書き直す判断はAIの外に置く
点検の表を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「点検の表」「印の付け方と理由の書き方」「書いてはいけないこと(扶養の判断、年収の計算、書き直した版)」をスキルにします。法令や健康保険の案内が変わったら、点検の表を直します。
書き直す判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、働き方を本人と話し合って決めること、年収の見込みを表で計算すること、書き直した通知書を社長が確かめてから渡すこと、控えを残すことがそれに当たります。
社長の仕事は、本人と働き方を決め、通知書に書くこと
社長がすることは、次の3つです。
- 本人と働き方を決める。 働く曜日と時間、手当の金額、契約の期間を、本人の希望を聞いて決めます。シフトで変わる働き方でも、基本の曜日と時間を決めて書きます
- 変更の範囲と更新の上限を決める。 就業場所や業務が変わる可能性、更新の上限の有無を、会社として決めて書きます
- 年収の見込みを本人に見せる。 表で計算した年収の見込みを本人に見せ、扶養の手続きで困らないかを一緒に確かめます
経営への効果は、扶養の手続きと明示の決まりを一度で整えること
- パートの扶養の手続きで困らない。 判定に使える書き方の通知書があれば、本人が扶養の手続きをするときに困りません
- 明示の決まりの抜けを防げる。 扶養の見直しと一緒に、2024年4月からの明示の決まりも満たせます
- 働き方の話し合いのきっかけになる。 通知書を見直す機会に、来年の働き方の希望も聞けます
費用はAIの利用料が1通2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| AIの利用料 | 通知書1通と点検の表(入力3千トークン・出力800トークンほど)の点検が、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1通2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 社長の時間 | 1人あたり話し合いに15〜30分 |
| 社会保険労務士への相談 | 書式や書き方に迷う場合 |
必要な人は2役で、決めるのは社長と本人
- 事務の担当者:通知書を集め、AIに点検させ、年収の見込みを表で計算し、控えを残す
- 社長:本人と働き方を話し合い、変更の範囲と更新の上限を決め、通知書を確かめて渡す
1か月で全員分を見直し、次の更新から新しい書式に切り替える見込み
- 1週目:全員分の通知書を集め、点検の表を作る
- 2週目:AIで点検し、印の付いた人の一覧を作る
- 3〜4週目:本人と話し合い、書き直して渡す
- 次の更新から:新しい書式の通知書を使い、更新のたびに同じ点検をする
本人と話さずに書き直すと失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 本人と話さずに書き直す。 働く時間や日数を会社だけで決めて書くと、本人の働き方の希望と合わなくなります。必ず話し合って決めます
- AIに書き直させる。 AIが書き直した通知書は、本人と決めた内容と違うことがあります。AIには印だけを付けさせます
- 年収をAIに計算させる。 基準額に近い人ほど、計算の間違いが影響します。年収の見込みは表の計算式で出します
まとめ
- パートの労働条件通知書は、2026年4月からの扶養の判定に使える書き方と、2024年4月からの明示の決まりの両方を満たすように見直す
- 扶養の判定では、契約の期間、労働時間、手当の金額がはっきり書かれていることが要る
- 明示の決まりでは、就業場所と業務の変更の範囲、更新の上限の有無と内容を書く
- AIが2つの物差しで印を付け、社長が本人と話し合って書き直し、年収の見込みは表で計算する
- 次の更新から新しい書式を使い、更新のたびに同じ点検をする