翌日の配置が隊員に夕方届く。配置表からAIが一人ずつ連絡を下書きする仕組み
この記事で変わる経営指標
この記事では、小さな警備会社の人手不足をAIで補う。配置の連絡と報告書を速くするの「隊員への配置の連絡は、配置表からAIが下書きする」を、仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、毎日15時に、翌日の配置表と現場の一覧と隊員の資格の一覧を集める。資格の要る現場に資格を持つ隊員が入っているか、同じ隊員が二重に入っていないかを表で確かめ、問題があれば隊長に知らせる。AIが隊員一人ずつの連絡を下書きし、事務が確かめて夕方に送り、返事のない隊員には電話するという形です。事務が一人ずつ電話で伝えていた翌日の配置を、文章で確実に届けます。
今は翌日の配置を、事務が一人ずつ電話で伝えている
親の記事でも触れたとおり、警察庁の資料では、2025年12月末の警備員は59万6,985人で、年齢別の表から計算すると約47%が60歳以上でした。警備員100人未満の業者が全体の90.3%を占めています(同じ資料はALSOKのサイトにも掲載)。
多くの小さな警備会社では、翌日の配置の連絡が次のように進んでいます。
- 隊長か事務が、夕方に翌日の配置表を作る
- 事務が隊員一人ずつに電話をかけ、現場、時間、集合場所、持ち物を伝える
- 電話に出ない隊員には、何度もかけ直す
- 口頭で伝えたので、隊員が集合場所や時間を聞き違えることがある
隊員が20人いれば、電話だけで夕方の1時間近くがかかります。年配の隊員にとっても、電話で聞いた内容を覚えておくのは負担です。
毎日集めて、表で確かめ、AIが書き、事務が送る
仕組みは4つの段でできています。
1. 集める:翌日の配置表と、現場と資格の一覧を集める。 毎日15時に、次の3つを読み込みます。
- 翌日の配置表(現場、開始と終了の時間、隊員)
- 現場の一覧(集合場所、持ち物、服装、現場の注意、元請けの担当者)
- 隊員の資格の一覧(検定の種類、有効期限、連絡先、連絡の方法)
2. 確かめる:資格と二重の配置を表で確かめる。 ここはすべて決まりと計算です。
- 現場の一覧で「資格が要る」とした現場に、その資格を持つ隊員が決まった人数入っているか
- 同じ隊員が、時間の重なる2つの現場に入っていないか
- 前の日の勤務の終わりから、次の勤務の始まりまでの間が、会社で決めた時間より短くないか
問題があれば、送る前に隊長に知らせます。直すのは隊長です。
3. 下書きする:AIが隊員一人ずつの連絡を書く。 AIが、配置表と現場の一覧から、隊員一人ずつへの連絡を下書きします。現場の名前、集合場所と時間、持ち物、現場の注意を、短く分かりやすい言葉で書き、最後に「了解の返事をお願いします」と添えます。時間と場所は、AIが書かず、表から決まった場所に差し込みます。
4. 送る:事務が確かめて夕方に送り、返事を確かめる。 事務が下書きを確かめ、隊員それぞれの連絡の方法(メッセージ、メール)で夕方に送ります。19時までに了解の返事がない隊員にだけ、電話をかけます。
現場の言葉と連絡の型をスキルにし、資格と時間はAIの外で持つ
この仕組みが毎日正しく回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の計算で決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
連絡の型と現場の言葉を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 配置の連絡の型:現場、集合、持ち物、注意、返事のお願いの順番
- 現場の言葉:元請けごとの呼び方、現場の通称
- 書いてはいけないこと:ほかの隊員の個人の情報、元請けの悪口、確かめていない変更
- 年配の隊員にも読みやすい書き方:一文を短く、時間は「7時50分集合」のように数字で
資格、時間、二重の配置は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、資格の一覧と配置表を照らすこと、時間の重なりと勤務の間隔を計算すること、時間と場所を表から差し込むこと、下書きの時間と場所が表と合っているかを機械的に確かめることがそれに当たります。資格が要る現場に誰を置くかを、AIに判断させることはしません。
事務の仕事は、確かめて送り、返事のない人にだけ電話することになる
仕組みが入ると、翌日の配置の連絡は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 伝え方 | 一人ずつ電話 | 文章で一斉に、返事のない人にだけ電話 |
| 資格と二重の確かめ | 隊長の頭の中 | 送る前に表で確かめ、問題は隊長へ |
| 聞き違い | 集合場所や時間を聞き違えることがある | 文章で残り、隊員が見返せる |
| 事務の夕方 | 電話で1時間近く | 確かめて送る時間と、数件の電話 |
経営への効果は、配置の間違いを防ぎ、事務と隊長の夕方を空けること
効果は、前提を置いて計算します。仮に、1人あたりの連絡に電話で3分かかっていたものが、確かめて送る30秒になれば、1人2分半が浮きます。隊員20人が月22日勤務する会社(月440件)なら月約18時間、1時間あたりの人件費を仮に2,000円として月約3万7,000円分です。隊員5人の会社(月110件)なら月約5時間、月約9,000円分です。
ただ、大きいのは時間だけではありません。資格の要る現場に資格を持たない隊員を置いてしまうと、元請けの信頼を失い、決まりの上でも問題になります。送る前に表で確かめる段を入れることで、その間違いを防ぎやすくなります。
費用は作る費用が中心で、AIの利用料は月330円ほど
作る順番と、かかる日数
- 現場の一覧と、隊員の資格の一覧を整える(社内:隊長と事務、1日)。資格の有効期限も入れます。ここがいちばん大事です
- 連絡の型と、勤務の間隔の決まりを決める(社内:社長と隊長、半日)
- 配置表の読み込みと、資格・二重・間隔の確かめを作る(作る人、1人日)
- AIの下書き、時間と場所の差し込み、送り方と返事の確かめを作る(作る人、1.5人日)
- 1か月、隊長1人の班で試して直す(作る人、0.5人日)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
上の手順3〜5で、作る側の目安は合計3人日です。配置表がすでに表計算やソフトにあれば、読み込みは早く作れます。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の会社での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 1人分の連絡の下書きごとにかかる | 月440件で330円ほど(下の計算) |
| 配置表・チャット | すでに使っているもの | 追加0円の想定 |
| 保守 | 現場の一覧と資格の一覧の更新 | 月2時間 |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1人分の連絡で、配置と現場の注意とスキルを合わせて1,000トークンを読ませ、300トークンを書かせると見積もると、約0.005ドル、1ドル150円で約0.75円です。月440件で330円ほどです。
何か月で取り戻せるか
取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)
仮に作る費用が20万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)を5,000円とすると、隊員20人の会社(月約3万7,000円分)ではおよそ6か月です。隊員5人の会社では、浮く時間だけでは取り戻すのに4年ほどかかります。隊員が数人なら、資格の一覧と現場の一覧だけ整え、事務が会社で契約したAIのチャットで連絡を下書きするやり方で十分です。
必要な人は3役で、配置を決めるのは隊長
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 決める人 | 隊長 | 配置表を作る。確かめで問題が出たら直す | 毎日 |
| 送る人 | 事務 | 下書きを確かめて送る。返事のない隊員に電話する | 毎日30分ほど |
| 作る人 | 社内の詳しい人か、外の作り手 | 読み込み、確かめ、下書き、送り方を作る | 最初の3人日 |
いちばん大事なのは、資格の一覧を正しく保つことです。資格の有効期限が切れた隊員を、資格が要る現場に置かないように、期限が近い隊員を月に一度一覧にして隊長に知らせます。
1か月で電話が減り、3か月で配置の間違いの減り方が分かる見込み
どこまでいけるかは、現場の一覧と資格の一覧がどれだけ正しく保たれるかで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の1か月 | 隊長1人の班で試す。文章での連絡に隊員が慣れる。返事のない隊員への電話が残る |
| 3か月 | ほかの班に広がる。送る前の確かめで見つかった問題の数が分かる |
| 半年 | 事務の夕方の時間と、配置の間違いの数を、仕組みの前と比べられる |
効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。
- 夕方の連絡にかかる時間:1週間だけ、事務の時間を記録します
- 送る前の確かめで見つかった問題の数:記録から数えます
- 集合の時間や場所の間違い:隊長の記録から数えます
資格の判断をAIに任せたり、返事を確かめなかったりすると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 資格の判断をAIに任せる。 「この配置で大丈夫か」をAIに聞いて決めることはしません。資格の一覧と配置表を表で照らし、直すのは隊長です
- 時間や場所をAIに書かせる。 AIは、時間を書き間違えることがあります。時間と場所は表から差し込みます
- 送って終わりにする。 文章を読んでいない隊員がいるかもしれません。了解の返事を確かめ、返事のない隊員には電話します
- 一覧を更新しない。 新しい現場や、資格の期限が切れた隊員を一覧に反映しないと、確かめが外れます
隊員の名前や連絡先、資格の情報は、大事な個人の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、社内ルールに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。勤務のあとの報告書の仕組みは、警備報告書は勤務のあと1分で。隊員の一言からAIが下書きする仕組みで説明しています。
まとめ
- 毎日15時に、翌日の配置表、現場の一覧、隊員の資格の一覧を集める
- 資格の要る現場に資格を持つ隊員がいるか、二重の配置や短すぎる間隔がないかを表で確かめ、問題は隊長が直す
- AIが隊員一人ずつの連絡を下書きし、時間と場所は表から差し込む。事務が確かめて夕方に送り、返事のない隊員にだけ電話する
- 費用は作る費用が中心で、作る側の目安は3人日。AIの利用料は月330円ほど。隊員が数人ならチャットで十分
- 効果は、夕方の連絡の時間、送る前に見つかった問題の数、集合の間違いの数で確かめる