AI×業種

小さな警備会社の人手不足をAIで補う。配置の連絡と報告書を速くする

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな警備会社がAIを使うと、どの業務がどう変わるかを説明します。一言でいうと、見積と提案、隊員への配置の連絡、警備報告書、求人と教育の資料の4つにAIを入れ、書く仕事と連絡の手間を減らす。配置に必要な資格の確かめ、事故やトラブルの判断は、人と表で持つという話です。

AIの価値は、警備の仕事そのものを代わりにすることではありません。隊長や事務の担当者が夜に抱えている「書く・連絡する」仕事を軽くし、少ない人数でも現場を回せるようにすることです。

経営への効果は、受けられる現場を増やし、隊員の負担を減らすこと

小さな警備会社の仕事は、AIを入れると次のように変わります。

業務 今まで AIを入れたあと 効く経営効果
見積と提案 社長が夜に過去の見積を探して書く 現場の条件から説明と提案の下書きが出る 売上
配置の連絡 事務が隊員一人ずつに電話とメッセージ 配置表から隊員ごとの連絡を下書き 業務の無駄
警備報告書 隊員が勤務のあとに手で書く 隊員の一言と写真から下書き 業務の無駄
求人と教育 求人票が古いまま。教育の資料が人の頭の中 現場の1日を求人票に。教育の資料を下書き 人手不足
小さな警備会社でAIが効く4つの業務と経営効果。見積と提案は売上、隊員への配置の連絡と警備報告書は業務の無駄、求人と教育の資料は人手不足に効く。配置の資格の判定と事故の判断は後回し
小さな警備会社でAIが効く4つの業務と経営効果。見積と提案は売上、隊員への配置の連絡と警備報告書は業務の無駄、求人と教育の資料は人手不足に効く。配置の資格の判定と事故の判断は後回し

効果の大きさは、前提を置いて考えます。仮に、配置の連絡に1日1時間、報告書のとりまとめに1日1時間かかっていた事務の担当者が、それぞれ半分になれば、1日1時間、月20日で月20時間が浮きます。1時間あたりの人件費を仮に2,000円とすると、月4万円分です。

ただ、大きいのは時間ではありません。配置の連絡が早く確実になれば、急な欠員にも早く手を打てます。見積と提案が早く出せれば、受けられる現場が増えます。隊員の書く負担が減れば、勤務のあとに残る時間が減り、続けて働いてもらいやすくなります。

警備員の5割近くが60歳以上で、人は簡単には増えない

警察庁の「令和7年における警備業の概況」によると、2025年12月末の警備員は59万6,985人でした。年齢別の表では、60〜64歳が7万5,001人、65〜69歳が7万8,496人、70歳以上が12万9,012人で、合わせると約28万3,000人、警備員全体の約47%が60歳以上という計算になります(同じ資料はALSOKのサイトにも掲載されています)。

同じ資料では、警備業者のうち警備員が100人未満の業者が9,885業者で、全体の90.3%を占めています。多くの警備会社は小さな会社で、隊長や事務の担当者が、配置、連絡、報告、請求、求人まで受け持っています。

隊員の高齢化が進むなかで、若い人を急に増やすのは簡単ではありません。今いる人の書く仕事と連絡の手間を減らし、現場に立つ時間と休む時間を守ることが、人手不足への手堅い手です。

見積と提案は、現場の条件からAIが下書きする

AIに頼むこと。 工事会社やイベントの主催者から依頼が来たら、現場の条件(場所、期間、時間帯、車や人の流れ、必要な人数の見込み)から、提案の説明と見積に付ける文章を下書きしてもらいます。過去の似た現場の提案を見本に渡すと、会社の言い方に近づきます。

人がすること。 社長が、必要な人数と金額を決めます。人数と金額は、過去の実績の表と単価表から計算します。

何が変わるか。 夜に書いていた提案の文章が、確かめて直す仕事になります。依頼に早く返せるので、ほかの会社に流れる前に話を進められます。

人数と金額そのものはAIに出させません。見積の下書きを過去の見積から作る考え方は、町工場の例ですが見積をAIで当日中に出し、町工場の受注を増やす方法で説明しています。

隊員への配置の連絡は、配置表からAIが下書きする

AIに頼むこと。 翌日や翌週の配置表(現場、時間、集合場所、持ち物、現場の注意)から、隊員一人ずつへの連絡を下書きしてもらいます。現場ごとの注意(「搬入口は北側」「朝礼は7時50分」)は、現場の一覧から差し込みます。

計算で行うこと。 誰をどの現場に置くかは、配置表と隊員の予定、資格の一覧から決めます。資格が必要な現場に、資格を持つ隊員が入っているかは、表で確かめます。

人がすること。 事務の担当者か隊長が、連絡を確かめて送ります。急な欠員が出たときに誰に声をかけるかは、隊長が決めます。

何が変わるか。 一人ずつ電話して伝えていた内容が、文章で届き、隊員が後から見返せます。伝え漏れが減ります。

欠員が出たときの連絡を速くする方法は、ビルの清掃と点検の例ですがビルメンテナンス・清掃の人手不足をAIで補う方法。報告書と欠員の連絡を速くするで説明しています。

警備報告書は、隊員の一言と写真からAIが下書きする

AIに頼むこと。 勤務が終わったら、隊員がスマホに一言話して送ります(「搬入のトラックが予定より30分遅れ、9時40分に到着。歩行者との接触なし。北側の仮囲いが一部外れていたので現場の担当者に伝えた」)。写真があれば添えます。AIが、それを元請けやお客様に出す警備報告書の形に整えます。

人がすること。 隊長が、事実が合っているかを確かめて送ります。事故やけが、苦情があった日は、隊長が本人に聞いて自分で書きます。

何が変わるか。 勤務のあとに手で書いていた報告書が、一言で済みます。報告書の書き方がそろい、元請けからの信頼につながります。

一言から報告書を整え、事故や苦情は隊長に回す仕組みの作り方は、警備報告書は勤務のあと1分で。隊員の一言からAIが下書きする仕組みで説明しています。日報や報告を毎朝まとめて社長が読む方法は、日報をAIで毎朝まとめ、社長が5分で現場の困りごとをつかむ方法で説明しています。

求人票と教育の資料は、現場の1日からAIが下書きする

AIに頼むこと。 求人票に、隊員の1日(集合、朝礼、立つ場所、休憩、終わる時間)と、どんな人が働いているかを書くために、隊長の話から下書きを作ってもらいます。あわせて、新しく入った隊員に渡す「現場ごとの注意」の資料も、ベテランの話から下書きします。

人がすること。 社長と隊長が、内容を確かめます。法令で決まっている教育の中身と時間は、決まりの原本と、自社の教育の担当者が確かめます。

何が変わるか。 求人票に仕事の中身が具体的に書かれ、応募する人が仕事を想像しやすくなります。新人が現場の注意を前もって読めます。

求人票の書き方は、求人の応募をAIで増やす方法。現場の1日を求人票に書くだけで変わるで説明しています。

配置の資格の確かめと、事故の判断は後回しでいい

AIで何でもできそうに見えても、次の2つは後回しをすすめます。

  • 配置に必要な資格の判定をAIに任せる。 現場によっては、検定に合格した隊員などを置く決まりがあります。誰が資格を持っているか、その現場に何が必要かは、資格の一覧と決まりの原本で確かめ、表で持ちます。AIに「この配置で大丈夫か」と聞いて決めることはしません
  • 事故やトラブルの判断をAIに任せる。 事故やけが、苦情があったときにどう対応するかは、隊長と社長が決めます。お客様や警察への連絡も、人が行います

まずは、間違えても人がすぐに気づけて直せる、書く仕事と連絡の下書きから始めます。

現場の呼び方と報告の型をスキルにし、資格と配置は表で持つ

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

現場の一覧と報告の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「現場の一覧(集合場所、注意、元請けの担当者の呼び方)」「警備報告書の型」「配置の連絡の型」「書いてはいけないこと(隊員の個人の情報、確かめていない事故の原因)」をスキルにします。

資格、配置、時間は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、隊員の資格の一覧を表で持つこと、配置表で資格が必要な現場に資格を持つ隊員が入っているかを表で確かめること、勤務の時間を計算で数えることがそれに当たります。AIは、表で決まった配置をもとに、連絡と報告の文章を書く役にとどめます。

始める順番は、毎日の量が多く、間違えても直せる仕事から

4つの業務のうち、どれから始めるかは、毎日の量の多さと、間違えたときに直せるかで決めます。

  1. 警備報告書:毎日、隊員の数だけ出ます。隊長が確かめてから送るので、間違いに気づけます
  2. 配置の連絡:毎日出ます。配置表が整っていれば、すぐに始められます
  3. 見積と提案:件数は少なくても、売上に直結します
  4. 求人と教育の資料:一度作れば、しばらく使えます

報告書から始めると、隊員にも「AIで楽になった」が伝わりやすくなります。

費用は、法人向けプランの月数千円から始められる

最初は、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランで、チャットに貼って使うところから始めます。費用は1人あたり月数千円です。配置表から連絡を自動で作る、報告書を一言から自動で整えるといった仕組みにする場合は、作る費用が加わります。費用の考え方はAI導入にいくらかかる?月数千円から試せて、元が取れるかも先に分かるにまとめています。

効果は、書く時間と、欠員への対応の速さで測る

効果を確かめるには、次の3つを始める前と後で比べます。

  • 報告書と配置の連絡にかかる時間:1週間だけ、事務の担当者と隊長の時間を記録します
  • 欠員が出てから、代わりの隊員が決まるまでの時間:記録から数えます
  • 依頼から見積を出すまでの日数:見積の記録から数えます

半年ほど続けたら、求人への応募の数と、隊員の辞める人の数も見ます。

最初の1か月は、報告書と配置の連絡だけ試す

  1. 隊長1人に、勤務のあとの一言を送ってもらい、会社で契約したAIのチャットで警備報告書の形に整える
  2. 隊長が確かめて送り、手で書いたときとの時間を比べる
  3. 翌日の配置表から、隊員一人ずつへの連絡をAIに下書きさせ、事務の担当者が確かめて送る
  4. 1か月後、報告書の型と配置の連絡の型を見直し、ほかの隊長にも広げる

隊員の名前や住所、健康の情報は大事な個人の情報です。社内ルールの決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 警察庁の資料では、2025年末の警備員は59万6,985人で、年齢別の表から計算すると約47%が60歳以上。警備員100人未満の業者が90.3%
  • 見積と提案、配置の連絡、警備報告書、求人と教育の資料の4つにAIを入れ、書く仕事と連絡の手間を減らす
  • 人数、金額、配置、資格は表と計算で持つ。AIに配置の資格を判定させない
  • 事故やトラブルの判断と、お客様や警察への連絡は人が行う
  • 最初の1か月は、報告書と配置の連絡だけを、隊長1人と事務の担当者で試す

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