業務への組み込み例

面接のあと10分で評価表がそろう。メモからAIが事実を整え、点の差を表で見る

この記事で変わる経営指標

この記事では、面接で人を見誤らない。質問と評価の基準をそろえ、記録をAIでまとめるの「面接のあと、メモをAIに渡して評価表の形に整えさせ、面接官が点をつけて話し合う」を、仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、職種ごとに決めた質問の一覧に沿って、面接官がメモを残す。AIが、質問ごとに応募者が話した事実だけを評価表の形に整え、聞けなかった質問に印を付ける。メモに聞いてはいけない言葉が混ざっていないかは、言葉の一覧で照らす。面接官が点をつけ、面接官ごとの点の差を表で出して話し合うという形です。面接の直後に、そろった形の記録で比べられるようにします。

決めた質問で聞いても、記録がばらばらでは比べられない

人の選び方の研究では、前もって決めた質問と評価の基準で聞く面接(構造化面接)のほうが、自由に聞く面接より入社後の働きぶりをよく見通せるとされています(日本労働研究雑誌の2023年の論文、SchmidtとHunterの1998年の分析の解説による)。

ただ、質問をそろえても、面接のあとの記録がばらばらでは、比べられません。ある面接官は一言しか書かず、別の面接官は印象だけを書く。応募者が具体的に何を話したかが残らないと、面接官どうしの話し合いは「感じがよかった」「なんとなく不安」という印象の言い合いになります。

もう1つ気をつけることがあります。厚生労働省は、採用選考は応募者の適性と能力に基づいて行うこととし、本籍や家族のことなど本人に責任のない事項や、宗教や思想など本来自由であるべき事項を聞くことは、就職差別につながるおそれがあるとしています(島根労働局の資料、労務ドットコムの解説による)。質問の一覧で防いでいても、話の流れで出た話題がメモに残ることがあります。記録に残さない仕組みも要ります。

今は面接官が思い思いにメモし、話し合いが印象になる

多くの小さな会社では、面接のあと次のようになっています。

  1. 面接官が、応募書類の余白に思いついたことを書く
  2. 面接が終わると、すぐ次の仕事に戻る。メモを清書する時間がない
  3. 数日後に面接官どうしで話し合うが、何を聞いて何と答えたかを思い出せない
  4. 結局、いちばん強く意見を言った人の印象で決まる

一覧に沿ってメモし、AIが事実を整え、面接官が点をつけ、差を見る

職種ごとの質問の一覧に沿って面接官がメモを残し、AIが質問ごとに応募者が話した事実だけを評価表の形に整え、聞けなかった質問に印を付ける。面接官が点をつけ、面接官ごとの点の差を表で出して話し合う
職種ごとの質問の一覧に沿って面接官がメモを残し、AIが質問ごとに応募者が話した事実だけを評価表の形に整え、聞けなかった質問に印を付ける。面接官が点をつけ、面接官ごとの点の差を表で出して話し合う

仕組みは4つの段でできています。

1. メモする:質問の一覧に沿って、面接官がメモを残す。 職種ごとに決めた質問の一覧を、メモの用紙にします。面接官は、質問ごとに応募者が話したことを、短く書くか、面接のあとすぐにスマホに話して残します。

2. 照らす:聞いてはいけない言葉を、計算で照らす。 ここはAIの仕事ではありません。

  • メモを、聞いてはいけない事項にかかわる言葉の一覧(家族の職業、出身地、宗教、支持政党、尊敬する人物など)で照らし、当たった言葉に印を付ける
  • 印の付いた部分は、評価表に移さず、面接官に知らせる

3. 整える:AIが質問ごとに事実を評価表の形に整える。 AIに、質問の一覧と、照らしたあとのメモを渡し、次の形に整えさせます。

  • 質問ごとに、応募者が話した事実(何があって、本人が何をして、どうなったか)を2〜3行で
  • メモに答えがない質問には「聞けていない」と印を付ける
  • 点数や、人柄の決めつけは書かない

4. 点をつけて比べる:面接官が点をつけ、差を表で見る。 面接官が、整った評価表を見ながら、評価の目安に照らして点をつけます。点は表に入れ、面接官ごとの点の差を計算します。差が大きい質問(たとえば2点以上)に印を付け、話し合いではそこから話します。採否は面接官どうしの話し合いと社長で決めます。

整え方の型をスキルにし、言葉の照合と点の差はAIの外に置く

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

評価表の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 評価表の型:質問ごとに「状況」「本人の行動」「結果」を短く書く形
  • 良い整え方の見本:事実だけで書いた例と、印象が混ざった悪い例
  • 書いてはいけないこと:点数、採否の意見、人柄の決めつけ、聞いてはいけない事項、メモにないこと

聞いてはいけない言葉の照らし合わせと、点の差は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、メモを言葉の一覧で照らしてからAIに渡すこと、面接官がつけた点を表に入れて差と合計を計算すること、聞けていない質問を数えることが、それに当たります。AIに点をつけさせず、面接官の判断を表で見える形にします。

点の差が、話し合うべきところを教えてくれる

この仕組みでいちばん効くのは、面接官ごとの点の差を出すことです。

  • 差が小さい質問は、面接官の見方がそろっているところです。話し合いで時間を使う必要はありません
  • 差が大きい質問は、見方が分かれたところです。評価表の事実を見ながら、なぜその点をつけたかを話し合います
  • 同じ質問で差が出続けるなら、評価の目安が分かりにくいということです。目安の例を書き直します

話し合いが、印象の言い合いではなく、応募者が話した事実をもとにした話し合いになります。

面接官の仕事は、点をつけ、差のあるところを話すことになる

仕組みが入ると、面接のあとは次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
メモ 書類の余白に思いついたこと 質問の一覧に沿って
清書 しない AIが質問ごとに事実を整える
聞いてはいけないこと 記録に残ってしまう 言葉の一覧で照らし、移さない
聞けなかった質問 気づかない 印が付く
話し合い 強い意見の人の印象で決まる 点の差が大きい質問から話す

経営への効果は、採用の失敗を減らすこと

効果は、前提を置いて考えます。仮に、年に30人を面接し、1人あたり面接のあとの記録の清書と話し合いの準備に30分かかっていたものが、整った評価表を確かめて点をつける10分になれば、年に10時間ほど浮きます。時間の効果は大きくありません。

大きいのは、採用の失敗を減らすことです。

採用の失敗1人の損 = 求人と面接にかけた費用 + 入社から辞めるまでの人件費と教える時間 + やり直しの採用の費用

小さな会社では、この損は1人で数十万円から百万円を超えることもあります。応募者が話した事実をもとに、面接官の見方をそろえて決めることは、この損を減らすいちばん手前の手です。記録が残るので、入社後の働きぶりと照らして、質問の一覧と評価の目安を直すこともできます。

費用はほとんど要らず、AIの利用料は1人2円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 職種ごとの質問の一覧と評価の目安を決める(会社:社長と現場の責任者、半日。面接で人を見誤らない。質問と評価の基準をそろえ、記録をAIでまとめるの進め方で)
  2. 聞いてはいけない言葉の一覧を作る(会社:担当者、1時間。厚生労働省と労働局の「公正な採用選考」の資料をもとに)
  3. メモの用紙と、点と差を計算する表を作る(会社:担当者、1時間。表計算で作れます)
  4. 評価表の型をスキルにし、言葉の照らし合わせを作る(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存し、言葉の照らし合わせを表計算で行うなら不要)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 面接1人分の評価表の整え 1人あたり約2円(下の計算)
表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 質問の一覧と言葉の一覧の更新 採用のたび

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。質問の一覧とメモとスキルで3,000トークンを読ませ、評価表で800トークンを書かせると見積もると、0.014ドル、1ドル150円で約2.1円です。

何か月で取り戻せるか

時間だけで取り戻すものではありません。かかるのは数円の利用料と、最初の準備の時間です。上の式のとおり、採用の失敗を1人でも防げれば、それだけで準備の費用を大きく上回ります。

必要な人は3役で、採否を決めるのは社長と面接官

役 誰が すること 時間
面接官 社長と現場の責任者 一覧に沿ってメモし、評価表を見て点をつける 1人10分
表を保つ人 総務の担当者 言葉の照らし合わせと、点と差の表を保つ 1人5分
決める人 社長 点の差の大きい質問から話し合い、採否を決める 話し合い

いちばん大事なのは、メモを面接の直後に残すことです。時間がたつと、応募者が話したことを正しく思い出せません。

3人目から型がそろい、1年で質問の一覧が育つ見込み

どこまでいけるかは、メモを残す習慣が続くかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の3人 評価表の整え方と、メモの残し方に慣れる。聞けなかった質問が多く出る
半年 点の差の大きい質問が分かり、評価の目安の例を直す
1年 採った人の入社後の働きぶりと、面接の点を照らして、質問の一覧を直す

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 聞けなかった質問の数:面接ごとに数えます
  • 面接官ごとの点の差が大きい質問の数:評価の目安を見直す材料にします
  • 採った人の半年後の定着と働きぶり:面接の点と照らします

AIに点をつけさせると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • AIに点数や採否の意見を書かせる。 スキルの「書いてはいけないこと」に入れ、点は面接官がつけます
  • 聞いてはいけない事項が評価表に残る。 言葉の一覧でAIの前に照らし、印の部分は移しません
  • メモにないことをAIが補う。 メモにない答えは「聞けていない」と書かせます
  • 点の差を見ずに、合計点だけで決める。 差の大きい質問から話し合います

応募者の名前や経歴、面接のメモは、大事な個人の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、AIに渡すときは名前を伏せ、採用が終わったあとの保管の期間を社内ルールに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 職種ごとに決めた質問の一覧をメモの用紙にし、面接官が面接の直後にメモを残す
  • メモを聞いてはいけない言葉の一覧で照らし、当たった部分は評価表に移さない
  • AIが質問ごとに応募者が話した事実だけを評価表の形に整え、聞けなかった質問に印を付ける。点はつけない
  • 面接官が点をつけ、面接官ごとの点の差を表で出し、差の大きい質問から話し合う
  • AIの利用料は1人約2円。採用の失敗を1人防げば、準備の費用を大きく上回る

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