面接で人を見誤らない。質問と評価の基準をそろえ、記録をAIでまとめる
この記事で変わる経営指標
この記事では、採用の面接で人を見誤らず、入社してから「こんなはずではなかった」とならないようにする方法を説明します。一言でいうと、面接の前に、その仕事に必要なことから、聞く質問と評価の目安を決めておく。どの応募者にも同じ質問をし、答えを評価の目安と照らして点をつける。AIは、仕事の要件から質問と評価の目安を下書きし、面接のメモを評価表の形に整える。点数と採否を決めるのは面接官と社長という話です。
AIの価値は、人を評価することではありません。面接官ごとにばらばらだった質問と見方をそろえ、面接のあとに、何を聞いて何が分かったかを残すことです。
経営への効果は、採用の失敗と、辞められることを減らすこと
面接のやり方は、AIを使うと次のように変わります。
| 今まで | 質問と基準をそろえ、記録はAIで整える | |
|---|---|---|
| 質問 | 面接官がその場で考える | 仕事の要件から決めた質問を、全員に |
| 見方 | 面接官の印象 | 評価の目安と照らして点をつける |
| 面接の記録 | 残らない、または一言だけ | メモから評価表の形に整う |
| 面接官どうし | 話が合わない | 同じ表で比べて話し合える |
| 聞いてはいけないこと | うっかり聞いてしまう | 質問の一覧から外しておく |
小さな会社にとって、1人の採用の失敗は重いものです。求人の費用と面接の時間をかけて採った人が、仕事に合わずに早く辞めてしまえば、また一からやり直しです。合わない人を採ってしまうと、本人も周りもつらい思いをします。
面接で見誤る原因の多くは、面接官によって聞くことも見方も違うことです。話がうまい人を高く見たり、自分と似た人を気に入ったりして、仕事に本当に必要なことを確かめないまま決めてしまいます。
決めた質問で聞く面接のほうが、入社後を見通しやすい
人の選び方の研究では、面接官が自由に聞く面接より、前もって決めた質問と評価の基準で聞く面接(構造化面接)のほうが、入社後の働きぶりをよく見通せるとされています。日本労働研究雑誌の論文(2023年、労働政策研究・研修機構)は、世界の研究をまとめた分析(メタ分析)で、面接を構造化すると選抜の確かさが高まると整理しています。広く引用されているSchmidtとHunterの1998年の分析でも、構造化面接は構造化していない面接より妥当性が高いとされています。
構造化面接は、大企業だけのものではありません。小さな会社でも、次の3つを決めておけば始められます。
- その仕事に必要なこと:仕事を進める力、お客様への対応、決まりを守ることなど、3〜5つ
- それぞれを確かめる質問:「前の仕事で、〇〇のとき、どうしましたか」のように、過去の行動を聞く質問
- 評価の目安:答えのどんな中身なら何点か、を3段階や5段階で
面接で聞いてはいけないことも、前もって外しておく
質問を前もって決めることには、もう1つ大事な意味があります。面接で聞いてはいけないことを、うっかり聞かずに済むことです。
厚生労働省は、採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性と能力に基づいて行うことを示しています(島根労働局の資料、労務ドットコム、幻冬舎ゴールドオンラインの解説による)。次のようなことは、適性や能力に関係がなく、就職差別につながるおそれがあるとされています。
- 本人に責任のない事項:本籍や出生地、家族のこと(職業、健康、収入など)、住宅の状況、生活の環境
- 本来自由であるべき事項:宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、労働組合とのかかわり、購読している新聞や愛読書
その場で質問を考えると、「ご両親は何をされていますか」「尊敬する人は」といった質問を、悪気なく聞いてしまうことがあります。質問の一覧を前もって作り、確かめておけば、防げます。詳しくは、厚生労働省と都道府県労働局の「公正な採用選考」の資料で確かめてください。
AIは質問と評価の目安を下書きし、面接のメモを整える
AIに頼むこと。 次の2つを下書きしてもらいます。
- 質問と評価の目安:求人票と、その仕事をしている社員の話から、仕事に必要なこと3〜5つと、それぞれを確かめる過去の行動を聞く質問、評価の目安(どんな答えなら何点か)を下書きする
- 面接の記録:面接のあとに面接官が話したり書いたりしたメモから、質問ごとに「応募者が話した事実」を評価表の形に整える。点数はつけない
人がすること。 質問と評価の目安は、社長と現場の責任者が確かめ、聞いてはいけないことが混ざっていないかを確かめて決めます。面接では、決めた質問を全員にします。点数は面接官がつけ、採否は面接官どうしの話し合いと社長で決めます。
何が変わるか。 面接官が変わっても、同じ質問と同じ見方で比べられます。面接のあとに、何を聞いて何が分かったかが残り、面接官どうしで話し合えます。
AIへの頼み方と、返ってくる質問はこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、配送の担当者の求人票と、今の担当者が話した仕事の中身です。この仕事に必要なことを3つ挙げ、それぞれについて、過去の行動を聞く質問を2つと、評価の目安(1点・3点・5点の答えの例)を下書きしてください。家族、出身地、住まい、宗教、思想、支持政党、尊敬する人物など、仕事の適性と能力に関係のないことを聞く質問は入れないでください。
返ってくる質問(見本の一部):
必要なこと:時間を守って段取りする力
- 質問1:前の仕事で、予定どおりに進まなかったとき、どうしましたか
- 質問2:いくつかの仕事が重なったとき、どの順番で片づけましたか
点 答えの例 5 何が遅れたかを自分で確かめ、相手に早く伝え、順番を組み直した具体的な話がある 3 上司に相談して対応した話がある 1 具体的な話が出てこない
社長と現場の責任者が、仕事に合っているか、聞いてはいけないことが入っていないかを確かめて決めます。
質問の一覧と点数は表で持ち、面接の型はスキルにする
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。採用が年に何度もあるなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
質問と評価表の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「過去の行動を聞く質問の型」「評価の目安の型」「面接の記録の型(事実だけ、点数なし)」「書いてはいけないこと(聞いてはいけない事項、応募者の人柄の決めつけ、点数や採否の判断)」をスキルにします。
質問の一覧と点数は、表で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、職種ごとに決めた質問の一覧を表で持つこと、面接官がつけた点数を表に入れて合計や面接官ごとの差を計算すること、聞いてはいけない言葉の一覧で質問を照らすことがそれに当たります。AIに点数をつけさせず、面接官ごとに点が大きく違うところを話し合いの材料にします。
明日からは、次に採る職種の質問を1枚にまとめる
- 次に採用する職種を1つ決め、その仕事をしている社員に、仕事の中身と、うまくいく人とうまくいかない人の違いを5分話してもらう
- 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに、求人票と話した記録を渡し、上の見本の指示で質問と評価の目安を下書きさせる
- 社長と現場の責任者で、質問と目安を確かめ、聞いてはいけないことが入っていないかを確かめて、1枚にまとめる
- 次の面接から、全員にその質問をし、面接官がメモを残す
- 面接のあと、メモをAIに渡して評価表の形に整えさせ、面接官が点をつけて話し合う。面接官ごとの点の差を表で見る作り方は、面接のあと10分で評価表がそろう。メモからAIが事実を整え、点の差を表で見るで説明しています
本格的にやるなら、入社後の働きぶりと面接の点を照らす
1枚ができたら、次の形に育てます。
- 職種ごとに質問の一覧を持つ。 採用のたびに作り直さず、職種ごとの一覧を表で持ち、使いながら直します
- 入社後と照らす。 入社して半年後の働きぶりと、面接の点数を照らし、見通せなかった質問を直します
- 面接官をそろえる。 新しく面接に入る人には、質問の一覧と評価の目安を先に渡し、1回は横で見てもらいます
- 応募から面接までを速くする。 応募への返事を速くする考え方は、応募が来たその日に面接の候補日を送る。AIで採用の返事を止めない仕組みで、求人票の書き方は求人の応募をAIで増やす方法。現場の1日を求人票に書くだけで変わるで説明しています
点数と採否、応募者の評価はAIに任せない
- 点数と採否は人が決める。 AIは質問と記録の形を整えるまでです。応募者を評価させません
- 聞いてはいけないことを確かめる。 質問の一覧は、厚生労働省と労働局の「公正な採用選考」の資料と照らして確かめます
- 記録は事実だけにする。 面接の記録に、応募者の人柄の決めつけや、仕事に関係のない情報を書かせません
- 応募者の情報に気をつける。 応募者の名前や経歴は、大事な個人の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、AIに渡すときは名前を伏せ、社内ルールに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
採った人に長く働いてもらう考え方は、小さな会社の新人の離職を減らす方法。聞きにくい質問はAIが受けるで説明しています。
まとめ
- 面接で見誤る原因は、面接官ごとに質問と見方が違うこと
- 前もって決めた質問と評価の基準で聞く構造化面接は、自由に聞く面接より入社後を見通しやすいとされる
- 質問を前もって決めれば、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を、うっかり聞かずに済む
- AIは、仕事の要件から質問と評価の目安を下書きし、面接のメモを事実だけの評価表の形に整える
- 点数と採否は面接官と社長が決め、質問の一覧と点数は表で持って、入社後と照らして直していく