面接官に採用の前に決まりを渡す。場面ごとの1枚と3問はAIで
この記事で変わる経営指標
この記事では、就活生へのセクハラを防ぐ。面接官の決まりと相談の窓口をAIで整えるの「面接官向けの決まりを下書きさせる」を、毎年の採用の前に回る仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、採用の場面(面接、職場見学、インターン、内定者の集まりなど)と、そこで求職者と会う社員を表で持つ。今年の採用の前に、まだ決まりを受け取っていない社員を計算で出す。AIは、人がまとめた要点から、場面ごとの決まりの1枚と3問の確認を下書きする。社長が確かめて配り、解いた記録を表に残すという形です。年に一度、面接官が入れ替わっても、抜けなく伝わるようにします。
方針の周知と研修が、会社の義務の1つになった
2025年6月11日に改正・公布された男女雇用機会均等法により、求職者などへのセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になり、2026年10月1日に施行されました(労務ドットコム、かいけつ!人事労務の解説による)。
@DIMEの解説によると、指針に沿って会社が講じる措置の1つに「方針の明確化と周知・啓発」があり、例として研修や社内報、ウェブサイトでの周知が挙げられています。同じ解説は、「求職者等」に、求職者のほか、インターンシップなど採用につながる活動の参加者や、実習を受ける人も含まれるとしています。面接だけでなく、職場見学やインターンで求職者と会う社員にも、決まりを伝える必要があるということです。
細かい中身は、厚生労働省の指針の原文で確かめ、社会保険労務士に見てもらってください。2026年10月時点の情報です。
今は、面接の前に社長が口で「気をつけて」と言うだけ
多くの小さな会社では、面接官への伝え方は次のようになっています。
- 採用の時期が来て、社長が面接をする社員を決める
- 面接の前に「失礼のないように」と口で伝える
- インターンや職場見学で求職者と会う現場の社員には、何も伝えていない
- 内定者の集まりや食事の席で、気が緩んだ言動が出る
決まりがあっても、紙を1回配っただけでは、翌年には忘れられています。場面ごとに分けて、毎年、担当する人に届く形にします。
場面と担当者を表に入れ、AIが1枚と3問を書く
仕組みは4つの段でできています。
1. 入れる:採用の場面と担当者を表に持つ。 採用の場面を書き出し、それぞれで求職者と会う社員を表に入れます。
- 書類選考と面接(社長、部門の責任者)
- 職場見学(現場の社員)
- インターンや仕事の体験(受け入れ担当、一緒に作業する社員)
- 内定者の集まり、食事の席(社長、先輩社員)
- 説明会や学校訪問(担当者)
2. 選ぶ:今年まだ受け取っていない人を計算で出す。 ここはAIの仕事ではありません。表の計算で、今年の採用の日程と、社員ごとに最後に決まりを受け取って3問を解いた日を比べ、まだの人と、担当する場面を一覧にします。
3. 下書きする:AIが場面ごとの1枚と3問を書く。 AIに、国の指針から人がまとめた要点と、場面の名前だけを渡し、次のものを下書きさせます。
- 場面ごとの決まりの1枚:その場面で聞いてはいけないこと、してはいけないこと、1対1を避ける工夫、連絡の取り方、困ったときに伝える先
- 3問の確認:その場面で起きそうな状況の問題と、答えと短い説明
社員の名前は渡しません。
4. 配る:社長が確かめ、解いた記録を残す。 社長が、決まりと問題が要点と自社の場面に合っているかを確かめ、担当する社員に配ります。社員が3問を解いたら、解いた日を表に入れます。
場面ごとの型をスキルにし、誰に配るかの計算はAIの外に置く
この仕組みが毎年同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
場面ごとの型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 決まりの1枚の型:聞かない、しない、1対1を避ける、連絡の取り方、伝える先の5つの欄
- 3問の型:状況、選択肢、答え、短い説明。答えだけでなく、なぜかを書く
- 書いてはいけないこと:要点にないこと、法律の判断の断定、実際の社員や求職者を思わせる例、特定の性別や年齢を決めつける書き方
誰に配るかの計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、場面と担当者の表、解いた日の記録、今年まだの人を出す計算、社長が中身を確かめることがそれに当たります。誰がまだかをAIに判断させると、抜けが出ます。
場面ごとに分けると、自分のこととして読まれる
この仕組みでいちばん効くのは、決まりを場面ごとに分けることです。
- 面接の決まりは「質問の中身」が中心です。恋人や結婚の予定、容姿のことを聞かない、雑談でも聞かない、といったことです
- 職場見学やインターンの決まりは「距離と連絡」が中心です。個人の連絡先を聞かない、2人きりにならない、作業を教えるときに身体に触れない、といったことです
- 内定者の集まりや食事の席の決まりは「席での振る舞い」が中心です。お酒をすすめない、帰りに個別に誘わない、といったことです
全部をまとめた長い文書より、自分が担当する場面の1枚のほうが、読まれ、覚えられます。3問も、その場面で起きそうな状況にすると、自分のこととして考えてもらえます。
社長の仕事は、中身を確かめて配ることになる
仕組みが入ると、面接官への伝え方は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 伝える相手 | 面接をする社員だけ | 場面ごとの担当者すべて |
| 伝え方 | 口で「気をつけて」 | 場面ごとの1枚と3問 |
| 伝える時期 | 面接の直前 | 採用の前に、まだの人へ |
| 記録 | 残らない | 解いた日を表に |
| 次の年 | また口で | 表で、まだの人を出して配る |
経営への効果は、採用の場での失敗を防ぎ、備えを示せること
効果は、前提を置いて考えます。
防げる損 = 辞退された応募者を集め直す費用 + 評判が下がって減る応募 + 起きたあとの対応にかかる時間
採用の場での一度の不用意な言動で、応募者は辞退し、学校や紹介してくれた人からの信頼も失います。集め直すには、求人の費用と時間がかかります。決まりを場面ごとに伝え、解いた記録を残しておけば、防ぐ取り組みをしてきたことを示す材料にもなります。
社長の時間も変わります。担当者ごとに口で伝えていた時間が、年に一度、1枚と3問を確かめて配る時間にまとまります。
費用はほとんど要らず、AIの利用料は年20円ほど
作る順番と、かかる日数
- 採用の場面と担当者の表を作る(会社:社長か担当者、1時間)
- 国の指針から要点をまとめ、社会保険労務士に確かめてもらう(会社:担当者、半日)。ここがいちばん大事です
- 解いた日を記録し、まだの人を出す表を作る(会社:担当者、1時間。表計算で作れます)
- 場面ごとの型をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の会社での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 4つの場面の1枚と3問 | 年1回で約20円(下の計算) |
| 表計算 | すでに使っているもの | 追加0円の想定 |
| 保守 | 指針の見直しや場面が増えたときに要点を直す | 年に1回 |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。場面ごとの1枚に、要点とスキルで4,000トークンを読ませ、1,200トークンを書かせると約3円、3問に3,000トークンを読ませ、800トークンを書かせると約2円です。4つの場面で約20円です(1ドル150円で計算)。
何か月で取り戻せるか
費用はほとんどかかりません。かかるのは要点をまとめる手間で、これは義務への備えとしてどのみち要るものです。場面ごとの1枚と3問は、毎年の見直しで少し直すだけで使い続けられます。
必要な人は3役で、確かめるのは社長
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 表を保つ人 | 総務の担当者 | 場面と担当者を入れ、解いた日を記録し、まだの人を出す | 採用の前に1時間 |
| 確かめる人 | 社長 | 1枚と3問を確かめ、担当者に配る | 年1回1時間 |
| 見てもらう人 | 社会保険労務士 | 要点と、決まりの中身を確かめる | 年1回 |
次の採用の前にそろい、入れ替わりにも届く見込み
どこまでいけるかは、場面と担当者の表を最新に保てるかで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の2週間 | 場面と担当者の表、要点、場面ごとの1枚と3問がそろう |
| 次の採用の前 | 担当者全員が3問を解き、解いた日が表に入る |
| 次の年 | 新しく担当になった社員だけに、まだの印が付いて届く |
効果を確かめるには、次の3つを記録します。
- 3問を解いた担当者の割合:採用の前に100%を目指します
- よく間違えた問題:次の年の1枚に説明を足します
- 求職者からの相談の数と中身:相談の窓口に来た声で、決まりを見直します
長い文書を1回配って終わりにすると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 全部の場面をまとめた長い文書を配る。 読まれません。場面ごとの1枚にします
- 面接官だけに配る。 職場見学やインターン、食事の席で会う社員にも届けます
- 一度配って終わりにする。 担当者は毎年入れ替わります。表で、まだの人を出して配ります
- AIの下書きをそのまま配る。 要点と自社の場面に合っているかを社長が確かめ、社会保険労務士に見てもらいます
相談の中身や、相談した人の名前は、とても大事な個人の情報です。AIには渡しません。AIに渡すのは、要点と場面の名前だけです。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。
まとめ
- 採用の場面(面接、職場見学、インターン、内定者の集まりなど)と、そこで求職者と会う社員を表で持つ
- 今年の採用の前に、まだ決まりを受け取っていない社員を表の計算で出す
- AIは、人がまとめた要点から、場面ごとの決まりの1枚と3問の確認を下書きする。社員の名前や相談の情報は渡さない
- 社長が確かめて配り、解いた日を表に残す
- 場面ごとに分けると、自分のこととして読まれ、毎年の入れ替わりにも抜けなく届く