就活生へのセクハラを防ぐ。面接官の決まりと相談の窓口をAIで整える
この記事で変わる経営指標
この記事では、採用活動をする会社が、求職者などへのセクハラ(いわゆる就活セクハラ)を防ぐ仕組みを、無理なく整える方法を説明します。一言でいうと、国の指針から、自社がすることを人が1枚の要点にまとめる。AIは、その要点をもとに、方針の文、面接官とインターンの受け入れ担当向けの決まり、求職者向けの相談の窓口の案内、社員の確認の問題を下書きする。相談を受けたときの調べ方と処分は、社長と担当者が専門家と決めるという話です。
AIの価値は、ハラスメントを見抜くことではありません。義務になった備えを、少ない手間で抜けなく整え、応募してくれた人が安心して選考を受けられる会社にすることです。
経営への効果は、応募者の信頼と、採用の評判を守ること
就活セクハラへの備えは、AIを使うと次のように変わります。
| 今まで | 要点は人が、文書の下書きはAIで | |
|---|---|---|
| 会社の方針 | 社内のセクハラの決まりだけ | 求職者も対象と明記した方針 |
| 面接官への伝え方 | 口頭で「気をつけて」 | 聞いてはいけないことの1枚 |
| 求職者の相談先 | ない | 募集の案内と面接の案内に窓口を書く |
| 社員の理解 | 年に一度の話で終わり | 3問の確認で毎年確かめる |
| 起きたとき | その場で考える | 調べ方と記録の型を前もって用意 |
経営の効果は2つあります。
- 応募者の信頼を守る。 小さな会社では、社長や現場の社員が面接や職場見学を受け持ちます。一度の不用意な質問や言動で、応募者は辞退し、その話は学校や知人に広がります。決まりを先に伝えておけば、防げます
- 採用の評判を守る。 人が集まりにくい今、学校やハローワーク、紹介してくれる人からの信頼は大事な財産です。求職者の相談の窓口を示している会社は、それだけで安心して応募してもらいやすくなります
2026年10月から、求職者へのセクハラ防止が義務に
2025年6月11日に、労働施策総合推進法と男女雇用機会均等法が改正・公布されました。これにより、カスタマーハラスメントと、求職者などに対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になり、施行日は2026年10月1日に決まりました(労務ドットコム、かいけつ!人事労務、@DIMEの解説による)。
@DIMEの解説によると、「求職者等」には次の人が含まれます。
- 求職者
- 会社の採用につながる活動(インターンシップなど)に参加する人
- 教育実習、看護実習などの実習を受ける人
同じ解説は、指針に沿って会社が講じる措置として、次の4つを挙げています。
| 措置 | 例 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知・啓発 | 社内規程に方針を書く、研修や社内報、ウェブサイトで知らせる |
| 相談に応じる体制 | 相談の窓口を置く、担当者に研修をする |
| 起きたあとの迅速で適切な対応 | 事実を調べる、被害を受けた人への配慮、行為者への処分、再発防止 |
| あわせて講じる措置 | 相談者と行為者のプライバシーを守る、相談したことで不利に扱わない |
面接で性的な経験の有無を聞く、身体に触る、インターンの参加者にしつこく交際を迫るといった言動が、典型例として挙げられています(@DIMEの解説による)。同じ日に、カスタマーハラスメントの防止措置も義務になりました。細かい中身は、厚生労働省の指針の原文で確かめ、社会保険労務士に見てもらってください。2026年10月時点の情報です。
小さな会社ほど、面接官が決まりを知らないまま会っている
就活セクハラへの備えで、小さな会社が困るのは次の3つです。
- 社内の決まりが、求職者を想定していない。 今のハラスメントの決まりが社員どうしのことしか書いていないと、面接や職場見学、インターンで起きたことに対応できません
- 面接官が、何を聞いてはいけないかを知らない。 社長や現場の社員が、雑談のつもりで恋人や結婚の予定、容姿のことを聞いてしまうことがあります
- 求職者が相談する先がない。 選考中の人は、不利になることを恐れて声を上げにくいものです。窓口を示していなければ、会社は知らないままになります
指針の中身は決まっているので、文書は前もって作れます。ここは、AIで手伝いやすい仕事です。
人が要点をまとめ、AIが方針と決まりと案内を書く
人がすること(最初に)。 社長か担当者が、厚生労働省の指針から、自社がすること(方針、窓口、起きたときの対応、プライバシーと不利益な扱いの禁止)を1枚の要点にまとめます。自社の採用活動の場面(面接、職場見学、インターン、説明会、内定者の集まり)も書き出します。
AIに頼むこと。 要点をもとに、次のものを下書きしてもらいます。
- 方針の文:求職者やインターンの参加者も対象にすることを明記した、社内規程に足す条文と、ウェブサイトに載せる短い文
- 面接官と受け入れ担当向けの決まり:聞いてはいけないこと、してはいけないこと、1対1を避ける工夫、連絡の取り方(個人の連絡先を聞かない、会社の連絡先を使う)を、A4で1枚に
- 求職者向けの窓口の案内:募集の案内や面接の日程の連絡に添える、相談の窓口の短い文
- 社員の確認の問題:場面ごとの3問の問題と答え。年に一度、面接の前に解いてもらう
人がすること(そのあと)。 社長が、中身を要点と照らして確かめ、社会保険労務士に見てもらいます。窓口の担当者を決め、相談を受けたときの調べ方と記録の型を用意します。
AIへの頼み方と、返ってくる決まりはこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、厚生労働省の指針から当社がまとめた、求職者などへのセクハラの防止の要点と、当社の採用活動の場面(面接、職場見学、夏のインターン)です。面接官とインターンの受け入れ担当向けの決まりを、A4で1枚、分かりやすい言葉で下書きしてください。要点にないことは書かず、法律の判断にあたることは「担当者に相談」と書いてください。
返ってくる決まり(見本の一部):
面接と職場見学で守ること
- 恋人や結婚の予定、容姿、性的なことは聞かない。雑談でも聞かない
- 身体に触れない。握手も求めない
- 面接や面談は、できるだけ2人以上か、ドアを開けた部屋で行う
- 個人の連絡先を聞かない。連絡は会社のメールと電話だけにする
- 困ったこと、気になったことがあれば、すぐに担当の○○に伝える
社長は、自社の場面に合っているかを確かめ、面接官とインターンの受け入れ担当に渡して説明します。
要点と記録はAIの外に置き、決まりの型はスキルにする
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎年の採用で使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
決まりと案内の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「方針の文の型」「面接官と受け入れ担当向けの決まりの型」「求職者向けの窓口の案内の型」「確認の問題の型」「書いてはいけないこと(要点にないこと、法律の判断の断定、相談した人を責める言い方、特定の人を例にした問題)」をスキルにします。
要点と相談の記録は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、国の指針から人が要点をまとめ、専門家が確かめること、相談の記録を社内の決まった場所で限られた人だけが見られる形で持つこと、年に一度の見直しの日を表で持つことがそれに当たります。相談の中身や、相談した人と行為者の名前は、とても大事な個人の情報です。AIには渡しません。
明日からは、面接をする社員の名前を書き出す
- 面接、職場見学、インターン、説明会など、求職者と会う場面と、そこで会う社員の名前を書き出す
- 今のハラスメントの決まりに、求職者やインターンの参加者が含まれているかを確かめる
- 厚生労働省の指針から、自社がすることを1枚の要点にまとめる
- 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに要点を渡し、上の見本の指示で面接官向けの決まりを下書きさせる。場面ごとの1枚と3問を毎年配る形は、面接官に採用の前に決まりを渡す。場面ごとの1枚と3問はAIでで説明しています
- 社会保険労務士に方針と決まりを見てもらい、求職者向けの窓口の案内を、次の募集から添える
本格的にやるなら、面接の質問をそろえ、カスハラ対策とまとめる
一度できたら、次の形に育てます。
- 面接の質問を前もってそろえる。 聞くことを決めておけば、雑談からの不用意な質問が減ります。質問と評価の基準をそろえる考え方は、面接で人を見誤らない。質問と評価の基準をそろえ、記録をAIでまとめるで説明しています
- カスハラ対策と一緒に整える。 同じ日に義務になったカスタマーハラスメントの防止も、方針と窓口の形は似ています。作り方は、カスハラ対策の方針とマニュアルを自社の言葉で作る。指針の例からAIが下書きで説明しています
- 確認の問題を毎年続ける。 採用の季節の前に、面接をする社員に3問を解いてもらいます。短い問題を続ける考え方は、怪しいメールに社員がだまされない会社に。月1回の注意と3問の確認をAIで作ると同じです
- 求人の案内をそろえる。 求人票や会社のページに、選考の流れと相談の窓口を書きます。求人の書き方は、求人の応募をAIで増やす方法。現場の1日を求人票に書くだけで変わるで説明しています
相談への対応と、処分の判断はAIに任せない
- 相談は人が受ける。 窓口の担当者が話を聞き、相談した人を守ります。AIに相談の中身を判断させません
- 事実の調べ方と処分は専門家と決める。 事実関係の調べ方、行為者への処分、再発防止は、就業規則と法律にかかわります。社会保険労務士や弁護士に確かめます
- 相談した人を不利に扱わない。 相談したことを理由に、選考で不利に扱うことはしません
- 相談の情報をAIに渡さない。 相談の中身や名前は、限られた人だけが見られる場所で持ちます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
まとめ
- 2026年10月1日から、求職者などに対するセクシュアルハラスメントの防止措置が、事業主の義務になった(同じ日にカスハラ対策も義務に)
- 求職者には、インターンシップの参加者や実習生も含まれる
- 方針の明確化と周知、相談の体制、起きたあとの対応、プライバシーの保護と不利益な扱いの禁止が求められる
- AIは、人がまとめた要点から、方針の文、面接官向けの決まり、求職者向けの窓口の案内、確認の問題を下書きする
- 相談への対応と処分の判断は、社長と担当者が専門家と決める。相談の情報はAIに渡さない