求人票に職種ごとの1日の流れを書く。現場への5分の聞き取りからAIが下書き
この記事で変わる経営指標
この記事では、求人の応募をAIで増やす方法。現場の1日を求人票に書くだけで変わるの「AIは、現場のメモから1日の流れを書き起こせる」を、職種ごとに続けて回せる仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、職種ごとに現場の社員へ5分聞き取る。始業と終業の時刻、休憩、賃金は就業規則と給与の表から入れる。AIが時刻つきの1日の流れと、一覧に出る最初の数行を何通りか下書きする。社長と現場の社員が実態どおりかを確かめて、求人票に載せるという形です。社長が白紙から何時間もかけていた仕事内容の欄を、聞き取りと確かめの仕事にします。
求職者は、1日の仕事の流れが分かる求人を開いている
親の記事で触れたとおり、東京労働局が2025年に行った求職者への調査では、求人票に載せてほしい事項として「仕事の流れや1日のスケジュール」が最も多く挙がったと報じられています(労働新聞社)。ハローワーク長岡の調査でも、仕事内容や就業時間を重視する声が出ています。
また、東京労働局のセミナーでは、ハローワークの求人検索を使う求職者のおおむね半数が、検索結果の一覧から2〜3件ほどしか求人票を開かないと紹介されました。一覧に表示される仕事内容の欄は90文字で、ここが最も大事だと説明されています。
つまり、一覧の最初の数行で開いてもらい、開いた先で1日の流れが分かる求人票が、応募につながります。
今は求人票が、何年も前の文のまま出し続けられている
多くの小さな会社では、求人票が次のように扱われています。
- 何年も前に社長が書いた仕事内容の文を、そのまま出し続けている
- 職種が違っても、ほぼ同じ文を使い回している
- 書き直そうと思っても、白紙から書くと何時間もかかり、後回しになる
- 応募が来ないまま、求人を出していることだけが続く
求人票の文が古いままだと、今の仕事の様子が伝わりません。現場で仕事のやり方が変わっていても、求人票は昔のままということもよくあります。
聞き取り、規則から入れ、AIが書き、現場が確かめる
仕組みは4つの段でできています。
1. 聞く:職種ごとに現場の社員へ5分聞き取る。 その職種で働いている社員に、決まった質問で5分聞きます。メモは走り書きで十分です。
- 朝来てまず何をするか、昼まで何をするか、午後は何をするか、何時ごろ帰るか
- 新しく入った人は、最初の1か月で何をするか、誰が教えるか
- この仕事のきついところと、やりがい
- 一緒に働く人数と、年代
2. 確かめる:時刻と休憩と賃金は、就業規則と給与の表から入れる。 ここは決まりの仕事です。
- 始業と終業の時刻、休憩の時間、休日は、就業規則から入れます
- 賃金、手当、残業の実際の時間は、給与の表と勤怠の記録から入れます
- 聞き取りのメモの中の数字は使いません
3. 下書きする:AIが1日の流れと最初の数行を書く。 AIが、聞き取りのメモから、時刻つきの1日の流れと、最初の1か月の様子を下書きします。あわせて、一覧に出る最初の数行(90文字の欄に入る文)を、未経験の人向け、経験者向け、子育て中の人向けのように何通りか作ります。
4. 載せる:社長と現場の社員が実態どおりかを確かめて載せる。 社長が下書きを読み、聞き取った社員にも読んでもらいます。「実際はこうではない」というところを直して、求人票に載せます。どの最初の数行を使うかは社長が決めます。
会社の言葉と質問をスキルにし、条件はAIの外で持つ
この仕組みが職種ごと、季節ごとに同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
聞き取りの質問と求人票の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 聞き取りの質問:上の4つの質問と、職種ごとに足す質問
- 求人票の型:最初の数行、1日の流れ、最初の1か月、職場の人数と雰囲気の順番
- 会社の言葉:会社が大事にしていること、仕事の呼び方
- 書いてはいけないこと:賃金や勤務時間などの条件、聞き取りにない良いこと、「アットホーム」のような中身のない言葉、性別や年齢を限る書き方
賃金や勤務時間などの条件は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、条件を就業規則と給与の表から入れること、下書きに聞き取りにない良いことが足されていないかを確かめること、現場の社員に読んでもらうことがそれに当たります。
求人票は法律で正確さが求められ、盛った表示はできない
親の記事で触れたとおり、2022年10月に施行された改正職業安定法で、求人の情報は的確に表示することが求められ、うその表示や誤解を生む表示は禁止されています(厚生労働省の資料、広島労働局の資料)。
AIは、頼まなくても文章を良く見せようとすることがあります。「残業はほとんどありません」「すぐに一人前になれます」のような、聞き取りにない言葉を足すことがあります。**聞き取ったこと以外は書かせず、現場の社員が読んで「その通り」と言える文だけを載せます。**きついところも正直に書いたほうが、入ってからの「聞いていた話と違う」を減らし、長く働いてもらうことにつながります。
社長の仕事は、聞き取りの時間をとり、確かめることになる
仕組みが入ると、求人票の作り方は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 書き始め | 白紙から何時間も | 5分の聞き取りから下書きが出る |
| 職種ごとの違い | 同じ文を使い回す | 職種ごとに1日の流れが書ける |
| 条件 | 思い出して書き、古いままのことも | 就業規則と給与の表から入る |
| 最初の数行 | 1通りだけ | 何通りか作り、比べられる |
| 現場の確かめ | ない | 聞き取った社員が読んで直す |
経営への効果は、開かれて応募が来る求人票になること
効果は、前提を置いて計算します。仮に、1つの職種の仕事内容の欄を白紙から書くのに社長が2時間半かかっていたものが、聞き取りと確かめの30分になれば、1回2時間が浮きます。社長の1時間の価値を仮に1万円とすると、1回の書き直しで2万円分です。
ただ、この仕組みの価値は時間だけではありません。親の記事で触れたとおり、人が採れないと仕事を断ることになります。1日の流れが分かる求人票は、一覧の数件に入って開かれ、働く姿を想像してもらえる求人になります。職種ごと、季節ごとに書き直せるので、求人票がいつも今の仕事の様子を伝えます。応募が来たあとの返事の仕組みは、応募が来たその日に面接の候補日を送る。AIで採用の返事を止めない仕組みで説明しています。
費用は小さく、AIの利用料は1回3円ほど
作る順番と、かかる日数
- 聞き取りの質問と求人票の型を決める(会社:社長、1時間)。今の求人票と、応募が多かった頃の求人票を見比べます
- 就業規則と給与の表から、職種ごとの条件の表を作る(会社:事務、半日)
- 聞き取りのメモから下書きを作る頼み方と、スキルを作る(作る人、0.5人日)
- 1つの職種で試して直す(作る人、0.5人日)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
上の手順3〜4で、作る側の目安は合計1人日です。仕組みを作らず、社長が会社で契約したAIのチャットに、型と聞き取りのメモを貼って下書きさせるやり方でも十分に始められます。
毎回の費用
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1つの職種あたり聞き取りのメモとスキルで3,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると見積もると、0.021ドル、1ドル150円で約3円です。
何回で取り戻せるか
仮に作る費用が6万円とすると、1回の書き直しで2万円分が浮くので、3回ほどの書き直しで取り戻せます。職種が3つある会社なら、最初の一巡で取り戻せる計算です。
必要な人は3役で、載せると決めるのは社長
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 聞き取る人 | 社長か事務 | 職種ごとに現場の社員へ5分聞く | 1職種5分 |
| 確かめる人 | 社長と現場の社員 | 下書きが実態どおりかを読み、直す | 1職種20分 |
| 作る人 | 社内の詳しい人か、外の作り手 | 質問、型、頼み方を作る | 最初の1人日 |
いちばん大事なのは、現場の社員に読んでもらうことです。社長が思っている仕事の様子と、現場の実際がずれていることはよくあります。
1か月で全職種がそろい、半年で応募の変化が分かる見込み
どこまでいけるかは、聞き取りがどれだけ具体的かで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の1か月 | 職種ごとに聞き取り、求人票を書き直す |
| 3か月 | 最初の数行を変えて出し、どれが開かれ、応募が来るかを比べる |
| 半年 | 応募の数と、入社後に「聞いていた話と違う」と辞めた人の数を、仕組みの前と比べられる |
効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。
- 応募の数:求人ごとに数えます
- 求人票が開かれた数:求人サイトで見られる場合は記録します
- 入社後3か月以内に辞めた人の数:理由もあわせて記録します
条件や良いことの盛りをAIに任せると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 条件をAIに書かせる。 賃金や勤務時間は、就業規則と給与の表から入れます
- 聞き取りにない良いことをAIが足す。 現場の社員に読んでもらい、実態と違う言葉を消します
- 現場に読んでもらわずに載せる。 社長の思い込みのまま載せると、入ってからのずれが起きます
- 一度書いたら何年もそのまま。 仕事のやり方が変わったら、聞き取りからやり直します
社員から聞いた話には、個人のことが混ざることがあります。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、社内の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。
まとめ
- 職種ごとに、現場の社員へ決まった質問で5分聞き取る
- 始業と終業の時刻、休憩、賃金は、就業規則と給与の表から入れ、AIには書かせない
- AIが時刻つきの1日の流れと、一覧に出る最初の数行を何通りか下書きし、社長と現場の社員が実態どおりかを確かめて載せる
- 求人票は法律で正確さが求められる。聞き取りにない良いことは書かない
- 費用は小さく、作る側の目安は1人日、AIの利用料は1回3円ほど。チャットに型とメモを貼るやり方でも始められる