業務への組み込み例

クラスだよりを夜に書かない。担任のメモと行事予定からAIが下書きする仕組み

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな保育園の書きものをAIで減らす。保育士が子どもと向き合う時間を守るの「保護者へのお便りと連絡は、メモと写真からAIが下書きする」のうち、毎月のクラスだよりを仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、月末に、担任の今月のメモ、来月の行事予定、写真の候補を集める。写真は掲載の同意の一覧と照らし、同意のない子が写っているものを外す。日付と持ち物は行事予定から入れる。AIがクラスだよりの下書きを作り、園長が確かめて配るという形です。担任が夜や持ち帰りで書いていたお便りを、メモを残して確かめる仕事にします。

今はクラスだよりが、月末の夜の書きものになっている

親の記事でも触れたとおり、2025年の日本人の出生数は67万1,236人で過去最少でした(厚生労働省、共同通信の報道)。子どもが減るなかで、保護者に園の様子が伝わることは、選ばれる理由の一つになります。

ところが多くの小さな保育園では、クラスだよりが次のように作られています。

  1. 月末に、担任がその月の様子を思い出しながら、一から文章を書く
  2. 行事の日付や持ち物を、予定表から書き写す。書き間違いが起きる
  3. 写真を選ぶとき、掲載に同意していない子が写っていないかを、一枚ずつ確かめる
  4. 保育の時間内に終わらず、夜や持ち帰りで書く

お便りは保護者に喜ばれる大事な仕事ですが、毎月クラスの数だけあり、担任の負担になっています。

月末に集め、表で確かめ、AIが書き、園長が配る

担任の今月のメモと行事予定と写真の候補を集め、写真は掲載の同意の一覧と照らして同意のない子が写るものを外し、日付と持ち物は行事予定から入れる。AIがクラスだよりの下書きを作り、園長が確かめて配る
担任の今月のメモと行事予定と写真の候補を集め、写真は掲載の同意の一覧と照らして同意のない子が写るものを外し、日付と持ち物は行事予定から入れる。AIがクラスだよりの下書きを作り、園長が確かめて配る

仕組みは4つの段でできています。

1. 集める:担任のメモ、行事予定、写真の候補を集める。 月末に、次のものを集めます。

  • 担任が月のあいだに残したメモ(「運動会の練習で、かけっこのゴールテープを自分たちで持つのを楽しんでいた」)。保育日誌の一言を使ってもかまいません
  • 来月の行事予定表(日付、内容、持ち物、お願い)
  • 写真の候補と、写っている子

2. 確かめる:写真の同意と、日付と持ち物を表で確かめる。 ここは決まりと計算です。

  • 写真に写っている子を、掲載の同意の一覧と照らし、同意のない子が写っている写真を外します
  • 来月の行事の日付、曜日、持ち物は、行事予定表からそのまま入れます
  • 担任のメモの子どもの名前は、名簿と照らして「児1」のような記号に置き換えてから、AIに渡します

3. 下書きする:AIがクラスだよりを書く。 AIが、担任のメモと行事予定から、クラスだよりの下書きを作ります。今月の子どもたちの様子、来月の行事とお願い、季節の健康のお知らせ(園で決めた文のみ)の順番に書きます。子どもの名前は記号のままにし、日付と持ち物は決まった欄に表から差し込みます。

4. 配る:園長が確かめて配る。 担任と園長が下書きを読み、言い回しを直します。お便りに名前を載せる場合は、載せてよい子だけを記号から名前に戻します。確かめたものを印刷するか、保護者向けの連絡の仕組みで配ります。

お便りの型と園の言葉をスキルにし、同意と日付はAIの外で持つ

この仕組みが毎月同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

お便りの型と園の言葉を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • クラスだよりの型:様子、来月の予定、お願い、健康のお知らせの順番と長さ
  • 園の方針と大事にしている言葉:子どもの姿の書き方(できたかどうかより、やろうとした様子)
  • 年齢ごとの書き方:0歳児と5歳児で変える言葉
  • 書いてはいけないこと:子どもを比べる書き方、特定の子が分かる書き方、体調や家庭のことの推測、園で決めていない健康の助言

写真の同意、日付、持ち物、名前は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、写真を同意の一覧と照らして外すこと、日付と持ち物を行事予定表から入れること、名前を記号に置き換えてから渡すこと、お便りに同意のない子の名前が戻っていないかを確かめることがそれに当たります。誰の写真を載せてよいかを、AIに判断させることはしません。

担任の仕事は、月のあいだにメモを残し、下書きを直すことになる

仕組みが入ると、クラスだより作りは次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
書き始め 月末に一から思い出して書く 月のあいだのメモから下書きが出る
日付と持ち物 予定表から書き写す 予定表から入る
写真 一枚ずつ同意を確かめる 同意の一覧と照らして外される
担任の時間 夜や持ち帰りで書く 保育の時間内に直して終わる
園長 全クラス分を読み直す 型がそろった下書きを確かめる

経営への効果は、保護者に様子が伝わり、担任が持ち帰らないこと

効果は、前提を置いて計算します。仮に、1枚のクラスだよりに担任が2時間かかっていたものが、メモから出た下書きを直す40分になれば、1枚80分が浮きます。6クラスと園だよりの月7枚なら月約9時間、1時間あたりの人件費を仮に1,800円として月約1万7,000円分です。

ただ、この仕組みの価値は時間だけではありません。担任が持ち帰りの書きものから離れられることは、長く働いてもらう助けになります。お便りの書き方がそろい、毎月決まった時期に届くことは、保護者に園の様子を伝え、選ばれる理由になります。

費用は作る費用が中心で、AIの利用料は月25円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. クラスだよりの型と、書いてはいけないことを決める(園:園長と主任、半日)。評判の良かった過去のお便りを見本に集めます。ここがいちばん大事です
  2. 写真の掲載の同意の一覧と、名簿を整える(園:事務、半日)。同意は保護者に書面で確かめたものを使います
  3. メモと行事予定と写真を集め、同意と照らし、名前を置き換える仕組みを作る(作る人、1人日)
  4. AIの下書き、日付と持ち物の差し込み、園長への届け方を作る(作る人、1人日)
  5. 1か月、1クラスで試して直す(作る人、0.5人日)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

上の手順3〜5で、作る側の目安は合計2.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の園での目安
AIの利用料 1枚のお便りの下書きごとにかかる 月7枚で25円ほど(下の計算)
連絡の仕組み・表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 型と同意の一覧の更新 月1時間

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1枚あたりメモと行事予定とスキルで4,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると見積もると、約0.023ドル、1ドル150円で約3.5円です。月7枚で25円ほどです。

何か月で取り戻せるか

取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)

仮に作る費用が15万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)を5,000円とすると、月約1万7,000円分が浮く園でおよそ13か月です。クラスが2〜3つの小さな園なら、型と同意の一覧だけ作り、園長が会社で契約したAIのチャットに、名前を置き換えたメモと予定を貼って下書きするやり方で十分です。

必要な人は3役で、配るのは園長

役 誰が すること 時間
メモを残す人 担任 月のあいだに子どもたちの様子を一言残す。下書きを直す 1枚40分
確かめて配る人 園長 言い回しと書いてはいけないことを確かめ、配る 1枚10分
作る人 園の詳しい人か、外の作り手 集める、照らす、下書き、届け方を作る 最初の2.5人日

いちばん大事なのは、写真の掲載の同意の一覧を正しく保つことです。入園や転園のたびに、同意を確かめて一覧を直します。

1か月で型がそろい、半年で持ち帰りの減り方が分かる見込み

どこまでいけるかは、担任のメモがどれだけ残るかと、型がどれだけ育つかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の1か月 1クラスで試す。担任が直したところを型と見本に足す
3か月 全クラスに広がる。お便りの書き方がそろう
半年 担任の持ち帰りの時間と、保護者の声を、仕組みの前と比べられる

効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。

  • 1枚のお便りにかかる時間:担任の時間を記録します
  • 持ち帰りの時間:月に一度、担任に聞きます
  • 日付や持ち物の書き間違い:保護者からの問い合わせの数を数えます

同意を確かめなかったり、名前をそのまま渡したりすると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 写真の同意を確かめずに載せる。 同意のない子の写真が載ると、保護者の信頼を大きく失います。同意の一覧と照らすのは、AIの外で必ず行います
  • 子どもの名前をそのままAIに渡す。 名簿と照らして記号に置き換えてから渡します
  • 日付や持ち物をAIに書かせる。 行事予定表から入れます。AIは曜日を間違えることがあります
  • 健康の助言をAIに考えさせる。 季節の健康のお知らせは、看護師や園長が決めた文だけを使います

子どもと家庭の情報は、とても大事な個人の情報です。園で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、園の決まりに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。日々の記録の仕組みは、保育日誌は一言で残す。保育士の話した様子からAIが日誌を下書きする仕組みで説明しています。

まとめ

  • 月末に、担任の今月のメモ、来月の行事予定、写真の候補を集める
  • 写真は掲載の同意の一覧と照らし、同意のない子が写っているものを外す。日付と持ち物は行事予定表から入れ、名前は記号に置き換えてから渡す
  • AIがクラスだよりの下書きを作り、担任と園長が直して配る
  • 費用は作る費用が中心で、作る側の目安は2.5人日。AIの利用料は月25円ほど。小さな園は型と同意の一覧だけ作り、チャットで十分
  • 効果は、1枚にかかる時間、持ち帰りの時間、日付や持ち物の書き間違いで確かめる

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