AI×業種

小さな保育園の書きものをAIで減らす。保育士が子どもと向き合う時間を守る

この記事で変わる経営指標

この記事では、小さな保育園がAIを使うと、どの業務がどう変わるかを説明します。一言でいうと、保護者へのお便りと連絡、保育の記録と指導計画、行事の準備、求人と新人の手引きの4つにAIを入れ、保育士の書きものの時間を減らす。子どもの体調、けが、アレルギー、発達についての判断は、保育士と看護師と園長が行うという話です。

AIの価値は、保育そのものを代わりにすることではありません。保育士が子どもが帰ったあとや持ち帰りで抱えている書きものを軽くし、子どもと向き合う時間と、休む時間を守ることです。

経営への効果は、保護者に選ばれ、保育士に辞められない園にすること

小さな保育園の仕事は、AIを入れると次のように変わります。

業務 今まで AIを入れたあと 効く経営効果
保護者への連絡 園長や主任が夜にお便りを書く メモと写真からお便りの下書きが出る 売上(選ばれる)
記録と計画 保育士が午睡の時間や持ち帰りで書く 保育士の一言から日誌と計画の下書き 業務の無駄
行事の準備 毎年、一から段取りを考える 去年の記録から段取りと案内を下書き 業務の無駄
求人と手引き 求人票が古いまま。新人への説明が口頭 現場の1日を求人票に。手引きを下書き 人手不足
小さな保育園でAIが効く4つの業務と経営効果。保護者へのお便りと連絡は売上、保育の記録と指導計画、行事の準備と記録は業務の無駄、求人と新人の手引きは人手不足に効く。子どもの体調やアレルギーの判断は後回し
小さな保育園でAIが効く4つの業務と経営効果。保護者へのお便りと連絡は売上、保育の記録と指導計画、行事の準備と記録は業務の無駄、求人と新人の手引きは人手不足に効く。子どもの体調やアレルギーの判断は後回し

効果の大きさは、前提を置いて考えます。仮に、保育士10人の園で、1人あたり1日30分かかっていた記録と連絡の書きものが、確かめて直す15分になれば、1日150分、月22日で月55時間が浮きます。1時間あたりの人件費を仮に1,800円とすると、月約9万9,000円分です。

ただ、大きいのは時間ではありません。書きものが減れば、保育士が子どもを見ている時間が増え、持ち帰りの仕事が減ります。保護者へのお便りや連絡が丁寧で早ければ、園の様子が伝わり、選ばれる理由になります。

子どもが減り、保護者に選ばれる園でないと続かない

厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、2025年の日本人の出生数は67万1,236人で、過去最少でした。10年続けて減っています(厚生労働省、共同通信の報道)。

子どもが減れば、地域によっては、園の定員が埋まりにくくなります。保護者は、園の方針や保育の様子、連絡の丁寧さを見て園を選びます。一方で、保育士を集めるのも簡単ではありません。持ち帰りの書きものが多い園では、保育士が長く働き続けにくくなります。

小さな保育園にとって、保護者に選ばれることと、保育士に長く働いてもらうことは、どちらも経営そのものです。保育士の書きものを減らすことは、その両方に効きます。

保護者へのお便りと連絡は、メモと写真からAIが下書きする

AIに頼むこと。 園長や担任が、その月の子どもたちの様子や行事の予定、お願いごとをメモにして渡し、クラスだよりや園だよりの下書きを作ってもらいます。日々の連絡(「明日は散歩で公園に行きます」「水筒を持たせてください」)の文面も、メモから整えてもらいます。

人がすること。 園長か主任が、内容と言い回しを確かめます。子どもの名前や写真を載せるときは、園の決まりと保護者の同意を確かめます。

何が変わるか。 夜に書いていたお便りが、確かめて直す仕事になります。お便りの書き方がそろい、保護者に園の様子が伝わりやすくなります。

保護者への毎月の報告を一人ずつ届ける考え方は、学習塾の例ですが小さな学習塾は保護者への報告で選ばれる。AIで講師の事務を減らす方法で説明しています。

保育の記録と指導計画は、保育士の一言からAIが下書きする

AIに頼むこと。 保育士が、その日の子どもたちの様子を一言で話して残します(「ひよこ組、園庭で砂遊び。Aちゃんが初めて自分から友だちに道具を貸せた」)。AIが、保育日誌の形に整えます。月案や週案などの指導計画も、前の月の計画と記録、園の方針から下書きを作ってもらいます。

人がすること。 担任と主任が、内容を確かめて直します。子どもの発達や家庭の事情についての見立ては、保育士が自分の言葉で書きます。

何が変わるか。 午睡の時間や持ち帰りで書いていた日誌と計画が、一言と確認で済みます。記録の書き方がそろい、主任が読みやすくなります。

一言から保育日誌を整え、名前の置き換えと体調の印を仕組みにする作り方は、保育日誌は一言で残す。保育士の話した様子からAIが日誌を下書きする仕組みで説明しています。

行事の準備は、去年の記録から段取りと案内を下書きする

AIに頼むこと。 運動会、発表会、遠足などの行事について、去年の段取りの記録と反省のメモを渡し、今年の段取りの一覧と、保護者への案内の下書きを作ってもらいます。

人がすること。 園長と担当の保育士が、日程、人の配置、安全の確認を決めます。

何が変わるか。 毎年一から考えていた段取りが、去年の続きから始められます。担当が替わっても、行事の準備が止まりません。

求人票と新人の手引きは、現場の1日からAIが下書きする

AIに頼むこと。 求人票に、保育士の1日(朝の受け入れ、活動、昼食、午睡、帰りの時間)と、園の方針、働き方(持ち帰りの仕事を減らす工夫など)を書くために、園長の話から下書きを作ってもらいます。新しく入った保育士に渡す「園の決まりと1日の流れ」の手引きも、ベテランの話から下書きします。

人がすること。 園長が、内容が実態と合っているかを確かめます。

何が変わるか。 求人票に働き方が具体的に書かれ、応募する人が想像しやすくなります。新人が手引きを読んで、園の流れを先に覚えられます。

求人票の書き方は、求人の応募をAIで増やす方法。現場の1日を求人票に書くだけで変わるで説明しています。

子どもの体調、アレルギー、発達の判断はAIに任せない

AIで何でもできそうに見えても、次のことはAIに任せません。

  • 子どもの体調やけがの判断。 熱、発疹、けがの様子をAIに聞いて、保護者への連絡や受診を決めることはしません。保育士、看護師、園長が判断し、必要なら医師に相談します
  • アレルギーの対応。 給食や食べ物のアレルギーの確認は、医師の指示書と園の決まりで行い、AIの答えに頼りません
  • 発達や家庭の事情についての見立て。 子どもの発達や家庭のことは、保育士と園長が、必要なら専門の機関と相談して判断します。AIに書かせた見立てを保護者に伝えることはしません

まずは、間違えても人がすぐに気づけて直せる、お便りと記録の下書きから始めます。

園の言葉と記録の型をスキルにし、子どもの情報はAIに入れすぎない

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日同じように使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

園の言葉と型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「園の方針と大事にしている言葉」「クラスだより・日誌・月案の型」「保護者への言い回しの見本」「書いてはいけないこと(子どもを比べる書き方、体調の診断のような書き方、名前の出し方)」をスキルにします。

子どもの情報は、AIに入れる範囲を決める。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、AIに渡す前に子どもの名前を「Aちゃん」のように置き換えること、お便りに子どもの名前や写真が入っていないかを送る前に確かめること、日付と時間は行事の予定表から入れることがそれに当たります。

始める順番は、毎日の量が多く、間違えても直せる仕事から

4つの業務のうち、どれから始めるかは、毎日の量の多さと、間違えたときに直せるかで決めます。

  1. 保育日誌:毎日、クラスの数だけ出ます。主任が確かめるので、間違いに気づけます
  2. 保護者への日々の連絡:毎日出ます。園長か主任が確かめてから送ります
  3. お便りと行事の準備:月に数回ですが、園長や主任の夜の時間を取っています
  4. 求人票と手引き:一度作れば、しばらく使えます

日誌から始めると、保育士に「AIで楽になった」が伝わりやすくなります。

費用は、法人向けプランの月数千円から始められる

最初は、園で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランで、チャットに貼って使うところから始めます。費用は1人あたり月数千円です。全員分を契約しなくても、まず園長と主任の分から始められます。お便りや日誌を自動で整える仕組みにする場合は、作る費用が加わります。費用の考え方はAI導入にいくらかかる?月数千円から試せて、元が取れるかも先に分かるにまとめています。

効果は、持ち帰りの時間と、保育士の辞める人の数で測る

効果を確かめるには、次の3つを始める前と後で比べます。

  • 記録と連絡の書きものにかかる時間:1週間だけ、保育士の時間を記録します。持ち帰りの時間も数えます
  • お便りを出すまでの日数:書き始めから配るまでを数えます
  • 保育士の辞める人の数と、求人への応募の数:半年から1年で比べます

最初の1か月は、1クラスの日誌とお便りだけ試す

  1. 1クラスの担任に、その日の様子を一言で残してもらう
  2. 園で契約したAIのチャットで、子どもの名前を置き換えてから、日誌の形に整える
  3. 主任が確かめて直し、手で書いたときとの時間を比べる
  4. 同じクラスのクラスだよりを、担任のメモから下書きさせ、園長が確かめて配る
  5. 1か月後、日誌とお便りの型を見直し、ほかのクラスにも広げる

子どもと家庭の情報は、とても大事な個人の情報です。園の決まりの作り方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 2025年の出生数は67万1,236人で過去最少。保護者に選ばれることと、保育士に長く働いてもらうことが、小さな保育園の経営そのもの
  • 保護者へのお便りと連絡、保育の記録と指導計画、行事の準備、求人と新人の手引きの4つにAIを入れ、書きものの時間を減らす
  • 子どもの体調、けが、アレルギー、発達の判断はAIに任せず、保育士と看護師と園長が行う
  • 子どもの名前は置き換えてからAIに渡し、送る前に名前や写真が入っていないかを確かめる
  • 最初の1か月は、1クラスの日誌とお便りだけを試し、持ち帰りの時間を比べる

CONTACT

自社の業務にも、AIを組み込めるか

記事のような組み込みを、御社の業務と予算に合わせて設計・実装しています。何から手を付ければいいか分からない段階でも大丈夫です。

AI活用を相談する