高年齢社員の仕事の分け方|面談で体力を聞き、作業の負担を表にする
この記事で変わる経営指標
この記事では、高年齢労働者の労災防止が努力義務に|転倒と腰痛を防ぐ会社の準備の「本格的にやるなら、面談と仕事の分け方まで広げる」を、実際の面談と表として進める方法を説明します。
一言でいうと、年に1回、高年齢の社員と面談し、体力のことや仕事で困っていることを聞く。AIが、作業ごとの負担の表と、面談のまとめを下書きする。社長が本人と話して、任せる作業と、やり方を変える作業を決める。半年ごとに本人と見直す。健康の判断は本人と医師が行うという形です。
経営への効果は、ベテランにけがなく長く働いてもらうこと
小さな会社では、60歳を過ぎたベテランが現場の要になっていることがよくあります。けがで休めば、その人の仕事を代われる人がいません。けがが起きる前に、体力に合った仕事の分け方にしておけば、ベテランに長く働いてもらえます。
本人にとっても、「この作業はつらくなってきた」と言える場があれば、無理をせずに済みます。体力に合った仕事に変えることは、本人の経験を生かし続けることにもつながります。
2026年4月から、健康や体力に応じた措置が努力義務になった
労働政策研究・研修機構(JILPT)のビジネス・レーバー・トレンドによると、改正労働安全衛生法により、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業の管理などが事業者の努力義務になり、厚生労働省は2026年2月10日に指針を公示し、4月1日から適用しました。指針では、施設・設備の改善とあわせて、健康や体力に応じた業務とのマッチングが示されています。同じ記事によると、2024年の休業4日以上の死傷者に占める60歳以上の割合は30.0%でした。
SmartHR Mag. の解説は、会社がすることとして、高年齢の社員の健康や体力の状況を把握すること、状況に応じた対応をすること、安全衛生の教育をすることを挙げています。細かな中身は、厚生労働省の指針と、労働基準監督署の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、ベテランが無理をしていても気づきにくい
ベテランほど、「まだできる」と言って、重い物を運んだり、高い所に上ったりします。社長も、頼りにしているので、つい任せてしまいます。本人が体のつらさを言い出しにくいこともあります。
作業ごとにどれだけ体に負担がかかるかを、表にしていないこともあります。どの作業を誰に任せるかが、その日の流れで決まっていると、ベテランに負担の大きい作業が偏っていても気づきません。
聞き、AIが表にし、決めて、見直す
1 聞く(社長)。 年に1回、高年齢の社員と面談し、体力のことと、仕事で困っていることを聞きます。
2 表にする(AI)。 社内の作業の一覧と面談のメモをAIに渡し、作業ごとの負担の表と、面談のまとめを下書きしてもらいます。
3 決める(社長)。 本人と話して、これまでどおり任せる作業と、やり方を変える作業を決めます。
4 見直す(社長)。 半年ごとに本人と話し、表と分け方を見直します。
作業の負担の表は、この5つの観点で作る
| 観点 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 重さ | 持ち上げる物の重さ、回数 |
| 高さ・姿勢 | 脚立や高所、しゃがむ・かがむ姿勢 |
| 暑さ・寒さ | 夏の屋外、冷蔵庫の中 |
| 時間 | 立ち続ける時間、夜の作業 |
| 速さ | 急いでこなす必要があるか |
作業ごとに、5つの観点で「重い」「ふつう」「軽い」を付けます。付けるのは、その作業をよく知る社員と社長です。AIには、作業の説明から表の下書きを作ってもらいます。
AIへの頼み方と、返ってくる表はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、当社の現場の作業の一覧と、それぞれの作業の説明です。作業ごとに、重さ、高さ・姿勢、暑さ・寒さ、時間、速さの5つの観点で、負担が「重い」「ふつう」「軽い」のどれに当たりそうかの案を表にしてください。説明から分からない所は「要確認」と書いてください。誰に任せるかの判断は書かないでください。
返ってくる表(見本の一部。内容は架空です):
作業 重さ 高さ・姿勢 暑さ・寒さ 時間 速さ 資材の搬入 重い ふつう 重い(夏) ふつう 重い 新人への手順の説明 軽い 軽い 軽い ふつう 軽い 倉庫の棚の上段の整理 ふつう 重い 要確認 軽い 軽い
面談は、本人の言葉で聞き、記録は本人と確かめる
面談で聞くのは、体の診断ではなく、仕事の中での困りごとです。
- 仕事の場面で聞く。 「重い物を運ぶとき、前よりつらいと感じるか」「高い所の作業で、不安に思うことはあるか」のように聞きます
- 本人の言葉のまま残す。 面談のメモは、本人が話した言葉で書きます。AIにまとめさせるときも、決めつけた言い方に書き換えさせません
- まとめは本人に見せる。 AIが下書きした面談のまとめを本人に見せ、違う所があれば直します
健康の情報は、とくに大事に扱います。面談のメモに病名や通院のことを書くかは、本人と相談して決め、AIに渡すときは名前を記号に置き換えるか、会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。
任せる作業と、やり方を変える作業を、本人と決める
表と面談のまとめを並べて、本人と話します。
- これまでどおり任せる作業。 本人が無理なくできている作業は、そのまま任せます
- やり方を変える作業。 重さが「重い」の作業は、台車を使う、2人で運ぶ、量を分けるなど、やり方を変えます。場所や道具を直す考え方は、職場の転倒対策は場所を直すのが先|年2回の点検で危ない所を減らすで説明しています
- ほかの人に移す作業。 本人がつらいと感じている作業は、若手に移し、ベテランには手順の説明や確認の役を任せます。仕事の切り出し方は、高齢社員を戦力にする方法|70歳まで働くベテランの仕事の切り出し方で説明しています
決めたことは、本人と社長が同じ紙を持ちます。
安全衛生の教育も、分け方に合わせて足す
SmartHR Mag. の解説は、会社がすることの1つとして安全衛生の教育を挙げています。仕事の分け方を変えたら、それに合わせて教えることも足します。
- やり方を変えた作業は、全員に伝える。 台車を使う、2人で運ぶなど、変えたやり方は、高年齢の社員だけでなく、一緒に働く全員に伝えます
- 教える役をベテランに任せる。 手順の説明が得意なベテランには、若手への教え役を任せます。体の負担が少なく、経験が生きる役です
- 教える内容は1枚にする。 変えたやり方を、AIに1枚の手順の紙に下書きさせ、ベテランと社長が確かめて現場に貼ります
型をスキルにし、健康の判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「作業の負担の5つの観点」「面談で聞く質問の例」「面談のまとめの型」「書いてはいけないこと(健康の判断、誰に任せるかの判断、決めつけた言い方)」をスキルにします。
健康の判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、健康の判断を本人と医師が行うこと、表の「重い」「軽い」を社員と社長が付けること、任せる作業を本人と話して決めることがそれに当たります。
費用はAIの利用料が1回3円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 作業の負担の表の下書き | 作業の一覧と説明(入力4千トークンほど)から表(出力1,500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回3円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 社長の時間 | 1人あたりの面談に30分ほど、表を直すのに1〜2時間(想定) |
必要な人は3役で、決めるのは本人と社長
- 高年齢の社員:面談で困りごとを話し、まとめを確かめ、分け方を社長と決める
- 社長:面談をし、表を直し、本人と話して任せる作業を決める
- 作業をよく知る社員:作業ごとの負担の「重い」「軽い」を一緒に付ける
1か月で表ができ、半年後に分け方を見直す見込み
- 1週目:社内の作業を書き出し、AIで負担の表を下書きし、社員と直す
- 2〜3週目:高年齢の社員と1人ずつ面談し、まとめを本人と確かめる
- 4週目:本人と話して、任せる作業と変える作業を決める
- 半年後:同じ表と面談で見直し、けがやヒヤリとしたことがなかったかを聞く
まとめ
- 2026年4月から、高年齢者の健康や体力に応じた措置が事業者の努力義務になった
- 年に1回、高年齢の社員と面談し、仕事の中での困りごとを本人の言葉で聞く
- 作業ごとの負担を、重さ・高さと姿勢・暑さと寒さ・時間・速さの5つで表にする
- 表と面談のまとめを並べ、任せる作業、やり方を変える作業、移す作業を本人と決める
- 健康の判断は本人と医師が行い、AIには表とまとめの下書きだけを頼む