業務への組み込み例

発注を早め、納品日をまとめる。荷待ちを減らす相談はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、トラックの荷待ちを減らし、運んでもらえる荷主に。時間は表、連絡はAIでの「納品の条件を見直す」を、仕入先ごとに数字で話し合える仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、発注の記録から、仕入先ごとに、発注から納品までの日数、週あたりの納品の回数、時間指定の集まり方を表で数える。見直す候補には表で印を付ける。AIは、表の数字から、仕入先と運送会社への相談の文と、社内の部門に発注の締めを守ってもらう説明を下書きする。条件は社長が相手と話して決め、待ち時間の記録で効果を見るという形です。荷物を受け取る側の会社でできることを、無理のない順で進めます。

受け取る側にも、リードタイムと納品日の見直しが求められている

物流効率化法の改正で、2025年4月1日から、会社の規模を問わず、荷物を出す側(発荷主)にも受け取る側(着荷主)にも、物流の効率化の努力義務が課されています(国土交通省近畿運輸局のチェックリスト、農林水産省北海道農政事務所の資料、ビジネス+ITの解説による)。

国が定めた荷主の判断基準とチェックリストは、取り組みの例として次のものを挙げています(近畿運輸局と北海道農政事務所の資料による)。

取り組み 中身
リードタイムの確保 トラック事業者が積み合わせなどをしやすいよう、実態に合った余裕のある期間で発注する
量の平準化と納品日の集約 繁閑の差をならし、納品日をまとめて、1回あたりの量を適正にする
日時の分散 混雑する時間を避けた日時の指定などで、トラックが一度に集まらないようにする
予約の仕組み 予約受付システムを入れるだけでなく、実際に荷待ちが減るように使う
着荷主の協議と連携 受け取る側は、出す側と話し合い、社内の部門どうしで連携する

エデンレッドの解説は、直接の義務の対象ではない会社でも、取引先から納品時間の調整や出荷量の平準化を求められる場合があるとしています。細かい中身は、国土交通省と経済産業省の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

今は、急ぎの発注と細かい時間指定が、毎日の納品を生んでいる

多くの小さな会社では、仕入れの発注は次のように行われています。

  1. 現場から「材料が足りない」と言われて、その日のうちに発注する
  2. 仕入先には「明日の朝9時までに」と、細かく時間を指定する
  3. 同じ仕入先から、毎日少しずつ納品される
  4. 朝の同じ時間に何台ものトラックが着き、待ち時間が生まれる

急ぎの発注は、現場の在庫の見方や、部門どうしの連絡の仕方から生まれていることが多くあります。どこから手をつけるかは、発注の記録を数えると見えてきます。

表で数え、AIが相談の文と社内の説明を書く

発注の記録から仕入先ごとに発注から納品までの日数と週あたりの納品の回数と時間指定の集まり方を表で数え、見直す候補に印を付ける。AIが表の数字から仕入先への相談の文と社内向けの説明を下書きし、社長が相手と話して条件を決め、待ち時間の記録で効果を見る
発注の記録から仕入先ごとに発注から納品までの日数と週あたりの納品の回数と時間指定の集まり方を表で数え、見直す候補に印を付ける。AIが表の数字から仕入先への相談の文と社内向けの説明を下書きし、社長が相手と話して条件を決め、待ち時間の記録で効果を見る

仕組みは4つの段でできています。

1. 入れる:発注の記録を表にそろえる。 発注書や受発注の表から、3か月分の発注日、納品日、時間指定、量、仕入先を1つの表にそろえます。受け取りの時刻と待ち時間は、親の記事で作った記録を使います。

2. 数える:見直す候補に印を付ける。 ここはAIの仕事ではありません。表の計算で、仕入先ごとに次のものを出します。

  • 発注から納品までの日数の平均と、翌日納品の割合
  • 週あたりの納品の回数と、1回あたりの量
  • 時間指定が集まっている時間帯と、その時間の待ち時間

翌日納品が多い、納品の回数が多いのに1回の量が少ない、時間指定が朝に集まっている、といった仕入先に印を付けます。

3. 下書きする:AIが相談の文と説明を書く。 AIに、印の付いた仕入先の数字だけを渡し、次のものを下書きさせます。

  • 仕入先と運送会社への相談の文:数字で見た今の状況、当社がすること(発注を前倒しする、締めの時刻を決める)、お願いしたいこと(納品日を週2回にまとめる、時間指定の幅を広げる)、相手の事情を伺うこと
  • 社内向けの説明:営業や製造の部門に、発注の締めの時刻と、在庫の見方を変える理由を伝える1枚
  • 話し合いのあとの確認のメール:決めたことと、試す期間と、振り返る日

4. 話し合う:社長が相手と決め、記録で効果を見る。 社長が、仕入先や運送会社と、相手の事情を聞きながら話し合います。決めた条件は、1か月など期間を決めて試し、待ち時間と納品の回数の変化を表で見ます。

相談の型をスキルにし、数えることと決めることはAIの外に置く

この仕組みが同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

相談の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 相談の文の型:今の数字、当社がすること、お願いしたいこと、相手の事情を伺うことの順
  • 社内向けの説明の型:締めの時刻、理由、例外の扱い(本当に急ぐときの連絡先)
  • 確認のメールの型:決めたこと、試す期間、振り返る日
  • 書いてはいけないこと:表にない数字、相手に一方的に負担を求める言い方、取引をやめることをにおわせる言い方、運賃や費用の負担を勝手に決める文

数えることと、決めることは、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、発注から納品までの日数や納品の回数を表で数えること、見直す候補を表の印で選ぶこと、条件を社長が相手と話し合って決めること、効果を待ち時間の記録で見ることがそれに当たります。

先に自社の発注を直し、それから相手にお願いする

この仕組みでいちばん効くのは、相手にお願いする前に、自社の発注の仕方を直すことです。翌日納品の多くは、受け取る側の急ぎの発注から生まれています。

  • 発注の締めを決める。 「毎週月曜と木曜の15時までに発注」のように、発注する日と時刻を決めます。急ぎのときの連絡先も決めておきます
  • 在庫の見方を変える。 現場が「足りない」と気づくのが遅いと、急ぎの発注になります。よく使う材料は、残りがいくつになったら発注するかを表で決めます
  • 時間指定の幅を広げる。 「9時まで」を「午前中」にするだけで、運送会社が回り方を組みやすくなります
  • それから相手にお願いする。 自社がしたことを示したうえで、納品日をまとめられないかを相談します

自社が先に動いたことを示すと、仕入先や運送会社も話に乗りやすくなります。

担当者の仕事は、数えて、決めたことを守ることになる

仕組みが入ると、発注と納品は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
発注のしかた 足りないと気づいたその日 決めた曜日と締めの時刻
納品の回数 同じ仕入先から毎日 週に決めた回数にまとめる
時間指定 細かい時刻 午前・午後などの幅
仕入先との相談 頼みにくい 数字と自社の取り組みを示す
効果の見方 分からない 待ち時間と納品の回数の表

経営への効果は、受け取りの手間と、運賃の上がり方を抑えること

効果は、前提を置いて考えます。

見直しで減るもの = 受け取りの回数 × 1回あたりの受け取りの手間 + 待ち時間がもとになる運賃の上がり方

納品の回数が減れば、受け取りと検品の手間が減ります。トラックの待ち時間が減れば、運送会社にとっても運びやすい取引先になり、運賃の話し合いでも材料になります。ドライバーが足りない中で、運んでもらえる取引先であり続けることにもつながります。

費用はほとんど要らず、AIの利用料は10社で35円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 3か月分の発注の記録を表にそろえる(会社:担当者、半日。受発注の表から写します)
  2. 仕入先ごとの日数と回数を数える式を作る(会社:担当者、2時間)
  3. 相談の文と社内の説明の型を決める(会社:社長と担当者、1時間)
  4. 型をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 仕入先への相談の文と社内向けの説明の下書き 10社で約35円(下の計算)
表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。仕入先1社への相談の文に、表の数字とスキルで3,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると約3円、10社で約32円です。社内向けの説明を同じ量で1回作ると約3円、あわせて約35円です(1ドル150円で計算)。

何か月で取り戻せるか

AIの利用料はわずかです。かかるのは、発注の記録をそろえて数える最初の半日と、仕入先と話す時間です。仕入先が数社の会社は、スキルにする手間をかけず、会社で契約したAIのチャットに型と表の数字を貼って頼むだけで十分です。大事なのは、AIではなく、自社の発注の仕方を先に直すことです。

必要な人は3役で、社内の部門の協力が要る

役 誰が すること 時間
表を保つ人 購買か総務の担当者 発注の記録をそろえて数え、候補に印を付ける 月1時間
話し合う人 社長 仕入先や運送会社と条件を話し合って決める 1社1時間
発注する人 営業や製造の部門 決めた締めの時刻と在庫の見方を守る 日々

3か月で発注の締めが定着し、納品の回数が減る見込み

どこまでいけるかは、社内の部門が発注の締めを守れるかで決まります。目安は次のとおりです(想定です)。

時期 見込み
最初の1か月 発注の記録を数え、自社の発注の締めを決めて試す
2か月目 納品の回数が多い仕入先から順に、納品日をまとめる相談をする
3か月後 締めが定着し、待ち時間と納品の回数の変化を表で見る

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 仕入先ごとの週あたりの納品の回数:毎月見ます
  • 翌日納品の割合:毎月見ます
  • 受け取りの待ち時間:親の記事の記録で見ます

自社の発注を変えずに相手にだけ求めると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 相手にだけ求める。 自社の急ぎの発注を変えずに納品日をまとめてほしいと頼んでも、話は進みません。先に自社の締めを決めます
  • 社内に伝えずに決める。 営業や製造が締めを知らないと、急ぎの発注が続きます。社内向けの説明を配ります
  • 例外を決めない。 本当に急ぐときの連絡の仕方を決めておかないと、締めが守られなくなります
  • 試さずに決めきる。 期間を決めて試し、困ったことを仕入先と一緒に直します

仕入先の名前や発注の量は、大事な取引の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。受け取りの時間を予約で分ける作り方は、納品の受け取りを予約制にする。枠の空きは表、確認の連絡はAIでで説明しています。

まとめ

  • 2025年4月から、荷物を受け取る側も含めすべての荷主に、物流の効率化の努力義務がある。判断基準は、リードタイムの確保、納品日の集約、日時の分散などを挙げている
  • 発注の記録から、仕入先ごとに発注から納品までの日数、納品の回数、時間指定の集まり方を表で数え、見直す候補に印を付ける
  • 先に自社の発注の締めと在庫の見方を決め、それから仕入先に納品日をまとめる相談をする
  • AIは、表の数字から、仕入先と運送会社への相談の文、社内向けの説明、確認のメールを下書きする
  • 条件は社長が相手と話して決め、期間を決めて試し、待ち時間の記録で効果を見る

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