経営課題×AI

トラックの荷待ちを減らし、運んでもらえる荷主に。時間は表、連絡はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、製品を出荷したり、仕入れを受け取ったりする会社が、トラックの荷待ち(ドライバーが積み下ろしの順番を待つ時間)を減らす方法を説明します。一言でいうと、トラックが着いた時刻、積み下ろしを始めた時刻、出発した時刻を表に記録し、待ち時間と作業時間を計算する。AIは、受注の表から運送会社への出荷予定の連絡を下書きし、仕入先には納品の時間を分ける相談の文を下書きする。出荷の段取りと時間の決め方は、社長と現場の責任者が決めるという話です。

AIの価値は、トラックを動かすことではありません。前もって伝えることを早く、抜けなくそろえ、ドライバーを待たせない荷主になって、運送会社から選ばれ続けることです。

経営への効果は、運んでもらえる荷主になり、出荷の遅れを減らすこと

荷待ちを減らす取り組みは、AIを使うと次のように変わります。

今まで 時間は表で、連絡はAIで
荷待ちの時間 誰も測っていない 着いた時刻と出発の時刻を表に
運送会社への連絡 当日の朝に電話で台数を伝える 前日までに出荷予定を送る
仕入先の納品 朝一番に集中する 時間を分ける相談をする
積み込みの準備 トラックが来てから始める 予定に合わせて先にそろえる
運送会社との話し合い 運賃の値上げの話だけ 待ち時間の記録をもとに改善を話す
荷待ちを減らす取り組みの変化。今までは荷待ちの時間を誰も測らず、当日の朝に電話で台数を伝え、仕入先の納品も朝に集中していた。着いた時刻と出発の時刻を表に記録して時間を計算し、AIが運送会社への出荷予定の連絡と仕入先への納品時間の相談を下書きし、段取りは社長と現場の責任者が決める
荷待ちを減らす取り組みの変化。今までは荷待ちの時間を誰も測らず、当日の朝に電話で台数を伝え、仕入先の納品も朝に集中していた。着いた時刻と出発の時刻を表に記録して時間を計算し、AIが運送会社への出荷予定の連絡と仕入先への納品時間の相談を下書きし、段取りは社長と現場の責任者が決める

経営の効果は2つあります。

  • 運んでもらえる荷主になる。 ドライバーの働き方の決まりが厳しくなり、運送会社は限られた時間で多くの荷物を運ぼうとしています。待たされる荷主の仕事は、運賃が上がったり、断られたりするおそれがあります。待たせない荷主は、選ばれ続けます
  • 出荷の遅れを減らす。 出荷の予定を前日までに伝え、積み込みの準備を先にそろえれば、トラックが着いてから慌てることが減り、出荷の遅れや積み間違いも減ります

2025年4月から、すべての荷主に荷待ちを減らす努力義務がある

物流効率化法の改正により、2025年4月1日から、会社の規模を問わず、すべての荷主と物流事業者に、物流の効率化に向けた努力義務が課されました。荷主には、納品の条件や発注の方法を見直し、荷待ち時間と荷役(積み下ろしなど)の時間を減らす取り組みが求められています(NTTドコモビジネス、ビジネス+IT、エデンレッド、vs-group.jpの解説による)。

国は、次のような目標を示しています(ビジネス+IT、エデンレッドの解説による)。

目標 中身
1運行あたり 荷待ち時間と荷役等の時間を、合わせて2時間以内に
1回の積み下ろしあたり 荷待ち時間と荷役等の時間を、合わせて1時間以内に
ドライバー1人あたり 年間125時間の拘束時間の短縮

2026年4月からは、一定の規模以上の大手の荷主などが「特定事業者」に指定され、中長期の計画の作成、定期の報告、物流統括管理者の選任が義務になりました(NTTドコモビジネス、LNEWSの記事による)。中小企業の多くは特定事業者には当たりませんが、取引先の大手の荷主から、納品の時間や方法の見直しを求められることがあります。細かい基準は、国土交通省や経済産業省の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

小さな会社ほど、荷待ちの時間を測っていない

荷待ちを減らす取り組みで、小さな会社が困るのは次の3つです。

  • 待ち時間が分からない。 トラックが何時に着いて、何時に出たかを記録していない会社が多く、どれだけ待たせているかが分かりません
  • 出荷の予定を伝えるのが遅い。 当日の朝に電話で台数を伝えると、運送会社は車とドライバーをそろえにくく、積み込みの準備もトラックが着いてから始まります
  • 仕入れの納品が朝に集中する。 仕入先に「午前中に」とだけ頼んでいると、朝一番に何台も重なり、受け取る側の自社がドライバーを待たせることになります

時刻の記録と待ち時間の計算は、表でできます。連絡と相談の文は、前もって作れます。ここは、表とAIで手伝いやすい仕事です。

時間は表で計算し、AIは出荷予定の連絡と納品の相談を書く

人がすること(最初に)。 現場の責任者が、出荷と受け取りの場所ごとに、トラックが着いた時刻、積み下ろしを始めた時刻、終わった時刻、出発した時刻を記録する表を作ります。受付の担当者が、トラックが来るたびに1行入れます。

計算で行うこと。 表で、1台ごとの待ち時間(着いてから積み下ろしを始めるまで)と作業時間(積み下ろしの時間)を計算します。曜日ごと、時間帯ごと、運送会社や仕入先ごとに平均を出し、1時間を超えた回に印を付けます。

AIに頼むこと。 表と受注の表をもとに、次のものを下書きしてもらいます。

  • 運送会社への出荷予定の連絡:翌日の出荷の件数、荷物の量と荷姿、積み込みの時間帯、届け先を、受注の表から前日までに送る文
  • 仕入先への納品時間の相談:受け取りの混む時間帯を示し、納品の時間を分けたいとお願いする文
  • 月のまとめ:待ち時間の長かった曜日と時間帯、印の付いた回の数を、社長が読む1枚に

人がすること(そのあと)。 社長と現場の責任者が、まとめを見て、積み込みの準備の順番や、受け取りの時間の割り振りを決めます。運送会社と仕入先とは、記録をもとに話し合います。

AIへの頼み方と、返ってくる出荷予定の連絡はこんな形になる

AIに渡す指示(見本。内容は架空です):

下は、当社の明日の出荷の受注の表(件数、荷物の量、荷姿、届け先、希望の届け時間)です。いつもお願いしている運送会社への出荷予定の連絡を、短く分かりやすく下書きしてください。積み込みの時間帯は表のとおりに書き、表にない時刻や台数は書かずに「ご相談させてください」と書いてください。

返ってくる出荷予定の連絡(見本の一部):

いつもありがとうございます。明日○月○日の出荷予定をお送りします。

  • 件数:12件(パレット6枚、ケース40箱)
  • 積み込み:10時から10時半(第2出荷口)
  • 届け先:○○市内8件、○○市4件
  • 積み込みの準備は、9時半までに終えておきます 台数と到着の時刻について、ご相談させてください。

現場の責任者は、受注の表と照らし、準備の時刻が守れるかを確かめてから送ります。

時刻の記録と計算はAIの外に置き、連絡の型はスキルにする

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日出荷するなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

連絡と相談の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「出荷予定の連絡の型」「納品時間の相談の型」「月のまとめの型」「書いてはいけないこと(表にない時刻や台数、運賃の一方的な指定、相手の落ち度を責める言い方)」をスキルにします。

時刻の記録と計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、受付の担当者が時刻を表に入れること、待ち時間と作業時間を表で計算すること、出荷予定の連絡を受注の表と照らすことがそれに当たります。AIは時刻の計算や件数の数え方を間違えることがあるので、数字は表で出します。

明日からは、トラックが着いた時刻と出発した時刻を書き留める

  1. 出荷と受け取りの場所に、トラックが着いた時刻、積み下ろしを始めた時刻、終わった時刻、出発した時刻を書く表を置く
  2. 2週間、受付の担当者に1台ずつ書いてもらう
  3. 表で待ち時間と作業時間を計算し、長い曜日と時間帯を見る
  4. 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに受注の表を渡し、上の見本の指示で運送会社への出荷予定の連絡を下書きさせる
  5. 前日までに出荷予定を送ることを、運送会社と相談して始める

本格的にやるなら、受け取りの予約と納品の条件を見直す

一度できたら、次の形に育てます。

段取りの判断と、運賃の決め方はAIに任せない

  • 段取りは現場が決める。 積み込みの順番や、受け取りの時間の割り振りは、現場の責任者が決めます。AIは連絡と相談の文までにします
  • 運賃は話し合って決める。 運賃や附帯作業の料金は、運送会社と話し合って決めます。AIに一方的な条件を書かせません
  • 大手の取引先の求めは原文で確かめる。 大手の荷主から納品の条件の見直しを求められたときは、求めの中身を原文で確かめ、無理な条件は話し合います
  • 取引先の情報に気をつける。 届け先や取引の量は、大事な取引の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています

まとめ

  • 2025年4月から、すべての荷主に、荷待ち時間と荷役の時間を減らす努力義務がある。国は1運行2時間以内、1回の積み下ろし1時間以内を目標に示している
  • トラックが着いた時刻と出発した時刻を表に記録し、待ち時間と作業時間を計算する
  • AIは、受注の表から運送会社への出荷予定の連絡を、記録から仕入先への納品時間の相談と月のまとめを下書きする
  • 段取りと運賃は、社長と現場の責任者が運送会社や取引先と話し合って決める
  • 待たせない荷主になることが、運んでもらえる荷主であり続けることにつながる

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