トラックの荷待ちを減らし、運んでもらえる荷主に。時間は表、連絡はAIで
この記事では、製品を出荷したり、仕入れを受け取ったりする会社が、トラックの荷待ち(ドライバーが積み下ろしの順番を待つ時間)を減らす方法を説明します。一言でいうと、トラックが着いた時刻、積み下ろしを始めた時刻、出発した時刻を表に記録し、待ち時間と作業時間を計算する。AIは、受注の表から運送会社への出荷予定の連絡を下書きし、仕入先には納品の時間を分ける相談の文を下書きする。出荷の段取りと時間の決め方は、社長と現場の責任者が決めるという話です。
AIの価値は、トラックを動かすことではありません。前もって伝えることを早く、抜けなくそろえ、ドライバーを待たせない荷主になって、運送会社から選ばれ続けることです。
経営への効果は、運んでもらえる荷主になり、出荷の遅れを減らすこと
荷待ちを減らす取り組みは、AIを使うと次のように変わります。
| 今まで | 時間は表で、連絡はAIで | |
|---|---|---|
| 荷待ちの時間 | 誰も測っていない | 着いた時刻と出発の時刻を表に |
| 運送会社への連絡 | 当日の朝に電話で台数を伝える | 前日までに出荷予定を送る |
| 仕入先の納品 | 朝一番に集中する | 時間を分ける相談をする |
| 積み込みの準備 | トラックが来てから始める | 予定に合わせて先にそろえる |
| 運送会社との話し合い | 運賃の値上げの話だけ | 待ち時間の記録をもとに改善を話す |
経営の効果は2つあります。
- 運んでもらえる荷主になる。 ドライバーの働き方の決まりが厳しくなり、運送会社は限られた時間で多くの荷物を運ぼうとしています。待たされる荷主の仕事は、運賃が上がったり、断られたりするおそれがあります。待たせない荷主は、選ばれ続けます
- 出荷の遅れを減らす。 出荷の予定を前日までに伝え、積み込みの準備を先にそろえれば、トラックが着いてから慌てることが減り、出荷の遅れや積み間違いも減ります
2025年4月から、すべての荷主に荷待ちを減らす努力義務がある
物流効率化法の改正により、2025年4月1日から、会社の規模を問わず、すべての荷主と物流事業者に、物流の効率化に向けた努力義務が課されました。荷主には、納品の条件や発注の方法を見直し、荷待ち時間と荷役(積み下ろしなど)の時間を減らす取り組みが求められています(NTTドコモビジネス、ビジネス+IT、エデンレッド、vs-group.jpの解説による)。
国は、次のような目標を示しています(ビジネス+IT、エデンレッドの解説による)。
| 目標 | 中身 |
|---|---|
| 1運行あたり | 荷待ち時間と荷役等の時間を、合わせて2時間以内に |
| 1回の積み下ろしあたり | 荷待ち時間と荷役等の時間を、合わせて1時間以内に |
| ドライバー1人あたり | 年間125時間の拘束時間の短縮 |
2026年4月からは、一定の規模以上の大手の荷主などが「特定事業者」に指定され、中長期の計画の作成、定期の報告、物流統括管理者の選任が義務になりました(NTTドコモビジネス、LNEWSの記事による)。中小企業の多くは特定事業者には当たりませんが、取引先の大手の荷主から、納品の時間や方法の見直しを求められることがあります。細かい基準は、国土交通省や経済産業省の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
小さな会社ほど、荷待ちの時間を測っていない
荷待ちを減らす取り組みで、小さな会社が困るのは次の3つです。
- 待ち時間が分からない。 トラックが何時に着いて、何時に出たかを記録していない会社が多く、どれだけ待たせているかが分かりません
- 出荷の予定を伝えるのが遅い。 当日の朝に電話で台数を伝えると、運送会社は車とドライバーをそろえにくく、積み込みの準備もトラックが着いてから始まります
- 仕入れの納品が朝に集中する。 仕入先に「午前中に」とだけ頼んでいると、朝一番に何台も重なり、受け取る側の自社がドライバーを待たせることになります
時刻の記録と待ち時間の計算は、表でできます。連絡と相談の文は、前もって作れます。ここは、表とAIで手伝いやすい仕事です。
時間は表で計算し、AIは出荷予定の連絡と納品の相談を書く
人がすること(最初に)。 現場の責任者が、出荷と受け取りの場所ごとに、トラックが着いた時刻、積み下ろしを始めた時刻、終わった時刻、出発した時刻を記録する表を作ります。受付の担当者が、トラックが来るたびに1行入れます。
計算で行うこと。 表で、1台ごとの待ち時間(着いてから積み下ろしを始めるまで)と作業時間(積み下ろしの時間)を計算します。曜日ごと、時間帯ごと、運送会社や仕入先ごとに平均を出し、1時間を超えた回に印を付けます。
AIに頼むこと。 表と受注の表をもとに、次のものを下書きしてもらいます。
- 運送会社への出荷予定の連絡:翌日の出荷の件数、荷物の量と荷姿、積み込みの時間帯、届け先を、受注の表から前日までに送る文
- 仕入先への納品時間の相談:受け取りの混む時間帯を示し、納品の時間を分けたいとお願いする文
- 月のまとめ:待ち時間の長かった曜日と時間帯、印の付いた回の数を、社長が読む1枚に
人がすること(そのあと)。 社長と現場の責任者が、まとめを見て、積み込みの準備の順番や、受け取りの時間の割り振りを決めます。運送会社と仕入先とは、記録をもとに話し合います。
AIへの頼み方と、返ってくる出荷予定の連絡はこんな形になる
AIに渡す指示(見本。内容は架空です):
下は、当社の明日の出荷の受注の表(件数、荷物の量、荷姿、届け先、希望の届け時間)です。いつもお願いしている運送会社への出荷予定の連絡を、短く分かりやすく下書きしてください。積み込みの時間帯は表のとおりに書き、表にない時刻や台数は書かずに「ご相談させてください」と書いてください。
返ってくる出荷予定の連絡(見本の一部):
いつもありがとうございます。明日○月○日の出荷予定をお送りします。
- 件数:12件(パレット6枚、ケース40箱)
- 積み込み:10時から10時半(第2出荷口)
- 届け先:○○市内8件、○○市4件
- 積み込みの準備は、9時半までに終えておきます 台数と到着の時刻について、ご相談させてください。
現場の責任者は、受注の表と照らし、準備の時刻が守れるかを確かめてから送ります。
時刻の記録と計算はAIの外に置き、連絡の型はスキルにする
ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。毎日出荷するなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
連絡と相談の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「出荷予定の連絡の型」「納品時間の相談の型」「月のまとめの型」「書いてはいけないこと(表にない時刻や台数、運賃の一方的な指定、相手の落ち度を責める言い方)」をスキルにします。
時刻の記録と計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、受付の担当者が時刻を表に入れること、待ち時間と作業時間を表で計算すること、出荷予定の連絡を受注の表と照らすことがそれに当たります。AIは時刻の計算や件数の数え方を間違えることがあるので、数字は表で出します。
明日からは、トラックが着いた時刻と出発した時刻を書き留める
- 出荷と受け取りの場所に、トラックが着いた時刻、積み下ろしを始めた時刻、終わった時刻、出発した時刻を書く表を置く
- 2週間、受付の担当者に1台ずつ書いてもらう
- 表で待ち時間と作業時間を計算し、長い曜日と時間帯を見る
- 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに受注の表を渡し、上の見本の指示で運送会社への出荷予定の連絡を下書きさせる
- 前日までに出荷予定を送ることを、運送会社と相談して始める
本格的にやるなら、受け取りの予約と納品の条件を見直す
一度できたら、次の形に育てます。
- 受け取りを予約制にする。 仕入先や運送会社に、受け取りの時間帯を予約してもらう形にすると、朝の集中が減ります。予約の受付と確認の連絡は、AIで下書きできます。枠の決め方と空きの計算は、納品の受け取りを予約制にする。枠の空きは表、確認の連絡はAIでで説明しています
- 納品の条件を見直す。 細かい時間指定や、毎日の少量の納品が荷待ちのもとになっていることがあります。取引先と条件を見直す相談の材料に、待ち時間の記録を使います
- 運送会社の見積とそろえる。 運送会社の側の見積の考え方は、運送の見積を当日中に出す。運賃は表で計算し、AIが内訳と条件を下書きで説明しています
- 値上げの相談に記録を使う。 待ち時間を減らした記録は、運賃の話し合いでも根拠になります。根拠の資料の作り方は、取引先に値上げを受け入れてもらう方法。根拠の資料をAIで作るで説明しています
段取りの判断と、運賃の決め方はAIに任せない
- 段取りは現場が決める。 積み込みの順番や、受け取りの時間の割り振りは、現場の責任者が決めます。AIは連絡と相談の文までにします
- 運賃は話し合って決める。 運賃や附帯作業の料金は、運送会社と話し合って決めます。AIに一方的な条件を書かせません
- 大手の取引先の求めは原文で確かめる。 大手の荷主から納品の条件の見直しを求められたときは、求めの中身を原文で確かめ、無理な条件は話し合います
- 取引先の情報に気をつける。 届け先や取引の量は、大事な取引の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱います。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています
まとめ
- 2025年4月から、すべての荷主に、荷待ち時間と荷役の時間を減らす努力義務がある。国は1運行2時間以内、1回の積み下ろし1時間以内を目標に示している
- トラックが着いた時刻と出発した時刻を表に記録し、待ち時間と作業時間を計算する
- AIは、受注の表から運送会社への出荷予定の連絡を、記録から仕入先への納品時間の相談と月のまとめを下書きする
- 段取りと運賃は、社長と現場の責任者が運送会社や取引先と話し合って決める
- 待たせない荷主になることが、運んでもらえる荷主であり続けることにつながる