AI×業種

調剤薬局の問い合わせの返事|受付の決まりからAIで下書きし、薬の相談は薬剤師へ

この記事で変わる経営指標

この記事では、調剤薬局のAI活用|服薬のフォローと記録の手間を減らし、選ばれる薬局にの「問い合わせの返事は、受付の決まりから下書きする」を、毎日続けられる手順にして説明します。

一言でいうと、事務が、届いた問い合わせを事務の質問と薬の相談に分ける。AIが、受付の決まりをもとに事務の質問への返事を下書きする。事務が、在庫と処方箋の期限を表と照らして確かめてから送る。薬の飲み方や副作用、飲み合わせの相談は、薬剤師が答えるという形です。

経営への効果は、薬剤師の手を止めずに返事を早くすること

小さな薬局では、電話が鳴るたびに、調剤や服薬指導の手が止まります。問い合わせの多くは、営業時間、休みの日、処方箋の送り方、薬の在庫、駐車場といった、毎回同じ答えになるものです。

返事が遅いと、患者さんは別の薬局に処方箋を持っていきます。逆に、すぐに分かりやすい返事が来る薬局は、次も選ばれやすくなります。かかりつけの薬局を決めてもらうには、最初の問い合わせへの返事が入口になります。

事務の質問への返事をAIで下書きし、事務が確かめて送る形にすれば、薬剤師は薬の相談だけを受け持てます。薬剤師の時間を、調剤と指導と、薬の相談に回せることが効果です。

処方箋の使用期間は、交付の日を含めて4日以内が原則

e-Gov法令検索で「保険医療機関及び保険医療養担当規則」を確かめると、第20条第3号で、処方箋の使用期間は交付の日を含めて4日以内とされています。長期の旅行など特別な事情があると認められる場合は、この限りではありません。くり返し使えるリフィル処方箋の2回目以降には、別の期間の決まりがあります。

病院の案内でも同じ説明がされています。埼玉県総合リハビリテーションセンターの薬剤科は、処方箋の有効期間は発行日を含めて4日で、期限切れや紛失のときは再発行になると案内しています。愛知県医療療育総合センター中央病院の案内では、処方箋の有効期間の欄に日付が書いてあれば、その日付が有効期間になるとされています。

「処方箋はいつまで使えますか」は、薬局によくある質問です。返事では、次の2点を必ず入れます。

  • 原則は、交付の日を含めて4日以内
  • 処方箋に使用期間の日付が書いてあれば、その日まで

期限が切れた処方箋の扱いは、処方箋を出した医療機関に相談するよう案内します。薬局が再発行を約束することはできません。2026年10月時点の情報です。

処方箋どおりに調剤し、疑問は医師に確かめる

e-Gov法令検索で薬剤師法を確かめると、問い合わせの返事にかかわる決まりが4つあります。

  • 第21条: 調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあれば、正当な理由がなければ拒めません
  • 第23条: 処方箋によらなければ調剤できません。処方箋に書かれた薬は、出した医師などの同意を得た場合を除き、変えて調剤できません
  • 第24条: 処方箋に疑わしい点があれば、出した医師などに問い合わせて確かめてからでなければ調剤できません
  • 第25条の2: 調剤したときは、患者さんに必要な情報を提供し、指導を行います

ここから、返事に書いてはいけないことが決まります。たとえば「処方箋がなくても同じ薬を出せます」「薬を別のものに変えておきます」と、事務の返事やAIの下書きで約束することはできません。在庫がないときも、断る文ではなく、取り寄せにかかる日数や、受け取り方の相談として返します。

今は、調剤の合間に薬剤師が電話に出ている

小さな薬局では、次のような形が多いと思います。

  • 電話には、手の空いている人が出る。事務がいないときは薬剤師が出る
  • メールや問い合わせフォームの返事は、閉店後にまとめて書く
  • 営業時間や駐車場など、同じ答えを毎回一から書いている
  • 在庫の質問には、棚や在庫の表を見に行ってから折り返す

この形だと、返事の早さと中身が、その日の忙しさで変わります。事務の質問にも薬剤師が時間を取られます。

分け、AIが下書きし、確かめて、送る

調剤薬局の問い合わせに返事をする流れ。事務が事務の質問と薬の相談を分ける。AIが受付の決まりから返事を下書きする。事務が在庫と期限を表と照らして確かめる。事務が返事を送り、薬の相談は薬剤師へ回す。薬の相談は薬剤師が答える
調剤薬局の問い合わせに返事をする流れ。事務が事務の質問と薬の相談を分ける。AIが受付の決まりから返事を下書きする。事務が在庫と期限を表と照らして確かめる。事務が返事を送り、薬の相談は薬剤師へ回す。薬の相談は薬剤師が答える

1 分ける(事務)。 届いた問い合わせを読み、事務の質問か、薬の相談かを分けます。迷ったら薬の相談にします。

2 下書きする(AI)。 事務の質問と受付の決まりを渡し、返事を下書きしてもらいます。

3 確かめる(事務)。 在庫は在庫の表で、処方箋の期限は日付で確かめます。決まりにないことが書かれていないかも見ます。

4 送る(事務)。 返事を送ります。薬の相談は、薬剤師に回し、薬剤師が電話か窓口で答えます。

分け方は、この表で決めておく

問い合わせ 分け方 返事の中身の例(想定)
営業時間・休みの日 事務 受付の決まりのとおり
処方箋の送り方 事務 写真やファクスの送り方、原本は来局のときに持ってくること(決まりのとおり)
処方箋の使用期間 事務 交付の日を含めて4日以内、日付が書いてあればその日まで
在庫の有無 事務 在庫の表で確かめた結果と、ない場合の取り寄せ日数
支払い・駐車場 事務 受付の決まりのとおり
飲み方・飲み忘れ 薬剤師 薬剤師から折り返す、と返す
副作用・体の具合 薬剤師 急ぐ場合の受診先と、薬剤師から折り返す、と返す
飲み合わせ・市販薬との併用 薬剤師 薬剤師から折り返す、と返す

処方箋の送り方は、薬局ごとに決まりが違います。写真を受け付けるか、ファクスか、原本をいつ持ってきてもらうかを、先に受付の決まりに書きます。

AIへの頼み方と、返ってくる返事はこうなる

AIに渡す指示(見本):

調剤薬局の事務として、患者さんからの問い合わせに返事を下書きしてください。答えは、下に貼った受付の決まりに書いてあることだけにしてください。決まりにないことは「確認してご連絡します」と書いてください。薬の飲み方、副作用、飲み合わせについては答えず、「薬剤師からお電話でお答えします」と書いてください。処方箋がなくても薬を出せる、薬を変えられる、とは書かないでください。

返ってくる返事(見本。内容は架空です):

お問い合わせありがとうございます。〇〇薬局です。処方箋は、交付された日を含めて4日以内にお持ちください。処方箋に使用期間の日付が書かれている場合は、その日までご利用いただけます。期限が過ぎてしまった場合は、処方箋を出された医療機関へお問い合わせいただくことになります。 本日の営業は〇時までです。ご来局をお待ちしております。

確かめるときは、決まりにないことと薬の話を見る

AIの下書きは、渡した受付の決まりをもとにしています。それでも、言葉を補う中で、決まりにない中身が混ざることがあります。

  • 決まりにないことが書かれていないかを見る。 営業時間や支払い方法が、受付の決まりと合っているかを照らします
  • 在庫を表で確かめる。 AIは在庫を知りません。「在庫があります」と書かれていたら、表で確かめてから送ります
  • 期限の日付を確かめる。 処方箋の交付の日から数え、AIに日付を数えさせません
  • 薬の話が混ざっていないかを見る。 「食後に飲めば大丈夫です」のような文があれば消し、薬剤師に回します
  • 薬を変える、処方箋なしで出す、と読める文がないかを見る

薬の相談は、急ぐかどうかだけ聞いて薬剤師へ回す

薬の相談に、事務やAIが答えることはしません。ただ、返事を待たせすぎないための決まりは作れます。

  • 事務は、急ぐかどうかだけを聞く。 「今、体の具合が悪いですか」と聞き、急ぐなら薬剤師がすぐに電話に出ます
  • 急ぐ症状なら、受診を案内する。 息が苦しい、意識がおかしいなどのときは、医療機関の受診や救急の相談窓口を案内します。どの症状を急ぐとするかは、薬剤師が決めて受付の決まりに書きます
  • 折り返しの目安を書く。 「本日〇時までに薬剤師からお電話します」のように、いつ答えるかを返事に書きます
  • 薬剤師が答えた内容は記録する。 薬の相談への答えは、薬剤師が薬歴に残します

患者さんの情報は、名前を記号に置き換えて渡す

病歴は、個人情報保護法第2条第3項の「要配慮個人情報」に含まれます。問い合わせに病名や薬の名前が書かれていることもあります。

  • AIには、問い合わせの文から名前や連絡先を消して渡す
  • 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱う
  • 薬の相談は、そもそもAIに渡さない。 事務が分けた時点で、薬剤師に回します

型をスキルにし、分け方はAIの外に置く

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「受付の決まり」「返事の見本」「書いてはいけないこと(薬の飲み方、副作用、飲み合わせ、処方箋なしの調剤、薬の変更、在庫の約束)」をスキルにします。

分け方は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、事務が先に問い合わせを分けること、在庫の表と日付で確かめること、薬の相談を薬剤師に回すことがそれに当たります。

費用は、AIの利用料が1件2円ほど

費用 見込み
返事の下書き 受付の決まりと問い合わせ(入力2千トークンほど)から返事(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件2円ほど
法人向けプラン チャットで使うなら1人あたり月数千円
事務の時間 分けて確かめて送るのに1件数分(想定)

必要な人は2役で、薬の相談は薬剤師が答える

  • 薬剤師(管理薬剤師や経営者):受付の決まりと分け方の表を作り、急ぐ症状を決め、薬の相談に答える
  • 事務:問い合わせを分け、AIの下書きを確かめて送り、薬の相談を薬剤師に回す

事務がいない薬局では、薬剤師が両方を受け持ちます。その場合も、先に分けてから下書きを頼む順番は変えません。

1か月で決まりがそろい、毎日使える見込み

  1. 1週目:よく来る問い合わせを書き出し、受付の決まりを1枚にする
  2. 2週目:分け方の表を作り、薬剤師が薬の相談の線を引く
  3. 3週目:AIに返事を下書きさせ、事務が確かめて送ることを試す
  4. 4週目以降:受付の決まりと見本をスキルにまとめ、返事にかかった時間と、薬剤師が受けた事務の質問の数を数える

薬の相談まで事務とAIで返すと失敗する

よくある失敗は次の3つです。

  • 薬の相談に事務やAIが答える。 飲み方や飲み合わせは、薬剤師が患者さんの薬を見て答えることです
  • 在庫を確かめずに「あります」と返す。 来局してから在庫がないと、患者さんの信頼を失います
  • 処方箋の期限を「1週間くらい」とあいまいに書く。 原則は交付の日を含めて4日以内です。日付が書いてあればその日までと、正確に返します

まとめ

  • 問い合わせは、事務が先に事務の質問と薬の相談に分ける
  • 事務の質問は、受付の決まりからAIが返事を下書きし、事務が在庫と期限を確かめて送る
  • 処方箋の使用期間は、交付の日を含めて4日以内が原則で、日付が書いてあればその日まで
  • 処方箋なしで出す、薬を変える、と読める返事は書かない
  • 薬の飲み方、副作用、飲み合わせの相談は、薬剤師が答える

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