修理の依頼に当日中に候補日を返す。問い合わせからAIが返事を下書き
この記事で変わる経営指標
この記事では、電気・水道・空調の工事店の事務をAIで減らす。職人が現場に出られる時間を増やすの「修理と点検の問い合わせは、その日のうちに返す」を、仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、ホームページのフォーム、メール、電話のあとのメモで届いた修理の依頼を1か所に集める。職人の予定表から、地域と作業の時間に合う訪問の候補日を計算で3つ出す。「水漏れ」「焦げ臭い」などの急ぎの言葉には印を付けて、すぐ電話に回す。AIが症状を確かめる質問と候補日を伝える返事を下書きし、事務が確かめてその日のうちに送るという形です。依頼をくれたお客様が、ほかの業者に頼む前に、訪問の予定を押さえます。
今は依頼への返事が、職人の予定を確かめるまで止まっている
米国の調査では、ネットからの問い合わせに1時間以内に連絡した会社は、それより遅い会社に比べて、相手の決裁者と話せた割合が約7倍だったと報告されています(Harvard Business Review、2011年。数字はCustomerThinkなどの紹介による)。修理の依頼でも、困っているお客様は、早く返事をくれた業者に頼みやすいはずです。
ところが多くの小さな工事店では、修理の依頼への返事が次のように止まります。
- ホームページやメールで依頼が届くが、事務は電話の対応で手が離せない
- 返事をするには、職人がいつ行けるかを確かめる必要がある。職人は現場にいて、夕方まで話せない
- 夕方に予定を確かめ、返事を書く。翌日になることもある
- その間に、お客様はほかの業者に頼んでしまう
返事が遅れる原因は、文章を書く手間よりも、職人の予定を確かめる手間にあります。ここを計算に置き換えます。
1か所に集め、候補日を計算し、AIが返事を書き、事務が送る
仕組みは4つの段でできています。
1. 受ける:依頼を1か所に集める。 ホームページのフォーム、メール、電話を受けたあとに事務がとったメモを、1つの一覧に集めます。お客様の名前、住所の地域、連絡先、依頼の中身(「エアコンが冷えない」「台所の水が止まらない」)、送ってもらった写真を残します。
2. 候補日を出す:職人の予定表から計算する。 ここは計算と決まりです。
- 依頼の中身から、作業の種類(エアコン、給湯器、水回り、電気など)を決まった一覧で見分け、作業の種類ごとに決めた目安の時間を当てはめる
- 職人の予定表から、その作業ができる職人の空き時間を探し、住所の地域と前後の現場の地域を見て、移動に無理のない候補日時を3つ出す
- 「水漏れ」「漏電」「焦げ臭い」「煙」「ガス」などの言葉があれば印を付け、返事の下書きを待たずに、事務がすぐ電話をかける一覧に回す
3. 下書きする:AIが返事を書く。 AIが、依頼の中身と候補日から、お客様への返事を下書きします。お礼、症状を確かめる質問(いつから、どんなときに、機械の型番が分かれば)、写真を送ってもらうお願い、訪問の候補日3つ、料金は訪問して確かめてから見積を出すこと、を書きます。故障の原因や料金の金額は書きません。
4. 送る:事務が確かめて、その日のうちに送る。 事務が、候補日と職人の予定をもう一度見比べ、言い回しを直して送ります。お客様が候補日を選んだら、職人の予定表に入れます。
返事の型をスキルにし、候補日と急ぎの印はAIの外で持つ
この仕組みが毎日正しく回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の計算で決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
作業の種類と返事の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 作業の種類ごとの確かめる質問:エアコンなら型番と症状、水回りなら場所と水の量、など
- 返事の型:お礼、質問、写真のお願い、候補日、料金の説明の順番
- 書いてはいけないこと:故障の原因の決めつけ、料金の金額、「必ず直ります」のような約束、お客様に危ない作業をさせる案内
- 急ぎのときの決まった案内の文:会社で決めて、社長が確かめた文だけを使う
候補日、地域、急ぎの印は、AIの外で持つ。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、職人の予定表から空き時間を計算すること、地域と移動を見て候補日を選ぶこと、急ぎの言葉を決まった一覧で探して電話に回すこと、返事の下書きの候補日が計算の結果と同じかを機械的に確かめることがそれに当たります。急ぎかどうかを、AIの判断に任せません。迷うものは急ぎの側に倒します。
事務の仕事は、急ぎに電話し、下書きを確かめて送ることになる
仕組みが入ると、修理の依頼への返事は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 依頼の置き場所 | フォーム、メール、電話のメモがばらばら | 1つの一覧 |
| 職人の予定 | 夕方に職人に聞く | 予定表から候補日が出る |
| 急ぎの依頼 | ほかの依頼と同じ順番で見る | 印が付き、すぐ電話に回る |
| 返事 | 夕方か翌日 | その日のうちに |
| 返事の中身 | 「確認して連絡します」 | 症状の質問と候補日3つ |
経営への効果は、ほかの業者に流れる依頼を取ること
この仕組みの効果は、時間よりも、依頼を取ることにあります。修理を頼みたいお客様は、何社かに同時に問い合わせることがあります。その日のうちに候補日まで届く返事は、選ばれる理由になります。仮に、返事が遅れて取れなかった依頼が月に2件あり、そのうち1件でも取れるようになれば、1件の粗利がそのまま上乗せされます。
時間の効果も、前提を置いて考えます。仮に、1件の返事に、予定の確認と文面で10分かかっていたものが、確かめて送る3分になれば、1件7分が浮きます。月80件の依頼がある会社なら月約9時間、1時間あたりの人件費を仮に2,000円として月約1万9,000円分です。
費用は作る費用が中心で、AIの利用料は月80件で80円ほど
作る順番と、かかる日数
- 作業の種類の一覧と、種類ごとの目安の時間、確かめる質問を決める(社内:社長とベテランの職人、半日)
- 急ぎの言葉の一覧と、急ぎのときの決まった案内の文を決める(社内:社長、半日)。ここがいちばん大事です
- フォームとメールと電話のメモを1つの一覧に集める仕組みを作る(作る人、1人日)
- 予定表から候補日を出す計算と、急ぎの印を作る(作る人、1人日)
- AIの返事の下書きと、候補日の照らし合わせを作り、1か月試して直す(作る人、1人日)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
上の手順3〜5で、作る側の目安は合計3人日です。職人の予定表が共有の予定表のソフトに入っていれば、空き時間は早く読み込めます。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の会社での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 1件の返事の下書きごとにかかる | 月80件で80円ほど(下の計算) |
| 予定表・フォーム | すでに使っているもの | 追加0円の想定 |
| 保守 | 作業の種類と急ぎの言葉の見直し | 月1時間 |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。1件あたり依頼の中身と候補日とスキルで1,500トークンを読ませ、400トークンを書かせると見積もると、約0.007ドル、1ドル150円で約1円です。月80件で80円ほどです。
何か月で取り戻せるか
取り戻すまでの月数 = 作る費用 ÷(月に浮く金額 − 毎月の費用)
仮に作る費用が20万円、毎月の費用(利用料と保守の時間)を5,000円とすると、浮く時間だけで見て、月約1万9,000円分の会社ではおよそ15か月です。ここに、取れるようになった依頼の粗利が加わります。依頼が月に十数件の会社なら、作業の種類と急ぎの言葉の一覧だけ作り、事務が予定表を見て、会社で契約したAIのチャットで返事を下書きするやり方で十分です。
必要な人は3役で、急ぎの判断と送るのは事務と職人
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 送る人 | 事務 | 急ぎの依頼にすぐ電話する。下書きを確かめて送る。決まった予定を予定表に入れる | 1件3分 |
| 予定を守る人 | 職人 | 自分の予定表を正しく保つ。現場が延びたらすぐ直す | 毎日 |
| 作る人 | 社内の詳しい人か、外の作り手 | 集める、候補日、急ぎの印、下書きを作る | 最初の3人日 |
いちばん大事なのは、職人の予定表が正しいことです。予定表が古いと、行けない日を候補日として伝えてしまいます。
1か月でその日のうちに返せ、半年で依頼の取れ方が分かる見込み
どこまでいけるかは、予定表がどれだけ正しく保たれるかで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の1か月 | エアコンと水回りの依頼から試す。候補日のずれを直す |
| 3か月 | 多くの依頼に、その日のうちに候補日まで返せる |
| 半年 | 返事を送った依頼のうち、訪問につながった割合を、仕組みの前と比べられる |
効果を確かめるには、次の3つを導入の前と後で比べます。
- 依頼が届いてから返事を送るまでの時間:送った時刻から数えます
- 返事を送った依頼のうち、訪問につながった割合:一覧から数えます
- 急ぎの依頼に電話するまでの時間:記録から数えます
原因や料金をAIに書かせたり、急ぎを見逃したりすると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- 故障の原因をAIに書かせる。 外れたときにお客様の信頼を失います。原因は訪問した職人が見て判断します
- 料金の金額をAIに書かせる。 訪問して確かめてから、見積として出します
- 急ぎの依頼を見逃す。 水漏れや漏電、焦げ臭いなどは、文章のやり取りを待たずに電話します。急ぎの言葉の一覧は、迷うものを入れる側で作ります
- お客様に危ない作業を案内する。 安全のための案内は、会社で決めて社長が確かめた文だけを使い、AIに考えさせません
お客様の名前、住所、家の中の写真は、大事な個人の情報です。会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランで扱い、社内ルールに書いておきます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。訪問のあとの見積の説明は、工事の必要性が伝わる見積にする。現地調査の写真からAIで説明書で説明しています。
まとめ
- フォーム、メール、電話のメモで届いた修理の依頼を1つの一覧に集める
- 職人の予定表から、地域と作業の時間に合う候補日を計算で3つ出す。急ぎの言葉には印を付け、すぐ電話に回す
- AIが症状を確かめる質問と候補日の返事を下書きし、事務が確かめてその日のうちに送る。原因と料金は書かない
- 費用は作る費用が中心で、作る側の目安は3人日。AIの利用料は月80件で80円ほど。依頼が少ない会社はチャットで十分
- 効果は、返事までの時間、訪問につながった割合、急ぎへの電話までの時間で確かめる