簡易課税の事業区分の分け方|売上をAIで仕分け、税理士と決める
この記事では、インボイスの2割特例が終わる|次の期の消費税を今のうちに試算の「売上の区分は、AIに仕分けの案を作らせる」を、実際の帳簿で続ける方法を説明します。
一言でいうと、簡易課税では、売上を1件ごとに第1種から第6種の事業区分に分ける。区分していない売上には、その会社の事業のうち一番低いみなし仕入率がかかる。経理が1年分の売上の明細を書き出し、AIが1件ずつ区分の案と要確認の印を付け、税理士が迷う売上の区分を決め、経理が毎月の帳簿に区分を付けていくという形です。
経営への効果は、区分しないことで納税額を増やさないこと
国税庁のタックスアンサー(No.6505)によると、2種類以上の事業をしている会社が、売上を事業ごとに区分していない場合、区分していない部分には、その事業のうち一番低いみなし仕入率がかかります。
計算の例です(数字はすべて仮定です)。売上の消費税が100万円で、そのうち80万円分が建設工事(第3種、70%)、10万円分が加工賃(第4種、60%)、10万円分が修理の点検サービス(第5種、50%)の会社を考えます。
| 計算 | 納める額 |
|---|---|
| 区分して原則の計算 | 33万円 |
| 1種類が75%以上の特例(第3種の70%を全体に) | 30万円 |
| 区分していない(一番低い第5種の50%を全体に) | 50万円 |
区分の手間を惜しむと、この例では納める額が17万〜20万円増えます。売上を正しく区分しておくことは、そのまま会社のお金を守ることにつながります。
区分は売上1件ごとに判定し、75%の特例がある
国税庁のタックスアンサー(No.6509)によると、事業区分の判定は、原則として売上1件ごとに行います。同じ会社でも、売るものによって区分が変わります。
| 事業区分 | みなし仕入率 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 第1種 | 90% | 卸売業(買った商品を形を変えずに事業者に売る) |
| 第2種 | 80% | 小売業(買った商品を形を変えずに消費者などに売る) |
| 第3種 | 70% | 建設業、製造業など |
| 第4種 | 60% | 飲食店業、加工賃を対価とする役務、使っていた固定資産の売却など |
| 第5種 | 50% | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業 |
| 第6種 | 40% | 不動産業 |
No.6505によると、2種類以上の事業をしている会社で、1種類の事業の売上が全体の75%以上なら、その事業のみなし仕入率を全体にかけることができます。3種類以上の事業で、特定の2種類の合計が75%以上の場合の特例もあります。どの計算が有利かは、区分ごとの売上が分かって初めて比べられます。
2026年10月時点の情報です。細かな判定は、国税庁の資料と税理士に確かめてください。
迷いやすいのは、加工賃と業務用の販売と固定資産の売却
No.6509は、迷いやすい売上についても書いています。
- 加工賃:材料を受け取って加工し、加工賃をもらう仕事は、製造業でも第3種ではなく第4種になります
- 業務用の販売:事業者への販売であることが帳簿や書類で明らかなら、業務用に使われる商品の販売も卸売業(第1種)になります
- 固定資産の売却:自社で使っていた車や機械を売ったときは、第4種になります
- 宿泊と食事:1泊2食付きで料金が決まっている宿泊料は、全額が第5種になります
AIに仕分けの案を作らせるときは、これらの迷いやすい例を指示に入れ、「要確認」の印を付けさせます。
書き出し、AIが仕分け、税理士が決め、帳簿に残す
1 書き出す(経理)。 会計ソフトから、1年分の売上の明細(日付、取引先、品目や内容、金額)を書き出します。
2 仕分ける(AI)。 明細と、国税庁の事業区分の説明を渡し、1件ずつ区分の案と、迷う行に「要確認」の印を付けてもらいます。
3 決める(税理士)。 「要確認」の行を中心に、税理士が区分を決めます。自社でよく出る品目と区分の対応表も、このときに作ります。
4 残す(経理)。 対応表をもとに、毎月の帳簿の売上に区分を付けていきます。
AIへの頼み方と、返ってくる表はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、当社の1年分の売上の明細と、国税庁の簡易課税の事業区分の説明(No.6509)です。1行ずつ、第1種から第6種のどれに当たりそうかの案を付けてください。加工賃、事業者への業務用の販売、使っていた固定資産の売却、宿泊と食事のセットに当たりそうな行は、必ず「要確認」として理由を一言書いてください。区分を決めるのは税理士なので、断定しないでください。最後に、区分ごとの件数と金額の合計を出してください。
返ってくる表(見本の一部。内容は架空です):
日付 内容 区分の案 印 4/12 住宅の外壁塗装工事 第3種 4/20 支給材の板金加工 第4種 要確認(加工賃に当たるか) 5/8 社用車の売却 第4種 要確認(固定資産の売却)
区分ごとの合計は、AIの数字を使わず、経理が表の計算式で出し直します。
対応表ができたら、毎月の帳簿で区分を付ける
1年分を一度仕分けると、自社でよく出る品目と区分の対応表ができます。次の期からは、毎月の帳簿で区分を付けていきます。
- 会計ソフトの科目や補助科目で分ける。 区分ごとに売上の科目を分けておくと、月ごとの合計がすぐに出ます
- 新しい品目はAIに案を出させる。 対応表にない売上だけをAIに渡し、案と印を付けさせて、税理士に確かめます
- 四半期ごとに75%の特例を見る。 区分ごとの売上の割合を表で出し、特例が使えそうかを税理士と見ます
区分の根拠は、請求書と帳簿に残しておく
区分を付けるだけでなく、なぜその区分にしたかが後から分かるようにしておきます。No.6509は、業務用の販売を卸売業として扱えるのは、事業者への販売であることが帳簿や書類で明らかな場合としています。根拠が書類に残っていないと、区分を説明できません。
- 取引先が事業者かを帳簿で分かるようにする。 取引先の台帳に、事業者か個人かの欄を作ります
- 請求書に作業の中身を書く。 「工事一式」ではなく、材料を自社で買ったのか、支給された材料を加工したのかが分かる書き方にします
- 税理士と決めた理由を対応表に書く。 品目ごとに、区分と決めた理由を一言残しておきます
AIには、対応表と請求書の書き方の見本を渡し、新しく作る請求書の内容欄が区分を説明できる書き方になっているかを点検させることもできます。
型をスキルにし、区分と計算はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「国税庁の事業区分の説明」「迷いやすい例(加工賃、業務用の販売、固定資産の売却、宿泊と食事)」「税理士と決めた自社の対応表」「書いてはいけないこと(区分の断定、税額の決定)」をスキルにします。
区分と計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、迷う売上の区分を税理士が決めること、区分ごとの合計と納税額を表の計算式で出すこと、届出の期限を人が管理することがそれに当たります。
費用はAIの利用料が1年分で20円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 1年分の仕分けの案 | 売上の明細と区分の説明(入力3万トークン・出力8千トークンほど)から、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回20円ほど |
| 毎月の新しい品目 | 数円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 税理士への相談 | 区分の確認と計算の方法の相談(契約による) |
必要な人は3役で、区分を決めるのは税理士
- 経理の担当者:売上の明細を書き出し、AIの案を整え、毎月帳簿に区分を付ける
- 税理士:迷う売上の区分を決め、自社の対応表を一緒に作り、計算の方法を助言する
- 社長:計算の方法と届出を、税理士の助言をもとに決める
1か月で対応表ができ、次の期から毎月区分が付く見込み
- 1〜2週目:1年分の売上の明細を書き出し、AIで仕分けの案を作る
- 3〜4週目:税理士と「要確認」の行を決め、自社の対応表を作る
- 次の期から:毎月の帳簿で区分を付け、新しい品目だけAIに案を出させる
- 四半期ごと:区分ごとの割合を見て、75%の特例が使えるかを税理士と確かめる
国税庁のお知らせによると、2割特例を使った期の翌期であれば、その期の申告期限までに届け出ることで簡易課税に移れます。No.6505によると、簡易課税をやめる届出は、原則として簡易課税を始めてから2年を過ぎる期まで出せません。選ぶ前に、区分ごとの試算を税理士と見ておきます。
まとめ
- 簡易課税では、売上を1件ごとに事業区分に分け、区分ごとのみなし仕入率で計算する
- 区分していない売上には一番低いみなし仕入率がかかり、納める額が増えることがある
- 1種類の事業が75%以上なら、その率を全体にかけられる特例がある
- 経理が明細を書き出し、AIが1件ずつ区分の案と要確認の印を付け、税理士が決める
- 自社の対応表を作り、次の期から毎月の帳簿で区分を付けていく