経営課題×AI

電子取引の事務処理規程|国税庁のひな形をAIで自社向けに直し、社長が決める

この記事で変わる経営指標

この記事では、電子帳簿保存法の対応|中小企業が請求書の保存を月末にためない方法の「改ざん防止は別に決め、税の判断は税理士に確かめる」を、規程を作って運用するまでの手順にして説明します。

一言でいうと、担当が、メールやクラウドで受け取る書類を書き出す。AIが、国税庁のひな形を自社の取引に合わせて直す。社長が、規程の範囲と責任者を決め、税理士に確かめる。担当が、保存したデータを直すときは申請書を出して記録を残す。規程の中身は社長が決めるという形です。

経営への効果は、費用をかけずに改ざん防止の要件を整えること

電子でもらった請求書などは、電子のまま保存することになっています。そのとき、あとから中身を書き換えられないようにする措置も必要です。タイムスタンプや専用のシステムを入れると、費用がかかります。

事務処理の規程を定めて運用する方法なら、仕組みを買わずに始められます。国税庁がひな形を出しているので、自社の取引に合わせて直せば済みます。税務調査で聞かれたときに、規程を見せて説明できます。

規則第4条で、事務処理の規程でも改ざん防止の措置になる

e-Gov法令検索で電子帳簿保存法の施行規則を確かめると、第4条第1項で、電子取引のデータは次のいずれかの措置をとって保存することになっています。

措置 中身
第1号 タイムスタンプが付いたあとに、データをやりとりする
第2号 やりとりのあと、速やかにタイムスタンプを付ける
第3号 訂正や削除の記録が残るか、訂正や削除ができないシステムで、やりとりと保存をする
第4号 正当な理由のない訂正と削除を防ぐ事務処理の規程を定め、そのとおりに運用し、規程を備え付ける

小さな会社では、第4号の規程が使いやすい方法です。ただし、規程は作って終わりではなく、そのとおりに運用することが求められています。どの措置が自社に合うかは、顧問の税理士に確かめます。2026年10月時点の情報です。

国税庁のひな形には、決めることが空欄で残っている

国税庁は、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」のひな形を、法人の例と個人事業者の例で出しています。法人の例には、次の条があります。

条 中身
目的・適用範囲 規程の目的と、役員、社員、パート、派遣社員に適用すること
管理責任者 規程の管理責任者
電子取引の範囲 メールでの請求書のやりとり、クラウドサービス、ネットでの買い物、ネットバンキングなど
保存と対象のデータ どこに何年保存するか、見積や注文や納品や支払いの情報など
運用体制 管理責任者と処理責任者
訂正削除の原則禁止 保存したデータの訂正と削除は原則禁止
訂正削除を行う場合 申請書に理由などを書いて出し、管理責任者が正当な理由があるときだけ認め、完了報告書を出す

ひな形には「○○」「●●」「△△年間」のような空欄があり、自社で決めて埋めることになっています。

今は、ひな形を開いたまま手が止まっている

ひな形を見つけても、電子取引の範囲に何を書けばよいか、誰を責任者にすればよいかが分からず、そのままになっている会社は少なくありません。

自社で受け取っている書類を書き出し、AIにひな形を直させれば、空欄を埋めた下書きがすぐにできます。社長は、下書きを見て決めることに時間を使えます。

書き出し、AIが下書きし、確かめて、運用する

電子取引の事務処理規程を作る流れ。担当がメールなどで受け取る書類を書き出す。AIが国税庁のひな形を自社の取引に合わせて直す。社長が範囲と責任者を決め、税理士に確かめる。担当が直すときは申請書を出し記録を残す。規程の中身は社長が決める
電子取引の事務処理規程を作る流れ。担当がメールなどで受け取る書類を書き出す。AIが国税庁のひな形を自社の取引に合わせて直す。社長が範囲と責任者を決め、税理士に確かめる。担当が直すときは申請書を出し記録を残す。規程の中身は社長が決める

1 書き出す(担当)。 メール、クラウドサービス、ネットでの買い物、ネットバンキングなど、電子で受け取ったり送ったりしている書類を書き出します。

2 下書きする(AI)。 ひな形と書き出した一覧を渡し、自社向けに直した下書きを作ってもらいます。

3 確かめる(社長)。 電子取引の範囲と責任者を決め、保存の年数などを税理士に確かめます。

4 運用する(担当)。 保存したデータを直す必要が出たら、申請書を出し、認められてから直し、記録を残します。

書き出す一覧は、この4つの欄でそろえる

欄 中身の例(想定)
受け取り方・送り方 メールの添付、クラウドの請求書サービス、ネット通販の画面
書類の種類 請求書、領収書、見積書、注文書
主な取引先 取引先の種類(仕入れ先、外注先など)
今の保存場所 共有フォルダ、クラウドの保管庫

取引先の名前や金額は、一覧に書かなくてかまいません。規程に書くのは、取引の種類と受け取り方です。

AIへの頼み方と、返ってくる下書きはこうなる

AIに渡す指示(見本):

下は、国税庁の「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例)」と、当社で電子で受け取ったり送ったりしている書類の一覧です。一覧に合わせて、第4条の電子取引の範囲と、第6条の対象のデータを書き直してください。責任者の名前、保存の年数、施行日は【社長が決める】と空けてください。ひな形にない条は足さないでください。直した所に印を付けてください。

返ってくる下書き(見本の一部。内容は架空です):

(電子取引の範囲)第4条 当社における電子取引の範囲は以下に掲げる取引とする。一 電子メールを利用した請求書等の授受 二 クラウドの請求書サービスを利用した請求書等の授受 三 ECサイトを利用した取引 (取引データの保存)第5条 ……保存サーバ内に【社長が決める】年間保存する。

確かめるときは、範囲の抜けと空欄と足された条を見る

AIの下書きは、渡したひな形と一覧をもとにしています。それでも、言葉を補う中で、ひな形にない中身が混ざることがあります。

  • 電子取引の範囲に抜けがないかを見る。 ネットバンキングやネット通販の領収書は忘れやすいものです
  • 【社長が決める】の空欄が、AIに勝手に埋められていないかを見る
  • ひな形にない条や、厳しすぎる決まりが足されていないかを見る。 守れない規程は、運用できません
  • 保存の年数と、自社に合う措置を税理士に確かめる

直すときは、申請書を出して記録を残す

規程は、そのとおりに運用してはじめて意味があります。ひな形では、保存したデータを直すときの流れが決められています。

  • 訂正や削除は原則しない。 請求書の間違いは、取引先に直したものを送ってもらい、両方を保存します
  • どうしても直すときは、申請書を出す。 申請日、取引の件名、取引先、直す日、直す中身、理由、担当者を書きます
  • 管理責任者が、正当な理由があるときだけ認める
  • 直したら完了報告書を出し、申請書と一緒に保存する

申請書と報告書の型も、AIで下書きできます。中身はひな形の項目のとおりにします。

規程の型をスキルにし、範囲と責任者はAIの外に置く

型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「国税庁のひな形」「書き出す一覧の4つの欄」「申請書と報告書の型」「書いてはいけないこと(責任者の名前や保存の年数を勝手に埋めること、ひな形にない条)」をスキルにします。

範囲と責任者は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、社長が範囲と責任者を決めること、税理士に保存の年数と措置を確かめること、管理責任者が訂正の申請を認めるかを決めることがそれに当たります。

費用は、AIの利用料が下書き1回で数円

費用 見込み
規程の下書き ひな形と一覧と指示(入力4千トークンほど)から下書き(出力2千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回4円ほど
法人向けプラン チャットで使うなら1人あたり月数千円
税理士への確認 顧問の契約の中で頼めるかを確かめる

必要な人は2役で、規程は社長が決める

  • 社長:電子取引の範囲と責任者、保存の年数を決め、税理士に確かめ、規程を施行する
  • 経理や総務の担当:書類を書き出し、AIに下書きさせ、運用の中で申請書と報告書を扱う

2週間で規程ができ、翌月から運用できる見込み

  1. 1週目:電子で受け取ったり送ったりしている書類を、4つの欄で書き出す
  2. 1週目:AIにひな形を直させ、社長が範囲と責任者を決める
  3. 2週目:税理士に保存の年数と措置を確かめ、施行日を決めて社内に配る
  4. 翌月以降:申請書と報告書の型を置き、訂正が出たら流れのとおりに扱う

作って置いたままにすると失敗する

よくある失敗は次の3つです。

  • 規程を作っただけで運用しない。 規則は、規程に沿った運用を求めています
  • 電子取引の範囲に抜けがある。 ネットバンキングやネット通販の領収書が抜けがちです
  • AIに保存の年数を決めさせる。 年数は税理士に確かめて、社長が決めます

まとめ

  • 電子帳簿保存法施行規則第4条第1項で、正当な理由のない訂正と削除を防ぐ事務処理の規程を定めて運用し備え付けることは、改ざん防止の措置の1つ
  • 国税庁は、事務処理規程のひな形を法人の例と個人事業者の例で出している
  • 担当が電子で受け取る書類を書き出し、AIがひな形を自社の取引に合わせて直す
  • 範囲と責任者と保存の年数は、社長が決め、税理士に確かめる
  • 保存したデータを直すときは、申請書を出し、認められてから直し、記録を残す

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