来週の募集人数を過去の量から表で出す。求人の文はAIで書く
この記事で変わる経営指標
この記事では、単発で働く人に1回で仕事を任せる。募集の判断は表、案内はAIでの「来週の見込みから、足りない人数と時間を出し、スポットワークで募集する人数を決める」を、毎週回る仕組みとして作る方法を説明します。
一言でいうと、過去の日ごとの量(出荷の件数、来店の数、予約の数など)と、その日に働いた人数を表に残す。表から1人あたりの量を出し、来週の見込みの量から、足りない人数を計算する。AIは、日ごとの求人の文と、見込みの根拠を責任者向けに1枚にまとめる。募集する人数は責任者が決めるという形です。多めに募集して前日に取り消す、ということをなくします。
応募した時点で契約が成立するので、多めの募集は取り消せない
厚生労働省は2025年7月4日、スポットワークの留意事項をまとめたリーフレットを公表しました(かいけつ!人事労務、労働政策研究・研修機構のメールマガジン、労働新聞の記事による)。労働新聞によると、厚生労働省は、特に合意がない限り、働き手が応募した時点で労働契約が成立するという考えを示しています。かいけつ!人事労務と労働新聞によると、契約が成立したあとに会社の都合で休ませたり早く帰らせたりする場合は、休業手当を払う必要があるとしています。
つまり、「念のため多めに募集して、人が余りそうなら前日に取り消す」というやり方は、通りません。募集する前に、要る人数をできるだけ正しく見込むことが大事になります。細かい扱いは、厚生労働省のリーフレットと、使っているサービスの決まりで確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、責任者の勘で人数を決め、前日に慌てている
多くの小さな会社では、スポットワークの募集人数を次のように決めています。
- 責任者が、来週の忙しさを勘で見込む
- 足りないと困るので、多めに募集する
- 前日になって、予約や注文が思ったより少ないと分かる
- 取り消すか、来た人に早く帰ってもらうかで悩む
逆に、少なく見込んで当日に人が足りず、社員が残業で埋めることもあります。勘ではなく、過去の記録から見込みます。
量と人数を集め、表で計算し、AIが求人の文をまとめる
仕組みは4つの段でできています。
1. 集める:日ごとの量と人数を表に残す。 毎日、その日の量(出荷の件数、来店の数、予約の数など、仕事の多さを表す数)と、働いた人数と時間を、社員、パート、スポットワークに分けて表に入れます。売上の数字や予約の画面から書き写すだけです。
2. 計算する:1人あたりの量と、足りない人数を出す。 ここはAIの仕事ではありません。表の計算で、次のものを出します。
- 曜日ごとの「1人1日あたりの量」(過去4〜8週の平均)
- 来週の日ごとの見込みの量(予約や受注の数、前の年の同じ週、決まっている催しから)
- 要る人数 = 見込みの量 ÷ 1人1日あたりの量(端数は切り上げ)
- 足りない人数 = 要る人数 -(その日の社員とパートの人数)
たとえば、1人1日あたり120件の出荷を処理でき、来週の金曜の見込みが1,000件なら、要る人数は9人です。社員とパートが6人なら、足りないのは3人です(数字は説明のための想定です)。
3. まとめる:AIが求人の文と根拠の1枚を書く。 AIに、計算した表と、任せる作業のメモだけを渡し、次のものを下書きさせます。
- 日ごとの求人の文:その日の仕事の流れと任せる作業、時間帯
- 見込みの根拠の1枚:日ごとの見込みの量、要る人数、足りない人数、見込みのぶれやすい日(天気や催しに左右される日)を、責任者が読む1枚に
4. 決める:責任者が人数を決めて求人を出す。 責任者が、根拠の1枚を見て、募集する人数と時間を決めます。見込みがぶれやすい日は、少なめに募集し、足りない分は社員の時間の調整で埋めるなど、取り消さなくて済む形を選びます。
求人の文と根拠の型をスキルにし、人数の計算はAIの外に置く
この仕組みが毎週同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。
求人の文と根拠の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。
- 日ごとの求人の文の型:仕事の流れ、任せる作業、時間帯、立ち仕事か、重い物を持つか
- 根拠の1枚の型:日ごとの見込み、要る人数、足りない人数、ぶれやすい日の印
- 書いてはいけないこと:表にない人数や時給、当日の取り消しをにおわせる言い方、年齢や性別で人を選ぶ言い方
人数の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、1人あたりの量と足りない人数を表で計算すること、責任者が人数を決めること、見込みと実際の差を記録して計算を直すことがそれに当たります。AIは割り算や切り上げを間違えたり、根拠のない数を出したりすることがあるので、人数は表で出します。
見込みと実際の差を残すと、毎週少しずつ当たるようになる
この仕組みでいちばん効くのは、毎週、見込みと実際の差を表に残すことです。
- 日ごとに、見込みの量と実際の量、要ると見込んだ人数と実際に足りた人数を並べます
- 差が大きかった日は、理由を一言書きます(雨、近くの催し、大口の注文など)
- 理由が分かれば、次の見込みに足せます。同じ理由で外れる日が分かれば、その日は少なめに募集して社員の時間で調整する、といった決まりを作れます
1人あたりの量も、スポットワークの人が慣れてくると変わります。過去4〜8週の平均で毎週出し直すので、変化に合わせて人数が変わります。
責任者の仕事は、根拠を見て人数を決めることになる
仕組みが入ると、募集人数の決め方は次のように変わります(想定です)。
| 今まで | 仕組みが入ったあと | |
|---|---|---|
| 見込み方 | 責任者の勘 | 過去の量と人数の表から |
| 募集する人数 | 足りないと困るので多め | 足りない人数だけ |
| 求人の文 | 毎回書く | 日ごとに下書きが出る |
| 外れたとき | 前日に取り消しで悩む | ぶれやすい日は少なめに募集 |
| 次の週 | 同じ勘で | 差の理由を足して見込む |
経営への効果は、取り消しと残業を減らし、人件費が読めること
効果は、前提を置いて考えます。
見込みで減らせる費用 = 余った人の時間の賃金 + 足りなかった時間の社員の残業代
多めに募集して人が余れば、その時間の賃金や、取り消したときの休業手当がかかります。少なすぎれば、社員の残業代がかかり、出荷や接客が遅れます。どちらも、見込みが当たるほど減ります。週ごとの人件費が読めるようになるのも、経営には大きな点です。
責任者の時間も変わります。毎週、勘で悩んでいた時間が、根拠の1枚を見て決める15分ほどになります。
費用はほとんど要らず、AIの利用料は月40円ほど
作る順番と、かかる日数
- 日ごとの量と人数を入れる表を作る(会社:責任者、1時間)。過去1〜2か月分をさかのぼって入れます
- 1人あたりの量と足りない人数を計算する表を作る(会社:責任者か作る人、半日。表計算で作れます)
- 任せる作業のメモと、求人の文と根拠の型を決める(会社:責任者、1時間)
- 型をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)
作る費用
作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価
計算の表とスキルを作る側に頼む場合で、目安は1人日です。
毎月の費用
| 費用 | 中身 | 想定の会社での目安 |
|---|---|---|
| AIの利用料 | 毎週の根拠の1枚と、求人の文3日分 | 月約40円(下の計算) |
| 表計算 | すでに使っているもの | 追加0円の想定 |
| 保守 | 任せる作業が変わったときに型を直す | 必要なとき |
AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。根拠の1枚に、計算した表とスキルで6,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると約4円、求人の文1日分に3,000トークンを読ませ、800トークンを書かせると約2円です。週に根拠1枚と求人の文3日分で約10円、月に約40円です(1ドル150円で計算)。
何か月で取り戻せるか
AIの利用料はわずかです。かかるのは最初の表づくりの手間で、スポットワークを月に数回しか使わない会社なら、表の計算だけで十分です。毎週のように募集する会社ほど、余った人の賃金と残業代が減る分で、表づくりの手間はすぐに取り戻せます。
必要な人は2役で、人数を決めるのは責任者
| 役 | 誰が | すること | 時間 |
|---|---|---|---|
| 記録する人 | 現場の社員 | 毎日の量と働いた人数を表に入れる | 1日2分 |
| 決める人 | 現場の責任者 | 根拠の1枚を見て人数を決め、求人を出す。差の理由を書く | 週15〜30分 |
1か月で表が回り、3か月で見込みが当たりやすくなる見込み
どこまでいけるかは、毎日の記録を続けられるかで決まります。目安は次のとおりです。
| 時期 | 見込み |
|---|---|
| 最初の1週間 | 過去1〜2か月分が表に入り、1人あたりの量が出る |
| 1か月後 | 毎週の根拠の1枚と求人の文が回る |
| 3か月後 | 差の理由がたまり、ぶれやすい日の決まりができる |
効果を確かめるには、次の3つを記録します。
- 見込みと実際の人数の差:週ごとに、余った人と足りなかった人の数を見ます
- 取り消しと早上がりの回数:ゼロを目指します
- 社員の残業時間:繁忙の日の残業が減ったかを見ます
AIに人数を決めさせると失敗する
作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。
- AIに人数を決めさせる。 根拠のない数になりがちです。人数は表で計算し、責任者が決めます
- 量の記録を休む。 1週間抜けると、1人あたりの量がずれます。毎日2分で書ける形にします
- 差の理由を書かない。 同じ理由で毎回外れます。一言でよいので残します
- 足りないと困るからと多めに募集する。 応募の時点で契約が成立します。ぶれやすい日は、少なめに募集して社員の時間で調整します
働いた人の名前や連絡先は、使っているサービスの決まりに沿って扱い、AIには渡しません。AIに渡すのは、量と人数の表と任せる作業のメモだけです。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。
まとめ
- 毎日、仕事の量と働いた人数を表に残す
- 表で、曜日ごとの1人あたりの量と、来週の見込みから足りない人数を計算する
- AIは、日ごとの求人の文と、見込みの根拠の1枚を下書きする。人数は決めさせない
- 応募の時点で労働契約が成立するので、多めに募集して取り消すことはしない。ぶれやすい日は少なめに募集する
- 見込みと実際の差と理由を毎週残し、見込みを当たりやすくしていく