業務への組み込み例

パートの希望を先に聞き、来年のシフトに穴を開けない。面談の準備と記録をAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、パートの社会保険の加入拡大に慌てない。対象者は表で出し、本人への説明はAIでの「対象になりそうな社員と面談し、働き方の希望を聞いて、来年のシフトの見通しを立てる」を、仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、勤怠の表から、パートの社員ごとに契約上の週の時間と最近の働いた時間を出し、加入の対象になる人と、20時間の前後の人を一覧にする。AIが、国の資料から人が作った要点の一覧で、本人向けの説明と面談で聞くことを下書きする。面談のメモから、本人の希望の時間を表に残し、来年のシフトに足りる時間を計算するという形です。年末に急に「時間を減らしたい」と言われて、シフトに穴が開くのを防ぎます。

加入の基準が変わると、働き方を見直す社員が出る

厚生労働省の資料(令和8年1月作成)によると、パートなど短い時間で働く人が社会保険に入る要件の1つは、週の決まった働く時間(所定労働時間)が20時間以上であることです。同じ資料は、賃金要件(月8.8万円以上、いわゆる106万円の壁)を2026年10月に撤廃する予定とし、従業員数の要件も2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上と下がり、2035年10月になくなるとしています(オフィスステーション、マネーフォワード クラウドの解説も同じ流れを示しています)。

基準が変わると、社員の中には働き方を見直す人が出ます。社会保険に入って長く働きたい人もいれば、家族の扶養の都合で週の時間を20時間より少なくしたい人もいます。どちらを選ぶかは本人の自由です。会社にとって大事なのは、それを早く知り、来年のシフトに必要な人手を見通すことです。

従業員の数え方やそのほかの要件、施行の状況は、日本年金機構と厚生労働省の最新の資料で確かめ、社会保険労務士に見てもらってください。2026年10月時点の情報です。

今は年末に急に相談が来て、シフトの穴を慌てて埋める

多くの会社では、パートの働き方の相談が次のように来ます。

  1. 制度が変わることを、社員がニュースや家族から聞く
  2. 年末や年度の替わり目に、「来月から時間を減らしたい」と急に相談が来る
  3. 何人かが同じ時期に時間を減らし、シフトに穴が開く
  4. 慌てて求人を出したり、ほかの社員に頼んだりする

本人に早めに説明し、希望を聞いていれば、時間を減らす人と増やせる人を組み合わせて、穴を開けずに済んだかもしれません。

時間を出し、AIが説明と面談の準備を書き、希望を表に残す

勤怠の表からパートの社員ごとに契約上の週の時間と最近の働いた時間を出し、対象の人と前後の人を一覧にする。AIが要点の一覧から本人向けの説明と面談で聞くことを下書きし、担当者が面談して、希望の時間を表に残し、来年のシフトに足りる時間を計算する
勤怠の表からパートの社員ごとに契約上の週の時間と最近の働いた時間を出し、対象の人と前後の人を一覧にする。AIが要点の一覧から本人向けの説明と面談で聞くことを下書きし、担当者が面談して、希望の時間を表に残し、来年のシフトに足りる時間を計算する

仕組みは4つの段でできています。

1. 入れる:契約の時間と最近の働いた時間を表に出す。 勤怠の表と雇用契約から、パートの社員ごとに、契約上の週の時間と、最近数か月の週の働いた時間を出します。

2. 選ぶ:対象の人と前後の人を、計算で一覧にする。 ここはAIの仕事ではありません。

  • 契約上の週の時間が20時間以上の人を「対象」とする
  • 契約上は20時間未満でも、最近の働いた時間が20時間の前後の人を「前後」とする(契約と実際がずれている人は、社会保険労務士に扱いを確かめる)
  • 自社の従業員数から、企業規模要件で会社が対象になる時期を出す

3. 下書きする:AIが説明と面談で聞くことを書く。 AIに、国の資料から人が作り、社会保険労務士が確かめた要点の一覧と、その社員の区分(対象、前後)と会社が対象になる時期だけを渡し、次の2つを下書きさせます。

  • 本人向けの説明:制度が変わること、いつから、加入すると何が変わるか
  • 面談で聞くこと:来年の働き方の希望(週の時間を増やしたい、今のまま、減らしたい)、その理由で話してよいこと、心配なこと

社員の名前や賃金の額は渡しません。

4. 面談して残す:担当者が面談し、希望の時間を表に残す。 担当者が説明を渡して面談し、本人の希望の週の時間を表に入れます。面談のメモからは、AIに記録と次にすること(契約の見直し、社会保険労務士への確認)を下書きさせ、担当者が確かめて残します。表から、来年のシフトに足りる時間と足りない時間を計算します。

説明と面談の型をスキルにし、区分と時間の計算はAIの外に置く

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

説明と面談の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 本人向けの説明の型:「対象」の人用と「前後」の人用の2つ
  • 面談で聞くことの型と面談の記録の型
  • 書いてはいけないこと:要点の一覧にないこと、個人の手取りや年金の額、加入するかどうかの判断、時間を減らす(増やす)ようすすめる言い方、家族の事情を詳しく聞く質問

区分と時間の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、勤怠の表と契約から週の時間を計算すること、対象と前後の区分を決まった基準で出すこと、希望の時間を表に入れて来年のシフトに足りる時間を計算することがそれに当たります。区分や時間をAIに判断させません。

希望の時間の表が、来年の人手の見通しになる

この仕組みでいちばん効くのは、本人の希望の週の時間を表に残すことです。

  • 希望の時間を合計すると、来年、パートの社員で回せる時間が分かります
  • 今年のシフトと比べて足りない時間が分かれば、求人を出す時期と人数を前もって決められます
  • 時間を増やしたい人がいれば、減らしたい人の分を任せられるかを話し合えます

求人を出すときの書き方は、求人の応募をAIで増やす方法。現場の1日を求人票に書くだけで変わるで説明しています。

担当者の仕事は、面談で聞き、表に残すことになる

仕組みが入ると、パートの働き方の相談は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
対象の人 相談が来てから調べる 勤怠の表から一覧に
説明 口頭で、人によって違う 要点の一覧から下書きした説明を渡す
希望を聞く時期 年末に急に 制度が変わる前に面談で
希望の記録 残らない 希望の時間を表に
来年の人手 穴が開いてから気づく 足りない時間を前もって計算

経営への効果は、シフトに穴を開けず、求人を前もって出せること

効果は、前提を置いて考えます。

シフトに穴が開いたときの損 = 足りない時間 × その時間に回せなかった仕事 + 急ぎの求人の費用 + ほかの社員の残業代

希望の時間を前もって聞いておけば、足りない時間が分かり、求人を急がずに出せます。ほかの社員に急に残業を頼むことも減ります。

面談そのものにも時間がかかります。仮にパートの社員が20人いて、1人あたり説明の準備と面談の記録に60分かかっていたものが、下書きを確かめる20分になれば、20人で13時間ほどが浮きます。

費用はほとんど要らず、AIの利用料は1人5円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 国の資料から要点の一覧を作り、社会保険労務士に確かめてもらう(会社:担当者、半日)。ここがいちばん大事です
  2. 勤怠の表と契約から、週の時間と区分を出す表を作る(会社:担当者、2時間。表計算で作れます)
  3. 説明と面談の型を決め、希望の時間の表を作る(会社:担当者、1時間)
  4. 頼み方をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 説明と面談の記録の下書き 1人あたり約5円(下の計算)
勤怠・表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 要点の一覧の更新 人数の要件が下がる時期ごと

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。説明の下書きに、要点の一覧とスキルで4,000トークンを読ませ、1,500トークンを書かせると約3.5円、面談の記録の下書きに2,000トークンを読ませ、600トークンを書かせると約1.5円、1人あたり約5円です。

何か月で取り戻せるか

時間だけで取り戻すものではなく、費用もほとんどかかりません。上の式のとおり、シフトの穴を1つ防げれば、急ぎの求人や残業代の分だけで準備の手間を上回ります。

必要な人は3役で、加入の判断は担当者と専門家

役 誰が すること 時間
面談する人 総務の担当者か店長 説明を渡して面談し、希望の時間を表に入れる 1人20分と面談
表を保つ人 総務の担当者 週の時間と区分、来年のシフトの見通しを計算する 月30分
確かめる人 社会保険労務士 要点の一覧と、契約と実際がずれている人の扱いを確かめる 必要なとき

いちばん大事なのは、本人が自分で決められるように、正しい情報を早めに伝えることです。

今年の面談で希望がそろい、人数の要件が下がるたびに見直す見込み

どこまでいけるかは、面談を制度の変わる前にできるかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の面談 対象と前後の人全員の希望の時間が表にそろう
次のシフトを組む前 足りない時間が分かり、求人を出す時期と人数を決める
人数の要件が下がる前 会社が対象になる時期に合わせて、もう一度説明と面談をする

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 面談をした人の数と、希望の時間がそろった人の数:面談の時期ごとに記録します
  • 急な時間の変更の相談の数:前の年と比べます
  • シフトの穴の数と、急ぎの求人の数:前の年と比べます

時間の変更をすすめると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 会社が時間を減らすよう、すすめる。 本人が決められるように情報を伝え、希望を聞きます
  • AIに区分や加入の判断をさせる。 区分は決まった基準で計算し、判断は担当者と社会保険労務士がします
  • 家族の事情を詳しく聞く。 面談では働き方の希望を聞き、話したくない事情は聞きません
  • 希望を聞いて終わりにする。 表に残し、来年のシフトの見通しを計算します

社員の賃金や家族の状況は、大事な個人の情報です。AIに渡すのは要点の一覧と区分だけにし、名前や賃金の額は社内の表で持ちます。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 勤怠の表と契約から、パートの社員ごとに契約上の週の時間と最近の働いた時間を出す
  • 契約上20時間以上の人を対象、20時間の前後の人を前後として、計算で一覧にする
  • AIが、専門家が確かめた要点の一覧から、本人向けの説明と面談で聞くことを下書きする。名前や賃金の額は渡さない
  • 担当者が面談し、本人の希望の週の時間を表に残す
  • 希望の時間から来年のシフトに足りない時間を計算し、求人を前もって出す

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