業務への組み込み例

任せられる仕事を1週間の記録から見つける。切り出しの案はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、障害のある人の雇用を、仕事の切り出しから始める。準備はAIでの「部署に1週間の作業を書き出してもらい、AIに任せられる仕事の候補を出させる」を、仕組みとして作る方法を説明します。

一言でいうと、各部署が1週間、決まった形の表に作業を記録する。作業ごとの週の時間と、手順が決まっているかを表で集計する。AIは、その集計からまとめると1日の仕事になる組み合わせの案を出し、作業ごとの手順書の下書きも作る。どれを任せるかは、部署の担当者と本人と話して決めるという形です。「うちには任せる仕事がない」という思い込みを、記録の数字でほどきます。

雇用の義務が37.5人以上の会社に広がった

2026年7月1日に、民間企業の障害者の法定雇用率は2.5%から2.7%に上がり、障害のある人を1人以上雇う義務がある会社は、常用労働者40人以上から37.5人以上に広がりました(ジンジャー、オフィスステーション、かいけつ!人事労務の解説による)。

同じジンジャーの解説は、受け入れの準備が足りないまま採用すると、仕事とのミスマッチや早い離職につながるおそれがあるとして、任せる仕事や配属先、採用後の支え方まで考えておくことをすすめています。任せる仕事を先に決めておくことが、長く働いてもらうための第一歩です。

社員の数え方や報告の手続きは、ハローワークと厚生労働省の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

今は、思いつきで「任せる仕事がない」と決めている

多くの会社では、任せる仕事を次のように探しています。

  1. 社長や総務の担当者が、思いつく作業を挙げる
  2. 「コピー」「清掃」など、すぐ浮かぶ作業がいくつか出る
  3. 合わせても1日の仕事にならず、「うちには任せる仕事がない」となる
  4. 雇用の準備が止まる

実際には、各部署の社員が、本来の仕事の合間に、手順の決まった作業を毎日少しずつしています。それぞれは短くても、部署をまたいで集めると、1日の仕事になることがあります。思いつきではなく、1週間の記録で探します。

記録を集め、表で集計し、AIが組み合わせの案を出す

各部署が1週間の作業を決まった形の表に記録して集め、作業ごとの週の時間と手順が決まっているかを表で集計する。AIがその集計から1日の仕事になる組み合わせの案と手順書の下書きを出し、部署の担当者と本人と話して任せる仕事を決める
各部署が1週間の作業を決まった形の表に記録して集め、作業ごとの週の時間と手順が決まっているかを表で集計する。AIがその集計から1日の仕事になる組み合わせの案と手順書の下書きを出し、部署の担当者と本人と話して任せる仕事を決める

仕組みは4つの段でできています。

1. 集める:1週間の作業を決まった形で記録する。 3〜4つの部署の社員に、1週間、した作業を1日の終わりに表へ書いてもらいます。列は次のとおりです。

  • 日付、部署
  • 作業名(「郵便の仕分け」「請求書のスキャン」など、短い言葉で)
  • かかった時間(分)
  • 手順が決まっているか(いつも同じ/ときどき判断が要る/毎回判断が要る)
  • 締め切りがあるか、急ぎが多いか

書く手間は、1人1日5分ほどに収まるようにします。

2. 集計する:作業ごとの週の時間を表で出す。 ここはAIの仕事ではありません。表の集計で、作業名ごとに、週の合計時間、記録した人数、手順が決まっているかを出します。同じ作業に違う名前が付いていたら、人がそろえます。手順が「いつも同じ」の作業を上に並べます。

3. 案を出す:AIが組み合わせと手順書を下書きする。 AIに、集計した表だけを渡し、次のものを下書きさせます。

  • 組み合わせの案:手順が決まっている作業から、まとめると1日4〜6時間の仕事になる組み合わせを3つ。作業ごとに、今している部署と、浮く時間を添える
  • 手順書の下書き:案に入った作業ごとに、1行に1つの動作、短い文、写真を入れる場所を示した手順書

社員の名前は渡しません。

4. 決める:部署の担当者と本人と話す。 部署の担当者が、案の作業の量と時間が実際と合っているかを確かめます。手順書は、今その作業をしている社員が読んで直します。採用が決まったら、本人の希望と得意なことを聞いて、任せる作業を決めます。

記録の形と手順書の型をスキルにし、集計はAIの外に置く

この仕組みが毎回同じ質で回るかどうかは、AIに渡す決まりと、AIの外の仕組みで決まります。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

組み合わせと手順書の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、次のものをスキルにします。

  • 組み合わせの決まり:手順が「いつも同じ」の作業を優先する、締め切りが厳しい作業は入れすぎない、1日の時間の範囲
  • 手順書の型:1行に1つの動作、短い文、写真の場所、終わりの確かめ方、困ったときに聞く人
  • 書いてはいけないこと:障害の種類を決めつける言い方、できないことを前提にした言い方、社員の名前

集計は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、記録の形を決めた表で集めること、作業ごとの週の時間を表計算で集計すること、案の時間が集計と合っているかを人が照らすことがそれに当たります。AIは時間の足し算を間違えることがあるので、合計は表で出します。

部署をまたいで集めると、短い作業が1日の仕事になる

この仕組みでいちばん効くのは、部署ごとではなく、会社全体の記録から作業を集めることです。

  • 総務の郵便の仕分けが1日30分、経理のスキャンが1日1時間、営業の発送が週3時間と、どれも部署の中では小さな作業です
  • 部署をまたいで並べると、1日の仕事としてまとまることがあります(数字は説明のための想定です)
  • 切り出した作業の分だけ、各部署の社員は本来の仕事に時間を使えます

記録は、人手の見直しにも使えます。週の時間が長いのに手順が決まっている作業は、障害のある人に任せるほか、パートに任せたり、仕組みで減らしたりする候補にもなります。

担当者の仕事は、名前をそろえ、案を確かめることになる

仕組みが入ると、任せる仕事の探し方は次のように変わります(想定です)。

今まで 仕組みが入ったあと
作業の集め方 思いつき 1週間の記録
作業の時間 分からない 作業ごとの週の時間を集計
組み合わせ 1日の仕事にならない 部署をまたいで案を3つ
手順書 ない 作業ごとに下書きして直す
決め方 社長の判断だけ 部署の担当者と本人と話して

経営への効果は、ほかの社員が本来の仕事に戻れること

効果は、前提を置いて考えます。

各部署が本来の仕事に戻せる時間 = 切り出した作業の週の合計時間

切り出した作業を障害のある人に任せると、その時間だけ、営業や経理の社員が本来の仕事に使えます。売上につながる仕事の時間が増えることが、いちばんの効果です。雇用の義務を果たし、指導や企業名の公表といったおそれを減らすこともできます。

記録の手間は、仮に3つの部署の10人が1日5分を5日書くと、合わせて約4時間です。集計とAIの案を確かめる時間を足しても、1日あれば候補がそろいます。

費用はほとんど要らず、AIの利用料は1回20円ほど

作る順番と、かかる日数

  1. 記録の表を作り、書き方を部署に伝える(会社:総務の担当者、1時間)。作業名の書き方の見本を付けます
  2. 1週間、記録してもらう(会社:各部署、1人1日5分)
  3. 集計の表を作り、作業名をそろえる(会社:総務の担当者、2時間。表計算で作れます)
  4. 組み合わせと手順書の型をスキルにする(作る人、0.5人日。会社で契約したAIのチャットに型を保存して使うなら不要)

作る費用

作る費用 = 作る人の日数(人日)× 1日あたりの単価

スキルにする場合で、作る側の目安は0.5人日です。

毎月の費用

費用 中身 想定の会社での目安
AIの利用料 組み合わせの案と手順書5つの下書き 1回約20円(下の計算)
表計算 すでに使っているもの 追加0円の想定
保守 仕事が変わったときの記録のやり直し 年に1回

AIの利用料は、読ませた量と書かせた量で決まります。2026年10月7日時点のAnthropic社のClaude(Sonnet 5.5)の公式料金は、読ませる量100万トークン(AIが文字を数える単位)あたり2ドル、書かせる量100万トークンあたり10ドルです。組み合わせの案に、集計の表とスキルで12,000トークンを読ませ、2,000トークンを書かせると約7円です。手順書1つに3,000トークンを読ませ、1,000トークンを書かせると約2.4円、5つで約12円、合わせて約19円です(1ドル150円で計算)。

何か月で取り戻せるか

この仕組みは、毎月回すものではなく、雇用の準備のときと、仕事が変わったときに回すものです。費用はほとんどかからないので、取り戻すものはわずかです。スキルを作り込むより、会社で契約したAIのチャットに組み合わせの決まりを貼って頼むだけで十分な会社が多いはずです。

必要な人は3役で、決めるのは担当者と本人

役 誰が すること 時間
まとめる人 総務の担当者 記録の表を配り、集計し、作業名をそろえ、AIの案を確かめる 1日
記録する人 各部署の社員 1週間、1日の終わりに作業を書く 1日5分
決める人 部署の担当者、社長 案から任せる作業を選び、本人と話して決める 1時間

求人と受け入れの準備は、ハローワークの障害者の窓口や、地域の就労を支える機関に相談しながら進めます。

1か月で候補がそろい、入社後は任せる仕事を広げる見込み

どこまでいけるかは、記録をそろえられるかで決まります。目安は次のとおりです。

時期 見込み
最初の2週間 1週間の記録が集まり、集計の表ができる
1か月後 組み合わせの案と手順書がそろい、ハローワークに相談する
入社の3か月後 本人の得意なことに合わせ、記録から次の作業を足す

効果を確かめるには、次の3つを記録します。

  • 切り出した作業の週の合計時間:各部署に戻った時間です
  • 手順書の直しの回数:本人が迷った場所を手順書に反映した回数です
  • 本人との面談で出た希望:任せる作業を広げる材料にします

本人と話さずに任せる作業を決めると失敗する

作る側から見て、よくある失敗は次の4つです。

  • 本人の希望を聞かずに決める。 案は話し合いの材料です。本人の希望と得意なことを聞いて決めます
  • 作業名をそろえずに集計する。 「スキャン」と「PDF化」が別の作業になると、時間が分かれて小さく見えます
  • 手順書を、作業をしている人に読ませない。 AIの下書きには抜けがあります。今その作業をしている社員が直します
  • 判断の多い作業を入れすぎる。 最初は手順が決まった作業から始め、慣れてから広げます

作業の記録には、取引先の名前が入ることがあります。AIに渡すのは作業名と時間の集計だけにし、社員の名前や、障害の内容は渡しません。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています。

まとめ

  • 各部署が1週間、作業名、時間、手順が決まっているかを、決まった形の表に記録する
  • 作業ごとの週の時間を表で集計し、作業名を人がそろえる
  • AIが集計から、まとめると1日の仕事になる組み合わせの案と、作業ごとの手順書を下書きする。社員の名前は渡さない
  • 部署をまたいで集めると、短い作業が1日の仕事になることがある
  • どれを任せるかは、部署の担当者と本人と話して決め、ハローワークや支援機関と一緒に進める

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