経営課題×AI

障害のある人の雇用を、仕事の切り出しから始める。準備はAIで

この記事で変わる経営指標

この記事では、障害のある人の雇用を、小さな会社が無理なく始める方法を説明します。一言でいうと、まず社内の仕事を一覧にし、障害のある人に任せられる仕事を切り出す。AIは、仕事の一覧から任せられる仕事の候補を出し、一つずつ分かりやすい手順書と、仕事の中身が伝わる求人票を下書きする。働き方と必要な配慮は、本人と話し合って決め、ハローワークや支援機関と一緒に進めるという話です。

AIの価値は、誰を雇うかを決めることではありません。任せる仕事と教え方を先に整え、入社した人が長く働ける準備を、少ない手間でそろえることです。障害の内容や健康の情報は、AIに渡しません。

経営への効果は、人手が増え、仕事の進め方が整うこと

障害のある人の雇用の準備は、AIを使うと次のように変わります。

今まで 仕事の切り出しと準備はAIで
任せる仕事 「うちには任せる仕事がない」で止まる 仕事の一覧から候補を出す
教え方 先輩が口で教え、人によって違う 一つずつ分かりやすい手順書に
求人票 「軽作業」とだけ書く 1日の仕事の中身を具体的に
配慮 入社してから慌てて考える 話し合いで聞くことを前もって用意
人数の確認 報告の時期に気づく 社員数と必要な人数を表で毎月確認
障害のある人の雇用の準備の変化。今までは任せる仕事がないと思い込み、教え方も人によって違い、入社してから配慮を慌てて考えていた。人が社内の仕事を一覧にし、AIが任せられる仕事の候補と分かりやすい手順書と求人票を下書きし、働き方と配慮は本人と話し合って決め、ハローワークや支援機関と一緒に進める
障害のある人の雇用の準備の変化。今までは任せる仕事がないと思い込み、教え方も人によって違い、入社してから配慮を慌てて考えていた。人が社内の仕事を一覧にし、AIが任せられる仕事の候補と分かりやすい手順書と求人票を下書きし、働き方と配慮は本人と話し合って決め、ハローワークや支援機関と一緒に進める

経営の効果は2つあります。

  • 人手が増える。 人手が足りない会社ほど、ほかの社員が本来の仕事に使えない時間を、細かい作業に取られています。その作業を切り出して任せられれば、職場全体の仕事が回りやすくなります
  • 仕事の進め方が整う。 手順書を分かりやすく書き直すと、障害のある人だけでなく、新人やパート、外国人の社員にも教えやすくなります。人によって違う教え方が、一つにそろいます

2026年7月から、37.5人以上の会社に義務が広がった

障害者雇用促進法に基づく民間企業の法定雇用率は、2026年7月1日に2.5%から2.7%に上がりました。これに合わせて、障害のある人を1人以上雇う義務がある会社の範囲が、常用労働者40人以上から37.5人以上に広がりました(ジンジャー、オフィスステーション、かいけつ!人事労務の解説による)。

項目 内容
法定雇用率(民間企業) 2.7%(2026年7月1日から。それまでは2.5%)
雇用の義務がある会社 常用労働者37.5人以上(それまでは40人以上)
毎年6月1日時点の報告 37.5人以上の会社に2.7%で確かめるのは、2027年6月1日時点の報告から
障害者雇用納付金 常用労働者100人を超える会社で、不足1人につき原則月額5万円
下回ったとき ハローワークの指導、改善しなければ企業名の公表もありうる

納付金がかかるのは100人を超える会社ですが、100人以下の会社でも、雇用の義務とハローワークの指導の対象からは外れません(ジンジャー、オフィスステーションの解説による)。社員の数え方(短い時間で働く人の数え方など)や、業種ごとの除外率は、ハローワークと厚生労働省の最新の資料で確かめてください。2026年10月時点の情報です。

小さな会社ほど、「任せる仕事がない」で止まる

障害のある人の雇用で、小さな会社が困るのは次の3つです。

  • 任せる仕事が見つからない。 一人がいくつもの仕事を兼ねている会社では、「切り出せる仕事はない」と思い込みがちです。実際には、ほかの社員の仕事の中に、手順が決まった作業が埋もれていることがあります
  • 教え方が決まっていない。 手順書がなく、先輩が口で教えている会社では、教える人によって言うことが違い、覚えにくくなります
  • 何を準備すればよいか分からない。 求人の出し方、面接で聞くこと、入社後の配慮を、誰に相談すればよいか分からないまま、時間が過ぎます

仕事の一覧と手順書は、前もって作れます。ここは、AIで手伝いやすい仕事です。

人が仕事を一覧にし、AIが候補と手順書を下書きする

人がすること(最初に)。 社長と各部署の担当者が、社内の仕事を一覧にします。1週間、自分がした作業を書き出してもらうか、話して録音するのが早道です。作業ごとに、どのくらいの頻度か、どのくらい時間がかかるか、手順が決まっているかを書き添えます。

AIに頼むこと。 次のものを下書きしてもらいます。

  • 任せられる仕事の候補:仕事の一覧から、手順が決まっている作業、ほかの社員の時間を取っている作業を拾い、まとめると1日の仕事になる組み合わせを出してもらう
  • 分かりやすい手順書:候補の仕事ごとに、1行に1つの動作、短い文、写真を入れる場所を示した手順書を下書きしてもらう
  • 求人票:1日の仕事の流れ、働く時間、職場の様子を具体的に書いた求人票を下書きしてもらう
  • 話し合いで聞くこと:入社前の面談で、働き方の希望、必要な配慮、得意なことを聞くための質問の一覧

人がすること(そのあと)。 社長と担当者が、候補の仕事と手順書を確かめます。求人は、ハローワークの障害者の窓口や、地域の就労を支える機関に相談しながら出します。働き方と配慮は、本人と話し合って決めます。

AIへの頼み方と、返ってくる候補はこんな形になる

AIに渡す指示(見本。内容は架空です):

下は、当社の各部署の1週間の作業の一覧です(作業名、頻度、かかる時間、手順が決まっているか)。この中から、手順が決まっていて、まとめると1日4〜6時間の仕事になる作業の組み合わせを、3つ案として出してください。それぞれ、今その作業をしている部署と、まとめると浮く時間の合計も書いてください。障害の種類を決めつける書き方はしないでください。

返ってくる候補(見本の一部):

案1:書類と郵便の仕事(1日約5時間)

  • 届いた郵便の仕分けと配布(総務、毎日30分)
  • 請求書や納品書のスキャンとフォルダへの保存(経理、毎日1時間)
  • 見積書や案内の封入と発送(営業、週3回各1時間)
  • 会議室と共用の棚の整理(総務、毎日30分)
  • 浮く時間:各部署で合わせて週約25時間

社長と担当者は、作業の量と時間が合っているかを確かめ、本人の希望を聞いてから、どの仕事を任せるかを決めます。

一覧と人数の計算はAIの外に、手順書の型はスキルに

ここまでの使い方は、そのつどAIのチャットに頼む場合です。続けて使うなら、もう一段の工夫をしておくと安定します。作る側から見ると、ここが「AIを使う」と「使いこなす」の差です。

手順書と求人票の型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「分かりやすい手順書の型(1行に1つの動作、短い文、写真の場所、終わりの確かめ方)」「求人票の型(1日の流れ、働く時間、職場の様子)」「話し合いで聞くことの型」「書いてはいけないこと(障害の種類を決めつける言い方、できないことを前提にした言い方、健康の情報を求める質問)」をスキルにします。

仕事の一覧と人数の計算は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、仕事の一覧を表で持つこと、社員数から必要な人数を表で計算すること、手順書を実際の作業と照らして直すことがそれに当たります。社員の数え方には細かい決まりがあるので、人数の判断はハローワークで確かめ、AIにはさせません。

明日からは、3つの部署に1週間の作業を書き出してもらう

  1. 総務、経理、営業など3つの部署に、1週間にした作業を、頻度とかかる時間と一緒に書き出してもらう
  2. 会社で契約した、入力をAIの学習に使わないプランに作業の一覧を渡し、上の見本の指示で任せられる仕事の候補を出させる。記録の形と集計の作り方は、任せられる仕事を1週間の記録から見つける。切り出しの案はAIでで説明しています
  3. 候補の仕事の手順書を1つ、AIに下書きさせ、今その作業をしている社員に読んでもらって直す
  4. 自社の社員数から、必要な人数をハローワークに確かめる
  5. ハローワークの障害者の窓口に、候補の仕事と手順書を持って相談する

本格的にやるなら、手順書を全員に使い、職場で支える

一度できたら、次の形に育てます。

誰を雇うかと、配慮の判断はAIに任せない

  • 採用は人が決める。 AIは、仕事の候補と書類を下書きするまでです。面接と採用の判断は、社長と担当者が行います
  • 障害の内容をAIに渡さない。 障害の内容や健康の情報は、とても大事な個人の情報です。AIに渡すのは仕事の一覧と手順書だけにします
  • 配慮は本人と話し合って決める。 必要な配慮は人によって違います。本人の話を聞き、支援機関の助言も受けて決めます
  • 人数の数え方は専門家と確かめる。 社員の数え方や除外率、報告の手続きは、ハローワークや社会保険労務士に確かめます
  • 社員の情報に気をつける。 社内の作業の一覧にも、取引先の情報が入ることがあります。決め方は社員が安心してAIを使える会社にする、A4で1枚の社内ルールにまとめています

まとめ

  • 2026年7月から、民間企業の法定雇用率は2.7%になり、障害のある人を1人以上雇う義務が、常用労働者37.5人以上の会社に広がった
  • 100人を超える会社は、不足1人につき原則月額5万円の納付金がかかる。100人以下でも、雇用の義務と指導の対象になる
  • まず社内の仕事を一覧にし、AIが任せられる仕事の候補、分かりやすい手順書、求人票を下書きする
  • 障害の内容や健康の情報はAIに渡さない。採用と配慮は、本人と話し合い、ハローワークや支援機関と一緒に決める
  • 分かりやすい手順書は、新人やパートにも使え、職場全体の教え方がそろう

CONTACT

自社の業務にも、AIを組み込めるか

記事のような組み込みを、御社の業務と予算に合わせて設計・実装しています。何から手を付ければいいか分からない段階でも大丈夫です。

AI活用を相談する