タクシーの苦情の返事|経緯を整理してAIで下書きし、5つの項目を1年残す
この記事で変わる経営指標
この記事では、タクシー会社のAI活用|記録と苦情の返事を整え、運転者を道路に出すの「苦情の返事は、経緯を整理してから下書きする」を、受けた日から使える手順にして説明します。
一言でいうと、苦情を受けた人が、聞いたままをメモし、運転者にも話を聞く。AIが、経緯を時系列に並べ、お客さまへの返事と苦情の記録を下書きする。運行管理者が、乗務の記録と照らして、改善措置を決める。社長が遅滞なく返事をし、記録を1年残す。誰が悪いかは人が確かめるという形です。
経営への効果は、苦情をこじらせず、運転者も守ること
タクシーの苦情は、道順、運賃、言葉づかい、運転の仕方など、乗っていた時間の出来事についての申し出が中心です。返事が遅かったり、経緯があいまいなまま答えたりすると、お客さまの不満は大きくなります。
一方で、苦情の中には、お客さまの思い違いや、運転者の側にも理由があるものもあります。経緯を確かめずに謝るだけだと、運転者は会社に守られていないと感じます。運転者が足りない今、運転者に辞められるのは大きな損失です。
受けた日のうちに経緯をそろえ、事実に沿って返事をすれば、お客さまにも運転者にも筋の通った対応ができます。経緯の整理と返事の下書きをAIに任せれば、運行管理者は事実を確かめることと、改善措置を考えることに時間を使えます。
苦情には遅滞なく弁明し、5つの項目を1年残す
e-Gov法令検索で旅客自動車運送事業運輸規則の第3条を確かめると、タクシー会社は、お客さまの取扱いなど運輸に関する苦情を申し出た人に、遅滞なく弁明しなければならないとされています。ただし、氏名と住所を明らかにしない人には、この限りではありません。
苦情の申し出を受けたときは、次の5つを営業所ごとに記録し、整理して1年間保存します。
- 苦情の内容
- 原因究明の結果
- 苦情に対する弁明の内容
- 改善措置
- 苦情処理を担当した者
国土交通省の自動車総合安全情報で公開されている行政処分の情報には、この記録が監査で問題になった例が載っています。令和5年6月28日の処分では、苦情処理の記録記載事項の不備(第3条第2項)を含む12件の違反で、輸送施設の使用停止と文書警告を受けています。令和4年10月6日の処分では、利用者などからの苦情をきっかけに監査が行われ、苦情の処理記録の保存が確実になされていなかったことを含む10件の違反が指摘されています。
細かな決まりは、営業所のある地方運輸局の案内で確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、電話を受けた人がその場で答え、記録が残らない
小さなタクシー会社では、次のような形が多いと思います。
- 苦情の電話を受けた人が、その場で謝って終わる
- 運転者に話を聞くのは、次に出庫するとき。聞いた内容は口頭のまま
- 記録は苦情処理簿に一言だけ。原因や改善措置の欄が空いている
- 同じような苦情が続いても、まとめて見る場がない
この形だと、記録の5つの項目がそろいません。そして、同じ苦情をくり返し受けることになります。
聞き、AIが並べ、決めて、返す
1 聞く(受けた人)。 お客さまの話を、聞いたままメモします。名前と連絡先、乗った日時と場所、何があったかを聞きます。運転者にも、その日のうちに話を聞きます。
2 並べる(AI)。 お客さまの話、運転者の話、乗務の記録を渡し、経緯を時系列に並べてもらいます。そのうえで、返事と、記録の5つの項目を下書きしてもらいます。
3 決める(運行管理者)。 乗務の記録や、あればドライブレコーダーの映像と照らし、原因を確かめます。改善措置を決めます。
4 返す(社長)。 遅滞なく、お客さまに返事をします。記録を営業所ごとに整理して、1年残します。
苦情のメモは、この6つの欄で書く
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| 受けた日時と受けた人 | 〇月〇日〇時、事務の〇〇 |
| お客さまの名前と連絡先 | 名前と住所を聞く。言いたくない場合はその旨を書く |
| 乗った日時と場所 | 〇月〇日〇時ごろ、〇〇駅から〇〇町まで |
| お客さまの話 | 言葉をそのまま書く。受けた人の感想は書かない |
| 運転者の話 | 運転者から聞いたことをそのまま書く |
| 照らした記録 | 乗務の記録、乗車した区間、ドライブレコーダーの有無 |
AIには、名前と連絡先を除いて渡します。
AIへの頼み方と、返ってくる経緯と返事はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、タクシー会社が受けた苦情のメモと、運転者の話と、乗務の記録です。まず、経緯を時系列に並べてください。お客さまの話と運転者の話が違うところは、両方を並べて「食い違い」と書いてください。次に、運輸規則第3条の記録の5つの項目(苦情の内容、原因究明の結果、弁明の内容、改善措置、担当者)の下書きを作ってください。原因と改善措置は「人が決める」と空けてください。最後に、お客さまへの返事の下書きを作ってください。誰が悪いかを決めつけないでください。
返ってくる返事(見本。内容は架空です):
〇〇様 このたびは当社のタクシーをご利用いただき、ありがとうございました。〇月〇日のご乗車で、道順についてご不快な思いをおかけしたとのお申し出をいただきました。担当の運転者から話を聞き、当日の記録を確かめました。(ここに確かめた結果と、当社の対応を書く)。今後の対応として、(改善措置を書く)。
確かめるときは、食い違いと決めつけと約束を見る
AIの下書きは、渡したメモと記録をもとにしています。それでも、並べる途中で話を補ったり、言い切ったりすることがあります。
- 食い違いが両方とも書かれているかを見る。 片方の話だけで経緯ができていないかを確かめます
- 決めつけがないかを見る。 「運転者の不注意でした」「お客さまの勘違いです」は、確かめる前に書きません
- 約束がないかを見る。 返金や運転者の処分を、AIの下書きで約束しません
- 記録の数字を原本と照らす。 乗った時刻、区間、運賃は乗務の記録から写します
改善措置は、運転者への指導と記録につなげる
改善措置は、苦情の記録を書くためだけのものではありません。次の苦情を減らすために使います。
- 運転者への指導に使う。 話したことは、第38条の指導監督の記録に残します
- 同じ種類の苦情を数える。 月に1回、苦情の記録を種類ごとに数え、多いものを全員の指導で話します
- 運転者にも結果を伝える。 確かめた結果と会社の対応を、運転者に伝えます
型をスキルにし、原因と改善措置はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「メモの6つの欄」「記録の5つの項目」「返事の見本」「させないこと(決めつけ、返金や処分の約束、数字の書き足し)」をスキルにします。
原因と改善措置は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、運行管理者が乗務の記録や映像で事実を確かめること、改善措置を人が決めること、社長が返事を確かめてから送ることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1件2円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 経緯と返事と記録の下書き | メモと記録(入力2千トークンほど)から下書き(出力1千トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1件2円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 運行管理者の時間 | 記録と照らして措置を決めるのに1件数十分(想定) |
必要な人は3役で、原因と措置は運行管理者が決める
- 受けた人(事務など):聞いたままをメモし、運転者に話を聞く段取りをする
- 運行管理者:記録と照らして原因を確かめ、改善措置を決め、運転者に指導する
- 社長:返事を確かめて送り、記録の保存を確かめる
運行管理者が社長を兼ねる会社では、受けた人のメモを先にそろえておくと、確かめる時間が短くなります。
1週間で型ができ、次の苦情から使える見込み
- 1日目:メモの6つの欄を紙にし、電話のそばに置く
- 2〜3日目:過去の苦情を1件、AIに並べさせて、記録の5つの項目を下書きさせる
- 4〜5日目:返事の見本と、させないことをスキルにまとめる
- 次の苦情から:受けた日のうちにメモをそろえ、記録を1年残す
確かめずに謝ると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 電話でその場の原因を話す。 運転者の話と記録を確かめる前に、原因を言い切りません
- 記録に「謝罪済み」とだけ書く。 原因究明の結果と改善措置の欄を空けたままにしません
- AIの下書きをそのまま送る。 返金や処分の約束が混ざっていないかを確かめます
まとめ
- 苦情を申し出た人には、遅滞なく弁明する
- 苦情の内容、原因究明の結果、弁明の内容、改善措置、担当者を、営業所ごとに記録して1年残す
- 受けた人のメモと運転者の話と乗務の記録から、AIが経緯を並べ、返事と記録を下書きする
- 原因と改善措置は運行管理者が決め、運転者への指導につなげる
- 誰が悪いかの決めつけと、返金や処分の約束はAIに書かせない