旅行会社のAI活用|旅程の相談と旅のしおりで次の旅も頼まれる
この記事では、小さな旅行会社の社長に向けて、AIが効く業務を4つ挙げ、どう使うかを説明します。一言でいうと、お客さまの希望から旅程案を下書きする相談、取引条件の書面を記載事項と照らす点検、確定した手配から作る旅のしおり、帰ってからのお礼と次の旅の案内を、AIに手伝わせる。料金と空席と旅行の条件、安全の判断は人が決めるという話です。
AIの価値は、旅を代わりに選ぶことではありません。旅程案の下書きやしおりづくりのように、相談のたびに時間がかかる書きものを減らし、お客さまの話を聞く時間を増やすことです。
経営への効果は、相談から申込みまでを早め、次の旅も頼まれること
小さな旅行会社の強みは、お客さま一人ひとりの希望を聞いて、旅を組み立てることです。けれども、相談を受けてから旅程案を作るまでに時間がかかると、お客さまはその間にほかで予約してしまうことがあります。
希望を聞いた日のうちに旅程案の下書きを示せれば、相談から申込みまでが早くなります。旅が終わったあとにお礼と次の旅の案内を送れば、次の家族旅行や社員旅行のときに思い出してもらえます。相談の早さと、旅のあとのつながりが、小さな旅行会社の売上を支えます。
旅行業法で、取引条件の説明と書面の交付が決まっている
e-Gov法令検索で旅行業法を確かめると、旅行業者等には次のような決まりがあります。
- 旅行業務取扱管理者の選任(第11条の2):営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選び、取引条件の明確さやサービスの提供の確実さなどを管理・監督させます。観光庁のページでも、営業所ごとに1人以上の選任が義務と説明されています
- 取引条件の説明(第12条の4):契約を結ぼうとするときは、旅行者が頼もうとしている内容を確かめたうえで、取引の条件を説明し、サービスの内容、支払う対価、旅行業務取扱管理者の氏名などを書いた書面を渡します。旅行者の承諾を得れば、書面に代えて電子的な方法で提供できます
- 書面の交付(第12条の5):契約を結んだときは、遅滞なく、決められた事項を書いた書面を渡します
- 企画旅行の広告(第12条の7):募集の広告には、実施する旅行業者の名前、目的地と日程、運送などのサービスの内容、対価などを表示します
- 誇大広告の禁止(第12条の8):著しく事実と違う表示や、実際より著しく良い・有利だと誤認させる表示をしてはいけません
細かな事項は、旅行業法施行規則などで決まっています。観光庁のページから法令と様式を確かめてください。2026年10月時点の情報です。
旅程の相談は、希望から旅程案を下書きする
お客さまの希望は、「両親を連れて、ゆっくり温泉に」「子どもが小学生で、歩く距離は短めに」のように、言葉で届きます。
- 聞く項目をそろえる。 人数と年齢、日数、予算の目安、移動の手段、外せない希望、苦手なことを聞きます
- AIに、旅程案の下書きを作らせる。 1日ごとの流れ、移動の時間の目安、休む時間を入れた案を2つほど作らせます
- 料金と空席は書かせない。 宿や交通の料金と空きは、担当が手配の仕組みで確かめてから入れます
AIは、実在しない施設や、変わった営業時間を書くことがあります。旅程案に出てくる施設は、担当が公式のページで確かめます。
取引条件の書面は、記載事項と照らして点検する
第12条の4と第12条の5で、取引条件の説明の書面と、契約のあとの書面の交付が決まっています。旅ごとに書面を作ると、記載事項の抜けが起きやすくなります。
- 記載事項の一覧を作る。 旅行業法施行規則などで決められた事項を、旅行の種類ごとに一覧にします
- AIに、書面と一覧を照らさせる。 一覧の事項が書面のどこにあるかを示させ、見つからない事項に印を付けさせます
- 旅行業務取扱管理者が確かめる。 印のところを直し、書面を渡す前に読みます
AIには、事項があるかないかを照らすだけにさせます。書き方が正しいかの判断は、旅行業務取扱管理者が行います。
規則で決められた記載事項と、照らしの手順は、旅行の取引条件説明書面の点検|記載事項の一覧とAIで照らすで説明しています。
旅のしおりは、確定した手配から作る
旅のしおりは、お客さまが旅の前に家族で読み、旅の間も持ち歩くものです。手づくりのしおりは喜ばれますが、作るのに時間がかかります。
- 確定した手配だけを渡す。 宿、交通、集合の時間と場所、連絡先など、手配が確定したものを渡します
- AIに、しおりの形に整えさせる。 1日ごとの流れ、持ち物、気をつけることを、読みやすい形にします
- 担当が手配の記録と照らす。 時間、便名、宿の名前と住所が、手配の記録と合っているかを確かめます
旅程案の段階のものや、確定していない手配は、しおりに入れません。
手配が変わったときは、しおりも作り直します。古いしおりが手元に残らないよう、作り直した日をしおりの表紙に書いておくと、お客さまも新しいものと分かります。
次の旅の案内は、帰ってからお礼と一緒に送る
旅が終わったあとのお礼の連絡は、次の旅につながる機会です。
- お礼の文の型を作る。 旅の行き先と、旅の前に聞いた希望を差し込める形にします
- 次の旅の案内は、押しつけない。 季節の旅や、家族の行事に合う旅を、1つだけ添える程度にします
- 広告に当たる案内は、表示事項を確かめる。 企画旅行の募集なら、第12条の7の表示事項と、第12条の8の誇大広告の禁止を確かめます
お客さまの名前や旅の記録は、記号に置き換えてからAIに渡します。
小さな会社ほど、相談と書きものを1人で抱えている
小さな旅行会社では、社長や少人数の社員が、相談、手配、書面づくり、しおり、旅の間の連絡までを受け持っていることがあります。旅行業務取扱管理者も、営業所の人数が少なければ、同じ人が書面の確かめと日々の相談を兼ねます。
その状態では、繁忙期に相談が重なると、旅程案を作る時間がとれず、書面の確かめも駆け足になります。旅程案の下書きや書面の照らしをAIに手伝わせれば、同じ人数でも、相談の早さと書面の確かさを両方保ちやすくなります。
- 繁忙期の前に型を作る。 春休み、夏休み、年末年始の前に、聞く項目と旅程案の型を整えておきます
- 書面の照らしを手順に入れる。 書面を渡す前に、AIの照らしと旅行業務取扱管理者の確かめを必ず通す順番にします
- 旅の間の連絡先をしおりに入れる。 旅の間に困ったときの連絡先を、しおりの決まった場所に書きます
料金と空席と安全の判断は、AIに任せない
AIに任せないことを、先に決めておきます。
- 料金と空席。 手配の仕組みと仕入れ先の情報で、担当が確かめます
- 旅行の条件と取消料。 契約の条件は、旅行業約款と書面に沿って人が説明します
- 安全の判断。 天候や現地の情報による行程の変更は、担当と旅行業務取扱管理者が決めます
- 施設の営業時間や休み。 AIの文に出てきた施設は、公式のページで確かめます
相談と書面の型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「相談で聞く項目」「旅程案の型」「記載事項の一覧」「しおりの型」「お礼と案内の型」「書いてはいけないこと(料金、空席、確定していない手配、著しく有利だと誤認させる言い方、お客さまの名前)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、料金と空席を手配の仕組みで確かめること、施設を公式のページで確かめること、書面を旅行業務取扱管理者が読むこと、しおりを手配の記録と照らすことがそれに当たります。
費用は、法人向けプランの月数千円から始められる
旅程案、書面の照らし、しおり、お礼の文の下書きは、会社で契約した、入力をAIの学習に使わない法人向けのプランのチャットで足ります。費用は1人あたり月数千円です。手配の仕組みとつなぐ場合は、その仕組みの会社に、つなげるかと費用を確かめます。
明日からは、よくある旅の旅程案を1つ作る
- よく相談される旅を1つ選ぶ(例:両親と行く2泊の温泉旅行)
- 聞く項目をそろえ、AIに旅程案を2つ下書きさせる
- 担当が施設と移動の時間を確かめ、次の相談から使う
取引条件の書面の照らしとしおりは、その次に始めます。
効果は、相談から申込みまでの日数と、次の旅の申込みで測る
| 測るもの | 見方 |
|---|---|
| 相談から申込みまで | 相談を受けてから申込みまでの日数を、始める前と比べる |
| 申込みの割合 | 相談のうち、申込みになった割合 |
| 次の旅 | お礼と案内を送ったお客さまから、次の旅の相談があった数 |
始める前の1か月を、先に測っておきます。
まとめ
- 旅行業法で、旅行業務取扱管理者の選任、取引条件の説明と書面の交付、企画旅行の広告の表示、誇大広告の禁止が決まっている
- 旅程の相談は聞く項目をそろえ、AIに旅程案を下書きさせ、料金と空席は書かせない
- 取引条件の書面は、記載事項の一覧とAIで照らし、旅行業務取扱管理者が確かめる
- しおりは確定した手配だけから作り、手配の記録と照らす
- 料金、空席、旅行の条件、安全の判断、施設の確認はAIに任せない