旅行の取引条件説明書面の点検|記載事項の一覧とAIで照らす
この記事で変わる経営指標
この記事では、旅行会社のAI活用|旅程の相談と旅のしおりで次の旅も頼まれるの「取引条件の書面は、記載事項と照らして点検する」を、旅ごとに続けられる手順にして説明します。
一言でいうと、旅行業務取扱管理者が、規則で決められた記載事項から、旅行の種類ごとの一覧を作る。AIが、書面と一覧を照らし、見つからない事項に印を付ける。管理者が印のところを直し、書き方を確かめる。担当が取引条件を説明して書面を渡す。書き方の判断は人が行うという形です。
経営への効果は、書面の抜けによる行き違いを、渡す前に止めること
旅行の取引条件の書面は、旅行者にとって、何にいくら払い、何が含まれ、取り消したらどうなるかを知る手がかりです。書面に抜けがあると、旅の前後に「それは聞いていない」という行き違いが起き、返金や苦情の対応に時間をとられます。
小さな旅行会社では、旅ごとに書面を作り直すことが多く、抜けが起きやすくなります。渡す前に一覧で照らす手順を決めておけば、書面の抜けを渡す前に止められます。旅行業務取扱管理者が確かめる時間も、印のところに絞れます。
規則で、説明する事項と書面に書く事項が決まっている
e-Gov法令検索で旅行業法を確かめると、第12条の4で、旅行業者等は契約を結ぼうとするとき、取引の条件を説明し、決められた事項を書いた書面を渡すことになっています。旅行者の承諾を得れば、書面に代えて電子的な方法で提供できます。第12条の5では、契約を結んだあとも、遅滞なく書面を渡すことになっています。
説明する事項と書面に書く事項は、「旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則」で決まっています。企画旅行の契約を結ぼうとする場合、第3条で説明する事項は、主に次のとおりです。
| 説明する事項(規則第3条第1号より、主なもの) |
|---|
| 企画旅行を実施する旅行業者(企画者)の氏名または名称 |
| 旅行の目的地と出発日その他の日程 |
| 旅行者が支払う対価と、その収受の方法 |
| 対価で提供を受けられる旅行に関するサービスの内容 |
| 対価に含まれていない、旅行者が通常必要とする経費 |
| 参加者数が決めた人数を下回ったときに実施しない場合は、その旨と人数 |
| 契約の申込方法と成立、変更と解除、責任と免責、旅行中の損害の補償 |
| 参加の資格を決める場合は、その旨と資格 |
| 目的地を考えて旅行者が知っておくとよい安全と衛生の情報があれば、その旨と情報 |
| 全国通訳案内士または地域通訳案内士の同行の有無 |
第5条では、書面に書く事項として、これに加えて、企画者の氏名・住所・登録番号、営業所の名称と所在地、旅行業務取扱管理者の氏名と、旅行者の依頼があれば管理者が最終的に説明を行う旨などが決められています。
企画旅行以外の契約(手配旅行など)では、事項が一部違います。2026年10月時点の情報です。条文は e-Gov法令検索で確かめてください。
今は、書面の雛形が旅行の種類ごとに分かれていない
小さな旅行会社では、企画旅行と手配旅行で同じ雛形を使い回していることがあります。雛形を作ったあとに規則が変わっても、見直す機会がありません。
旅ごとに書面を作るとき、担当が雛形を手直しするうちに、事項が抜けることもあります。旅行の種類ごとに記載事項の一覧を作り、書面を渡す前に照らす手順を決めておくことが、抜けを防ぐ近道です。
一覧を作り、AIが照らし、直して、渡す
1 一覧を作る(管理者)。 旅行業務取扱管理者が、規則の第3条と第5条から、企画旅行と手配旅行など旅行の種類ごとに記載事項の一覧を作ります。
2 照らす(AI)。 旅ごとの書面と一覧を渡し、事項ごとに書面のどこに書かれているかを示させ、見つからない事項に印を付けてもらいます。
3 直す(管理者)。 印のところを直し、書き方が正しいかを確かめます。
4 渡す(担当)。 取引条件を説明して書面を渡します。電子で渡す場合は、旅行者の承諾を得てからにします。
AIへの頼み方と、返ってくる照らしはこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、当社の企画旅行の取引条件説明書面と、旅行業務取扱管理者が作った記載事項の一覧です。一覧の事項ごとに、書面のどこに書かれているかを書き、見つからない事項には【抜け】と印を付けてください。書き方が正しいか、金額が合っているかの判断はせず、あるかないかだけを照らしてください。
返ってくる照らし(見本の一部。内容は架空です):
記載事項 書面の場所 目的地と日程 1ページ「旅行日程」 対価に含まれない経費 【抜け】 最少催行人員 2ページ「催行条件」 安全と衛生の情報 【抜け】(該当する情報がなければ不要か、管理者が確認)
管理者は【抜け】のところを書き足します。「安全と衛生の情報」のように、該当する情報がある場合に書く事項は、旅ごとに管理者が判断します。
対価に含まれない経費と、最少催行人員は、旅ごとに変わる
一覧の事項のうち、旅ごとに中身が変わり、抜けやすいものがあります。
- 対価に含まれない経費。 現地での食事、任意の観光の料金、空港までの交通費など、旅行者が通常必要とするのに対価に含まれていない経費です。旅ごとに書きます
- 最少催行人員。 参加者を募集する企画旅行で、人数が足りないと実施しない場合は、その旨と人数を書きます
- 安全と衛生の情報。 目的地を考えて、旅行者が知っておくとよい情報がある場合に書きます
この3つは、雛形のままにせず、旅ごとに担当が書き、管理者が確かめる欄として目立たせておきます。
旅程や手配が変わって対価や日程が変わったときは、書面も作り直し、もう一度照らします。変わる前の書面と変わったあとの書面を並べてAIに渡し、違うところを一覧にさせると、説明し直す点が分かります。
説明と書面は、旅行業務取扱管理者が最後に責任を持つ
規則の第5条では、書面に、旅行業務取扱管理者の氏名と、旅行者の依頼があれば管理者が最終的には説明を行う旨を書くことになっています。観光庁のページでも、旅行業務取扱管理者は取引条件の明確性などの管理・監督を行うと説明されています。
- AIの照らしは、管理者の確かめの前の下準備にとどめる
- 旅行者に聞かれたら、管理者が説明できるようにしておく
- 書面を渡した日と、電子で渡した場合の承諾の記録を残す
型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「旅行の種類ごとの記載事項の一覧」「照らしの表の形」「【抜け】の付け方」「書いてはいけないこと(書き方の正しさの判断、金額の判断、該当するかの判断)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、一覧を管理者が規則から作ること、印のところを管理者が直すこと、金額を手配の記録と照らすこと、電子で渡すときに承諾を得ることがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回4円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 書面の照らし | 書面と一覧(入力6千トークンほど)から照らしの表(出力1,500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回4円ほど |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 管理者の時間 | 印のところを直して確かめるのに1件数分から十数分(想定) |
必要な人は2役で、書面に責任を持つのは管理者
- 旅行業務取扱管理者:記載事項の一覧を作り、AIの印をもとに書面を直し、書き方を確かめる
- 担当:旅ごとの書面を作り、取引条件を説明して渡し、渡した日を記録する
1か月で一覧ができ、すべての書面を照らしてから渡せる見込み
- 1週目:管理者が、規則の第3条と第5条から、旅行の種類ごとの一覧を作る
- 2週目:今使っている雛形をAIで一覧と照らし、【抜け】を直す
- 3週目:旅ごとの書面を、渡す前に照らす手順にする
- 4週目以降:規則が変わったら、一覧とスキルを見直す
照らしだけで済ませると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 【抜け】がないから大丈夫と思う。 AIは事項があるかないかを照らすだけです。中身が正しいかは管理者が確かめます
- 雛形のまま旅ごとの欄を埋めない。 対価に含まれない経費や最少催行人員は、旅ごとに変わります
- 電子で渡すのに承諾を得ない。 書面に代えて電子で提供するには、旅行者の承諾が要ります
まとめ
- 旅行業法で、契約の前に取引条件を説明して書面を渡し、契約のあとも書面を渡すことが決まっている
- 説明する事項と書面に書く事項は「旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則」の第3条と第5条にある
- 旅行業務取扱管理者が旅行の種類ごとの一覧を作り、AIに書面と照らさせて【抜け】に印を付けさせる
- 対価に含まれない経費、最少催行人員、安全と衛生の情報は旅ごとに書き、管理者が確かめる
- 電子で渡すときは旅行者の承諾を得て、渡した日と承諾の記録を残す