保険の満期の案内をAIで下書き|変わりごとを聞いて契約を続けてもらう
この記事では、保険代理店のAI活用|満期の案内と見直しの提案で契約を守るの「満期の案内は、契約の一覧から下書きする」を、毎月続ける手順にして説明します。
一言でいうと、担当が、保険会社の管理画面から満期の一覧を出す。AIが、案内の文と、前回からの変わりごとを聞く質問を下書きする。担当が、お客さまに変わりごとを聞き、契約の中身が実質的に変わるなら、意向を確かめ直す。担当が案内を送り、返事と面談の日を記録する。保険料と補償の中身は、保険会社の資料から人が入れるという形です。
経営への効果は、続けてもらう契約を、担当の忙しさで落とさないこと
小さな代理店の売上は、満期で続けてもらう契約が支えています。担当者が新しいお客さまの面談や事故の対応で忙しい月ほど、満期の連絡が遅れがちになります。連絡が遅れると、お客さまはほかの窓口で入り直すことがあります。
案内の文をAIで下書きしておけば、担当者は名前と日付を差し込み、確かめて送るだけになります。浮いた時間で、お客さまに電話をかけて変わりごとを聞けます。変わりごとを聞いて補償を合わせれば、続けてもらうだけでなく、お客さまの信頼も深まります。
更新でも、中身が実質的に変わるなら意向を確かめ直す
保険業法の第294条の2で、保険を勧めるときは、お客さまの意向を把握し、それに沿った提案と説明をし、契約の前に意向と契約の中身が合っているかをお客さまが確かめる機会を設けることが義務になっています(e-Gov法令検索で確認)。2016年5月末に施行された改正で入った決まりです(政治山の解説)。
金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」(2026年10月24日に確認)には、既存の契約の更新や一部の変更で、実質的な変更に当たる場合は、その変更の部分について、意向の把握と確認を行うとされています。
つまり、満期の案内は、同じ中身で続けてもらうだけなら手続きは軽く済みますが、補償を足す、外す、金額を変えるといった変更があれば、その部分について意向を確かめ直す必要があります。何が実質的な変更に当たるかは、所属する保険会社の決まりで確かめてください。2026年10月時点の情報です。
今は、満期の連絡が担当者の手帳と記憶に頼っている
小さな代理店では、満期の一覧を保険会社の管理画面で見て、担当者がそれぞれ連絡していることがあります。案内の文も、担当者ごとに書き方が違います。
担当者が休んだり辞めたりすると、誰にいつ連絡したかが分からなくなります。満期の一覧と、案内を送った日、お客さまの返事を、1つの表で持つことが、連絡を落とさない土台になります。
抜き出し、AIが下書きし、聞いて、送る
1 抜き出す(担当)。 毎月の決まった日に、保険会社の管理画面から、2か月先までに満期を迎える契約の一覧を出します(2か月は想定です。保険会社の手続きの締め切りに合わせて決めます)。
2 下書きする(AI)。 保険の種類ごとに、案内の文の型と、前回からの変わりごとを聞く質問を下書きしてもらいます。
3 聞く(担当)。 電話や面談で変わりごとを聞きます。中身が実質的に変わるなら、その部分の意向を確かめ直します。
4 送る(担当)。 案内を送り、お客さまの返事と面談の日を表に記録します。
満期の表は、この6つの欄で作る
| 欄 | 中身の例(想定) |
|---|---|
| お客さま | 記号(名前は社内の表だけに書く) |
| 保険の種類と満期の日 | 自動車保険、12月10日 |
| 案内を送った日 | 10月15日 |
| 変わりごと | 子どもが運転を始める、車を買い替えた、など |
| 意向の確かめ直し | 要る・要らない、確かめた日 |
| 返事と次にすること | 継続、面談の日、見直しの提案 |
表は、保険会社の管理画面とは別に、代理店の中で1つ持ちます。担当者が替わっても、誰に何をしたかが分かります。
AIへの頼み方と、返ってくる案内と質問はこうなる
AIに渡す指示(見本):
当代理店から、自動車保険の満期を迎えるお客さまに送る案内の文を下書きしてください。満期の日、継続の手続きのお願い、面談か電話の日を相談したいことを、丁寧な言葉で5行ほどにしてください。保険料、補償の中身、割引は書かないでください。「〇〇様」「〇月〇日」は空けておいてください。あわせて、前回の契約から変わったことを聞く質問を5つ作ってください。
返ってくる案内と質問(見本の一部。内容は架空です):
〇〇様 いつもお世話になっております。〇〇様の自動車保険は、〇月〇日に満期を迎えます。継続のお手続きのご案内と、前回のご契約から変わったことがないかを伺いたく、お電話か面談のお時間をいただけますでしょうか。
変わりごとを聞く質問
- 車を買い替えた、または買い替える予定はありますか
- 運転する方は変わりましたか(ご家族が運転を始めた、など)
- 車を使う目的は変わりましたか(通勤に使い始めた、など)
- お住まいや車を置く場所は変わりましたか
- この1年で、保険を使った事故はありましたか
変わりごとがあれば、意向を確かめ直してから設計書を作る
お客さまから変わりごとを聞いたら、担当者は次の順で進めます。
- 変わりごとを記録する。 お客さまの言葉のまま、表の「変わりごと」の欄に書きます
- 中身が変わるかを判断する。 運転する人の範囲を広げる、車両保険を付けるなど、契約の中身が実質的に変わるかを、保険会社の決まりで判断します
- 変わるなら、意向を確かめ直す。 変わる部分について、お客さまの意向を聞き、提案と説明をし、契約の前に意向と中身が合っているかを確かめてもらいます
面談の記録の整え方は、保険の面談記録をAIで整える|当初と最終の意向を比べて残すで説明しています。
保険料と補償の中身は、AIに書かせない
案内の文に、保険料や補償の中身を入れるときは、保険会社の資料から担当者が入れます。
- 保険料は、保険会社の設計書の額だけを使う。 AIは古い料率や、もっともらしい額を書くことがあります
- 「前と同じ補償で大丈夫です」と書かない。 変わりごとを聞く前に、補償が合っていると言い切りません
- 乗り換えを勧めるときは、不利益も説明する。 第300条にあるとおり、不利益を告げずに乗り換えさせることは禁止されています
型をスキルにし、判断はAIの外に置く
型を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。ここでは、「保険の種類ごとの案内の文の型」「変わりごとを聞く質問の型」「書いてはいけないこと(保険料、補償の中身、割引、補償が合っているという言い切り、お客さまの名前)」をスキルにします。
判断は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、満期の一覧を管理画面から人が出すこと、実質的な変更かを担当が保険会社の決まりで判断すること、保険料を設計書から入れること、名前をAIに渡さないことがそれに当たります。
費用は、AIの利用料が1回3円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 案内の文と質問の下書き | 指示(入力3千トークンほど)から案内の文と質問(出力1,500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で1回3円ほど。型を一度作れば、毎月作り直す必要はない |
| 法人向けプラン | チャットで使うなら1人あたり月数千円 |
| 担当者の時間 | 名前と日付を差し込み、確かめて送るのに1件数分(想定) |
必要な人は2役で、補償を決めるのは担当とお客さま
- 担当:満期の一覧を出し、案内を送り、変わりごとを聞き、意向を確かめ直し、表に記録する
- 社長(管理する人):月に1回、満期の表を見て、案内が送られていない契約や、返事のない契約がないかを確かめる
1か月で型ができ、3か月で毎月の習慣になる見込み
- 1週目:満期の表の6つの欄を決め、来月と再来月の満期を入れる
- 2週目:保険の種類ごとに、AIで案内の文と質問の型を作り、担当者が自分の言葉に直す
- 3〜4週目:型を使って案内を送り、返事を表に記録する
- 3か月目:満期を迎えた契約のうち、続けてもらえた割合を、始める前の同じ月と比べる
案内を送って終わりにすると失敗する
よくある失敗は次の3つです。
- 案内を送るだけで、変わりごとを聞かない。 家族が運転を始めたのに補償がそのままだと、事故のときにお客さまが困ります
- 変わりごとがあっても、意向を確かめ直さない。 中身が実質的に変わる更新では、変わる部分の意向の把握と確認が要ります
- 返事のない契約を追わない。 表で返事のない契約を毎週確かめ、電話をかけます
まとめ
- 監督指針では、更新でも中身が実質的に変わる場合は、変わる部分の意向を把握し確かめるとされている
- 満期の一覧は担当が管理画面から出し、6つの欄の表で案内と返事を記録する
- AIには、案内の文の型と、前回からの変わりごとを聞く質問を下書きさせる
- 保険料と補償の中身は保険会社の資料から担当が入れ、補償が合っていると言い切らない
- 返事のない契約を毎週追い、続けてもらえた割合を始める前と比べる