AIの使い方を毎週15分見せ合う|うまくいった頼み方を社内に広げる
この記事で変わる経営指標
この記事では、生成AIは研修だけでは社員に広がらない|先に配る頼み方の見本の「毎週15分、うまくいった例を見せ合う」を、毎週続く社内の小さな会として進める方法を説明します。
一言でいうと、社員が週の中でうまくいった頼み方を短くメモする。AIが全員のメモを1枚の一覧にまとめる。週に1回、15分でその一覧を上から見せ合う。推進役が、使えそうな頼み方をその週のうちに見本の1枚に足して配る。うまくいかなかった例も責めずに出してもらうという形です。
経営への効果は、一人の工夫が、翌週には全員の道具になること
社員の誰かがAIでうまくいった頼み方を見つけても、その人の中にとどまっていれば、会社全体の時間は減りません。毎週見せ合えば、一人の工夫が翌週には全員の使い方になります。
見せ合いの会があると、社員がAIを使うきっかけにもなります。「来週は何か1つ持ってこよう」と思えば、自分の仕事のどこに使えるかを考えるようになります。15分なら、本業の時間もほとんど取られません。
社員は、AIを使っていることを言い出しにくいことがある
Microsoft の発表と The Decoder の紹介によると、MicrosoftとLinkedInが2024年に31か国3万1,000人に行った調査では、仕事でAIを使う人の78%が自分のAIの道具を持ち込んでいました。大事な仕事でAIを使っていることを認めたがらない人も52%いたとされています。海外の大企業を含む調査なので、そのまま日本の中小企業に当てはめることはできません。
それでも、「AIを使っていると言いにくい」空気は、小さな会社にもありえます。見せ合いの会は、社長が「使ってよい、使ったら見せてほしい」と示す場になります。
今は、うまくいった頼み方がその人の中にとどまっている
社員がAIを使い始めても、頼み方は人によってばらばらです。うまくいった頼み方を見つけた人がいても、隣の席の人は知りません。同じ業務で、ある人は5分で済ませ、ある人は30分かけている、ということも起きます。
研修を1回開いても、その後に頼み方を共有する場がなければ、使い方は広がりません。毎週の短い会で、うまくいった頼み方を回していくことが大事です。
残し、AIがまとめ、見せ合い、見本に足す
1 残す(社員)。 週の中で、AIでうまくいったこと、うまくいかなかったことを、決まった場所に短くメモします。
2 まとめる(AI)。 会の前日に、全員のメモをAIに渡し、1枚の一覧にまとめてもらいます。
3 見せ合う(全員)。 週に1回、朝礼や週の会議の最後の15分で、一覧を上から見ていきます。
4 足す(推進役)。 使えそうな頼み方を、その週のうちに業務ごとの見本の1枚に足して配ります。
メモは、この4つを1〜2行で書く
| 欄 | 書くことの例(想定) |
|---|---|
| 業務 | お客様へのメールの返事 |
| 頼み方 | 「お詫びと次の対応を3行で」と頼んだ |
| よかった所・困った所 | 言葉がやわらかくなった/日付を間違えた |
| かかった時間 | 前は15分、今回は5分 |
メモの場所は、社内のチャットの1つの部屋や、共有の表の1枚など、全員が書ける所を1つに決めます。名前を書くかどうかは、会社の空気に合わせて決めます。
AIへの頼み方と、返ってくる一覧はこうなる
AIに渡す指示(見本):
下は、今週の社員のAIの使い方のメモです。業務ごとにまとめ、1枚の一覧にしてください。各業務について、「うまくいった頼み方」「困ったこと」「かかった時間の変化」を並べてください。同じような頼み方はまとめてください。メモにないことは書かないでください。最後に、「来週みんなで試すとよさそうな頼み方」の候補を2つ挙げてください。決めるのは推進役です。
返ってくる一覧(見本の一部。内容は架空です):
お客様へのメールの返事
- うまくいった頼み方:「お詫びと次の対応を3行で。日付は書かず【日付】とする」(2人)
- 困ったこと:日付を間違えて書いた(1人)
- 時間:15分→5分(1人)
15分の会は、決まった順で進める
15分で終えるために、進め方を決めておきます。
- 最初の10分で一覧を上から見る。 推進役が一覧を画面に出すか紙で配り、業務ごとに一言ずつ説明してもらいます。全員が話す必要はありません
- 次の3分で、困ったことを1つ取り上げる。 「日付を間違えた」のような困りごとに、どう頼めば防げるかをその場で話します
- 最後の2分で、来週試す頼み方を決める。 候補から1つ選び、全員で1週間試します
うまくいかなかった例を出した人を責めないことは、最初の会で社長が伝えます。失敗の例こそ、ほかの人が同じ失敗をしないための材料です。会の中で出た困りごとと、その場で決めた防ぎ方も、見本の1枚に書き足しておきます。
見本の1枚には、確かめる所も一緒に足す
推進役が見本に足すときは、頼み方だけでなく、確かめる所も書きます。
- 頼み方の文をそのまま書く。 コピーして使えるようにします
- 確かめる所を書く。 「日付と金額は元のメールで確かめる」のように、人が見る所を添えます
- 誰の工夫かを書く。 見本のもとになった人の名前を添えると、次も出してもらいやすくなります
見本が業務ごとに増えてきたら、AIが自動で読み込む形にまとめます。
話が出なくなったら、業務を絞り直す
会を続けていると、メモが減り、話が出なくなる週が来ます。そのときは、やり方を少し変えます。
- その月の業務を1つに絞る。 「今月は見積もりの文面だけ」のように、全員が同じ業務で試すと、比べやすく、話が出やすくなります
- 推進役が先に1つ見せる。 メモが少ない週は、推進役が自分の例を先に見せて、話のきっかけを作ります
- 時間を短くする。 見せることがない週は、5分で終えてかまいません。会を開くこと自体を続けることが大事です
社長が自分の例を出し続けることも、会が続く理由になります。社長が使っていないと、社員は「本当に使ってよいのか」と迷います。
会に出られない人にも、一覧と見本を届ける
現場に出ている社員や、時間の合わないパートの人は、会に出られないことがあります。
- 一覧と見本をチャットで送る。 会のあとに、その週の一覧と、足した見本を社内のチャットに送ります
- メモはいつでも書けるようにする。 会に出られなくても、メモの場所に書けば一覧に入るようにします
- 聞きたいことの窓口を書く。 推進役の名前と、聞き方を一覧の最後に書いておきます
見本をスキルにし、確かめる所はAIの外に置く
見本を Skills にまとめる。 Skills(スキル)は、AIに渡す手順書・見本・道具を1つにまとめたものです。頼まれた内容に合うときにAIが自動で読み込むので、毎回同じ説明をしなくても、AIの働きが安定します。見せ合いで集まった頼み方と見本の文をスキルにすれば、新しく入った人も、初日から同じ質で使えます。
確かめる所は、AIの外に置く。 AIそのもの以外の、指示・道具・点検の仕組みを設計することを、ハーネスエンジニアリングと呼ぶことがあります。ここでは、見本に確かめる所を書き添えること、来週試す頼み方を推進役が決めること、外に出す文を人が確かめることがそれに当たります。
費用はAIの利用料が週に4円ほど
| 費用 | 見込み |
|---|---|
| 一覧のまとめ | 全員のメモ(入力5千トークンほど)から一覧(出力1,500トークンほど)を作ると、Claude Sonnet 5.5の料金(入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル、1ドル150円で計算)で週に4円ほど |
| 法人向けプラン | 1人あたり月数千円 |
| 全員の時間 | 週に15分と、メモに数分(想定) |
| 推進役の時間 | 一覧の準備と見本への書き足しで週に30分ほど(想定) |
必要な人は3役で、続けると決めるのは社長
- 社員:うまくいったこと、うまくいかなかったことをメモし、会で見せ合う
- 推進役:一覧をまとめ、会を進め、見本に足して配る
- 社長:最初の会で「責めない」と伝え、自分も例を出し、会を続けると決める
1か月で習慣になり、3か月で見本が業務ごとにそろう見込み
- 1週目:社長が最初の会で趣旨を伝え、自分の例を1つ見せる
- 2〜4週目:毎週同じ曜日に会を開き、見本に足していく
- 2か月目:業務ごとの見本が増え、スキルにまとめ始める
- 3か月目:見本の数と、メモにある時間の変化を、推進役が月に1回社長に伝える
推進役と社長の月1回の打ち合わせの進め方は、AI推進の月1回の打ち合わせ|1枚の報告で社長が30分で決めるで説明しています。
まとめ
- 社員の工夫を全員の使い方にするために、毎週15分の見せ合いの会を開く
- 社員はうまくいったこと、うまくいかなかったことを4つの欄で短くメモする
- AIが全員のメモを1枚の一覧にまとめ、会では上から見て、来週試す頼み方を1つ決める
- 推進役は、頼み方と確かめる所をその週のうちに見本に足して配る
- うまくいかなかった例も責めずに出してもらい、社長も自分の例を出す